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TOP特集インタビュー増え続けるSNS犯罪、先生自身と学生のために知りたい最新事例と対策

増え続けるSNS犯罪、先生自身と学生のために知りたい最新事例と対策

お話を伺ったのは▼

ITジャーナリスト

高橋 暁子さん

スマホやインターネット関連の事件やトラブル、ICT教育事情に詳しく、全国の学校、自治体、団体、企業などを対象に毎年 50回ほどの講演・セミナーを行う。SNS、10代のネット利用、情報モラルリテラシーに関する書籍、雑誌、Webメディアなどの記事の執筆、企業などのコンサルタント、委員などを手がけながら、成蹊大学の客員教授を務める。著作は『若者はLINEに「。」をつけない 大人のためのSNS講義』(講談社+α新書)、『ソーシャルメディア中毒』(幻冬舎)など20冊以上。

「令和7年版消費者白書」によると、2024年のSNSが関係する消費生活相談件数は8万6,396件で、前年から約5千件増えて過去最多となりました。年齢別では、20歳未満で2,910件、20歳代で12,612件、相談件数が最も多い年代は50歳代で19,077件でした

※参考:消費者庁「令和7年版消費者白書

学生世代の相談件数が多いことはもちろん気になりますが、先生世代もSNSに関連したトラブルに巻き込まれており、注意が必要であることが分かります。

今回は、ITジャーナリストの高橋暁子さんに、先生世代と学生世代それぞれにおいて、近年増加している最新のSNSトラブル・犯罪と、その対策について教えてもらいました。

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なくならない「ネットいじめ」「誹謗中傷」

――SNS、ネット上で多いトラブルを教えてください。

高橋さん:ローティーンを中心に、子どもや若者に多く見られるトラブルは「ネットいじめ」「誹謗中傷」です。そのほか「個人情報流出」、炎上による「デジタルタトゥー」などがあります。このあたりは長年変わらず起きているトラブルですね。今の10代は子どものときからSNSが身近にある「SNSネイティブ」。SNSに投稿するのはごく当たり前のことですが、あくまで“身内受け”のつもりで使っていることが多く、トラブルによって自分が損害賠償を請求されたり、書類送検されたり、学校を退学になってしまうことがあると理解できていない場合が多いです。そのためにトラブルを起こしてしまう傾向があります。

借金が可能な18歳以上は絶好のターゲット

――近年、若者が巻き込まれるSNS関連の犯罪にはどんなものがありますか?

高橋さん:未成年に多い被害は、SNSを通じたグルーミング行為による「誘拐」「性被害」です。昨今広まっているのは「自撮り被害」という、騙されて自分の裸の画像を送ってしまい、「写真をばらまくぞ」などと脅される「セクストーション」被害です。セクストーションは、男性の被害も多いのが特徴です。「裸を見せ合おう」などと言われて画像を送ってしまい、金銭を要求されるケースもあります。最近はAIを使った「性的ディープフェイク画像」で、SNSに投稿した普通の画像を性的な画像や動画に加工されてしまい、それを広めると脅される被害も起きています。

また、オンラインゲームでの被害も拡大しています。例えば、ボイスチャット機能を使ってゲーム内で会話ができるため、知らない相手でもすぐに仲良くなってしまう。親しくなった相手から会おうなどと誘い出されて被害に遭うケースがあります。

10代、20代の被害では「闇バイト」ですね。今どきの学生はアルバイトをSNSで探すのが一般的です。そのため、「高収入」「即日即金」といったハッシュタグで騙されてしまうことがあります。オンラインゲームで知り合った相手から海外へ誘われ、特殊詐欺に加担させられたという事件もありました。闇バイトは、自分が被害者にも加害者にもなってしまうため、特に注意が必要です。

また、この世代は投資や節約に関心が高いため、「副業詐欺」「投資詐欺」に遭いやすいです。近年多いのが「タスク詐欺」。「スクリーンショットを撮って送るだけ」「SNSでいいねするだけ」といった簡単なタスクをこなすことで、最初に少額お金がもらえます。それで信用してしまい、「次はもっと高額の案件を紹介するから、代わりに登録料、システム料が必要」などと言われてお金を取られてしまう。もしくは途中で難癖をつけられ、罰金を請求されてしまうといった手口です。

マッチングアプリを通して投資詐欺に遭うケースも多いです。マッチングアプリは性質上、メッセージのやりとりが自然と発生しますし、会うことが前提なので、詐欺師としては話を聞いてもらいやすい絶好の場所です。仲良くなった後で、「趣味で投資をやっているんだけど一緒にやらない?」「2人の将来のためにお金増やそうよ」と言われる。恋愛感情からお金を渡すと、見た目は儲かっているように見える詐欺サイトを見せられて、どんどんお金を振り込んでしまう…という被害が実際にあります。

――若者がターゲットにされているのでしょうか?

若者の日常には、大人とは比べものにならないくらいSNSが浸透しています。詐欺師からしたら、SNSに情報さえ流しておけば、向こうからホイホイ引っかかってくれる状況です。成人していればクレジットカードや消費者金融を利用できるため、貯金がなくても借入で作ったお金を取られてしまうケースがあります。経験が少ないため騙されやすく借金ができる、そんな18歳から20代は絶好のターゲットだと思います。

また、最近の傾向として、生成AIを用いた犯罪が増えています。先述したディープフェイクもそうですし、中高生が生成AIを用いて作ったプログラムで携帯電話会社のサイトへ不正アクセスし、不正に契約した回線を売却してお金を集めたという事例もあります。生成AIの利用方法も含めて、今後ますます注意が必要です。

生成AIによって被害が拡大する可能性

――先生世代の被害はどうでしょうか?

高橋さん:先生世代は、LINEを中心に、YouTube、女性ではInstagram、男性ではFacebookを利用している方が多く、TikTokやBeRealなどを使っている人は少ないと思います。若者ほどSNSにどっぷり浸かっていないはずですが、多くの被害に遭っているのが現状です。

若者世代が騙されるような誘拐、自撮り被害、闇バイトなどは、先生世代はターゲットになりません。若者世代が心と体を狙われることが多いのに対して、先生世代が狙われるのはズバリお金。今、特に多いのが「ロマンス詐欺」「SNS型投資詐欺」です。特殊詐欺はシニア世代が狙われることが多いですが、「ロマンス詐欺」は、40~50代の被害が多いんです

※参考:警察庁特殊詐欺対策ページ「SNS型投資・ロマンス詐欺

突然美しい異性(のアイコン)からメッセージが届く。「あなたは特別だ」「愛している」「結婚したい」と言われる。こまめに連絡が来てかけがえのない存在になっていく…。信頼関係を築いたところで相手から「会社が傾いてピンチだから助けてくれないか」「親が急病で手術費用が足りない」と言われると、「頼ってもらえてうれしい!」と思ってお金を渡してしまう…。近年はディープフェイクを用いて、顔や声を差し替えてビデオ通話をすることが可能なため、今後も被害が拡大する恐れがあります

また、最近多発しているのが「ニセ警察詐欺」。スマホに「あなたの口座が悪用されており、逮捕状が出ている」「口座を調べる必要がある」などと警察を名乗る電話がかかってきて、LINEに誘導されます。ビデオ通話で警察手帳や逮捕状を見せられて信用してしまい、自分の無実を証明するためにお金を振り込んでしまう。これも、ディープフェイクにより犯人が別人の顔でビデオ通話していたケースがあります。

あとは「証券口座乗っ取り事件」も今年被害が拡大しました。これまでは言語の障壁のため狙われることが少なかった日本ですが、今は生成AIで簡単に日本語のフィッシングサイトやメールが作れてしまうため、世界的に見ても狙われやすくなっています。「証券口座乗っ取り事件」はフィッシングサイトで情報を盗まれ、自分の保有株を勝手に売られてしまいます。その売却利益を使って、犯人が保有している低位株を大量に購入するのです。犯人側は、事前に大量購入していた低位株が一気に高値になり、そのタイミングで売却することで利益を得るという犯罪です。

一番の自衛は「ニュースを見ること」

――どういった対策が有効なのでしょうか?

高橋さん:「そういう詐欺があること」「流行っていること」を知ることが一番の自衛になります。そのため、ニュースをしっかりとキャッチすること。1度でも耳にしたら「警察になりすます詐欺があるらしい」と頭の片隅に置いておけますから。テレビでも、新聞でも、WEB記事でも何でもいいので読む。ほんの5分で充分です。その知識が自分を守ってくれます。

また、お金の話が出たら基本アウトだと覚えておいてください。怪しいメールやショートメッセージ、広告は絶対に開かない、クリックしない。簡単に情報を入力しないことも基本的な対策です。公式サイトをブックマークしておき、メールからではなくブックマークからアクセスすること。サイトの二段階認証などは必ず設定しておきましょう。

学生には対面でニュースを教えてあげてほしい

――先生が学生をトラブルから守るためにできる対策はありますか?

高橋さん:若者は「ニュースを見る習慣」がありません。少し前になりますが、SNS炎上が次々と起こり、ニュースは炎上一色。私も食傷気味なくらい炎上について講演させてもらっていた時期がありました。大学や専門学校で話をする中で、「さんざんテレビでやっているから、当然知っているよね?」と、学生に一番有名な炎上写真を見せましたが、「え?知らない」と言う子が何人もいました。

また、私が教えている大学生に対して、情報収集の際に使うニュースソースを調査したところ、1位Instagram、2位テレビ、3位X、YouTube、 TikTokとなりました。新聞はほぼゼロ。ニュースサイトはLINEニュース、Yahoo!ニュースを見ている人が2、3割いましたが、ニュースサイトは自分が気になる見出しをタップして見るもの。つまり、関心があるニュース以外は見ていない可能性が高いです。そうなると、流行っている詐欺やトラブルを知らず、新鮮に引っかかってしまうわけです。

私が講演に行った学校では、前年に比べてトラブルが減ったと言ってもらえることが多いです。やはり、対面で伝えることが重要なんです。それでも引っかかる子はゼロではないと思いますが、少しでも頭の片隅に残せれば、その子の一生を守れるかもしれない。先生の言葉がストッパーになる可能性があります。ですので、そのときに流れているニュースを「これ知っている?どうしてこんな事件になったと思う?」「みんなが使っているサービスでこんな事件があったよ」と、先生の口から日々直接ニュースを伝えることが対策になると思います。

積極的に相談窓口となり学生を守って

――SNSに詳しくない先生でもできることはありますか?

先生方は学生時代にネットリテラシーを学んでいない世代が多いですし、プライベートでもそこまで使っていない、正直詳しくないという方が多いと思います。ですが、大人の知識、経験、常識、判断力を持っているので、「これはおかしい」ということを感じ取ることはできるはずです。学生は「大人に相談しても意味がないだろう」「怒られたらどうしよう」と思っている可能性が高いです。ですので「君たちの味方だから、信じて何でも相談して」と、先生は自信を持って伝えてほしいですね。冒頭にお話ししたトラブルや事件は、隠すことで被害がどんどん大きくなってしまいます。「やっちゃったかも」くらいの、ドキッとしたときに相談しておけば、まだどうにかなる可能性が高いんです。とにかく相談は早ければ早いほどいい。「先生は確かにSNSに詳しくないけど、相談機関を知っているし、親御さんとの間にも入ってあげるから安心して何でも話して」と、ぜひ学生の味方になって守ってあげてほしいです。

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