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「ほめて伸ばした方がいい」は、本当か?

2022.12.19 記事 教務情報

連載大原先生の学生指導のすゝめ

動機づけ教育プログラム「実践行動学」を開発する「実践行動学研究所」大原専務理事の学生指導のすゝめ。 学習塾での指導歴25年の大原先生が、実例を用いて学生への接し方をお伝えするシリーズです。 テンポのよいユニークな文章は、一度読んだらハマること間違いなし。

学生のモチベーション管理は先生の大切な仕事のひとつですよね。
コロナ禍でますます学生の内面が見えにくくなっているいま、学生一人ひとりのモチベーションを把握するのには限界があります。
そこで、学生のモチベーションが自発的に高まるような働きかけができるとよいですよね。

今回は、実践行動学研究所 大原幸夫専務理事から「学生にどんな言葉をかけたら信頼関係が深まり、モチベーション が高まるのか?」というお話について寄稿していただきました。

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「ほめ言葉」と「勇気づけの言葉」

いきなりですが、まず、次のA群、B群の言葉を見てください。

<A群>
・よくできたね。
・~~するなんてえらいね。
・~~がとても上手だね。
・やればできるじゃない!
・この調子でがんばって!

<B群>
・あなたの努力の成果が現れて私もうれしい!
・~~してくれてありがとう。本当に助かった。
・今回は残念だったけど、次も応援しているよ。
・毎日がんばってるね。何か手伝えることがあったら言ってね!

このA群とB群は、どちらも言われてうれしい言葉ですよね。

でも、ちょっとしたニュアンスの違いがあることに気が付きましたか?

A群は、尊敬している人や目上の人から言われるならよいのですが、年下の人や後輩から言われたらカチンとくるかもしれません。

例えば、新入社員が社長に向かって「○○社長もやればできるじゃないですか~」と言ったら、周りが凍りつきます。笑

一方、「○○社長、ありがとうございます。ほんとうに助かりました!」というB群の言葉ならまったく問題ありません。

A群とB群の違いとは何なのでしょうか?

実は、A群はいわゆる「ほめ言葉」で、B群はアドラー心理学がいうところの「勇気づけの言葉」なのです。

「ほめ言葉」と「勇気づけの言葉」の違い

ニュアンスの違いは次のことから生まれます。

・ほめ言葉は上下の関係(上から目線)で、 勇気づけの言葉は対等な関係(横から目線)
・ほめ言葉は相手を評価する態度で、勇気づけは相手を受け入れる態度
・ほめ言葉はよくできたときに与えるご褒美、 勇気づけはうまくいってもしくじってもかけてあげられる言葉

アドラー心理学では、「叱ってもほめてもいけない」と言っています。

なぜほめ言葉(A群)がいけないのかというと、ほめてくれる人への依存を生み、やがては「ほめてもらえないならやらない」という態度を生み出すからです。

下手をすると、ほめられること(外発的モチベーション)が目的化して、行動対象そのものへの興味・関心が薄れてしまいます。

そして、「評価」のニュアンスが含まれるので、うまくいくかどうか分からないことは避けるようになります。
うまくいけばほめられて、失敗すれば叱られるのであれば、ごく自然な反応といえます。

一方、勇気づけの言葉は心の中の安心を生み出します

「自分は感謝される存在で、応援されている。」

そう思うからこそ、のびのびと挑戦できます。
また、内発的モチベーションが高まって、人からの評価を恐れる必要がなくなれば、自発的に動くようになる、というわけです。

効果的な言葉がけ

本当の信頼関係を築くには、上下の関係よりも横の関係の方が効果的だとも言われています。

よく「ほめて伸ばしましょう!」と言われますが、「ほめる」ということ自体が上下の関係に繋がりますし、ほめ言葉には副作用があることも忘れてはなりません。

そうはいっても、アドラーが言うような”ほめも叱りもしない”なんていう育て方は非現実的だ!という方も多いと思います。

(正直、私も「そりゃムリ!」と思います)

そこで最後に学生への言葉がけのポイントを一つだけお伝えしようと思います。
注目すべきは“主語”です。

「あなたは~~~だ」と言うと評価的なニュアンスが含まれてしまうので、「私は~~~だと感じた」のように、「私」を主語にして伝えるのがポイントです。

既述のA群は「あなた」が主語、B群は「私」が主語になっていますよね。
先生と学生間で取り入れてほしいのはB群です。

先生から学生への声かけについての転換の例を挙げてみます。

【シーン①】学生が検定試験に合格した
A群:よくがんばったね!
B群:あなたの努力が実って私もうれしい!

A群の声かけは、「あなたはよくがんばった」という評価を含むほめ言葉です。

対してB群は、「私はあなたの努力が実ってうれしい」という勇気づけの言葉です。

学生は、横並びの目線で勇気づけてくれる先生により深い信頼感を抱くことでしょう。
そして、評価を気にせずのびのびと挑戦できるようになり、内発的モチベーションの高まりに繋がると思います。

【シーン②】学生が毎日面接指導に通っている
A群:毎日コツコツと通ってえらいね。
B群:本番もうまくいくように応援しているよ。

いかがでしょうか。
「あなたを応援しているよ」と先生に伝えてもらうことで、「先生は自分の味方だ」と思えた学生の心の中には、安心感と勇気が湧いてくるのではないでしょうか。

このように、学生と接する際は上から目線でほめるのではなく、横の目線で「私」を主語にすることを意識してみてください。
横の関係が築けたとき、学生の自発的なモチベーションが期待できることでしょう。

【参考】 著:戸田 久実、監修:岩井 俊憲「アドラー流 たった1分で伝わる言い方」 (かんき出版、2014年)

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この記事を書いた人
大原 幸夫

大原 幸夫

一般社団法人実践行動学研究所 専務理事
学習塾に25年勤務。その後小~中学校向けのワークショップの開発、及びファシリテーターの育成に従事している。またコーチング研修等の講師・講演を行う専門家でもある。

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