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TOP特集インタビュー教員経験を活かした、学生の「自信の種を育てる授業づくり」

教員経験を活かした、学生の「自信の種を育てる授業づくり」

連載専門学校の先生のお仕事ライフハック

全国の専門学校の先生にインタビュー!先生の「お仕事ライフハック」=働くうえでの仕事術やアイデアを共有してもらいます。同じ職業だからこそ分かるお悩みやテクニックを参考に、明日からのお仕事ライフをアップデートしちゃいましょう!

最近の専門学校には、自分に自信が持てなかったり、意思をはっきり伝えられなかったり、質問ができなかったりする学生も少なくありません。 こうした姿はすぐに改善できるものではありませんが、社会に出る前に少しでも自信を持てるようにサポートしてあげたいですね。

第13回となる今回は、考え抜かれた授業デザインと寄り添いで、学生の「自信の種」を育てることに力を注ぐ、富山情報ビジネス専門学校の中井兵馬先生にお話を伺いました。

富山情報ビジネス専門学校
情報システム学科

中井兵馬 先生

中学校時代、書籍「ヤンキー母校に帰る」を読んだことをきっかけに教員を志す。小学校教員、病院事務を経験した後、ITへの強い興味と熱意から、未経験ながら情報システム学科の先生に。現在は「情報処理技術者試験」資格対策、プログラミング、AIなどの指導にあたる。

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経歴 ・先生になった理由

一冊の本で志した教員、ITへの憧れが加わり情報システム学科の先生に

中学生のときに、反抗期で軽く家出したことがあったんです。そのときに本屋で「ヤンキー母校に帰る」という本をたまたま見かけて。当時は本を読むタイプではなかったんですけど、そのままバーっと読んでみたら、すごくスッキリした気持ちになって家に帰れました。その「ヤンキー先生」への憧れがきっかけとなって、大学の教育学部に進学しました。大学卒業後は小学校教員として働いていたんですが、頑張りすぎてしまう生活を見直したいという思いと、社会の常識をもっと知りたいという思いが重なり、退職に至りました。その後、病院の事務で採用を担当していた際に、偶然本校の情報システム学科の求人を目にしました。ITは漠然とした憧れがある分野だったので、「やりたい」と心が動くのが分かりました。私は、教育は大きく捉えると福祉の1つだと思っていて、「人が自信をつけるきっかけになりたい」「できるようになった瞬間に立ち会いたい」みたいな気持ちがやっぱりあったんですよね。

ただ、その時点でIT関連の経験も知識も全くなく…。面接でも聞かれましたね。「あなたは本当に情報システム学科の先生になりたいんですか?」って(笑)。採用の連絡を受けたその日に本屋で参考書を買って。その日の晩から入社4年目の今に至るまで、勉強をしなかった日はほとんどないですね。「本当に自分に務まるのか」という不安もありましたが、逆にこの状況こそが「学び続ける教師」という自身の理想に近づけるものだと思っています。

現在の業務

2クラスの担任、学園祭責任者として学生に深く関わる

メインは授業とアドバイザ業務です。アドバイザは担任のような業務で、今年からは1年生と2年生の2クラスを担当しています。本校にはいわゆるホームルームがなく、代わりに「就職支援」という授業で連絡や就職指導を行っています。

授業では、アルゴリズムとデータ構造、アプリ制作、情報処理演習、応用情報処理演習、AI基礎、AI概論、AI本論、資格対策などを担当しています。試験前にはボランティアで補習を設けて、学生のフォローアップを行っています。

そのほかにも学園祭責任者を務めており、主催の「学生会」の思いを形にするべく、日程調整や教職員の役割分担、進捗管理などを行っています。僕自身が大学時代に新入生歓迎会の実行委員をした経験があり、学生が主体となる楽しさを実感しているんですよね。だから「こんなこともできるよ」といろいろと助言してみたら、学生も進んで動くようになって。去年からは模擬店を始め、今年からは開催日を増やし、年々さらなる盛り上がりを見せています。去年「学生会」のメンバーだった今の2年生と卒業生の絆がすごく深くて仲がいいんです。僕は場を用意しただけですが、新しい人間関係ができるのを間近で見られるのはうれしいですね。

やりがい・おもしろさ

学生が「自信の種」を手にする瞬間

やりがいは、学生が「自信の種」を獲得する過程に立ち会えることです。専門学生の中には、「自分ならできる」「きっとうまくいく」といった「自信の種」を持ち合わせていない学生が少なくありません。そのため課題に粘り強く取り組めなかったり、途中で挫折してしまったりする姿を目にすることもあります。ただ、学生の横について一緒に取り組んでみると、勉強の方法を知らないだけ、要領を掴んでいないだけといった実態が見えてきます。例えば、小数の掛け算が苦手なとき、こちらもバカにした言い方は絶対せず、単にそこから始める。この点は、小学校教員だった経験が生きている気がします。そうやって段階的に教えていくと学生は素直に聞くようになるし、できるようになっていく。そうすると、学生は想像をはるかに超えた成長を遂げ、筆算ができなかった学生が国家試験に合格したり、希望の就職先に内定したりします。その報告を受けるときに大きなやりがいを感じますし、その頃には学生はすでに「自信の種」を手にしていることがほとんどで、当初と比べて明らかに顔つきが変わっているのを目にすると、すごくうれしくなります。

達成感を得た経験

「基本情報技術者試験」の合格率が年々アップ

私が担当している「基本情報技術者試験」の合格率が年々上がっており、カリキュラム編成と狙いを明確にした授業が上手くいっていると感じています。3~4年前までは、本校の「基本情報技術者試験」合格者は毎年10名ほどだったのですが、令和5年度は35名(富山県の専門学生の合格者は36名)、令和6年度は24名(富山県の専門学生の合格者は27名)でした。つまり、県内で合格した専門学生の約9割が本校の学生という状況で、新聞社からも取材を受けました。

やっていることは特別なことではありませんが、時間をかけるべき科目に時間をかけて、担当すべき先生を配置する。授業はすべて丁寧に作り、毎年見直す。これを徹底しています。

加えて、私は学生をとことん追いかけますね(笑)。「基本情報技術者試験」は不合格だった場合に1カ月後から再受験が可能なんですが、「次いつ受けるの?」「このプリントはあと何回やるの?」「プリント終わったら持ってきて」などとにかく声をかけます。1週間経って持って来なかったら「どうなってる?」と確認する。そこまですると学生もなんだかんだやる。やれば自然と力がついていく。

また、学習内容を細分化してスモールステップで進めるように心がけています。例えば、読み方を知らない字や記号って心の中で読み飛ばしてしまいますよね。不等号の意味を正しく理解していなければ、情報処理の勉強を進める上で必ず支障が出る。教科書に小さく載っている内容ですが、私はこれを最初に授業で取り上げます。何となくにしておくと、プログラムを正しく読めないから。「こんなのは当たり前」と思わず、なるべく細分化して教えることを意識しています。

さらに、4人グループを作り、問題集の模試4パターンのうち、1人につき1パターンだけ完璧にしてもらう学習法も取り入れています。担当パターンごとに集まり解説を考え、説明の練習をしたうえで、第1回目の模試を全員で受ける。その後、担当の学生からグループ全員に解説してもらう流れです。学生にとっても模試4回分を完璧にするのは大変でも、1パターンだけならやってみようという気持ちになるかなと思って。

こうした積み重ねが、合格率の向上につながっていると感じています。

お仕事ライフハック

「学生へのプレゼント」として授業をデザイン

私のライフハックは、「授業はプレゼント」「授業づくりは料理づくり」をイメージしていることです。

学生に「授業が分からない」と言われたら、「プレゼントを受け取ってもらえなかったんだ」と振り返ります。まずは学生が欲しいものを見定め、それを時間内に抱えきれるようにする。「授業がつまらない」と言われれば、プレゼントのラッピング、シチュエーション、タイミングは適切だったのか考える。そういうのをデザインすることが授業なんじゃないかと思っています。

「授業づくり」は料理に例えることができます。料理が素材の仕入れやレシピの考案から始まるように、授業づくりもカリキュラム編成、教科書選定から始まります。お客様の好みやアレルギーを考慮する料理と同様に、学生の得意・不得意、興味・関心を把握し、素材をおいしく食べてもらえる料理(授業)を振る舞う。苦手な食材でもおいしく食べてもらえるようにする(難しくても理解できるようにする)、また食べたいと思ってもらえる(また授業を受けたいと思ってもらえる)ようにする。そんなイメージで授業を作っています。

また、本校の授業は対面が原則なんですが、せっかく学校に来てもらうのだから、対面授業のメリットを最大限に活かしたデザインにしないといけないと思っています。例えば「指名」。嫌がる学生もいると思いますが、社会に出たら突然意見を求められたり、答えなくてはいけなかったりする場面は山ほどありますよね。それに、授業に緊張感を持たせて眠らせない効果もあります。さらに授業中には、隣の学生とペアになって話す機会を設けています。休み時間には話さない相手でも、授業内なら話しますから。これも対面授業ならではの良さだと思っています。

学生とのコミュニケーション

あえて隙を見せて話しやすい雰囲気を作る

先生が忙しそうだからと遠慮したり、自分の質問の質は低くて迷惑になると決めつけたりして、質問し学生が多いと感じています。だから、意図的に隙を作り、学生が声をかけやすい雰囲気を出すようにしています。例えば、あえて弱いところに見せる。「わからない」「あの資料どこだっけ?」とか、学生の前で言いますね。あとは、どんどんこちらから話しかける。基本的にすれ違うたびに、挨拶から始まって何かしら話します。「勉強やってる?」が多いですね。

ワークライフバランス

仕事と生活を切り分けて退勤後も充実

定時で帰ることを心がけています。ダラダラと仕事せず、仕事以外は家庭を中心に、自分がやりたいことに時間をかけています。副業で家庭教師もしており、中学生と高校生を週3回、計3人担当しています。中学~高校の知識をキープしたいという学びの欲もありますが、その世代の子どもに関わるのが単純に楽しいですね。副業は私の中で負担ではなく、楽しくお小遣い稼ぎしている感覚です。

学校の自慢

社会のニーズに応えて進化している学校

本学園の理事長が世の中の動きに敏感であるため、社会のニーズに応えた学校になっていると思っています。例えば、富山県内に歯科衛生士を目指せる専門学校が1校しかなかったことから、本校では今年度「歯科衛生士学科」を新設しました。来年度は「コミック・イラストレーター専攻」を新設予定ですが、オープンキャンパスでの反応が非常に良く、ニーズの高さを実感しています。また、現行の「ゲームクリエイター専攻」は、来年度から「ゲームクリエイター学科」となり、2年制から3年制に変更されます。「3年かければ作成するゲーム作品がもっとよくなる」と担当教員がプレゼンし、実現しました。富山県内でゲームクリエイターを目指せる学校は本校だけなんですよ。正直大変さもありますが、世の中のために仕事ができている実感があります。

一日のスケジュール

  • 8:30
    出社

    授業準備、メールチェックなど。

  • 9:00
    授業

    ほとんどフルで入っています。

  • 12:00
    昼休み
  • 13:00
    授業

    午後もほぼフルで入っています。

  • 16:00
    授業準備、会議など
  • 18:00
    帰宅

    洗濯物を取り込んだり、食器を洗ったり、風呂掃除をしたり。

  • 21:00
    自由時間

    資格取得のための勉強をします。(情報系以外も取りたい!)

  • 23:00
    就寝

必須アイテム

パソコン

パソコンがあれば基本的に何でもできます。逆に、パソコンがないと説教くらいしかできません…。

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全国の専門学校、大学、職業訓練校、PCスクール等教育機関向けに教材を制作・販売しています。

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