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さらなる挑戦&徹底分析!「初学者には?」「LMSとしての365活用」「多角的な成果測定」等々

2022.06.08 (最終更新:2024.03.27) 学校運営 教務情報

連載麻生塾に聞く!教育ICT活用

九州最大級の総合専門学校グループ「学校法人 麻生塾」の教育ICT活用について、牽引役である若山先生・藤澤先生にお聞きする注目の連載。「コロナ禍の緊急対応」に留まらない中長期的な取り組みの展望から、大きな組織での情報共有とプロジェクト推進の秘訣、すぐに真似したいテクニックまで、貴重な知見を惜しみなくお伝えします。

▼ウイナレッジ編集部より

麻生塾グループの教育ICT活用のキーパーソンお二人をお迎えしてお届けする連載「麻生塾に聞く!教育ICT活用」。
若山先生の第1回では2013年頃からの教育ICT活用の取り組みについて第2回ではコロナ禍で「学びを止めない」ための奮闘の日々について第3回では現場での実践編第2弾として「公務員試験直前期」の学生に向けた授業での教育ICT活用のさらなる工夫についてお伝えいただきました。

第4回となる今回は、現場での実践編ラストとして「初学者の知識インプット期での実践」「同僚の先生への展開」「Power Automateを使ったLMSとしてのMicrosoft 365活用」「学生データの徹底分析による授業の成果測定」などディープな内容をお届けします!

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「演習だからできた」のか? 初学者の知識インプット期での授業実践

前回、前々回の授業は「インプット後の演習授業」でした。
そこでは良い結果が得られたこの授業形式ですが、「演習の授業だからできるのでは?」との声もありました。

初学者の授業でも動画授業は有効か」を確かめたく思い、また授業させていただくことになりました。

今回の授業対象者は公務員中上級(大卒クラス)の学生さん。
時期を考え、この学科を候補にしました。

  • 対象 公務員中上級(大卒クラス)※20~30歳と年齢層に幅あり
  • 内容 数的推理・判断推理
  • 時期 今から勉強を始める

このまま自分だけできても仕方ない

ここでふと思いました。

このまま自分だけがこの授業形式を運用できてもあまり意味はない。
少なくとも学生さんには受け入れられているので、もっと多くの先生の理解を得て、多くの学生さんの学習環境を良くしていきたい。

そこで、対象学科の学科責任者の先生に相談。
そこから、科目(数的推理・判断推理)担当の先生にも相談。

堀内:
どんな授業で、我々はどんなことをすれば良いですか?

若山:
まずは学生さんに動画を見てもらって、「その動画を見たら解ける問題」をFormsで配信します。
動画とFormsのURLのリストは予めTeamsで投稿しておき、学生さんにはそのリストに沿って動画視聴・設問回答を進めてもらいます。
すると、後は学生さんそれぞれで進捗していくので、分からないと思えば何度も動画を視たり、ゆっくり設問を解いたり、解説動画を視たり、質問したり。分かると思えば動画を視ずに設問をどんどん解いていける、というような、個別学習ができる形式なんです。
我々はそのサポートをします。

堀内:
我々は授業中何を?

若山:
質問があったら質問対応を。質問がなければ何も^^;

堀内・花水・田辺:
(; ̄- ̄)…ン?

若山:
えっとぉ、授業中はあまりやることがないんです^^;

口頭説明だけでイメージを伝えるのは難しかったですが、授業趣旨は理解してもらえ、とりあえず一緒に準備を進めていくことに。

今までの2回の授業経験を活かし準備

以前の2回の授業経験で得たもの、また、藤澤先生の授業方法で参考にできることもありましたので、それらを踏まえて準備していこうと3人の先生方に伝えました。

【得たこと・参考にしたこと・考慮したこと】

  1. 質問対応の質(速さ、ヒントの与え方)がカギ
  2. 自分以外の教員の動画を使用する時は、内容を事前確認しておくことが必要
  3. 学生さんの授業進捗に差が出てくるので、課題の量や質で調整する必要がある
  4. 複数教員が同時に授業に入る

【授業開始時の教員3人の状態】

  1. 学生に解かせる過去問について、学生がつまずきそうなポイントの共通認識がある(上 1. 4. に対し)
  2. インプットする内容の共通認識がある(上 2. 4. に対し)
  3. 最低限できてほしい過去問の共通認識がある(上 3. 4. に対し)

【このゴールを達成するには】

  1. 授業中に解く可能性のある問題の「つまずきポイント」と「最低限できてほしいライン」を打ち合わせの場ですり合わせる
    (打ち合わせはあくまで「すり合わせの場」にする必要があるので、打ち合わせまでに自分で問題を予習しておく)
  2. すり合わせたポイントを整理するリストを作成する
    (すり合わせのタイミングは授業の何か月か前になる可能性があり、授業の直前に再度そのリストを見直したいから)
  3. 既存のインプット動画のメンテナンス
    (追加、削除、あるいはそのまま、など)

この時点で授業開始まで約4カ月。
この週から定期的に「つまずきポイント」のすり合わせの時間を設けることに。

しかし、「つまずきポイント」をすり合わせるためには、すり合わせの時間以外に、授業で扱う予定の全問題を各教員が解く時間が必要。中々の作業でした。

とはいえ、このすり合わせ作業の中では「あ、そんな解き方があるのか。知らなかった!」「そういう風に教えてるんですね。そっちの方が良いなぁ」というような発見も多く、かなり勉強になりました
本来、こういうことにもっと教員の時間を使うべきなのだろうと思いました。

【分担・設問数】

  • 判断推理(花水、堀内、若山) 全248問
  • 数的推理(田辺、堀内、若山) 全454問

【スケジュール】

共通認識を作るために話し合ったこと

さて、実際に「つまずきポイント」と「最低限できてほしい設問」の洗い出し作業を始めたわけですが、ここで自分自身が「つまずき」ます。

最低限って「難易度」軸「出題度」軸の2つ考えないといけないのでは?
簡単だからだといって、あまり出題されない設問を解かせても意味がない
「最低限」をどう定義すると認識がブレないか?

以上のようなことをすり合わせの中で投げかけ、以下の定義に落ち着きました。

最低限」:
過去の出題傾向・合否状況を鑑み、「解けなければ試験のステージにも立てない設問」。
例え設問としては難しくても、頻出テーマであればいずれ解けるようになる必要がある。

作業を進めていき、無事リストが完成(下図の色付きの行が「最低限」の設問)。
全700問分のリストなので700行のExcelファイルですが、これも「過去問データベース」のおかげでそれほど手間なく設問抽出ができました。
ここでも「作ってて良かったデータベース」。

Office 365(現Microsoft 365)での疑似LMSへの挑戦

まず、重要だと思ったことは「リアルタイムでの学生回答状況把握」です。

紙と比較して、Formsなどのデジタルツールで回答する最大のメリットは「即時性」
それを最大限活かすには、「回答状況が『整理された状態で』『簡単に』『リアルタイムに』教員の手元に視覚化されていること」が必要だと思いました。

FormsでもExcelで状況を見ることは可能ですが、複数のFormsを横断的に把握するのは不可能です。
この不可能を可能にしてくれたのが「Power Automate」。
Power Automateを使うと、単元ごとに作成した40を超えるフォームの回答を1つのExcelに集約できます。
※なお、できることを元々知っていたわけではなく、「出来ないのかな?」と思い、ググるうちに分かってきました。Google先生、最高!

Excelに集約した後は関数で調整し、「単元ごと」と「学生ごと」の「回答状況一覧表」の完成です。

「『最低限』の設問を間違うとピンク、正解するとグリーン、応用問題は間違っても色付きなし」といった色分けや、回答回数、回答設問数、回答最終時刻などの情報のほか、授業内容に関するアンケートの結果も整理しました。
この「最低限」の設定で、「学習進捗は学生に任せながらも、教員が要求する最低限の進捗を促す」ことができるようになります。

授業中は、基本的に「単元ごと」の回答状況を見ます。
「誰が」「どの問題を」「どの程度解き進めていて」「正解か不正解か」などが視覚化され、教員はこれをiPadで確認しながら机間巡視や学生対応をします。

しかし、ここまでであれば、ただ教員が学生の状況を把握しているだけに過ぎません。
教員だけでなく、学生さんも自分自身の状況を把握できて初めてLMSといえるのだと思います。
堀内先生からも「学生さんに、学生さん自身の状況を見せることはできませんか?」と聞かれました。
私も、Office 365内でこの「学生も自分自身の状況を把握できる」状態を実現できないか試行錯誤。
なかなか難航しましたが、田辺先生からもアドバイスをもらいながら、データの持たせ方やファイル共有の設定など試行錯誤を重ね、最後には実現させることができました。

これで、学生さんも自分自身の正答状況を視覚的に、直観的に確認できるようになりました。
視覚情報中心ですので、「学習ロードマップ」のような捉え方ができ、教員は学生さんに
「全部のマスをグリーンにしましょう! 最初はピンクでも、それをグリーンにすることで合格が見えてきますよ!」
とやるべきことを明確に伝えやすくなり、学生さんにとっても「グリーンに塗りつぶしたい」というような心理が自然と働いて、主体的な学習を促すことができるのではないかと思っています。

そして授業。目の当たりにした「全集中」

準備が整い、いよいよ授業実践です。

Teamsで案内して授業を開始。冒頭で少し授業や単元の趣旨を説明し、いざ授業本編へ。

……シーン。

順にやってほしいことはTeamsで案内。
解法説明は動画で、その動画URLもTeamsで案内。
やってほしい演習はFormsで、そのURLもTeamsで案内。
今まで教員が都度、学生に口頭で伝えていたことをTeamsで文字情報として案内したので、「全体に対して話す」ことがなくなり、当然といえば当然の静けさです。

回答状況を見ると、グリーンが並んでいきます。
教員が一言も話していないのに学生の解答が進む。それを狙って動画を撮り、設問配置し、授業設計したのですが、やはり実際に体験すると何とも不思議な感覚です。

同時に、今まで一生懸命に黒板の前で声を張り上げ、体を使い身振り手振りし、余白を気にしながら板書し、色を変えよう、赤にしよう、赤は使ったから青にしよう……、それを考えている間に背中に刺さる学生の「まだですか?」という視線に耐える日々――あれは何だったのか? という気持ちに。

さらに、2回目の授業トライで見た光景がオーバーラップします。

何たる集中。

この学科での授業は、「同じ科目の授業(50分)を3コマ連続で実施」する形でした。
ですので、学生さんは約3時間ぶっ通しで判断推理もしくは数的推理の問題を解くことになります。
かなりハードです。

しかし、1人も寝ることなく、うつらうつらすることさえもなく、全集中です。

「いや、でも大卒クラスだし、普段からこうなのかも?」と気になり、堀内先生に尋ねます。
すると、「私もそれ、思ったんです。『集中』と『寝ない』!」と、堀内先生も驚いた様子。
大卒クラスとはいえ、今までの一斉授業では、早々に解けてか分からなくなってか、暇そうにしている学生は少なからずいたようです。そしてやがて居眠りに進展。

……が、この形式だとそれが全くありません。
要因を考えてみましたが、次のことに集約されそうです。

やることが明確で、かつ、ペースメーカーが学生である

おそらく、どちらかが欠けてもダメなんです。
やることを明確にしていたのは、今までの一斉授業だってそうだったかもしれません。
逆に、やることが不明確な状態で学生にペースメーカーをやらせても進みません。何をやれば良いか分からないからです。

その点、本授業では

授業中にやることをあらかじめTeamsに明記
最低限やることを決めて、進捗は学生各々に任せる(任せられるよう動画教材などを完備することが前提)

以上2つのことができたために、この集中状態を生み出せたのだと思っています。

学生アンケートで成果を測定

とはいえ、やはり「……シーン。」は不安。
気になったら聞いてみよう! ということで今回もアンケートを実施しました。

【設問1】

授業体験について。
次の各項目についてお聞かせください。

【設問1の評価基準】

従来の方が良い:   1点
どちらも変わらない: 4点
今回の方が良い:   7点

【設問1の項目説明】

活動量:授業、手を動かす、頭を動かす、体を動かす、口を動かす
選択の機会:自分の状況に合わせ、内容、進捗などを選ぶ
意見の反映感:自身の意見(上記の活動をした結果)が授業の内容や進行に反映される
授業への参加感:先生の話を聞くだけでなく、参加している感覚
楽しさ:ワクワク感や、あっという間感、充実感など
推薦度:他の人へも勧めたいか、他の授業もこうしたら良いのになど
理解度:分からない事が分かるようになる量
学習進捗度:学習のはかどり具合
教員即応度:教員の対応の質(速さ、質)
教員親密度:授業中の教員への親しみやすさ
授業への没入度:授業へ没頭する、熱中する、夢中になる
教材準備の負荷:端末(スマホやタブレット)やイヤホンなどの準備が大変かどうか 7点 →今回の方が良い(従来の方が大変)
自習時間:授業外の学習時間が増えたかどうか 7点 →今回の方が増えた
授業外での成果:月例テストや模擬試験、過去問演習など授業以外で問題を解いた時の正答率
KDの認知度:KD(KnowledgeDeliver:ナレッジデリバー)って知ってる? 7点 →知ってる
肉体的疲労度:肉体的に感じる疲労 7点 →今回の方が良い(従来の方が疲労)
精神的疲労度:精神的に感じる疲労 7点 →今回の方が良い(従来の方が疲労)
達成度:授業内での達成感の頻度・強度

【設問1の結果】

中々おもしろい事が分かりました。

(n=33)

  • 全ての項目で4点(どちらも変わらない)を上回っている
  • 即応度」が最高。教員が3人いることが最大の要因だろう。ただ、教員が1人だとしても、黒板に張り付いている従来の授業と比較すれば高い評価になると思われる。
  • 没入度」が3番目に高い。授業トライ2のアンケートでも同じようなコメントが見られた。手元の画面で映像を見てイヤホンで音声を聞くので、勉強に必要な情報が全て手の届く範囲にあり、勉強に関係ない情報が入りにくくなったためだと考えられる。
  • 達成感」が5番目に高い。
  • 理解度」について、あくまで主観評価だが、従来の授業より「理解できる量が多い」という回答が多く得られた。ただし「成果」はそれほど高くない。実際の成績との比較で客観評価もしたいところ。
  • 楽しさ」が9番目に高い。最も意外に感じた。教員が教壇に立って講義をすることもなく、学生は黙々と回答演習を進めていくだけだが、「ペースメーカーが自分」でかつ「設問を正解していく」、つまり「自分の力で設問を解いていく」ことに楽しさを感じているのではないかと思う。

【設問2】

授業への要望(授業運用(進行が早い/遅いなど)に対する要望、校舎行かなくても勉強できるんじゃ? 、もっと教員に○○してほしい、など)がありましたらお聞かせください。

【設問2の評価方法】

自由記述

【設問2の結果】

特になし

【設問3】

授業の感想(何でも結構です)

【設問3の評価方法】

自由記述

【設問3の結果】

  • 自分のペースでしっかりと理解をした上で進むことができるので良いと思う
  • とても理解ができて良いと思いました。
  • 苦手な単元に関してはどの問題もつまずいてしまうのでずっと手をあげてしまうかもしれません。
  • 図形にものすごく苦しめられていますが、先生方のおかげでなんとかまだ生き延びて頑張れています。
  • 従来の授業より、個別に先生から指導いただけるので、授業中の細かい疑問などもその場で丁寧に確認でき、とても助かっています。
  • 以前学内講座で判断推理を教えていただいたが、その時の方が分かりやすく問題が解きやすかったので今のやり方は悪くないと思うが個人的に違和感を感じ私には向いてないように感じる。
  • イヤホンを付けるなどが少々手間

感想や直接話を聞いたりすると、やはり「自分には向いていない」や「自分で動画を見るのは効率が悪いと思う。教員による一斉講義の方が効率が良い」などの意見も一部ありました。
しかし、総合的に見てこの授業形式は間違っていないと考えられるため、この授業形式を続けながら「向いていない」と捉える層にも何ができるかを探っていきたいと考えています。

項目同士の相関を調べてみました

項目が多かったので、項目同士の関係(「この項目を選んだ人はこちらの項目も選んでいる」など)を調べてみたくなりました。
結果、以下のような相関関係にあることが分かりました。

特に「楽しさ」「学習進捗度」「授業への没入度」「達成感」がそれぞれ強い相関関係にあるようです。
「没入度」と「達成感」は点数も高いので、この4つの項目がこの授業の特徴を表しているのかな、と思いました。
「この特徴が良いのかそうでもないのか」については、「楽しくて、学習が捗って、授業に没入し、達成感がある授業」を良くないと思う先生はそんなにいないのではないでしょうか。

ただ、これら4つの項目はあくまで感じ方
「では、授業手法の中のどんな要素が学生にこのように感じさせるのか」ということが気になりました。
自分で構築したこの授業手法の解像度をもう少し上げてみたくなったんです。

そこで注目したのが「選択の機会」。
この項目は4つの項目いずれとも相関が高く、かつ、授業「手法」寄りの項目だと思ったからです。

「選択の機会」がある・多い授業、つまり「自分の状況に合わせ、内容・進捗などを選ぶ機会」を作る・増やすような授業運用ができれば、「楽しさ」「学習進捗度」「授業への没入」「達成感」を感じさせたり、より強く感じさせたりできるのではないでしょうか。

今までも授業中に分岐点を作る工夫(上位層向けに高難度の設問を用意するなど)をされていた方もいらっしゃるかと思います。
ただそれは「設問演習」という括りの中での選択であって、例えば「設問演習をするか、講義をインプットしなおすか、概念説明を省略するか」というような、そもそもの括りをまたいだ選択には至らなかったのではないかと思います。

その点、今回の授業トライでは「講義動画」「デジタル化された設問」「解説動画」を整備したことで、「講義を聞く」「設問演習する」「設問の解説講義を聞く」「教員に直接質問する」など、括りをまたいだ選択が可能になりました。
その結果、従来の授業より強く「選択の機会」を感じることができたのではないかと思います。

「選択の機会」は「4つの項目」と「成績」にどう影響したか

「選択の機会」について、「4つの項目への関連性」と「成績」という2つの側面からさらに掘り下げてみます。

まずは「4つの項目への関連性」。
これはあくまで想像ですが、選択の機会によって授業が「受動的」から「主体的」に変わったことで4つの項目――「楽しさ」「学習進捗度」「授業への没入度」「達成感」が高まったのではないかと考えます。

従来の授業では選択の機会が少なく、教員の指示でそれを「せざるをえない」要素が強かった。
今回の授業形式では選択の機会が増えたことで「自らの意思で選んで行動」するようになった。
選択肢そのものは教員が用意するわけですが、その中でどれを選ぶかは学習者が決定できる。
「少なくともその選択肢の中で自分に最適であろうものを選択した」と思うはずなので、学生の中に「決意」みたいなものがあるのではないかと思います。
自ら決意しての行動であれば、没入しやすいでしょうし、没入すれば捗るでしょうし、捗ればできるようになって達成感が得られ、楽しく感じる――こういう流れなのかなと。

次に「成績」。
やはり「成績」との関連は気になるところだったので、学生さんの模試5回分の「成績平均上昇率」を算出し、再度アンケート項目との相関を計算してみました。
※昨対比でも集計してみましたが、学科の特性上、各年度の学生さんの状況があまりにも異なっており比較になりませんでした。

すると、全体的にどの項目との相関も低いものとなりました。
が、その中で最も高くなったのは「選択の機会」。
0.372と弱い相関ながらも、全く無関係というわけでもなさそうです。

むむ、これは何かありそうだ。
ということで、「上昇率」と「選択の機会」だけに絞って分布図を作成
上昇率が突出している学生が2人いたので、2人のデータは除くことにします。

2人を除くと、ますます何かありそうに見えてきます。
ここで、この手の話に強そうな元上司に相談します(この元上司は私にYouTubeを与えてくれた人物です^^;)。

すると、「無相関検定をかけて5%水準で有意かどうかやってみては?」とのこと。

……「無相関?」「検定?」「5%?」「水準?」「有意?」と、私は「?」のオンパレードに。
でも、あと少しで何かにたどり着きそうだったので、ググります。

要するに「『成績上昇率と選択の機会に相関がない確率』が5%未満であるかどうか」ということのようです。
しかし、まだ意味が分かっただけ。

具体的な手段を求めてさらにググります。
するとExcelで算出できることが分かり、早速実践。
以下が結果です(P値が確率)。

値(除く前)値(除いた後)
相関係数(r)0.37200.4807
t1.79222.3258
P値0.0875(8.75%)0.0313(3.13%)

なんと、5%を下回ったんです。
ちょっとかっこよく言うと「有意である」です。

もちろん母数が少ないということもありますし、この結果で必ずしも「選択の機会を増やすほど成績が上がる」と言い切れはしないと思いますが、個人的には何か重要なヒントを発見できた感覚があります。

今後もこういった集計・分析・考察を重ねていき、数限りない変数で構成される教育の世界で、日々真剣勝負で向き合い、だからこそ悩み、奮闘している先生や学生さんに、一筋でも半筋でも良いので光を示すことが出来たらなと思っています。

▼ウイナレッジ編集部より

若山先生の第4回では、授業の場での実践編のラストとして、気になるテーマ盛りだくさんでお伝えいただきました。
現場の先生が自らPower Automateまで活用しておられるというのは珍しいですよね。「そんなことができるんだ!?」とお思いになったMicrosoft 365ユーザーの先生も多いのでは。
連載のこれまでの記事でもおなじみの学生アンケートも今回はさらに徹底した分析で、せっかく得られた学生の学習データ、分析しないのはもったいないという気持ちになりますね。

次回は若山先生記事のラストです。
麻生塾グループが今まさに開発を進めている教育プラットフォーム「Teachare」と未来構想についてお伝えいただきます。お楽しみに!

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この記事を書いた人
若山 祐紀憲

若山 祐紀憲

学校法人麻生塾 コンテンツ推進部
麻生塾における教育ICT活用の第一人者。
専門は、公務員試験における「判断推理」「数的推理」「資料解釈」など。
麻生公務員専門学校福岡校にて教鞭をとっていたころ、面接指導がきっかけでYouTubeなどの映像配信プラットフォームに関心を持ちはじめる。2013年にホームビデオカメラから始まった授業・教材の映像化は徐々に成果につながり、株式会社麻生キャリアサポートでのICT活用教材の作成・販売へと活躍の場が広がっていく。
2020年、コロナ禍に入ると、グループ内の「遠隔授業の支援」を使命に学校法人麻生塾 教育推進部へ異動。長年の映像教育の経験を活かし、同塾内のICT教育活用を推進するとともに、自らも教鞭をとり、ICT教育活用の実践と仕組み作りに邁進。
2022年4月より現職。麻生塾グループ開発の教育プラットフォーム「Teachare」の開発・普及に取り組む。

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