
2026年6月22日、情報処理推進機構(IPA)は、2027年度から実施予定の「データマネジメント試験(仮称)」のサンプル問題を公開しました。
公開された問題からは、新たな試験がどのような知識や考え方を評価しようとしているのか、その方向性が見えてきます。
国家試験が新設されるということで注目を集めていますが、この試験を単なる資格試験として捉えるだけでは、その本質を見誤るかもしれません。
今回は、長年にわたり教育現場でIT人材育成に携わってきた、株式会社ウイネットの情報処理教材の著者に、「データマネジメント試験」に対する見解を伺いました。
目次
データマネジメント試験が問う「データを扱う力」

「データマネジメント試験」という名前から、以下のような技術を想像する方もいるかもしれません。
- SQL
- データベース設計
- 正規化
- ER図
しかし、公開されているサンプル問題※を見ると、問われているのはそれだけではありません。
※参考:独立行政法人情報処理推進機構「新試験制度のサンプル問題について」
例えば、
- データの品質をどのように維持するか
- データの責任者(データオーナー)は誰か
- 複数のデータをどのように統合・活用するか
- データの意味やルールをどのように管理するか
といった、組織全体でデータを適切に管理し、活用するための考え方が中心となっています。
言い換えると、この試験は、データを組織の重要な資産として適切に管理し、それをビジネスに活かすための考え方や手法を問う試験であると考えられます。
データに基づく意思決定(データドリブン)を支える基礎的な知識や考え方が重視されていると言えるでしょう。
AIを使いこなす人材に必要な力
生成AIの活用が進む中で、単にAIに質問するだけでは十分な成果は得られません。AIが適切な回答を返すためには、元となるデータや情報が整理されていることが重要です。
必要な情報を集める→整理する→構造化する→AIに適切に伝える
こうしたプロセスが重要になります。
その意味で、「データマネジメント試験」は、「AIを活用するための基礎力」を測る試験とも言えるのではないでしょうか。
新たなIT人材像とデータマネジメント試験

従来の情報処理技術者試験は、
- システム開発者
- インフラエンジニア
- プログラマ
といったIT技術者を主な対象としてきました。
一方で「データマネジメント試験」は、
- 情報システム部門
- DX推進担当
- 業務改善担当
- ITベンダーとの窓口担当
など、データやAIを活用して業務を推進する人材を強く意識しているように見えます。
基本情報技術者試験がシステムの設計や開発など、IT技術者としての知識・技能を問う試験であるのに対し、「データマネジメント試験」は、データを整理・分類し、関係性を理解しながら業務に活用する力を重視した試験ではないかと考えられます。
公開されているサンプル問題も、専門用語や技術的な実装方法を問うというより、データベースの基本的な考え方を、利用者の視点で理解しているかを確認する内容が中心となっています。
システムを「作る人」だけでなく、システムを「理解し、活用し、判断できる人」。さらに、AIやデータを業務で活用できる人材へと、IPAは育成の対象を広げようとしているのかもしれません。
専門学校教育のこれからの課題
現時点では、多くの情報系学科において基本情報技術者試験が学習の中心であることに変わりはありません。
しかし今後、
- AI活用教育
- データ活用教育
- DX人材育成
の重要性が高まるにつれ、「プログラムを書く力」だけでなく、「データを整理し、活用する力」をどのように育成するかが、教育現場における大きな課題となっていくでしょう。
すでに専門学校でも、プログラミング中心ではなく、データやAIの活用を重視した学科を設置する動きが見られます。
「データマネジメント試験」は、その変化を象徴する試験の一つとして、今後注目すべき存在と言えそうです。
おわりに
「データマネジメント試験」は、新しい国家試験という以上に、
「これからのIT人材に求められる力とは何か」
を私たち教育関係者に問いかけているように感じます。
専門学校教育においても、「エンジニアを育成するだけではなく、AI時代にデータを理解し、活用できる人材をどのように育てるか」。
その議論をさらに深め、今後の教育の方向性を考える一つの手がかりとなる試験ではないでしょうか。
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株式会社ウイネット
「ウイナレッジ」を運営する教育専門出版社。
30年以上にわたり、全国の専門学校、大学、職業訓練校へ教材を提供してきた知見を活かし、教職員の皆様に役立つ実務ノウハウを発信しています。
[公式HP:https://www.wenet.co.jp/]









