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    【3】いきなり「中退したい」と言われてしまった…学生のモチベーション把握・管理はどうしたらいい?

    2021.06.21 ブログ 教務情報

    連載侑加先生のお悩み相談室

    先生に特有のお悩みから、ワークライフバランス、キャリアデザインまで。「他の学校はどうなんだろう、他の先生はどう考えているんだろう……」と思ったら、学校の現場にも詳しい侑加先生に相談してみませんか?

    今回は、学生のモチベーション把握・管理についてのお悩みです。
    問題なく学校生活を送っているように見える学生も、知らず知らずのうちに悩みを抱えて学習意欲を失っているかもしれません。
    学生のモチベーションを適切に把握し、下がってきたら引き上げられるようにするには?
    侑加先生に聞いてみましょう。

    【今回のお悩み】鈴木先生(仮名)

    今年初めてクラス担任を受け持つことになった専門学校講師です。

    入学から2か月ほどが経ち、クラスでは特に孤立している学生もおらず、授業も順調に進んできました。
    今のところ問題なくやれているなと思っていたところ、先日、ある学生から突然「中退を考えている」と告げられました。
    私にはその学生は友人たちと楽しく学校生活を送っているように見えていたので、まさに青天の霹靂という感じで衝撃を受けました。

    「このまま学校に通っていても卒業後に専門職で食べていけるか分からないし、自分はクラスメイトと比べてもあまり優秀ではないから難しいと思う。悩むだけ学費がかかっていくし、早めに決断したいと思った。」
    というようなことだそうで、たしかに「資格を取れば将来は安泰」というような分野ではないのですが、諦めるには早すぎるということを伝えてなんとか引き止めようとしているところです。
    ただ、本人はもう中退後の勤め先を探しはじめているようで……

    いつの間にそのような考えを固めていたのか、どうしたら気づけていただろうかと悩んでいます。
    今回の学生が中退することで他の学生にも連鎖していくのではという不安もあります。
    表面的には友好的に接しあえる関係でも本音を知るのは難しいということを痛感しました。
    学生の意欲、モチベーションを把握したり、盛り上げたりするにはどうしたらよいのでしょうか。

    モチベーション低めな入学生もいる現実を把握し、できるだけ目配りを

    鈴木先生は、今年初めてクラス担任を持つことになったのですね。
    まずは2ヶ月間、お疲れ様でした。
    新年度の始まりは、先生も学生も環境の変化に戸惑い、気疲れもあるものですよね。
    教科指導の時よりも、クラス全体への責任もあり、まるで保護者のような気持ちにもなります。

    4月は新生活に慣れることに必死でも、ゴールデンウィークに一息つくことで「このままで良いのか」と自分自身を振り返ったり、「高校時代のクラスメイトはどうしているか」などと周囲のことも気になったりすると思います。

    周囲と言えば、かつては幼なじみや同級生、親しい親戚などとのお付き合いを思い浮かべました。
    ゴールデンウィークやお盆、お正月休みは同窓会や食事会を行ったものです。
    しかし昨今では、コロナ禍の影響もあり、直接大勢の人と会うことが難しくなりました。
    スマホ世代の学生は、SNSで友人と連絡を取り合ったり、YouTubeを見たりして、様子を確認し、楽しむことが増えているでしょう。

    Instagramにはキラキラとした生活が映し出されています。
    自分と年齢の変わらない、一見普通の人がYouTuberとして大活躍しています。
    少し前まで、テレビで活躍する俳優やタレントは遠い存在だと感じられました。
    しかし、YouTuberはテレビタレントほどかしこまらず、ありのままの自分を表現しているようで、大勢のファンを掴んでいます。
    何者でもない自分に焦りを感じる若者は、相当数いるのではないでしょうか。

    中学生や高校生もSNSを駆使しています。
    進路選択にも大きな影響を及ぼしているでしょう。
    多くの生徒は地元の公立小学校から中学校へ進学し、高校へ進みます。
    塾の先生はレベルの高い高校を勧めますが、中学の先生は「15の春を泣かせない」ようにと、安全圏の受験を勧める傾向にあるようです。
    結果として、それほど多くない選択肢の中で、希望校かそれに近いレベルの高校に進学します。

    それでは、専門学校入学はどうでしょうか。

    入学時のモチベーションは、大きく分けて3パターンあると感じます。

    一つは、念願叶い、最高に高いモチベーションで入学してくる学生です。
    早くからオープンキャンパスに参加し、入学を決めています。

    二つ目は、他の専門学校や短大などと迷い、比較する中で、高校の先輩が学んだ実績があるだとか、先生から勧められただとかの要素の積み重ねで最終的な選択をした学生です。
    モチベーションは相応、「新しい生活を頑張り、夢を見つけたい」くらいでしょうか。
    一番多いと思います。

    最後は「大学や短大に落ちた」「東京の専門学校へ行きたかったけれど学費と生活費が足らず、地元の学校に通うことになった」「高卒では働きたくないから2年遊びたい」というパターンです。

    全員が希望に燃えて入学してきたとは言えない現実があることを押さえておく必要があるでしょう。
    全員のモチベーションが最高潮で卒業まで維持、全ての検定試験に合格、就職も希望通りに実現するのが理想なのですが、そう上手くはいかないですよね。

    まずは、入学時のそれぞれのモチベーションを把握するところからです。
    4月に、学校・コースの志望理由をシートに書いてもらい、面談を行うというのはいかがでしょうか。
    お互い忙しい中ですが、大切なステップだと思います。
    面談をもとに、学生を大まかに3パターンに分け、一番意欲の低い学生達には毎日さりげなく声がけを行い、学生生活をどのように捉えているかを把握します。
    この時「自宅が遠く通学が大変」「初めての一人暮らし」「生活のためにアルバイトを始めた」「親や家族との関係が難しい」「病気やケガ、障がいの有無」などに気を付け、目先の学習への啓発よりも「あなたという存在を大切に思っている」「健康に気を付け、しっかり食べよう」というメッセージが伝わるように言葉を選び、声がけをしたいです。

    「専門職で食べていけるか分からない」という不安に寄り添い、応援したい

    「『資格を取れば将来は安泰』というような分野ではない」と鈴木先生はおっしゃっています。
    世の中を見まわして、例えばたしかに医師免許や看護師免許は社会での重要性を実感しやすいですよね。
    しかし、例えば弁護士でも食べていけない人もいるようですし、美容師になって成功する人もいれば、辞めてしまう人もいます。

    資格が無ければスタートラインに立てませんから、頑張って国家試験に合格していきます。
    専門学校では、合格できるよう環境を整え、教育します。
    しかし、将来が安泰かと問われれば、運や縁、本人の努力や環境、時代背景など、様々な要因が複雑に絡み合っていきますので、必ず安泰とは言い切れないのが人生ではないでしょうか。

    待つことが苦手な人が増えたと実感しています。
    幼い頃からスマホを持ち、すぐに人と繋がれます。
    家庭に固定電話が無く、家族に取り次ぐ行為、親が電話口に来るまで待つ行為もなくなりました。
    テレビを見たくて我慢する必要がありません。YouTubeでいつでも見られます。
    飲食店では、お客様を待たせないよう必死です。
    「自分の時間」を最大限大切にしたい、即ち、自分を大切にしてほしいという欲求は高まるばかりです。
    「石の上にも3年」などと言えば、「そんなに待てないよ~」と笑われてしまうかもしれませんね。

    「卒業後に専門職で食べていけるか分からいない」と学生が言っているのですね。
    今、各界で活躍するプロフェッショナル達に、20歳の時を振り返ってもらったら、きっと「確実な手応えはなかった」と言うのではないでしょうか。
    なぜなら、「専門職で食べていく」ということは、他の人や会社から頼られ、仕事を請けるようになって初めて「やっていけるかもしれない」と実感することだからです。
    つまり、他者に認められる中で、ようやく自分も実感できるようになる過程を経て、プロになるということなのでしょう。
    収入は後から付いてきます。

    資格を取ってもすぐ専門家にはなれません
    臨床なり営業なり、多くの現場を踏んで、成功したり失敗したり、褒められたり叱られたりして、経験を積む中で、少しずつ希望が見えてくるのではないでしょうか。

    専門学校は、資格取得を応援し、その後の人生の土台となる部分を形成する場ですよね。
    卒業生の中に活躍する方がいる場合、オープンキャンパスで大々的に宣伝します。
    アーティストや漫画家、ゲームクリエイターや声優に学生は憧れます。
    しかし、在学生には、そうなるまでに経たプロセスがあることを説明し、理解してもらうことも大切なキャリア教育です。

    一つ飛びに大成功はありません。
    人生100年時代、働きながら学び直し、更にキャリアアップ、キャリアチェンジすることが求められています。
    時代はどんどん進みますから、20歳の学びのまま、70歳まで好きな仕事を続けるのは、難しいのが現実ですよね。

    「悩むだけ学費がかかっていく」学園・学校側で支援策を用意しましょう

    学生さんは「中退後の勤め先を探しはじめている」のですね。
    もしかしたら良いご縁に巡り合うかもしれません。

    ただ、高卒での就職なら高校の先生方が全面バックアップで指導してくれる一方で、専門学校を2ヶ月で中退した場合、ハローワークなどを頼りに一人で行うことになります。
    企業側から「すぐに学校を辞めた学生」という見方をされても仕方ないでしょう。
    なかなか思うようにいかないケースに直面するかもしれません。

    学校は、日本学生支援機構(Jasso)の認定校になっていますか。
    モチベーションが下がる一つの要因に、学費の心配があります。
    充実した学生生活を送れていれば納得して支払える金額でも、悩んでいる状況下ではもったいないと思われるのは当然です。
    せっかく用意された制度ですから、学校としては諸条件を整え、必ず認定校になりましょう。
    親御さんの信頼も得られ、高校生の入学にも繋がりますので、学園全体で整えたいです。

    既に認定校であれば、適切に紹介し、手続きを進めましょう。
    もし何らかの理由で奨学生になれないのでしたら、学園全体の奨学金支援制度を検討しましょう。
    今後創設を検討するのも良いですね。

    資格奨励金制度も設けたいです。
    特定の資格取得により、翌年の授業料免除、半額免除、三分の一免除なども想定できますが、現金での給付も喜ばれます。

    また、一人暮らし用の寮の完備や学食の充実、昼食用のお値打ちなお弁当販売、電子レンジ、ポットにお湯を準備するなど、多額の費用をかけず、学生の日々の生活を支える工夫と配慮をすることも大切です。
    希望者に朝ご飯を用意する学校もあります。
    モチベーションアップには、費用の心配をさせないこと、安心できる食生活、休める場所、心身の健康が欠かせません

    クラスメイトと比較する/されるつらさに配慮を

    学生の気持ちとして「自分はクラスメイトと比べてもあまり優秀ではないから難しいと思う」ということがあるのですね。

    Facebookでいいね!をカウントしない仕組みが導入されると話題になりました。

    合格率をクラス対抗で競う学校の中に、成績優秀者を壁に貼り出すこともありますね。
    私立の進学高校では、300名分の成績順位を貼り出し、不登校が増えたという例もあります。

    学生同士の情報交換もあり、「受かった、落ちた」などは明白になるでしょう。
    しかし、18歳までに培った基礎学力、勉強方法などはあらゆる学習の基盤となっており、すぐに逆転はできません。
    下位の学生には、補習課題を与え、細やかに指導する以外に方法はなく、「頑張れ頑張れ」と伝えるだけでは本人もどうして良いのか分からないというのが本音でしょう。

    成績優秀者を貼り出すことによって優秀者のほうもプレッシャーを感じ過ぎてしまう場合があり、友人関係を上手に築きにくくなる側面もあります。
    就職指導も同様で、クラスメイトの内定を廊下に掲示することは「自分が落ちたところに受かった友達」を確認することになります。

    それぞれの学びや伸びを大切にしたいです。

    一方で、頑張らせないと合格できない学生のために、先生側の細やかな働きかけが必要ですよね。
    小さな成功体験を積み重ねていくうちに自信が出てきます

    たとえば学生が何かの試験の3級に合格したら、合格したことだけでなく、合格までの学びの過程を認め、褒め、自己肯定感を育みたいです。
    合格の結果だけを褒めると「2級は受からなかったらどうしよう」と心配する繊細な学生もいるでしょう。

    「努力が実を結ぶという過程を温かい気持ちで見守ってくれる先生がいる」
    「何かあったら相談すればいいんだ」
    こうした気持ちが安心に繋がります。
    何を認め、褒めるかという点で、先生方の観察が非常に大切ですね。
    心がじんわり温かくなると、自然とやる気も湧いてくるものです。

    伴走者として学生が幸せになれる選択を一緒に考える

    将棋の藤井聡太二冠が卒業間近の1月末に高校を中退した際、師匠も高校の先生方も「残念だ」「もったいない」という反応を示しませんでした。
    むしろ「今まで両立をよく頑張った」という論調でした。
    棋士として立派な実績を上げる彼を尊重しているからですね。

    中退して全力投球できる仕事があるか、完全に方向転換し、例えばYouTuber養成学校やお笑い養成所に入るなどの具体的な目標があれば、若い学生を送り出したいと思います。

    かつて「卒業年次までは中退者を出さないように」「納入される学費が減る、学校経営に影響する」と管理職に言われた経験があります。
    「大学全入時代」かつ少子化の今、学校経営は大変です。
    しかし、担任教師が中退を考える学生と向き合うとき、「学園収入が減る」「ボーナス査定に関わるかも」などと考えるべきでしょうか。
    子どもは、保育園時代から各学校、ピアノの先生やスイミングインストラクターを含め、大勢の指導者に習ってきています。
    先生を見るプロなのです。
    先生が保身のために学生を引き留めようとすれば、すぐに見抜かれてしまうでしょう。

    学生さんは、専門職志望としての理想は高かったけれど、自分の実力では難しいかもしれないと感じ、不安になっているのではないでしょうか。
    輝いている仲間を教室やSNSで見て、焦っているのではないでしょうか。
    中退を迷う自分を肯定する理由を探し、優秀でない事や学費を持ち出したのかもしれません。

    中途半端な中退は、その後の困難との向き合い方や人生設計に影響を及ぼすことになるでしょう。
    先生が強い力で導くというより、ここは伴走者となることをお勧めします
    鈴木先生の温かく信頼できる人柄を、他の学生も受け止めます。
    仮に中退をしても、「他の学生にも連鎖していくのでは」と不安にならなくて大丈夫です。
    学生の幸せを願う絶対の心に自信を持ってください。

    大人のモチベーションもアップダウンします。
    禁煙が守れなかったり、ダイエット中なのにケーキを食べてしまったりします。
    やる気の不安定な学生もいますが、大きな愛情で包んであげてください。
    先生ご自身も美味しいご飯を食べて、好きな音楽を聴いて、いつも笑顔でいてくださいね。

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    この記事を書いた人
    侑加先生

    侑加先生

    一般企業を経て、専門学校に正教員として勤務。
    現在は、企業・大学講師、小中学生の塾経営。
    趣味は、お笑いと高校野球、旅行。一児の母。

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