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年上の学生に「先生」としてどう接したらよい?

2022.12.12 記事 教務情報

連載侑加先生のお悩み相談室

先生に特有のお悩みから、ワークライフバランス、キャリアデザインまで。「他の学校はどうなんだろう、他の先生はどう考えているんだろう……」と思ったら、学校の現場にも詳しい侑加先生に相談してみませんか?

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今回は、「年上の学生への対応」についてのお悩みです。
キャリアップや学び直しのため社会人経験のある方が専門学校に入学するということも増えてきました。もちろん一学生として接することは重要ですが、自分より年上、さらにキャリア経験も豊富な学生となると、戸惑う方も多いですよね。

他の学生とのバランスを取りつつ、先生と学生としてどう接していくべきか……侑加先生に聞いてみましょう!

【今回のお悩み】石田先生(仮名)(男性・20代)

福祉系の専門学校で教員をしてします。
ここ数年、社会人経験のある方の「学び直し」での入学が増えてきています。
一度は一般企業に就職して数年働いたものの、資格を取って専門職に就きたいという方や、子育てがひと段落したので再就職のために資格を取りたいという方など、背景も様々です。

もちろんすべての学生の夢を応援したいと思っていますが、私自身が20代後半のため、30代、40代の学生との接し方に戸惑うことがあります。
たとえば、私は学生との会話ではほとんど敬語を使いませんが、年上の学生には敬語を使ってしまいます。差別というわけではないものの、差をつけること自体不快に思う学生がいるのではと心配です。

もし、年上の学生と接する際のポイントなどがあれば、ご教示いただきたいです。

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専門学校の先生は、多様な学生に接し、指導する時代ですね

石田先生、ご相談をありがとうございます。
20代~30代の頃、私も本当に悩みました。

転職セミナーの講師を引き受けた際、大手電力会社の総務部部長として定年退職された男性が、受講生としていらっしゃいました。
ハローワーク経由のセミナーで、その一部を担当したのですが、履歴書を拝見し、「私が何を指導したらよいのかしら、相手から『小娘が生意気なこと言ってる』と思われないかな」と心配しました。
18歳~20歳の学生指導は、数年経験していましたが、60歳の方が受講生というのは初めてだったのです。

当時、ハローワークの委託を受けるセミナーは、退職者が再就職を本気で目指して受講する場合と、何かの講座で学習すると交通費などの支給が受けられるため、有意義な時間を過ごしたいという気持ちで受講する場合がありました。
つまり、切羽詰まって再就職先を探しているわけではないということです。
定年退職の方は、後者でした。
再就職を目指さない「年上の学生」に苦慮しました。

一人の若者として、謙虚さを持ちつつ、指導科目についての予習を欠かさないように心掛けました。
質問が出た場合には、答えられるように予習に時間をかけ、周辺知識についても広げて調べ、過去の質問例をまとめておきます。
すると、少し安心するのですね。
時代は少しずつ変わっていきますから、今の時代に適した理論と実践例を把握しておくことは、自身のスキルアップに繋がります。

最初の挨拶からクラスの温かい雰囲気作りに努めたことを覚えています。
確かに「昔はこうしてた、今は違うんだな」という趣旨の発言をされることはありました。
しかし、信頼関係ができてくると、その方に様々な事例を出していただくなど、部分的には指導役を依頼するよう授業を構成していくことができました。
妙にライバル視したり、競い合ったりしないで、講師が常に上でいなければならないと気負い過ぎない方が上手くいくこともあるのだなと感じたものです。

年上の受講生の中には、男女を問わず、「講師のあなたは、どの程度?」と、けん制するような視線を向ける方もいます。
特に、年齢の近い同性同士は厳しいように思います。
30代の頃、セミナーに伺った際、団体の理事さんに「新聞は5紙くらい読んでるの?」と言われたことがあります。
これは、「講師として人前に立つ以上は、それくらいの勉強をして当然ですよ」という叱咤激励です。
でも当時は、「そんなの無理よ~、意地悪言うなぁ」と不愉快でした。
一歩下がって、俯瞰の目で見て捉えるというのは、なかなか難しいことですね。

18歳人口の減少、専門学校はリカレント学生の受け入れで成り立つ時代に

2022年、出生数は前年に比べ、5.1%減の77万人前後となる予想だそうです。
婚姻数も、「結婚したら、子どもをもつべき」という考え方も減っているそうです。
今後も赤ちゃんが増える見込みは立ちません。
こうした傾向が続きながら、18年後、専門学校入学生は減っていると考えられます。
既に、大学全入時代と言われていて、地方の私立大学は経営が厳しいことが話題になっています。
18歳を専門学校と大学が奪い合う時代が長く続いてきたかもしれませんが、奪い合うことさえ無理な時代に突入しているということですね。

参考:文部科学省「18歳人口及び高等教育機関への入学者・進学率等の推移

2025年、団塊の世代(戦後のベビーブーム世代)が全員、後期高齢者になります。
2040年問題をご存知でしょうか。
団塊ジュニア世代が65歳以上の高齢者になります。
この頃、日本の高齢化率はピークを迎えると予想されています。
老々介護もますます進んでいくのでしょうね。
こうした時代背景からも、福祉系専門学校で学びたい方は、増えるでしょう。
福祉の知識は、誰の人生も助けることに繋がります。
18歳人口は減っていきますから、逆にリカレント学生を増やさないと学校経営は難しくなると思われます。

社会福祉士の免許取得を目指して入学する学生は多いでしょう。
さらに医療系の資格として、看護師や保健師、救急救命士、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などを目標にする場合もあると思います。
いずれも難易度が高いですが、一生使える国家資格で、専門職としての就職を優位にしてくれます。
病院や介護施設など、就職先も多岐に渡り、今まさに時代に求められています。

15年前、保育系の専門学校に大学院修了の学生がいました。
13年前、福祉系の学校で、「介護施設で働いていたが、資格を取得し、安定的な給料を得たい」と入学してきた学生に出会いました。
リカレントは、今までにもある事でしたが、今後ますます増えていくでしょう。
そして、学校側も増やしたいと考えているでしょう。

石田先生が、年上の学生指導に対し「私が経験を積み年齢を重ねてからの対応のほうが、お互いにとってよいように思います」というのは、その通りかもしれません。
しかし、2023年度入学生にリカレント学生が複数いれば、待ったなしの状況になるのではないでしょうか。

今春、地元の商業科高校と普通科高校が合併され、総合科として再スタートを切りました。
他にも、工業科と普通科が合併、近隣の普通科高校2校も統合されています。
少子化の影響を受け、高校数が減ったり、クラス数が減ったりしているのですね。
すると、必要な先生の数も少なくなります。
定年退職による自然減もあるそうですが、勤務高校が遠くなってしまい、転職した先生もいると聞きます。
ただ、転職も簡単でなく、片道2時間半かけて通勤せざるを得ない先生もいるそうです。

20代の石田先生には、無限の可能性があります。
成功も小さな失敗も経験し、学校にとって「なくてはならない先生」になっていただきたいと思います。
上司も先生が苦労したり、工夫したりしながら、年上の学生と向き合っている姿を見守ってくれます。
ご自身から、年上の学生がいるクラス担任を外すように相談なさるのは、もったいないと感じます。
今が飛躍のチャンスと捉え、「どうしたら上手くクラス運営できるか、教科指導できるか」を考える方にエネルギーを使われてはいかがでしょうか。

学生指導のベースを敬語にするという効果

福祉の現場に伺うと、介護者は施設利用の方に対して、「おじいさん・おばあさん」とは呼びかけていません。
利用者の家族ではないので、「佐藤さん・鈴木さん」と話しかけ、同姓の方がいる場合は、本人の希望により、「たけおさん・めぐみさん」のように名前で呼ぶケースが多いようです。
赤ちゃん言葉は厳禁とされ、利用者の家族に対しても尊敬の念を持ち、敬語を用い、「~です・~ます」など、語尾を丁寧に表現するよう指導されていると感じます。
人生の先輩に対して、必要な心掛けであり、敬意を表現できるコミュニケーション力は働くスキルとなっているのですね。

専門学校生の言語活動はいかがでしょうか。

高校を卒業したばかりの学生達は、当然、友達言葉を使います。
授業中でも同様です。
しかし、病院でも介護施設でも、敬語は必要です。
それも、心から温かさの伝わる笑顔で、自然に話せる敬語が必要とされています。

就職してから学ぶのでは遅く、インターンシップや実習へ行く際にも必要です。
先生がインターンシップ先をコーディネイトしてくれる場合もありますが、多くの学生が自分で電話を掛け、事前挨拶を行うでしょう。
早い段階から話法を身に付けていかなければならないわけですね。

赤ちゃんが日本語を身に付ける過程は、「聞く→話す→読む→書く」という順番です。
これが自然な流れです。
英語に対して苦手意識を持つ人の多くは、「聞く」量が少ない、つまりインプット量が少ないために、「話す」というアウトプットに結び付けることができないと聞いたことがあります。
敬語も同様ではないでしょうか
「聞く」量が少ない状態で、実習先に電話をさせたり、介護施設での会話を促しても、学生は緊張するばかりです。
笑顔がなくなり、会話自体が堅苦しくなってしまいます。

教室に年上の学生がいる場合、若い学生もどのようにコミュニケーションを取ればよいか、躊躇するかもしれません。
そこで、敬語が活躍します。
石田先生も「年上の学生には敬語を使ってしまいます」とのことですから、会話の基本を全て敬語にしてはいかがでしょうか
周囲の学生も、敬語を聞く量を増やすことができ、先生や上手な会話をしている学生の真似をするようになります
また、年上の学生にも話しかけやすくなり、若い学生の中で浮いてしまうということを防げるでしょう。
先生からも差別なく学生達に話しかけられるので、年齢やキャリアにより差をつけられて不快と感じる学生もいなくなると思います。

高校卒業までに、敬語は国語科で学習しますが、実際に使う場面がないため、上手く話せる学生は少ないでしょう。
教室活動の中で、自然に身に付けられれば、学生も自信を持てるようになると期待します。
友達同士は、はじめは気恥ずかしいのですが、慣れてしまえば大丈夫です。
休憩中は、友達言葉になることがあっても、授業開始で切り替えるというペースが作れれば、問題ありません。
お互いを大人と認め合うような雰囲気もでき、福祉の現場で働く姿を想像しやすくなり、実習授業にも取り組みやすくなるではないでしょうか。
18歳は成人になったのですから、言葉遣いも大人にしてしまいましょう。

信頼関係を大切に、お互いのストレス軽減を

ストレスは、自分の思うようにならないことに対して発生する苛立ちと解釈できます。
リカレント学生は、「若い学生や年下の先生と共に学ぶのだ」という気持ちで入学してくるでしょう。
当然、専門学校のホームページやパンフレット、オープンキャンパスには若い先生の姿があります。
「学生にとっても、教員が年下ということはストレスではないのでしょうか」と先生は気にされますが、年齢だけが問題ではないような気がします。

若くても専門分野についての勉強をしっかりしている方は大勢います。
逆に、ベテランの先生で、古いテキストを使って、最新の情報を得ようとしない方もいます。
最初は「若いな」と思われることがあっても、いずれ「しっかりした知識があり、勉強熱心だな」と思ってもらえるようになります。

もう一つは、人間としての誠実さです。
年齢を問わず、信頼できる方は大勢います。
石田先生が若い学生に対して、一生懸命に向き合う姿勢にも、リカレント学生は信頼を寄せるでしょう。

実際に介護や育児を経験した方に、体験談を語ってもらうのもよいですね。
先生は、お願いできる学生かどうかや他の学生にとって有意義な機会になるかどうかを見極めます。
定期試験が終了し、時間が確保でき、モチベーションが下がりそうなタイミングがよいかもしれません。
実践経験は、何物にも代えがたい宝です。
クラスで共有できれば、そこからモチベーションも上がり、雰囲気も更に良くなるでしょう。
この時、先生は指導役というより、ファシリテーターとしての役割を担うわけですね。

年上の学生の持つ背景や目的は、様々です。
一人一人を把握するのは大変なことですが、それぞれの目的に少しでも添えるように、最初の授業でアンケートを行うとよいと思います。
時には、自分の知識や実践経験の少なさを苦々しく思うこともあるでしょう。
言葉遣いがマズかったかなと振り返ることもあるかもしれません。
しかし、それこそが大切な積み重ねです。
必ず役に立つ時がきますから、メモも残しておいてくださいね。

来年からも、どうぞ年上の学生と接してください。
石田先生の大活躍を応援しています!

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この記事を書いた人
侑加先生

侑加先生

一般企業を経て、専門学校に正教員として勤務。
現在は、企業・大学講師、小中学生の塾経営。
趣味は、お笑いと高校野球、旅行。一児の母。

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