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TOP教養スキルアップ指導スキル(23)~「使わせない」から「使いこなす」へ | 専門学校で今、教員と学生に求められるAIリテラシー(前編)

指導スキル(23)~「使わせない」から「使いこなす」へ | 専門学校で今、教員と学生に求められるAIリテラシー(前編)

連載授業アップデートテクニック

変化する学生のニーズ、技術やツールの進歩、多様性の受け入れなど、常に進化が求められる現代の教育現場。授業をアップデートしなくてはいけない時期が到来しています。この連載では、教員向け研修や教員志望者の育成を行う「RTF教育ラボ」の代表で、年間300もの授業観察を行う教育コンサルタントの村上敬一さんから、専門学校の先生に向けた「令和の授業テクニック」を教えてもらいます。

最近、専門学校の教員に限らず、小学校・中学校の教員と話をしていても、AIに関する話題が本当に多くなりました。ここ1~2年で生成AIを取り巻く環境が大きく変化した証拠とも言えます。

以前は「一部の詳しい人が使う新しい技術」という印象がありましたが、今では学生だけではなく、教員や企業にとっても身近なツールとなっています。

そこで今回から2回にわたり、専門学校教育において今後ますます重要になる「AIリテラシー」についてお伝えしたいと思います。

生成AIは「特別なツール」から「日常のツール」へ

2026年現在、ChatGPTをはじめとする生成AIが広く利用されるようになってから、わずか数年しか経っていません。しかし、その間に生成AIは驚くほどのスピードで進化し、私たちの生活や仕事に深く入り込んできました。

以前は、生成AIというと「調べ物をしてくれたり、文章を書いてくれたりする便利なツール」というイメージを持つ人が多かったように思います。しかし現在では、画像や動画の生成、自動作曲、プログラムの作成、企画書の作成、翻訳、データ分析、アイデアの壁打ちや面接・面談の相手役まで、その活用範囲は急速に広がっています。

企業においては、状況はさらに加速していると言えます。業務効率化やアイデア創出、資料作成はもちろん、採用試験にも生成AIを活用する企業が増加しており、「生成AIを使えること」が一つのスキルとして評価される場面も珍しくなくなりました。今後、学生たちが就職する企業では、生成AIを全く使わない職場の方が少なくなると考えられます。

しかし一方で、学校現場では教員の方々からこのような声を聞くことがあります。

「学生がレポートをAIで作成してしまうのではないか」
「どこまでAIを使わせてよいのか判断が難しい」
「教員自身がまだ使いこなせていない」

こうした不安を持つことは当然のことです。教員という仕事の特性もあると思いますが、新しい技術が登場すると、その便利さよりもリスクの方が先に気になるものです。

ですが、学生たちは私たちが思っている以上に生成AIを身近な存在として活用しています。

例えば、アルバイト先で文章を作成するとき、簡単なデジタルチラシを作るとき、旅行の計画を立てるときなど、日常生活のさまざまな場面で生成AIを利用しています。

教員が「使わせない」と考えていても、学生は学校の外で当たり前のように使っているという現実があります。

だからこそ、これからの学校教育は、「AIを使うか使わないかを議論する段階」から、「AIをどのように使いこなすかを教える段階」へ移っていく必要があるのではないでしょうか。

なぜ「情報リテラシー」の再定義が必要なのか

「情報リテラシー」とは一般的に、必要な情報を適切に検索して集める「情報収集力」、集めた情報の真偽を見極める「情報分析力」、集めた情報をもとに問題解決などに活用する「情報活用力」、モラルを守りながらわかりやすく伝える「情報発信力」を指します。

現在、インターネット上には、人が作成したものだけではなく、生成AIによって作成されたものも数多く存在していますが、どちらも誤情報やフェイクが含まれている可能性がある点は変わりません。そのため、情報の正確性を見極めながら活用するための「情報リテラシー」の重要性は変わらず高いと言えるでしょう。

しかし、「生成AIを自らが活用する時代」には、それだけでは十分とは言えません。

例えば、生成AIに質問を入力すると、一見すると非常によくまとまった文章を短時間で作成してくれます。そのため、「AIが答えてくれたのだからすべて正しいだろう」と錯覚してしまうことがあります。しかし、生成AIはもっともらしい内容でも誤った情報を生成する場合があります。そのため、生成された情報をそのまま受け入れるのではなく、利用者自身が内容を確認し、判断することが重要です。

これまで「情報リテラシー」は、主に「他者が作成したインターネット上の情報を利用する際に、その情報の信頼性や適切性を判断する力」と捉えられてきました。しかし、生成AIの普及によって、今後は「AIを活用して自分自身が作成した情報についても、その内容を確認し、適切に利用・発信する力」まで含めて考える必要があるでしょう。

つまり、これからはインターネット上の情報を利用する際の「情報リテラシー」だけではなく、「AIに生成させた情報を評価し、安全かつ適切に活用する力」も必要になるのです。

実際、企業ではこのような考え方が広がっています。生成AIの活用を推進している企業や教育機関では、「AIを使う人材」ではなく、「AIを安全かつ適切に使いこなせる人材」の育成を重視するようになっています。これは、生成AIが便利である一方、使い方を誤れば誤情報の拡散や情報漏えいなど、さまざまなリスクにつながる可能性があるためです。

専門学校で「AIリテラシー教育」が求められる理由

専門学校は、職業人を育成し、社会へ送り出す役割を持った教育機関です。そのため、生成AIの操作方法だけを教えればいいわけではありません。卒業後に仕事の現場で安心して生成AIを活用できるよう、「どのような場面で使うべきか」「どのような場面で使うとリスクが高くなるのか」「AIが出した答えをどのようにチェックするのか」といった判断力まで育てる必要があります。

また、「個人情報の取り扱い」といった共通部分以外は、学科や目指す職業によって必要なAIリテラシーが異なることもあるでしょう。例えば、美容系では顧客情報や写真の利用方法、イラストやデザイン系ではIP(知的財産)や著作権、情報系ではプログラムの利用方法など、それぞれ注意すべきポイントが違います。

つまり、「生成AIを活用する」という一つの行為であっても、職業によって求められる知識や責任は異なるのです。

だからこそ、専門学校では、それぞれの専門分野に合わせた「AIリテラシー教育」が、これからますます重要になっていくと考えられます。

まとめ

今回は、生成AIが急速に社会へ浸透している現状と、専門学校においてAIリテラシー教育が必要とされる背景についてお伝えしました。

これまでの情報リテラシー教育は、「インターネット上の情報を活用する視点に立ったもの」が中心でした。しかし、生成AIが身近な存在となった今、「情報の発信者としてAIが生成した情報を適切に評価し、安全かつ適切に活用する力」も欠かせなくなっています。

専門学校は、学生が社会へ羽ばたくための最後の教育機関となることも少なくありません。だからこそ、生成AIを単に「便利なツール」として使わせるのではなく、「社会人として責任を持って活用するための判断力」を育むことが求められるのではないでしょうか。

次回は、生成AIを活用する上で教員や学生が知っておきたい代表的なリスクと、その背景にある仕組みについてお伝えします。

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この記事を書いた人
村上 敬一

村上 敬一

RTF教育ラボ代表/教育コンサルタント/東京都杉並区内中学校学校運営協議会委員
全国の公立および私立の小学校・中学校・高等学校、専門学校、塾などで教員研修、講師研修、授業や学級経営を中心とした教育全般に関するアドバイスを行う。また、現在まで18年間に渡り、毎年約150名の教員志望者を育成。年間の授業観察数は300を超え、これまでに約5000の授業を観察している。
RTF教育ラボ(https://goseminarcourse01.wixsite.com/rtfkyouikulab

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