
2022年度から高校で必修化された「情報Ⅰ」。
2025年度の共通テストから「情報」が正式科目となったことで、高校現場ではプログラミングやデータ活用教育への注目が急速に高まっています。
その中で、専門学校教員や情報系教育関係者からは、
- 高校では実際にどんな言語を扱っているのか
- Pythonはどの程度普及しているのか
- 教科書ごとに教育方針は違うのか
といった疑問の声があがっています。
実際には、「情報Ⅰ」は同じ学習指導要領に基づいていても、教科書によって扱うプログラミング言語や、学習アプローチに違いがあります。
本記事では、文部科学省の2026年度高等学校用教科書目録掲載の、「情報Ⅰ」の教科書について、各教科書の特徴と扱われる主なプログラミング言語を整理します。
目次
高校「情報Ⅰ」で何を学ぶのか
「情報Ⅰ」は、すべての高校生が履修する必履修科目であり、主な学習内容は以下の4領域です。
- 情報社会の問題解決
- コミュニケーションと情報デザイン
- コンピュータとプログラミング
- 情報通信ネットワークとデータ活用
従来の「パソコン操作中心」の情報教育とは異なり、
- プログラミング的思考
- データ活用
- 情報モラル
- 問題解決力
などを総合的に育成することが重視されています。
特に「コンピュータとプログラミング」領域では、多くの教科書でPythonを中心に扱うようになっている点が大きな特徴です。
※学習内容は文部科学省「高等学校学習指導要領(情報)」をもとに整理
2026年度版「情報Ⅰ」教科書13冊比較
以下は、文部科学省の2026年度「情報Ⅰ」の検定済教科書をもとに、主なプログラミング言語や教材の特徴を整理したものです。
| 教科書名 | 出版社 | 主な言語 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 新編情報Ⅰ | 東京書籍 | Python / Scratch | 基礎理解重視 |
| 情報Ⅰ Step Forward! | 東京書籍 | Python / JavaScript | 問題解決学習型 |
| 高校情報Ⅰ 新訂版 | 実教出版 | Python | Python特化型 |
| 高校情報Ⅰ JavaScript | 実教出版 | JavaScript | JavaScript特化型 |
| 最新情報Ⅰ 新訂版 | 実教出版 | VBA | 表計算活用型 |
| 図説情報Ⅰ 新訂版 | 実教出版 | Scratch | ビジュアル重視 |
| 実践 情報Ⅰ | 開隆堂出版 | VBA | 実習重視 |
| 改訂版 高等学校 情報Ⅰ | 数研出版 | Python / JavaScript / VBA | 複合型 |
| 改訂版 情報Ⅰ Next | 数研出版 | Python / JavaScript / VBA | 発展学習対応 |
| 情報Ⅰ | 日本文教出版 | Python / JavaScript | 標準型 |
| 情報Ⅰ図解と実習-図解編 | 日本文教出版 | VBA | 図解重視 |
| 情報Ⅰ図解と実習-実習編 | 日本文教出版 | VBA | 実習重視 |
| 高等学校 情報Ⅰ | 第一学習社 | Python / Scratch | 初学者配慮型 |
「Python中心」だが、教育目的は統一されている
一覧を見ると、多くの教科書でPythonが採用されていることがわかります。
その背景には、
- 文法が比較的シンプル
- AI・データ分析分野で普及
- 教育用途との相性が良い
といった理由があります。
ただし、高校「情報Ⅰ」の目的は、“プログラマー養成”ではありません。
教科書で重視されているのは、
- アルゴリズム理解
- 問題解決
- 情報活用
- データ分析的思考
です。
そのため、
- 本格的なアプリ開発
- Git/GitHub
- フレームワーク
- チーム開発
などを扱うケースは限定的です。
「Pythonを学んできた=高度な実装経験がある」というわけではない点には注意が必要です。
採択数では実教出版が優勢
全国統一の正式シェア統計は公開されていませんが、東京都教育委員会の「令和8年度使用都立高等学校用教科書採択結果」を見ると、「情報Ⅰ」では実教出版の採択比率が高い傾向が見られます。
| 出版社 | 採択比率(都立高校) |
|---|---|
| 実教出版 | 45.6% |
| 東京書籍 | 22.0% |
| 日本文教出版 | 15.4% |
| 数研出版 | 10.4% |
| 第一学習社 | 3.7% |
| 開隆堂出版 | 1.7% |
また、教科書別では以下のような採択傾向となっています。
| 教科書名 | 出版社 | 採択校数 |
|---|---|---|
| 最新情報Ⅰ 新訂版 | 実教出版 | 54校 |
| 新編情報Ⅰ | 東京書籍 | 39校 |
| 図説情報Ⅰ 新訂版 | 実教出版 | 24校 |
| 情報Ⅰ | 日本文教出版 | 20校 |
| 情報Ⅰ Step Forward! | 東京書籍 | 14校 |
| 改訂版 高等学校 情報Ⅰ | 数研出版 | 14校 |
| 改訂版 情報Ⅰ Next | 数研出版 | 11校 |
| 情報Ⅰ図解と実習 | 日本文教出版 | 9校 |
| 高等学校 情報Ⅰ | 第一学習社 | 9校 |
| 実践 情報Ⅰ | 開隆堂出版 | 4校 |
| 高校情報Ⅰ JavaScript | 実教出版 | 1校 |
特に、
- 実教出版「最新情報Ⅰ 新訂版」
- 東京書籍「新編情報Ⅰ」
などの標準型教科書の採択数が多い点が特徴です。
一方で、Python特化型やJavaScript特化型など、特色型教科書を採択する学校も一定数存在しています。
※採択データは東京都教育委員会「令和8年度使用教科書の採択結果」をもとに整理し、傾向分析のため同じ書籍の改訂前後の採択校数を合算しています。
専門学校教員が知っておきたいポイント
現在の高校生は、必ず「情報Ⅰ」を履修して専門学校へ進学しています。
そのため、
- if文
- 繰り返し処理
- アルゴリズム
- フローチャート
- データ分析の基礎
などに触れている学生は以前より増えています。
一方で、
- 実装経験の差
- タイピングスキル差
- PC活用経験差
- 学校設備差
は非常に大きいのが実情です。
特に「Python経験者」という言葉だけでは、実際にコードを書いたのか、動画視聴が中心だったのか、教員の演示のみだったのかなどまでは分かりません。
そのため専門学校では、
「高校で学んできている前提」と「個人差への対応」の両立が重要になるといえるでしょう。
おわりに
2026年度版「情報Ⅰ」の教科書を比較すると、多くの教科書でPythonが採用されつつも、教育方針や学習アプローチには大きな差があることが分かります。
重要なのは、「どの言語を学んだか」、「どこまで実装したか 」だけではなく、「高校でどのような“情報活用経験”をしてきたか」を理解することです。
専門学校や高等教育機関においても、高校「情報Ⅰ」を前提とした授業設計や学生理解が、今後ますます重要になっていくでしょう。
高校「情報Ⅰ」制度開始当初(2022年)の分析記事も、あわせてご覧ください。
連載:専門学校教職員が知っておきたい高校「情報Ⅰ」
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