
お話を伺ったのは▼

国際アート&デザイン大学校
渡邊惇基さん
PCスクール講師、イラストレーター、アートディレクターを経て、国際アート&デザイン大学校の教員に転身。広報担当やeスポーツビジネス科の担任を経て、現在はコミックイラスト科の担任を務める。また、「クロスオーバーゼミ」の立ち上げにも携わった。
学生一人ひとりが充実した学校生活を送るためには、専門知識を身に付けることはもちろんですが、多様な人や学びとの出会いも大切です。そういった環境を学生に用意してあげたいと考える先生も多いのではないでしょうか。
今回は、学科の枠を越えて学ぶ「クロスオーバーゼミ」を実施し、学生が新たな分野に触れるだけでなく、教員同士の連携や学校全体のつながりを強めている、国際アート&デザイン大学校の渡邊先生にお話を伺いました。
目次
教員の声から生まれた、学科を越えて学び合う取り組み
――クロスオーバーゼミが始まった背景を教えてください。
渡邊先生:クロスオーバーゼミは、2021年度にスタートしました。
本校には11学科があり、幅広い専門分野を学ぶことができます。多くの選択肢の中から、学生が自分の専門分野以外に触れる機会を設け視野を広げること。担任以外の教員との接点を増やし、相談先の選択肢を持てるようにすること。さらに、短い期間で資格取得や就職を目指す専門学生にとって、自学科の学びの合間のリフレッシュや息抜きの場にすることを目的に実施を決めました。
もともと多くの教員が、学生同士や教員同士の交流が限られていることや学生が自学科の学びに行き詰ってしまった際の対応に課題を感じており、コロナ禍でオンライン授業を実施する中で、学科長レベルからのボトムアップで意見がまとまり、形になりました。
本校はもともと風通しがよく、教員同士でアイデアや意見を出し合い、合同授業やコラボレーションをする機会がとても多い学校です。
例えば、動画・映像クリエイト科がミュージックビデオを制作する課題では、必要なイラストをコミックイラスト科に発注しています。「クライアントとワーカー」という立場で仕事をする、ロールプレイに近い形です。
また、eスポーツビジネス科がゲームイベントを実施する際には、音響や照明を音響・ミュージック科に依頼しています。一見、関わりがなさそうな学科同士でも、さまざまなコラボレーションを行っています。
教員の誰もが意見を出しやすく、「今週話して、来週から実施する」くらいのスピード感で物事を進めることが多いです。そうした文化がもともと根付いていたため、クロスオーバーゼミもスムーズに実施が決まりました。
学生も教員も楽しめる「自由設計」が強み
――「クロスオーバーゼミ」の仕組みを教えてください。
渡邊先生:毎週月曜日の2・3時間目を共通の授業時間と定め、全学科・全学年を対象に実施しています。学生には第二希望まで、受講したいゼミを選んでもらっています。

講座内容は半期ごとに変わり、韓国語講座やeスポーツのコーチング、アニマルセラピー講座、雑学講座など、学生に「面白い」と感じてもらえる講座を教員が企画し、毎期6~10講座ほど開講しています。
授業内容は担当教員が自由に設定しており、内容に合わせてオンライン、オフライン、ハイブリッド形式など、さまざまな形で実施しています。「教員が自由に設計できる」という点も特徴の一つで、教員自身も楽しみながら講座の準備をしているようです。

学科を越えた学びの場で「知識」と「つながり」が広がる
――「クロスオーバーゼミ」を始める前の課題と、始めてからの成果を教えてください。
渡邊先生:以前は、学生が話せる教員が限られており、教員との接点が少ないという課題がありました。クロスオーバーゼミを通して、担任以外の教員との接点だけでなく、他学科の学生同士のつながりも生まれていると感じています。
また、期末ごとに学生アンケートを実施していますが、コミュニケーションの講座では「自分が知らなかった社会常識を知ることができてよかった」、デザイン系の講座では「デザインの基礎が学べて楽しい」、ペット系の講座では「動物の特性が分かり、飼っているペットに応用できそう」といった声などが寄せられています。学生の視野が広がったり、息抜きの時間になったりと、当初想定していた効果が見られます。
また、担当教員が各学科の基礎的な内容を分かりやすく伝えるため、自学科に関連する講座を受講する学生もいます。「改めて基礎を学ぶことで遅れを取り戻せた」「理解が深まった」といった感想が出ており、そうした面でもクロスオーバーゼミが役立っています。
さらに、在校生に入学動機を尋ねたところ、「クロスオーバーゼミがあるから」と答えた学生が49%いました。高校生にとっても魅力的な取り組みとして映っているようです。
教員が思いを共有することでより良い学びへ
――今後の課題や目標がありましたら教えてください。
渡邊先生:半期ごとに講座内容が変わるため、通常授業に加えて、クロスオーバーゼミ用に内容をかみ砕いた表現に直す必要があり、教員の授業準備の負担が増えるという課題があります。
ただ、教員自身が自分の専門分野について他学科の学生に伝えることを楽しんでくれているので、あまり負担と感じていないかもしれません。少なからず講座内容に興味を持った学生が集まってくれるため、反応もよく、私自身も楽しみながら取り組めています。
もともとクロスオーバーゼミは、教員のボトムアップによって始まった取り組みです。全教員が思いを共有しながら取り組んでいるからこそ、うまく運営ができていると思っています。
今後も「こうしたら面白いのではないか」「学生のためになるのではないか」といった、教員一人ひとりのひらめきや思いを大切にしていきたいと考えています。

最後に…
国際アート&デザイン大学校のクロスオーバーゼミの背景には、「学生のためにもっとできることはないか」と考え続ける教員の姿勢と、自由なアイデアを実現できる学校文化があります。
専門分野の枠を越えて学び合う経験は、学生にとって新たな可能性を広げるだけでなく、教員にとっても教育の楽しさを再発見する機会となっているように感じられました。
小さなひらめきを大切にする姿勢が、これからの専門学校教育のヒントになるかもしれません。
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株式会社ウイネット
「ウイナレッジ」を運営する教育専門出版社。
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