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学生に「社会人基礎力」を身に付けさせるには?

2022.05.16 (最終更新:2022.10.17) 記事 教務情報

連載侑加先生のお悩み相談室

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今回は、「学生に『社会人基礎力』を身に付けさせるには」というお悩みです。
経済産業省が2006年に提唱した「社会人基礎力」
学生を立派な職業人に育てて社会に送り出したい専門学校としては、専門分野の知識・技能と並んで学生に身に付けさせたい能力だと思います。
その重要性は近年ますます高まり、この語を耳にする機会も多くなっているのではないでしょうか。

「社会人基礎力」とは具体的にどんな力を指すのか?
採用側の企業は何を求めているのか?
その力が付くよう学校が学生にしてあげられる指導とは?……
侑加先生に聞いてみましょう!

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【今回のお悩み】村田先生(仮名)(男性・30代前半)

私は専門学校の販売・ビジネス学科で教員をしています。
入学式が終わり、いよいよ新年度がスタートしました。

近年「社会人基礎力」というワードをよく聞きます。
当校でもその力を身に付けることを一つの目標にカリキュラムを組んで授業をしています。

ただ、「社会人基礎力」が具体的に意味するものについて、教員全体、学校全体で同じイメージを共有できているかはあいまいです。

また、具体的な個別の能力、例えば企業が新入社員に求める能力として毎年上位にランクインしている「コミュニケーション能力」や「主体性」についても、学生の力をできるだけ伸ばしてあげたいと日々試行錯誤しているのですが、具体的な指導方法を確立できていません。

企業の人事担当者の方とお話をする機会もたまにありますが、学校側と企業側で「社会人基礎力」の捉え方に少しズレが生じているような気もしています。

就職後に即戦力として活躍できるスキルや思考を在学中に身に付けさせるための指導ポイントがもしあれば、アドバイスをお願いしたいです。

「自己肯定感を高め『主体性』を伸ばす」が「社会人基礎力」のベース

新年度スタートに相応しいご相談をいただき、ありがとうございます!
30代前半の村田先生は、社会人歴も10年となり、学生・教員・学校・企業を俯瞰的に捉えていらっしゃる様子が伝わってきます。
卒業生を迎えてくれる就職先企業側の視点も考慮されたいという、広い視野が素晴らしいですね。
キャリアを積み重ねてこられたからこそ持てる視点ではないでしょうか。

今年の4月1日より、「18歳=成人」と法律が変わりました。
18歳というと、多くは高校生です。
有識者の中には、「18歳はまだ子どもだ。事件に巻き込まれたら大変だ」「諸外国と同様に、18歳から大人とすべきだ」……と様々な意見があり、どちらも正しいように感じます。
いずれにしても、専門学校生は、既に成人しているということになりますよね。
今までよりも、社会全体が「大人」としての自覚や行動を求めることになるでしょう。

「『社会人基礎力』が具体的に意味するものについて、教員全体、学校全体で同じイメージを共有できているかはあいまい」とおっしゃるのは、どの学校においても同じではないでしょうか。
「社会で働く大人が持つべき基礎的な力」は、業種や職種により違うと思うからです。
しかし、どのような「力」を養成するにしても、学生が「生きるエネルギー」「人生をより良いものにしようという意欲」に満ちていることが何より大切だと思います。

「企業が新入社員に求める能力として毎年上位にランクインしている『コミュニケーション能力』や『主体性』についても、学生の力をできるだけ伸ばしてあげたいと日々試行錯誤」されているのですね。
先生の情熱は、学生に伝わっているはずです。

主体性」を伸ばすのは、一朝一夕にはできませんよね。
自ら学ぶ・自ら動く・自分の人生を主体的に生きる力」をどのようにして育めば良いのでしょうか。

コロナ禍に入る前から、企業の方によく指摘されたことがあります。
「今時の新人は反応が弱い。分かっているのかいないのか把握できない」ということです。
コロナ禍でのマスク生活も3年目となり、今ではその傾向も更に進んだ感があります。
マスクで口元が見えない状態では、目の表情や頷くアクションが無いと、相手に反応が全く伝わりません。

ここで、人間の生育について考えてみます。
「赤ちゃんをお世話する両親や祖父母などの大人が大勢いて、赤ちゃんが泣く前にミルクを与え、おむつ替えをすると、赤ちゃんが泣かなくなる」と育児本で読んだ覚えがあります。
泣きわめく赤ちゃんを放っておくのはネグレクトで、あってはならないのですが、「泣く」という意思表示は、赤ちゃんにとって大事な成長プロセスです。
言葉を話せるようになるまでの微笑や泣く行為は、貴重なコミュニケーションです。

人間の「反応のしやすさ」は、幼少期の体験に左右されるということが、最新の脳研究で分かった※そうです。
周囲の大人が子どもに過干渉になり、手を掛けすぎると、子どもは自分から意思表示をしなくなります。
周りが結論を用意してくれるので、自分で決める必要がなくなり、上手くいかなくなった時は、周囲のせいにします。

※参考:
工藤勇一・青砥瑞人『最新の脳研究でわかった!自律する子の育て方』(SBクリエイティブ)2021

同書では、定期テスト制度を廃止して話題になった麹町中学の実例が分かりやすく書かれ、子どもに自己決定を促す「3つの言葉」が紹介されています。

  1. 「どうしたの?」(「なにか困ったことはあるの?」)
  2. 「君はどうしたいの?」(「これからどうしようと考えているの?」)
  3. 「何を支援してほしいの?」(「先生になにか支援できることはある?」)

これらは、子どもの置かれている状況を言語化してもらい、自分の内面に意識を向ける訓練となり、子どもの意思を自ら確認し、問題解決のための方法を考えてもらうプロセスです。
そして、あくまで自分の人生を生きるのは子ども自身であり、教師は支援役としてサポートする意思を伝えます。
これが子どもの心理的安全性を高め、自己肯定感を高めていくということです。

教員も人間ですから、中々やる気を見せない学生に対しては、「3月の検定に落ちたら卒業できないぞ」などと脅迫にも似た動機付けをしてしまいたくなりますよね。
先回りして、遅れている分の大量のプリントを渡し、「お願いだから勉強してくれ」と懇願してしまったりします。

しかし、主体性を育むことを念頭に置けば、

  1. 「3月の検定に合格したい、卒業したいけれど、中々やる気が出なくて困っている」現状を認識させ、
  2. 「やっぱり3月の検定に合格したい」と意思表明をさせ、
  3. 「遅れている学習を支援してほしい」と言語化させると良いのですね。

自らの意思で検定合格を勝ち取る、主体的な取り組みを応援するような関わり方をしていきたいですね。

コミュニケーション能力アップは、挨拶と「読む・書く・聞く・話す」4技能トレーニングを

「自らやってみよう!」と主体的に取り組めるエネルギーがあれば、コミュニケーション能力もどんどんアップします。

「コミュニケーション能力」にはさまざまな要素がありますが、「明るく挨拶」は必須でしょう。
しかし、実践するのは容易でありません。また、コロナ禍ではさらに難しくなっています。

社員研修や学生を対象とした一斉講義の現場で、教卓にいる教員の前を受講生が素通りしていきます。
「あぁ」という感じで目礼していく人もいますが、「おはようございます」と笑顔で言える人は僅かです。
皆、悪気はありません。開始前に挨拶して良いのか迷うということもあるでしょう。
マスク生活が長引き、顔全体の表情を動かす機会が減っている今、目礼をするにも真顔のままになりがちです。
しかし、真顔のままだと、相手は自分が歓迎されていないと感じるでしょう。

コロナ禍、すでに丸2年以上も対面によるコミュニケーションの機会が極端に減ってしまっているということは考慮しつつ、「教員が教卓にいたら無視せず、笑顔で一声掛けましょう」と伝えたいです。
教員の側も、不愛想な学生にも必ず声を掛けましょう。
家族の話す言葉を聞いて子供が言葉を覚えるように、教員が明るく挨拶しつづければ、その声や態度がインプットされ、やがて学生がアウトプットするようになります。
「若い学生が頭を下げるのが普通でしょう」などという昭和時代のスパルタ的な考えは今の時代には合いません。
教室は安心できる空間であり、自分を認めてくれる教員がそこにいる」という安心感が、自己肯定感を育みます。

* * *

研修シーズンには、「新聞の読み方講座」が話題になります。
新聞やテレビニュースを見ず、SNSから情報を得る20代が多いですが、SNSでは目に入る情報が自分の興味関心分野に偏る傾向があります。
新聞の場合、自分が興味を持たない記事も掲載されているので幅広い話題に接することができ、お客様との会話などにも役立ちます
高齢化社会で、お客様には人生の大先輩が多いですから、共通の話題を持つためにも新聞を読む習慣をつけるのが良いでしょう。
戦争など暗い話が続く昨今ですが、少しずつ地元のお祭りやスポーツイベントも再開されています。
明るい話題に触れると気分も明るくなりますよね。

* * *

研修の打ち合わせをしていると、仕事を教える立場の先輩社員から「新人が何度も同じことを言わせるので苛立つ」という話が出ます。

チャットなど文字ベースのコミュニケーションに慣れている学生の中には、話を聞きながらメモを取るのが苦手という学生も少なくありません。
板書した内容を許可なくスマホで撮影する学生もいます。
しかし、お客様との商談中に、勝手に録音や撮影はできません。
話を聞く中で「これは大切だ」と気付き、自らメモをする必要があります。
また、メモを取っている様子を見たお客様は「自分の言ったことを大事だと思ってくれた」「一生懸命取り組んでくれる」と感じ、信頼を寄せてくれるでしょう。

* * *

いま、多くの場面で「書くこと」は「パソコンを打つこと」に置き換わっています。
スマホ全盛の時代に、パソコンスキルは貴重です。
即戦力となるには、Word・Excel・PowerPointは一通り使えるようにしたいですね。

とはいえ、ビジネスの場では、手書きの文書も意外と多くあります。
上司へ渡す伝言メモ、fax送付状や郵送文書に添えるカバーレター、年賀状に添える一言、一筆箋や付箋に一言など、心遣いを伝えるのに最適です。
学生にとって郵便物を出す機会は少ないと思いますが、封筒の宛名書きの仕方などは押さえておきたいところです。

スマホで小説も漫画も読む学生の文字は年々小さくなり、筆圧も弱くなっているようです。
読む側の立場になって、大きく濃く書くことも日常から意識させたいですね。
文字から若々しさ、元気さを伝えるのにもいいですよね。

敬語を交えたコミュニケーションを、日々笑顔で行いましょう

敬語を苦手と感じる学生が多くいます。
小学校から簡単な敬語を習い始めますが、実践する機会が少ないと、自分の話す言葉として身に付きづらいものです。
不慣れな敬語では表現が硬くなり、自分を上手く出せないという悩みも聞きます。

敬語に慣れるには、たくさんのインプットとアウトプットが必要です。
教員が敬語で授業をしたり、学生同士敬語限定で会話する時間を設けたりすると面白いと思います。
自然と笑顔になり、ユーモアも生まれると期待できます。
教員も「あなた」と指名せず「田中さん、佐藤さん」と呼び、複数人に対しても「おまえら、あんたら」などは厳禁で「皆さん」と呼べば、自然に敬意が伝わるでしょう。
学生と和食の作法を実習した際、同級生に対して「もずく、食った?」と聞いている学生がいたので、「『もずくを召し上がった?』でしょう」と指摘したら、大笑いがおきました。
ついついお説教のようになってしまうのですが、学生の共感を得ながら、楽しく実践する仕掛けを作っていきたいと思います。
箸遣いも言葉遣いも、姿勢も美しくなっていきます。

物を大切に両手で扱い、相手に向けてアイコンタクト、一言添えて渡す

社会人になると名刺交換をします。
学生時代から、1枚のプリントも大切に両手で扱う、テキストなどは胸の高さで持つことを実践したいです。
相手に書類を渡す時は、自分の方を向いている書類を時計回りにして相手に向け、書類を見ず、相手とアイコンタクトをして、一言添えます
ペンやハサミ、傘などを渡す練習もしてみると、日常の振る舞いから見直すきっかけになるでしょう。

当事者意識を持って「謝れる」のは、大切なマインドとスキル

遅刻をしてくる学生の中に、電車の遅延証明書を出しながら謝れる学生がいました。
本人に過失がないのに偉いなぁと感心します。
事情はどうあれいったん授業の流れを止めるわけですから、全体への配慮もあるように感じられました。
一方、電車遅延で遅刻させられた被害者だという表情の学生や、帽子も取らずにスマホ片手に平然と遅刻してくる学生もいます。

働いていると、クレームを受けることがありますよね。
同僚が犯したミスでも、やはり第一次応対者はお詫びの言葉を述べます。
謝れる」というのは、素直な心の表現であり、時として全体への配慮や責任感を表す重要なスキルといえるのではないでしょうか。
大人に守られてきた子どもが子どもを守る側の大人になり、消費者として「もてなされてきた側」から供給者として「もてなす側」になるという視点の転換が必要です。

社会人基礎力」は、まだまだ奥深いものですよね。
これからも村田先生と一緒に考えていきたいと思います。
読んでくださった先生方、良いアイディアがあったら、是非お聞かせくださいね!

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この記事を書いた人
侑加先生

侑加先生

一般企業を経て、専門学校に正教員として勤務。
現在は、企業・大学講師、小中学生の塾経営。
趣味は、お笑いと高校野球、旅行。一児の母。

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