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TOPコラム先生の知恵袋「ください」と「下さい」どっちが正しい?違いと公用文の使い分けを解説

「ください」と「下さい」どっちが正しい?違いと公用文の使い分けを解説

2026.09.09 (最終更新:2026.09.10) 先生の知恵袋 コラム

学校からの案内文に頻繁に登場する「ください」と「下さい」。どちらも読み方は同じですが、変換の途中でどちらを選ぶか手が止まった経験を持つ先生は多いのではないでしょうか。保護者へのお知らせメールでも、実習先への依頼文でも、学生に配るプリントでも、同じ迷いが出てきます。

実はこの2つ、どちらも誤字ではありません。ただし国の文書の書き方を定めた基準には、どちらを選ぶかの指針がはっきり示されています。判断の軸は1つだけです。

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「ください」と「下さい」はどちらが正しい?

「〜してください」はひらがな、「〜をください」は漢字も使える。
これが判断の軸です。

  • 前の動詞に添えて依頼する形(提出してください・ご確認ください)はひらがな
  • 何かを求める本来の動詞として単独で使う形(資料をください)は漢字も可

なぜこの2つに分かれるのか、根拠となる資料から見ていきましょう。

公用文では「〜してください」をひらがなで書く

根拠は、平成22年11月30日に出された内閣訓令第1号「公用文における漢字使用等について」です。この訓令の別紙には、仮名で書く語句が例文つきで並んでおり、その中に「てください」が名指しで入っています。

次のような語句を,( )の中に示した例のように用いるときは,原則として,仮名で書く。
・・・てください(問題点を話してください。)

引用:内閣訓令第1号「公用文における漢字使用等について

「原則として,仮名で書く」と定めたうえで、例文まで添えられています。校内文書や保護者向けの文書で「〜してください」と書くなら、ひらがなが基準に沿った表記です。

「下さる」は常用漢字表に載っている訓読み

「下さい」は誤字なのかというと、そう決めつけることはできません。常用漢字表(平成22年内閣告示第2号)の「下」の欄には、「くださる(下さる)」という訓読みが掲げられています。しかも、特別な音訓ではなく、通常の訓読みとして示されています。「下さい」はこの「下さる」の活用形にあたるため、常用漢字表の範囲内の書き方です。

常用漢字表の前書きは、この表の位置づけをこう説明しています。

  • 一般の社会生活において,現代の国語を書き表す場合の漢字使用の目安
  • 個々人の表記にまで及ぼそうとするものではない

私的な手紙やメモの書き方まで、公用文の基準に合わせる必要はありません。基準を意識したいのは、学校名で出す文書です。

出典:文化庁「常用漢字表(平成22年内閣告示第2号)」

使い分けの基準は「本動詞」か「補助動詞」か

「ください」の書き分けは、その語が文の中でどんな働きをしているかで決まります。公用文の資料では「動詞・形容詞などの補助的な用法」と表現されており、文法の用語では「補助動詞」と呼ばれる部分です。文化審議会建議「公用文作成の考え方」の巻末索引でも、「補助動詞」はこの「動詞・形容詞などの補助的な用法」を指す語として対応づけられています。

一方、単独で使う側は文法の用語で本動詞と呼ばれます。ただし「本動詞」は、公用文の資料そのものには出てきません。資料が示しているのは「補助的な用法かどうか」という区別であり、「本動詞」「補助動詞」はそれを説明するための一般的な文法用語です。

2つの用法を並べてみましょう。

  • 補助的な用法(補助動詞):前の動詞に添えて依頼や敬意を表す。表記の目安はひらがなの「ください」。例=提出してください、ご確認ください
  • 実際の動作を表す用法(本動詞):前の動詞に添えず、それ自体が動作を表す。漢字の「下さい」も使える。例=資料をください(下さい)、お返事をください(下さい)

それぞれ、公用文の資料が実際にどう示しているかを確認します。あわせて、同じ考え方が使える言い回しも見ておきましょう。

補助的に使う「ください」はひらがな

文化審議会建議「公用文作成の考え方」の解説には、ひらがなに開く語の例が並んでいます。

動詞・形容詞などの補助的な用法

例)~(し)て行く→ていく ~(し)て頂く→ていただく ~(し)て下さる→てくださる ~(し)て来る→てくる ~(し)て見る→てみる ~(し)て欲しい→てほしい ~(し)て良い→てよい

引用:文化審議会建議「公用文作成の考え方」(付)解説

「〜してください」は、この「~(し)て下さる→てくださる」と同じ形です。前の動詞に意味を添えているなら、ひらがなで書く。この考え方で、日常の文書に出てくる「ください」の大半は判断できるはずです。

実際の動作を表すときは漢字も使える

同じ箇所には、漢字を使う場合の注記も添えられています。

(実際の動作・状態等を表す場合は「…街へ行く」「…賞状を頂く」「…贈物を下さる」「…東から来る」「しっかり見る」「資格が欲しい」「声が良い」のように漢字を用いる。)

引用:文化審議会建議「公用文作成の考え方」(付)解説

「…贈物を下さる」が、「くださる」を本来の動詞として使った例にあたります。「資料をください」「お返事をください」のように、相手に何かを求める意味で単独に使う場合がこれにあたります。

ただし、注意しておきたい点がひとつあります。公的な資料に示されているのは終止形の「下さる」までで、命令形の「下さい」を漢字で書くと明記した箇所はありません。「下さい」は「下さる」の活用形にあたるため漢字も使用可、と理解しておきましょう。

同じ考え方は「ていただく」や「ていく」にも及ぶ

内閣訓令が仮名書きの例として挙げた語は、「てください」にとどまりません。同じ項には、次の語も例文つきで並んでいます。

  • ていただく(報告していただく)
  • ていく(負担が増えていく)
  • ておく(通知しておく)
  • てくる(寒くなってくる)
  • てしまう(書いてしまう)
  • てみる(見てみる)
  • てよい(連絡してよい)

語ごとに暗記するのではなく、前の動詞に意味を添える働きかどうかで見分けましょう。この考え方を身につけておけば、初めて出会う言い回しでも判断できます。

場面別の使い方・例文

基準がわかっても、実際の文書を前にすると手が止まることがあります。教職員が書く機会の多い場面から見ていきましょう。

場面迷いやすい書き方公用文の基準に沿う書き方
保護者へのメールご確認下さいご確認ください
実習先への依頼文ご検討下さいますようご検討くださいますよう
学生への配布プリント期日までに提出して下さい期日までに提出してください

表に挙げたのは、いずれも前の動詞に添える用法です。一方、「予備の用紙をください」のように相手に何かを求める場合は、、「〜してください」のような補助動詞とは使い方が異なります 。実際に何かを求める動作の意味で使う「ください」は漢字を選んでも構いません。

保護者へのメール・案内文

保護者向けの連絡では、「ご確認ください」「ご返信ください」「ご了承ください」といった表現が続きます。いずれも前の動詞に添える形なので、ひらがなが目安です。

  • 出欠のご予定を、〇月〇日までにご返信ください。
  • 持ち物に変更がありますので、ご確認ください。

気をつけたいのは、1通のメールの中で「ご確認ください」と「ご確認下さい」が混ざる状態です。文化審議会建議の解説も、1つの文書の中で同じ用語にいくつもの表記が混在しないようにし、個人の判断に頼らず各部署で表記の考え方を共有しておくよう求めています。迷ったら、まず文書内でそろえる。ここから始めれば十分です。

企業への実習依頼文

実習の受け入れ依頼のような外部向け文書では、「ご検討くださいますよう」「ご査収ください」など、丁寧さを重ねた表現が増えます。ただ、漢字にしたからといって敬意が高まるわけではなく、ここも前の動詞に添える補助的な用法にあたります。

  • ご多用のところ恐縮ですが、ご検討くださいますようお願い申し上げます。
  • 実習計画書を添付いたしましたので、ご査収ください。

送り先によっては、公用文の書き方に慣れた担当者が目を通すかもしれません。公用文に沿った書き方でそろえておくと、文書そのものの信頼感につながるのではないでしょうか。

学生への配布プリント・掲示物

学生に配る資料や教室の掲示物は、書かれた表記がそのまま手本になります。学生はプリントや掲示物の言い回しを見ながら文書の書き方を覚えていきます。教員が配る資料の表記をそろえておくことは、学生に正しい書き方を身につけさせるうえでも重要です 。

  • 申込書に必要事項を記入してください。
  • 実習初日は、白衣と上履きを持参してください。

就職活動の書類指導でも、同じ基準がそのまま使えます。「ご確認ください」をひらがなで書く理由まで説明できると、学生にとっては丸暗記せずに表記のルールを理解する手がかりになるでしょう。

同じように迷いやすい言葉5選

「ください」と同じ考え方で整理できる言葉は、ほかにもあります。内閣訓令の同じ項に並んでいる語から、教職員が書く文書に出てきやすいものを5つ取り上げます。

  1. 「いただく」と「頂く」
  2. 「次のとおり」と「次の通り」
  3. 「〜するとき」と「〜する時」
  4. 「できる」と「出来る」
  5. 「こと」と「事」

1つずつ、訓令がどう示しているかを見ていきましょう。

1. 「いただく」と「頂く」

内閣訓令は「ていただく(報告していただく。)」を仮名書きの例に挙げています。「ご出席いただく」「ご対応いただく」のように、前の動詞に添える形ならひらがなで書きましょう。一方、文化審議会の建議の解説では「…賞状を頂く」が漢字を使う例として示されています。受け取る動作そのものを表すときは、漢字のままで構いません。判断の軸は「ください」とまったく同じです。

2. 「次のとおり」と「次の通り」

訓令が挙げているのは「とおり(次のとおりである。)」という形です。「下記のとおり実施します」「別紙のとおりです」のように、前の内容を受けて「そのように」という意味で使う場合は、ひらがなを使用します。訓令が仮名書きの対象にしているのはこの用法で、「表通り」のように道を指す名詞の使い方は例示に含まれていません。

3. 「〜するとき」と「〜する時」

こちらは「とき(事故のときは連絡する。)」が例として並んでいます。「提出するときは」「欠席するときは」のように、条件や場面を示す使い方ではひらがなを選びます。「午前9時」のように時刻そのものを指す使い方は、これとは切り分けて考えましょう。

4. 「できる」と「出来る」

「できる(だれでも利用ができる。)」も同じ並びにあります。「参加できる」「確認できる」のように、可能であることを表す使い方はひらがなで書きます。学生への案内文や校内の掲示では出番の多い語なので、ここをそろえておくと文書全体の印象が整うでしょう。

5. 「こと」と「事」

最後に「こと(許可しないことがある。)」です。「提出することが必要です」のように、前の言葉を名詞のとして扱う使い方はひらがなで書きます。「行事」「事務」のような熟語には、この考え方は及びません。

まとめ

「ください」と「下さい」は、どちらも誤字ではありません。判断に迷ったら、次の3点を思い出してみてください。

  • 前の動詞に添える補助的な用法ならひらがな(内閣訓令第1号の例示に「てください」がある)
  • 何かを求める本来の動詞として使うなら漢字も選べる(常用漢字表に「くださる(下さる)」の訓がある)
  • 基準の考え方が参考になるのは学校名で出す文書。私的な手紙やメモまで合わせる必要はない

同じ判断基準は「いただく」「とおり」「とき」「できる」「こと」にもそのまま使えます。ひとつ覚えておけば、初めて出会う言い回しでも迷わず判断できるはずです。

言葉の意味そのもので迷ったときや、読みが同じで書き分けに迷う語については、以下の関連記事もあわせてご覧くださいね。

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この記事を書いた人
宇井 馴次 (うい なれじ)

宇井 馴次 (うい なれじ)

ウイナレッジ編集部所属のバーチャルヒューマン。
専門学校の先生方の多忙な日常を、お役立ち情報で支える探求者。
私生活では、予測不能な動きを見せる双子の娘に翻弄されるパパ。プロレス観戦でエネルギーをチャージし、毎週金曜日は自分へのご褒美として、スタバのベンティサイズ・フラペチーノを嗜むのがルーティン。
「先生の笑顔が、学生の未来を作る」をモットーに、役立つ情報を発信中。

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