
連載専門学校の先生のお仕事ライフハック
全国の専門学校の先生にインタビュー!先生の「お仕事ライフハック」=働くうえでの仕事術やアイデアを共有してもらいます。同じ職業だからこそ分かるお悩みやテクニックを参考に、明日からのお仕事ライフをアップデートしちゃいましょう!
専門学校では、専門知識や技術を身に付けることはもちろん大切ですが、社会に出てからまず求められるのは、マナーや生活習慣、コミュニケーション力といった「働くうえでの土台となる力」です。これらの基礎力をしっかりと育むことも、学生たちの将来を見据えた教育には欠かせません。
第12回となる今回は、そんな「人としての成長」に重きを置き、入学直後からの生活指導や縦のつながりを意識した授業で、生涯にわたって活きる力を育てている九州国際情報ビジネス専門学校の山口麻衣先生にお話を伺いました。

九州国際情報ビジネス専門学校
医療ビジネス科 学科長
山口麻衣 先生
大学にて教員免許を取得後、調剤事務・医療事務の分野で実務経験を積む。その後、オファーを受け「九州国際情報ビジネス専門学校」へ。現在は医療ビジネス科の学科長として現場を支える。また、23歳、20歳、15歳の3人の子どもを持つ母として、仕事と家庭の両立にも励んでいる。
目次
経歴 ・先生になった理由
諦めていた先生になる夢を恩師が後押し

子どもの頃からずっと小学校の先生になることが夢でした。大学へ進学し、無事に小学校と幼稚園の教員免許を取得したものの、採用試験に受からず…。同時期に当時から交際していた夫が転勤となり、私も一緒に引っ越すことになりました。教員免許を活かすことなくそのまま結婚・出産へ。引っ越し先で仕事を探している際、たまたま薬局の求人に目がいき、結婚前は調剤事務で、2人目出産後から3人目妊娠までは医療事務を経験しました。
しばらく育児に専念し、3人目を出産した半年後から職業訓練へ通い始めました。子供が生まれてまだ間もなかったんですが、正社員の経験がなかったので、資格を取って医療の世界で正社員として働きたいと思ったんです。そこで医療事務、調剤事務、サービス接遇、簿記、Word、Excelを学び、半年間ですべての検定に合格しました。
「先生になりたい」という夢はすでに諦めて、再び医療事務のパートとして働いていた頃、職業訓練でお世話になった講師であり、現在勤めている専門学校の上司から、「正職員として教員にならないか」と声をかけていただきました。「こんなチャンスは二度とない」と思い、迷わずお受けしました。それから教員としての道を歩み始め、今年で12年目になります。
現在の業務
学科長、担任、授業、ガイダンスとフル稼働

今年度は2年生の担任業務と、医療分野では医療事務、診療報酬、看護助手、ビジネス分野ではサービス接遇、一般教養、就職実務の授業を担当しています。学科長としては今年度で4年目を迎えました。現在は、ほぼフルで授業に入っている状況です。また、佐賀県内の高校へ出向き、医療事務や一般事務に関する職業理解を深める体験授業も実施しており、本校を知ってもらう良いきっかけにもなっています。
やりがい・おもしろさ
日々の何気ないやりとりで学生への愛おしさが増す
もともと小学校の先生を目指していたこともあり、高校を卒業したばかりの学生への指導、特に担任業務がむずかしく、入社して数年は自分の未熟さを痛感して悩む日々でした。ただそんな中でも、やめるという選択は一切ありませんでした。それは、日々の業務の中にすごくやりがいを感じていたからです。検定の合格などはもちろんですが、学生との何気ないやりとりが楽しいんですよ。
実は私、教えることは好きなんですが、緊張するタイプなんです。5年目くらいまでは、入学したての学生の前で最初に話すときに声が震えるくらいで…。それでも学生が私を頼ってくれたり、他愛のない話をしてくれたり…、そういうときに「ああ、いいな、この仕事って」と思うんです。何より学生がかわいいんですよね。みんな本当にかわいい。それが日々のやりがいですね。
また、卒業生が来校してくれたり、食事に誘ってくれたりと、卒業してからも関係が長く続いていることも、この仕事をやっていてよかったなと思うことの1つです。結婚式に招待してくれたり、子どもを見せに来てくれたりする卒業生も多いんですよ。まるで孫がどんどん増えていくようです(笑)。
全体的にすごくアットホームなのですが、クラス全員が20歳の誕生日を迎えた瞬間に、学生が「先生、みんなで飲みに行きましょう!」と誘ってくれたときにはさすがに驚きましたね(笑)。
達成感を得た経験
晴れ晴れした学生の姿と生涯役立つ習慣付け
医療ビジネス科の学生は毎年就職率がほぼ100%ですが、全員が無事に内定をもらい、晴れ晴れした姿で卒業する姿を見送るときは達成感があります。
また、医療ビジネス科で導入している、入学直後の生活面、基本的マナーの徹底指導も成功している事例の一つです。例えば「授業の始まり・終わりの号令時は椅子を机の下に入れて挨拶する」「机上にテキストなどを乗せたまま帰らない」「週末は机の中の荷物をすべてロッカーに入れる」「掃除は日直が責任を持って行う」「挨拶は自らする」「TPOをわきまえた言葉遣いをする」など、4月はほぼ毎日教室へ行ってチェックしています。これは、私が「きちんと整理されていない教室での授業は気持ち良くないな」と感じたことがきっかけで始めた習慣なのですが、「鉄は熱いうちに打て」「始めが肝心」というモットーで入学直後に力を入れています。入学直後に徹底することで、途中からはこちらが何も言わなくてもできるようになり、卒業まで持続するんですよ。おかげで、いつもきれいな教室で授業できています。ホワイトボードの溝まで掃除されているので、朝本当に気持ちいいです。基本的生活習慣となりますので、社会に出てからも続けてくれればと思っています。
お仕事ライフハック
前向きに取り組む気持ちを育てる「つながり」作り
私が担当している「サービス接遇」の授業では、2年生が1年生を指導するスタイルをとっています。1年次の前半では私が基本を教え、後半からは2年生が教えるのですが、これにはメリットがたくさんあります。
まず、1年生は2年生に対してすごく素直です。そして上手な先輩を見ると憧れを抱くんですよね。サービス接遇以外でも、卒業生に仕事の話を発表してもらう機会があるのですが、先輩の話はすごく影響力があります。教員に対しては反抗することがあっても(笑)、2年生の話はしっかりと聞くんですよ。
2年生には「1年生の『サービス接遇検定準1級面接試験』の合否は、あなたたちにかかっているからお願いね」と伝えています。「しっかり指導しないといけない」という意識から主体性が芽生えるようです。ときには違う話で盛り上がっているようですが(笑)、そんな時間も大切かなと。今は個が尊重されている分、クラスでも少人数の輪が多いんですが、この授業は縦のつながりができるいい機会になっています。
また、保護者とのコミュニケーションも大切にしています。まずは保護者を味方につけると言いますか…(笑)。「そうですよね、お母さん!」という感じでフランクに接していますね。学生の性格にもよりますが、「今はこういう面が足りないから、この2年間で成長していきましょう」という話を保護者へ率直に伝えています。以前は保護者対応においても、言葉選びにすごく悩んでいたんです。今は、おそらく私がたくましくなってきたというのもありますが(笑)、私の子どもたちが学生と同年代になり、保護者の方と同じ目線で話せるのがいいのかなと思います。
ワークライフバランス
切り替えを徹底することで仕事もプライベートもプラスに
入社して数年は仕事が追いつかず、自宅に持ち帰ることや、職場での悩みを勤務時間以外に引きずることがありました。性格上、学生自身が丸付けしたプリントもチェックしないと気が済まないタイプで…。自宅で家事を済ませてから、睡眠時間を削って仕事をすることもありましたね。仕事自体が嫌ということは全くなかったんですが、自宅に仕事を持ち帰るのはよくないので、まずは持ち帰らないようにしました。段々と、仕事のことは職場に置いて帰る、職場を出たら考えないことが習慣となりました。逆も同じで、仕事以外の悩みがあるときは、職場に着くとすっかり忘れて仕事に集中できます。切り替えがうまくいくようになったことが、ワークライフバランスの充実につながっていると思います。
学校の自慢
一生モノの力を身に付ける伝統授業

医療ビジネス科では「ビジネス電話」に力を入れています。学生たちは1年次からデモ機で練習を重ね、1年次の終わりに「受付実習」を経験。2年次には本校で実施している「電話コンテスト」へ向けて練習を重ねます。電話応対はとにかく場数と慣れが必要ですので、2年間かけてじっくりと身に付けます。特に「受付実習」は本校の伝統的な授業です。1年次の2月から2年次の授業が始まる前の時期に、学生が1人ずつ交代で、受付、案内、お見送りなどの来客応対、お茶出し、電話応対、事務作業といった本校の受付業務全般を1日体験します。なかでも難しいのがやはり電話応対です。医療系の事務職に就く学生が多いですからね。電話は新人の業務だと思いますので、実践を積むいい機会です。その甲斐があり、卒業生たちが口をそろえて「ビジネス電話の授業が一番役に立っている」「電話を褒められました」と言ってくれます。
また、1年次に行っている「華道」も伝統的な授業です。華道を通して感性を引き出し、豊かな人間性を育成することを目的に行っています。本年度初めて医療ビジネス科に男子学生が入学したんですが、その学生も「華道の授業が一番楽しいです。心が癒やされます」と言ってくれています。難しい専門的分野の学習の中で、華道の授業はひとときの休息になっているようです。「華道瑩心流初傳(かどうえいしんりゅうしょでん)」のお免状も取得します。医療機関にはお花を置いてあることが多いので、履歴書に書くと、就職の面接試験で話がふくらむこともあるそうです。
一日のスケジュール
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8:40出社
授業準備、メールチェックなど。
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9:00全体朝礼
学校ガイダンスの報告、その他連絡事項。
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9:30授業
空き時間にさまざまな業務を進めます。
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12:20お昼休憩
ほぼ毎日お弁当を持参しています。
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13:10授業
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15:00授業終了
さまざまな業務を進める時間です。
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18:30退勤
買い物して帰宅、夕食準備、家事。週1回カウンセリング講座を受講しています。
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21:30自由時間
スマホでドラマやバラエティ番組視聴、ネットショッピングでリラックス。
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23:00就寝
必須アイテム

PC、スマホ、テキスト・電卓、メモ
テキストと電卓は医療事務では必須です。メモには、翌日の業務を箇条書きにしてから退社します。絶対忘れてはいけないことは、パソコン画面の中央に貼って帰ります。学校を出たら頭をリセットするので、このメモがないと翌日動けないんです(笑)。
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ウイナレッジを運営している出版社。
全国の専門学校、大学、職業訓練校、PCスクール等教育機関向けに教材を制作・販売しています。









