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TOP教養スキルアップ指導スキル(25)~その使い方は大丈夫?学生が陥りがちな「生成AIのNG活用例」(前編)

指導スキル(25)~その使い方は大丈夫?学生が陥りがちな「生成AIのNG活用例」(前編)

連載授業アップデートテクニック

変化する学生のニーズ、技術やツールの進歩、多様性の受け入れなど、常に進化が求められる現代の教育現場。授業をアップデートしなくてはいけない時期が到来しています。この連載では、教員向け研修や教員志望者の育成を行う「RTF教育ラボ」の代表で、年間300もの授業観察を行う教育コンサルタントの村上敬一さんから、専門学校の先生に向けた「令和の授業テクニック」を教えてもらいます。

前回、前々回は、生成AIが急速に普及する中で、専門学校においても重要となっている「AIリテラシー」についてお伝えしました。

指導スキル(23)~「使わせない」から「使いこなす」へ | 専門学校で今、教員と学生に求められるAIリテラシー(前編)

指導スキル(24)~「使わせない」から「使いこなす」へ | 専門学校で今、教員と学生に求められるAIリテラシー(後編)

生成AIは、文章作成や情報収集、画像・動画制作など、さまざまな場面で活用できる便利なツールです。一方で、ハルシネーションや個人情報・機密情報の漏えい、著作権、データバイアスなど、使い方を誤ればさまざまな問題につながる可能性があります。

では、実際に学生たちは、どのような場面で生成AIの使い方を間違えてしまうのでしょうか。

教員からすると、「なぜこんな使い方をしたのだろう」と思うケースもあるかもしれません。しかし、学生本人には必ずしも悪意があるとは限りません。

「AIに聞けばすぐに答えが出てくる」
「自分で文章を書くより、AIに任せたほうがうまくできる」
「名前を書かなければ個人情報にはならないだろう」

このように、生成AIの便利さを優先するあまり、どこにリスクがあるのか十分に考えないまま、もしくはリスクをイメージできないまま利用してしまうことがあります。

そこで今回は、専門学校で起こり得る具体的なケースを取り上げながら、「なぜ学生はそのような使い方をしてしまうのか」「教員はどのように指導すればよいのか」について考えます。

ケース1:生成AIが書いたレポートをそのまま提出。レポートには架空の文献引用が含まれていた

授業でレポート課題が出ました。課題テーマについて調べ、2000字程度のレポートを作成する必要があります。しかし、Aさんはアルバイトなどもあり、課題に取り組む時間を確保できません。そこでAさんは生成AIに、「このテーマについて2000字程度のレポートを書いて」と入力しました。すると、短時間で非常によくまとまった文章が完成しました。さらに、「参考文献も挙げて」と入力すると、論文や書籍のタイトル、著者名なども提示されました。Aさんは「ここまで詳しく出てくるのだから、間違いないだろう」と考え、文章をほとんど修正せず、そのままレポートとして提出しました。ところが、教員が内容を確認すると、引用されている文献の一部に不自然な点があります。調べてみると、実際には存在しない論文が含まれていました。Aさんは、生成AIが提示した文献だったため、実在するものだと思い込んでいたのです。

原因

これは、前回の記事で紹介した「ハルシネーション」の典型的なケースです。

生成AIは、事実を検索して答えているとは限りません。もっともらしい文章を生成するため、実在しない人物や文献、統計などを、あたかも存在するかのように示してしまうことがあります。

学生は、「生成AIが間違えるわけがない」と思い込み、真実かどうか疑うことすらしなかったため、「ハルシネーション」に気づくことができませんでした。

対処法

では、教員は学生にどう指導すればよいでしょうか。

大切なのは、「生成AIを使ってはいけない」と禁止することではありません。

「生成AIを使ってもよいが、生成AIが提示した文献は必ず自分で確認する」といったルールを設けることが重要です。

実際に存在する文献なのか、著者名は正しいのか、その内容は本当にレポートで述べていることを裏付けているのか。

大学や研究機関、出版社などの公式情報を確認する習慣を身に付けさせましょう。

さらに、レポートの評価においても、完成した文章だけを見るのではなく、「どのような情報を調べ、どのように判断したのか」という過程を確認する方法があります。

「生成AIがそう言っているから正しい」のではなく、「生成AIがそう言っているが、本当に正しいのか」と考える。

この習慣を身に付けさせることが、AIリテラシー教育において重要なのです。

ケース2:エントリーシートを生成AIに丸投げ。面接で「自分の言葉」で話すことができなかった

Bさんは、生成AIを利用してエントリーシートを作成しました。Bさんが、「人と協力することが得意」「責任感がある」と生成AIに入力すると、「周囲と協力しながら課題を解決できる」「責任感を持って最後まで物事に取り組める」といった、立派な自己PRが完成しました。Bさんは、その文章をほぼそのままエントリーシートに使用した結果、書類選考を通過し、面接へ進むことになりました。ところが、面接官から、「あなたが責任感を発揮した具体的な経験を教えてください」と質問されると、Bさんはうまく答えることができませんでした。また、エントリーシートには「周囲と協力しながら課題を解決した」と書かれているものの、「具体的にどのような場面だったのか」と聞かれると、自分の経験として整理できていなかったため、こちらも答えることができませんでした。その後もBさんは、余計に緊張して回答が曖昧になり、面接は思うように進みませんでした。

原因

就職活動でも、生成AIは非常に便利なツールです。

「自己PRを300字で作って」「この文章を就職活動向けに添削して」と入力するだけで、読みやすく、整った文章を作成してくれます。

Bさんにしてみれば、「生成AIのほうが自分よりきれいな文章を書いてくれるのだから、任せたほうがいい」と考えたのでしょう。

しかし、就職活動で企業が知りたいのは、文章の美しさだけではありません。

「その文章に書かれていることを、本人が自分の経験として説明できるか」が重要です。

対処法

このケースでも、教員は「就職活動で生成AIを使ってはいけない」と指導する必要はありません。

例えば、
(1)まず自分自身で経験や考えを書き出す
(2)AIに文章の構成や表現についてアドバイスしてもらう
(3)AIの文章をそのまま使わず、自分の言葉に置き換える
(4)自分の経験をもとに具体例をイメージする
(5)面接でその内容を具体的に説明できるか確認する
という使い方を伝えましょう。

「生成AIが作った文章を提出する」のではなく、「自分の考えを生成AIに整理してもらう」という発想に変えることが必要です。

これは、就職活動に限った話ではありません。

社会に出れば、生成AIを利用してメールや企画書、プレゼンテーション資料などを作成する機会も増えるでしょう。

だからこそ学生には、AIに文章を作らせる技術だけではなく、「AIが作ったものでも、内容について説明できること、責任を持つのは自分自身であること」という意識を持たせる必要があります。

ケース3:「生成AIに聞けば答えが出る」と思い、自分で調べることをやめてしまった

Cさんは、授業で分からないことがあると、すぐに生成AIへ質問するようになりました。専門用語が分からなければ生成AIに聞く。課題のテーマが決まらなければ生成AIに聞く。レポートの構成が思いつかなければ生成AIに聞く。なんでもすぐに生成AIに聞いています。その結果、次第に「まず自分で教科書や資料を確認する」「複数の情報を比較する」「自分なりに考えてみる」という工程を飛ばすようになってしまいました。

原因

生成AIが示した一つの回答を、「正しい答え」として受け取ってしまい、何度も使ううちに「楽だ」と認識して、依存してしまっている状態です。

これは、前回の記事で紹介した「情報リテラシー」とも関係する問題です。

生成AIは、情報収集の入口として活用することができます。しかし、生成AIの回答だけで判断してしまえば、情報の偏り(データバイアス)や誤りに気づけない可能性があります。

対処法

教員は、「生成AIを使ったかどうか」だけを見るのではなく、「生成AIの回答をどのように扱ったのか」を見る必要があります。

例えば、「生成AIの回答以外に、どんな資料を調べましたか?」「この情報が正しいと判断した根拠は何ですか?」「反対の意見や、別の考え方はありませんでしたか?」と問いかけてみるのもよいでしょう。

こうした問いを繰り返すことで、学生は「生成AIが答えてくれたから終わり」ではなく、「生成AIの回答を材料にして、自分で考える」という使い方を学んでいきます。

まとめ|生成AIを活用する上で身に付けたい感覚とは

今回は、学生が陥りがちな生成AIのNG活用事例として、「レポート」「就職活動」「情報収集」に関する3つのケースを紹介しました。

3つのケースに共通しているのは、本来は学生自身が行うべき確認や判断、思考まで全て生成AIに任せてしまっていることです。

生成AIを使うことによって、学生が効率よく学べる場面は数多くあります。ただし、「効率よく学ぶこと」と「楽(手抜き)をすること」の区別は必要です。

一方で、「生成AIに聞けばすぐに答えが出る」という便利さに慣れてしまうと、自分で調べたり、考えたり、試行錯誤したりする機会を失ってしまい、生成AIに依存してしまう可能性もあります。

だからこそ教員には、「生成AIを使ったか、使っていないか」だけではなく、

「どこまで生成AIに任せたのか」
「生成AIの回答をどのように確認したのか」
「最後に自分自身で何を考えたのか」

という視点から学生の学びを確認することが求められるでしょう。

専門学校は、学生が社会へ羽ばたくための最後の教育機関となることが多いでしょう。

卒業後の仕事では、生成AIを使うこと自体は特別なことではなくなるはずです。だからこそ、学生時代から「生成AIに仕事をしてもらう」のではなく、「生成AIを活用して自分の仕事の質を高める」という感覚を身に付けておくことが重要です。

次回は、個人情報や肖像、著作権など、学生自身だけではなく、実習先や顧客、作品の権利者など、第三者を巻き込む可能性のある生成AIのNG活用事例についてお伝えします。

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この記事を書いた人
村上 敬一

村上 敬一

RTF教育ラボ代表/教育コンサルタント/東京都杉並区内中学校学校運営協議会委員
全国の公立および私立の小学校・中学校・高等学校、専門学校、塾などで教員研修、講師研修、授業や学級経営を中心とした教育全般に関するアドバイスを行う。また、現在まで18年間に渡り、毎年約150名の教員志望者を育成。年間の授業観察数は300を超え、これまでに約5000の授業を観察している。
RTF教育ラボ(https://goseminarcourse01.wixsite.com/rtfkyouikulab)

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