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初年次教育とは?注目される背景や実施目的・具体的な内容を解説

2023.04.14 (最終更新:2023.12.14) 全般 学校運営

大学や専門学校などの高等教育機関で注目されているのが、初年次教育です。

専門学校の先生方の中には、初年次教育がどういったものを指すのかどのようなプログラムを実施したらよいのかなど、疑問に思う方も多いのではないでしょうか。

そこで、本記事では初年次教育の概要と導入された背景、さらに実施の目的や内容について詳しく解説します。
専門学校でも取り入れやすい初年次教育プログラムも紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。

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「初年次教育」とは何か?定義と重視される背景

初年次教育とは、高等教育機関へ進学した学生に対し、進学後の学びに適応できるように実施されるプログラムのことです。
高等教育機関へ入学後、最初の年に実施されます。

近年、初年次教育への関心が高まり、多くの高等教育機関で実施されるようになりました。
初年次教育が重視される背景として、以下の3つの側面があると考えられます。

  1. コミュニケーション能力などの実践で要求される力が社会的に強く望まれるようになったこと。
  2. 少子化による学生分母の減少を受け、退学者を出したくないという先生・学校としての願いがあること。
  3. 先生方の長年の指導経験により、「初年次にもっとこういうことを教えていれば…」という想いが強くなっていること。

このうち、1つ目、2つ目の側面に対し、

  1. 短期間の教育で成果が出るものではないため、初年次から対処しよう。
  2. 退学の原因を考えると、基礎学力が不十分であったり、専門学校で学ぶ目的が明確でなかったりするなどの入学後適応不全に早期に対処しよう。

という狙いがうかがえます。

リメディアル教育との違い

リメディアル教育とは、高校卒業時までに習得すべき各教科の知識を学び直し、高等教育機関での学びに必要な基礎学力を補う教育のことです。

リメディアル教育と初年次教育の違いは、それぞれの学習内容です。
リメディアル教育は、各教科における基礎科目の学び直しが主な内容になります。
一方、初年次教育は高等教育機関の学びに向けた予習や準備が主な学習内容です。

入学前教育との違い

入学前教育とは、高等教育機関への進学が決まった学生に対し、進学前に実施されるプログラムのことです。
主にAO入試や推薦入試などで早期に合格が決まった入学予定者を対象に、高等教育機関での学習へのスムーズな移行を目指して実施されます。
その内容は、高校までの学習範囲の学び直しの場合もあれば、予習の場合もあります。

入学前教育は学生が入学する前に行われるのに対し、初年次教育は入学後の最初の年に実施されます。

初年次教育の実施目的

初年次教育の実施目的は、主に「社会で求められる力の素地形成」「退学予防」「学力低下への対策」の3つです。
ここでは、それぞれの目的の詳細について解説します。

社会で求められる力の素地形成

目的の1つは、社会で求められる力の素地を形成することです。

現代社会ではグローバル化やITの発展、働き方改革などの影響もあり、高いコミュニケーション能力や課題解決力などが必要不可欠です。

これらの能力は単発的な教育で身につくものではありません。
専門学校教育のなかで社会の要求に応じるためには、初年次から段階的・計画的な教育を特別なプログラムとして行っていく必要があるのです。

退学予防

つづいて、退学防止についてみていきます。

厚生労働省の資料によると、2021年の日本の出生数は約81万人です。
2001年の約117万人に比べると、31%も減少しています(※1)。

これに伴い専門学校への入学者数も2021年は約27万人で、2001年の約31万人に比べると13%減少しています(※2)。
対策を講じなければ学生数が減少します。

さらに、退学者が出てしまうと先生も悲しい気持ちになるのはもちろんのこと、学校経営にも悪影響が出ます。
このことから、初年次教育では高校から進学先への円滑な移行が目指されます。

(※1)参考:厚生労働省「人口動態調査
(※2)参考:文部科学省「学校基本調査

高校から進学先への円滑な移行

小学校から中学校に上がると、学習の難易度や環境の変化などの心理的ハードルから不登校などの問題が増えがちです。
この現象は中1ギャップと呼ばれます。

これは、専門学校でも同様です。
肉体的にも精神的にも大人になっていますが、それ以上に自身の人生がかかっているというプレッシャーが重くのしかかり、不安な気持ちが強く出る学生もいます。

そのため、「高校から進学先」「基礎学習から専門的な学習」へのつながりや「学生と進学先の教職員」との結びつきを強固なものにし、専門学校生活への適応が少しでも楽になるように新入生を支援することが望ましいです。

学力低下への対策

初年次教育には、入学してくる学生の学力低下に対応する目的もあります。

AO入試や推薦入試を行う専門学校も多く、入学してくる学生の基礎学力や学習意欲が不十分であることが問題になっています。
学年が上がるにつれて学習の難易度も高くなることから、初年次教育の実施によって学生の基礎学力向上や学習への動機付け、さらには学習の習慣化が目指されているのです。

初年次教育の主な内容

初年次教育の内容は、主に「スタディスキル」「スチューデントスキル」「アカデミックスキル」の3つに分けられます。

スタディスキル(レポート・論文の書き方など)

スタディスキルとは、学びを深めるために必要となる基本的なスキルのことです。
スタディスキルは高等教育機関に限らず、社会のあらゆる場面で求められます。
新入学生は初年次教育によって、学ぶ術を身に付けるのです

スタディスキル習得のために、以下のようなことを初年次教育で指導します。

  • 授業でのノートの取り方
  • テキストの読み方
  • 図書館やデータベースの利用方法
  • 要約の仕方
  • 自分の考えのまとめ方
  • レポートの書き方
  • プレゼンテーションの仕方

スチューデントスキル(学生に求められる一般常識や態度)

スチューデントスキルとは、学生に求められる一般常識や態度のことをいいます。

高校までの教育は、先生の話を一方的に聞く受動的な学びが中心です。
対して専門学校では、能動的な学びが中心になります。
つまり、学生には主体的に学ぶ態度や習慣が求められるのです。
初年次教育では、専門学校での主体的な学びに必要な知識やスキルを学生に指導します。

スチューデントスキル習得のために、以下のようなことを初年次教育で指導します。

  • 自己管理の方法
  • 時間管理の方法
  • 学習管理の方法

アカデミックスキル(専門学校での学習への積極的な適応)

アカデミックスキルとは、専門的な学習や研究に必要なスキル・能力を意味します。
高校までの教育とは異なり、専門学校での教育ではいかに学生を学びに適応させられるか、そして学習へのモチベーションを維持・向上させられるかが大切です。
学生は、初年次教育で専門学校での専門的な学びに向けた準備を行います。

アカデミックスキル習得のために、以下のようなことを初年次教育で指導します。

  • 日本語力・文章力・論述力の養い方
  • コミュニケーション能力の高め方
  • 思考を整理し、表現する方法
  • 情報収集・活用の仕方

初年次教育を実践する上での課題

初年次教育にはあらゆるメリットがある反面、カリキュラムの位置付け担当者の選定が難しいといった課題も存在します。
それぞれ、具体的に解説します。

カリキュラムの位置付け

初年次教育の実施にあたっては、カリキュラムをどのような位置付けにするのかを明確にしなければなりません。
なぜなら、最適な位置付けは学校ごとで異なるためです。

例えば、ガイダンスではなく通常授業として位置付ければ、半期もしくは通年かけた反復学習が可能になるため、知識の定着が図れます。
しかし、このメリットはあくまで一般的なものにすぎず、果たして全ての学校に当てはまるのかは分からないのです。

通常授業として位置付けるのであれば単位を認定した方が良いのか、単位認定とした場合、必修科目にする必要はあるのかなども学校ごとに答えは変わってきます。

初年次教育の扱いや位置付けに関しては、学校の規模・カリキュラム・制度など、各校の実情を踏まえて考えることが重要です

担当者の選定

初年次教育の指導担当者を誰にするのかも課題の1つです。

担当者の選定が課題となる理由は、初年次教育を専門とする先生がほとんどいないことにあります。
つまり、初年次教育の担当者に関しても1つの正解はなく、あらゆる可能性が考えられるのです。
具体的には、専任の先生に任せるのか、もしくは非常勤講師に任せるのがよいのかについて考えなければなりません。

カリキュラムの位置付け同様、担当者の選定についてもそれぞれの学校に合った形で選定することが大切です

専門学校でも取り入れやすい内容の初年次教育プログラム3つを紹介

専門学校でも取り入れやすい初年次教育プログラムとして、大学で実際に行われている初年次教育の内容を紹介します。

看護系専門学校「LTD学習」

ある看護系専門学校で行われたのは、LTD学習を取り入れた初年次教育です。
LTD(Learning Through Discussion)学習は協同学習の一種であり、学生同士の話し合いを中心に学ぶことで、能動的かつ協調的な意識や態度を育む学習法のことを指します。
1960年代にアメリカで考案されました。

一般的には、以下の流れで実施されます。

課題の提示 ⇒ 予習 ⇒ 授業内での話し合い ⇒ メンバー同士の相互評価

本看護系専門学校ではLTD学習を2日間の集中講義で初年次教育に取り入れたことにより、学生の協同精神が育まれ、ディスカッションスキルが向上しました。
また、学生が抱えるコミュニケーションにおける不安が改善したという効果も実証されています。

専門学校という新たな学びの場に適応し、学びに対する自主的かつ協調的な意識をもたせるためには、LTD学習を用いた初年次教育が効果的です。

参考:久留米大学「新設看護専門学校における学びの場づくりを意図した初年次教育

玉川大学「FYE『一年次セミナー101』『一年次セミナー102』」

玉川大学でFYE(First Year Experience:初年次教育)として実施しているのが「一年次セミナー101・102」です。

「一年次セミナー101」では、学問の重要性や学ぶ姿勢、レポートや論文の書き方などについて学びます。
「一年次セミナー102」では、目標の立て方や社会人に必要な物事の考え方を学び、コンピュータの利用法も習得します。

分野を問わず学校生活で必要となる心構えや知識、卒業後も役立つスキルの習得に重きが置かれており、専門学校でも初年次教育として取り入れたい内容です。

参考:玉川大学「初年次教育

徳島大学「SIH 道場」

徳島大学では、学修の基盤となる知識や態度を身につけるために、「SIH道場〜アクティブ・ラーニング入門〜」を1年次前期に全学部で必修にしているそうです。

「SIH道場」は専門分野の早期体験ラーニングスキル(文章力・プレゼンテーション力・協働力)の修得学修の振り返りの3つを目標として掲げています。
具体的には、先端研究の見学や体験の機会が用意されているほか、レポートの書き方、学修の振り返りの方法などをテキストに沿って学びます。

学生に早期にアクティブ・ラーニングの姿勢を身につけさせることで、専門学校における学びもより深いものとなるでしょう。

徳島大学高等教育センターのWebサイトでは、SIH道場のテキストが公開されています。
ぜひ参考にしてください。

参考:徳島大学高等教育研究センター「SIH道場」 / 徳島大学における初年次教育「SIH 道場」の取組とその成果

まとめ

初年次教育は、新入学生が高等教育機関での学びに適応できるように、また社会人基礎力を養うことで社会への要請に応えることを目的として、実施されているプログラムです。
社会性の乏しさや、高校から進学先へのスムーズな移行、学力低下問題や退学者数増加への対策として、初年次教育は行われています。

本記事の内容を参考に、初年次教育の実施を検討されてはいかがでしょうか。

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