
連載大原先生の学生指導のすゝめ
動機づけ教育プログラム「実践行動学」を開発する「実践行動学研究所」大原専務理事の学生指導のすゝめ。 学習塾での指導歴25年の大原先生が、実例を用いて学生への接し方をお伝えするシリーズです。 テンポのよいユニークな文章は、一度読んだらハマること間違いなし。
「分からないことは、すぐ教えてあげる」。
教育の現場では、それが“良い指導”だと思われがちです。実際、分かりやすく説明できる先生ほど、学生から信頼される場面も多いでしょう。
けれど、その“答えること”が、知らないうちに学生の「自分で考える力」を奪ってしまうこともあるのかもしれません…。
今回は、学生から「教えて」と言われたときの判断基準と対処法について、実践行動学研究所の大原幸夫専務理事からご寄稿いただきました。
目次
“答えを教えること”の危うさ
もう何十年も前の話になりますが、私が学習塾講師として働き出したときは(あぁ懐かしい…)、生徒の「教えて」にいかに迅速に、そして分かりやすく答えられるかが課題でした。
地方で生まれ育った私は中学受験の経験がなく、教える立場になって初めて中学受験の入試問題に触れたのです。難関私立中学の入試問題はかなりクセが強いというか、数学の知識を使わずに教えようとするとめちゃくちゃ専門性が高くて、四苦八苦したものです。(当時は算数の先生でした)
それでも2~3年もやっていると、「ああこれね」という感じで教えられるようになってきます。そうすると生徒から「あの先生の説明は分かりやすい」とか言われて無邪気に喜んだりして。
「分からないことは、あの先生に聞けばいい」
この危うさに気づくには、当時の私は若過ぎたし、未熟過ぎました。
「答える」「答えない」の判断基準
受験の指導現場から離れて、はや…、早何年だっけな…。
まぁとにかく、今はコーチングやファシリテーションといった“教えない教育”に勤しんでおります。
とはいえ、例えばコーチングセッションで何かを教えることがまったくないかと言えばそんなことはなく、クライアントに聞かれたことにペラペラと答えることもあります。そんなコーチってどうなのよ?と思いながら。笑
その一方で、絶対に答えないこともあります。
そんなときはクライアントも私のスタンスを敏感に察知して、繰り返し聞いてくるようなことはしません。
コーチングは生ものなので、答える・答えないの使い分けは瞬間的・感覚的な判断です。で、私が何をもとに判断しているのかというと…
相手の「教えて」が、“自律的援助要請”か、“依存的援助要請”か。
“自律的援助要請”と“依存的援助要請”
教育心理学の文脈でよく使われる、この対比概念をかんたんにご紹介しますね。
“自律的援助要請”とは、自力で解決する姿勢で援助を求めること。
正解そのものではなく、ヒントや方向性を求める傾向にあり、この姿勢の人は学習の定着が高く、自己効力感が育つことも明らかになっています。
“依存的援助要請”とは、自分で考えようとせずに答えを欲しがること。
代わりにやってもらう感覚なので、学びが残りにくく自己効力感が育たない上に、援助が依存を強める方向に働きます。何事もコスパ・タイパを重視している人はこちらの傾向が強いのではないでしょうか。
つまり私は、相手が自分で進もうとしていれば喜んで答えるけど、寄りかかってくるような依存心を感じたら押し戻す。そんな風に使い分けている感じです。
もしもあなたが依存的援助要請をされたときは、こんな風に問い返すのがいいかもしれません。
「自分で解決するために、どんな助けが必要ですか?」
※この記事は、実践行動学研究所のメールマガジン「しなやかな心と学ぶ力が育つメルマガ Colorful Times」266号を再編集したものです。
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大原 幸夫
一般社団法人実践行動学研究所 専務理事
学習塾に25年勤務。その後小~中学校向けのワークショップの開発、及びファシリテーターの育成に従事している。またコーチング研修等の講師・講演を行う専門家でもある。









