実務教育・職業教育に関わる皆さまにお役立ち情報をお届け!

実務教育・職業教育に関わる皆さまにお役立ち情報をお届け!|ウイナレッジ WE KNOWLEDGE

実務教育・職業教育に関わる皆さまにお役立ち情報をお届け!

TOP教養学校運営2026年10月から「カスハラ対策」が学校設置者の義務に!対象の言動と6つの措置

2026年10月から「カスハラ対策」が学校設置者の義務に!対象の言動と6つの措置

保護者からの申し入れに、どこまで応じるべきか迷った経験のある先生は少なくないでしょう。正当な意見や要望なのか、社会通念上許容される範囲を超えた言動なのか。その場で線を引くのは難しいものです。

2026年10月1日から、学校設置者にもカスタマーハラスメント(カスハラ)の防止措置が義務づけられます。文部科学省は2026年8月にガイドラインを公表し、対象となる言動や学校が講じるべき措置を示しています。

具体的には、方針の明確化や相談体制の整備、事案発生後の対応など、5つの措置が義務となります。これに加えて、他の事業主から協力を求められた場合の協力が努力義務として示されています。

この記事では、文部科学省のガイドラインに沿って、対象・体制・現場の順に整理します。

学校のカスハラ対応はいつから義務になる?

カスハラ防止措置が学校の義務になる背景には、働く人を守る法律の改正があります。いつから、誰が、どの言動に対して義務を負うのかを押さえます。

1.義務の根拠は労働施策総合推進法の改正にある

カスハラ防止措置の義務は、改正労働施策総合推進法(労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律・昭和41年法律第132号)に基づくものです。働く人を守るための法律で、これを改正する令和7年法律第63号が令和7年6月11日に公布され、令和8年(2026年)10月1日に施行されます。

具体的な措置の内容を定めているのは、厚生労働省の指針(令和8年厚生労働省告示第51号・令和8年2月26日公布)です。文部科学省は、これを学校現場に当てはめる形でガイドラインを作成しました。

※参考:文部科学省「学校と保護者・地域住民等とのより良い関係構築のためのガイドライン」p. 1, 3

2.義務を負うのは学校設置者

ガイドラインは、防止措置の義務化は「教育現場においても適用されるもの」(p. 1)としたうえで、措置を講ずる主体を学校設置者としています。個々の教員や学校長に課される義務ではありません。

学校設置者が誰を指すかも、ガイドラインが定義しています。

  • 公立学校:学校を設置・管理する教育委員会
  • 私立学校:学校法人
  • 株式会社立学校:学校設置会社
  • 国立大学法人が設置する附属学校:国立大学法人

専門学校では学校法人が設置者となっているケースが多く、学校法人が義務の主体となります。そのため、カスハラ対策は校内だけで完結するものではなく、法人として取り組む必要があります。この点を押さえておくと、この先で紹介する措置の内容も理解しやすくなります。

3.対象は3つの要件がそろった言動

ガイドラインは、対象となる言動を次の3つの要件で定義しています。

  • 保護者や地域住民等の言動であって、
  • 教職員が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものにより、
  • 教職員の就業環境が害されるもの

※出典:文部科学省「同ガイドライン」p. 6

この3つがそろって初めて対象になります。裏を返せば、保護者からの意見や苦情がすべて該当するわけではありません。ガイドラインも「社会通念上許容される範囲で行われたものは、今回の防止措置の対象には当たりません」(p. 7)と明記しています。

関連記事: ハラスメントの種類まとめ!事例や先生が気を付けるべき点を解説

カスハラ対応の対象になる9つの言動

ガイドラインは、対象となり得る言動の典型的な例を9つ挙げています。ただしこの9つに当てはまるものだけがカスハラというわけではありません。個別の事案の状況によって判断が異なる場合もあるため、9つの例に当てはまらない言動についても、広く相談に対応するなど、適切に判断・対応することが求められます。

1.9つは「要求の内容」と「伝え方」に分けて読む

9つは、着目している点で2つに分けて読むと整理しやすくなります。前半4つは何を要求しているかという「要求の内容」、後半5つはどのような言動で要求しているかという「伝え方」に着目しています。なお、この2つの区分は本記事独自の整理であり、ガイドライン上の分類ではありません。

着目点対象となる言動学校での例
要求の内容   そもそも要求に理由がない、または学校における教育活動と全く関係のない要求・性的な要求をする
・教職員の家庭や私生活に関する要求をする
要求の内容学校の教育活動および学校運営の範囲を著しく超える対応を求めるもの・学校外での行動や公園での遊び方まで監視するよう要求する
・明らかに学校の責務とはいえない要求をする
要求の内容対応が著しく困難な、または対応が不可能な要求・修学旅行の費用について不合理な減額や免除を求める
・担任の変更や退職を求める
要求の内容相当性を欠く賠償要求・教育活動と無関係な不当な賠償請求をする
・成績の低下を理由に賠償請求をする
伝え方身体的な攻撃・殴る、蹴る、叩く
・物を投げつける
・わざとぶつかる
・つばを吐きかける
伝え方精神的な攻撃・危害をほのめかして脅迫する
・教職員のプライバシーに関する情報をSNSへ投稿する
・無断で撮影・録画・録音する
伝え方威圧的な言動・大きな声をあげて威嚇、威圧する
・声を荒らげ、執拗に責め立てて高圧的に要求を主張する
伝え方継続的、執拗な言動・何度も電話して要求を繰り返す
・同じ質問を執拗に繰り返し文書での回答を強要する
・勤務時間外や自宅への訪問で謝罪を強要する
伝え方拘束的な言動・長時間の居座りで業務を妨げる
・頻繁に長電話をかけて拘束する
・校内施設から退去しない

要求そのものに問題がなくとも、伝え方が度を越していればカスハラに該当する可能性があります。逆に、伝え方が穏やかだからといって必ずしも対象外になるわけではありません。要求の内容と伝え方の両側面から個別に判断する必要があります。

※参考:文部科学省「学校と保護者・地域住民等とのより良い関係構築のためのガイドライン」p. 9-11

2.専門学校を名指しした記述はない

ガイドラインには事案ごとの判断例も載っていますが、専門学校を想定した記述はありません。「専修学校」「専門学校」という語は、全35ページのPDFを通して一度も出てこず、事案の例として挙げられているのは中学校2校と高校1校です。

ただし、判断の軸そのものは学校種によって大きく変わるものではありません。要求の内容と伝え方のどちらかが度を越していないかを見る、という考え方はそのまま使えます。

一方で、ガイドラインの対象には注意が必要です。ガイドラインが対象とする「保護者や地域住民等」は、「児童生徒等の保護者・親族・知人などの児童生徒等の関係者、及び地域住民等」(p. 6)と定義されており、学生本人からの言動については、この文科省ガイドラインでは対象として具体的に整理されていません。専門学校では、学生からの言動についても、労働施策総合推進法や厚生労働省のカスハラ防止指針、学校の規程等を踏まえて別途整理する必要があります。

3.指導への不満を訴えること自体はカスハラに当たらない

ガイドラインは「担任の指導に納得がいかないという訴えだけでは『保護者等の社会通念上許容される範囲を超えた言動』には当たらないと考えられます」(p. 12)と述べています。つまり、指導に対する意見や不満があることだけで、カスハラと判断するわけではありません。

また、障害のある保護者や地域の方が、差別的な取扱いをしないよう求めることや、社会的障壁の除去を必要としている旨を伝えること自体も、カスハラには当たりません。

ガイドラインは、正当な申入れについて「教職員が、こうした正当な申入れを踏まえて真摯に業務を遂行する意識を持つことも重要である」(p. 31)とも記しています。カスハラ対策を理由に、正当な申入れまで退けることのないように心がけましょう。

関連記事: 先生にとって難しい保護者対応、お互いのストレスを減らすための対策は?

4.線引きに迷う申し入れは記録して共有する

判断に迷う申し入れこそ、一人で抱え込まないことが大切です。ガイドラインも、該当するか否かが微妙な場合であっても広く相談に対応する姿勢を求めています。

やり取りの日時や内容、対応した人を記録に残しておけば、事案の経緯を組織内で共有し、後の事実確認や再発防止に活用しやすくなります。

学校設置者が取るべきカスハラ対応6つの措置

ガイドラインは、学校設置者が具体的に取り組むべき措置として次の6つを挙げています。

  1. 学校設置者の方針等の明確化及びその周知・啓発
  2. 相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
  3. 事案発生後の迅速かつ適切な対応
  4. 対応の実効性を確保するために必要な措置
  5. 1〜4までの措置と併せて講ずべき措置
  6. 他の事業主の講ずる雇用管理上の措置の実施に関する協力

※出典:文部科学省「同ガイドライン」p. 16

義務づけられているのは、最初の5つです。6つ目の「他の事業主の講ずる雇用管理上の措置の実施に関する協力」は、努力義務として示されています。順に見ていきましょう。着手の順番にも意味があります。

1.方針を決めて教職員と保護者の双方に周知する

最初の一歩は、学校設置者としての方針を明確にすることです。カスハラに対して組織として対応し、教職員を守るという姿勢を示します。

方針を決めるだけでなく、研修や校内文書などを通じて教職員に周知します。保護者や地域住民等に対しても、パンフレットやホームページなどで方針を周知することが望ましいとされています。

2.教職員が相談できる窓口を整えて知らせる

次に、教職員からの相談に応じる窓口を設けます。ガイドラインは設置形態を各設置者の状況に応じて検討するよう求めたうえで、参考として3つの例を図で示しています。

  • 学校設置者の組織内に相談窓口となる担当部署または担当者を置く
  • 元学校管理職などを「学校問題解決支援コーディネーター」等として配置し、警察や弁護士との連携をとりやすくする
  • 首長部局と連携した専門機関を設ける(ガイドラインは「主に公立の場合」と注記)

※参考:文部科学省「同ガイドライン」p. 20

3つ目は公立を想定した例です。学校法人が設置者である専門学校の場合、現実的なのは1つ目か2つ目になります。

相談窓口を設置するだけでなく、どこに、どのように相談すればよいのかを教職員に周知しておくことが大切です。

3.事案が起きたら事実確認から配慮・再発防止へ進む

実際に事案が起きたときの対応は、3つのステップに分かれます。

  1. 迅速かつ正確な事実確認
  2. 被害者に対する配慮のための措置
  3. 再発防止に向けた措置

まず事実を確認し、その結果を踏まえて必要な対応を検討することが重要です。

事実が確認できたら、速やかに被害を受けた教職員への配慮に移ります。ガイドラインが校内での対応例として挙げるのは次の4つです。

  • 行為者に対応する担当者を変更すること
  • 行為者との面談等は複数人で対応すること
  • 学校管理職が被害者のメンタルヘルス不調の相談等に乗ること
  • 暴行、傷害、脅迫などの犯罪に該当し得る言動については警察へ通報すること

※出典:文部科学省「同ガイドライン」p. 24

再発防止では、方針を改めて周知・啓発するとともに、次の4点が求められます。

  • 保護者や地域住民等は児童生徒等の健やかな成長を支えるパートナーであり、誠実な姿勢で対応することの重要性や、学校側の対応等について振り返り、今後の対応の改善につなげることの必要性について認識共有を図る
  • 必要な場合には、当該言動の発生の原因や背景となった学校設置者又は教職員側の対応等における問題や、保護者や地域住民等とのコミュニケーションの不足などの改善を図る
  • 必要に応じて、校内における慣行の見直しなどの職場環境の改善や組織風土の見直しを行う
  • 必要に応じて、事案の内容や対応経緯を記録し、個人情報の取扱いに留意して各学校に共有し、再発防止に活用する

※出典:文部科学省「同ガイドライン」p. 25

4.悪質な行為への対処を平時に決めておく

4つ目の措置が働くのは、事案が起きる前です。ガイドラインは「悪質な行為が起こる以前にこれらを抑止するための措置」(p. 27)と位置づけています。特に悪質と考えられる行為への対処方法をあらかじめ定め、教職員に周知したうえで、実行できる体制を整えます。

ガイドラインが挙げる対処の例は次の5つです。

  • 暴行、傷害、脅迫などの犯罪に該当し得る言動については、警察へ通報する
  • 行為者に対して警告文を発出する
  • 行為者の電話・面談ではなく、メールなど文書でのやり取りに切り替える
  • 行為者に対して学校への出入りを禁じる
  • スクールロイヤーや顧問弁護士に対応の代理を依頼する

※出典:文部科学省「同ガイドライン」p. 27

法的な判断が必要な場面では、弁護士など専門家に相談してから進めてください。

※参考:文部科学省「同ガイドライン」p. 16-30

5.プライバシーを守り相談した教職員を不利益に扱わない

5つ目は、1〜4とあわせて講ずべき措置です。内容は2点あります。ひとつは相談者・行為者などのプライバシーを保護するために必要な措置を講じて周知すること、そしてもうひとつが不利益取扱いの禁止です。

ガイドラインは、次の4つを理由とする免職・解雇その他の不利益な取扱いをしてはならないとし、その旨を教職員に周知・啓発することを求めています。

  • 「保護者等の社会通念上許容される範囲を超えた言動」に関して相談をしたこと
  • 事実関係の確認等の学校設置者の雇用管理上講ずべき措置に協力したこと
  • 私立学校の教職員においては都道府県労働局に対して、公立・国立学校の教職員においては人事委員会等に対して、相談、紛争解決の援助の求め又は申請を行ったこと
  • 改正労働施策総合推進法第37条に基づく調停の出頭の求めに応じたこと

※出典:文部科学省「同ガイドライン」p. 29(条番号はガイドラインの記載による。リンク先は施行前の条文)

6.他の事業主から協力を求められたら応じる

6つ目だけが努力義務です。他の事業主から、その雇用管理上の措置の実施について協力を求められた場合に応じる、というものです。

実習先の企業や連携先と日常的にやり取りする専門学校では、実際に関わる場面があります。たとえば実習先の社員から自校の教職員へ行き過ぎた言動があった場合、その企業から事実確認への協力を求められることが考えられます。

教職員が現場でできる4つの行動

組織の体制が整うまでの間も、保護者への対応は必要になります。ガイドラインが方針に盛り込む対処方法として挙げる例は7つですが、この7つに限られるわけではありません。そのうち、教職員が現場でとれる対応を4つ紹介します。

  1. 管理職に直ちに報告し、対応方針の指示を仰ぐ
  2. 可能な限り一人で対応させず、必要に応じて管理職が代わって対応する
  3. 相手に断りを入れたうえで、やり取りを録音する
  4. 十分な説明を行ってもなお要求が続く場合、一定の時間をもって退室や終話を求める

1.管理職にその場で報告して対応方針の指示を仰ぐ

判断を個人で背負わないことが出発点です。管理職に速やかに報告し、どう対応するかの指示を受けます。報告が早いほど、組織で対応しやすくなります。

2.一人で対応せず複数人か管理職が代わって応じる

面談も電話も、可能な限り複数人で対応します。記録を取る役と話す役を分けられるほか、後から状況を確認するときにも役立ちます。

3.相手に断ったうえでやり取りを録音する

録音する場合は、相手に記録として残す旨を伝えてから行います。やり取りを記録しておくことで、後から発言内容や対応の経緯を確認しやすくなり、事実確認や組織内での情報共有にも役立ちます。

4.説明を尽くしたら時間を区切って退室や終話を求める

説明を尽くしてもなお同じ要求が繰り返される場合、一定の時間の経過をもって退室を求めたり電話を切ったりすることが、対処方法の例として挙げられています。これは学校設置者が方針に盛り込む例であって、教職員が独断で行ってよいという意味ではありません。実際に対応する際は、自校の方針にこの項目が盛り込まれているかを確認し、定められた手順に沿って対応することが重要です。

※参考:文部科学省「同ガイドライン」p. 17-18

関連記事: 保護者からの要望にどう対応したらいい?

まとめ:カスハラ対策を学校の体制づくりにつなげる

2026年10月1日から、学校設置者にもカスハラ防止措置が義務づけられます。

  • 対象になるのは3つの要件がそろった言動。指導への不満を訴えること自体は該当しない
  • ガイドラインでは学生本人からの言動を対象として整理していない
  • 専門学校では学校法人などが該当し、5つの措置が義務、他の事業主への協力は努力義務となる
  • 教職員は一人で判断せず、報告・複数名での対応・記録を基本とする

義務化は、これまで個々の教職員が抱えてきた負担を、組織として引き受け直す機会でもあります。まずは、自校の方針や対応手順が文書になっているかを確認してみましょう。

カスハラへの対応を個々の教職員任せにせず、学校全体で支える仕組みへ。教職員が安心して働ける環境づくりにつなげていきましょう。

この記事は役に立ちましたか?

\ぜひ投票お願いします/
この記事を書いた人
株式会社ウイネット

株式会社ウイネット

「ウイナレッジ」を運営する教育専門出版社。
30年以上にわたり、全国の専門学校、大学、職業訓練校へ教材を提供してきた知見を活かし、教職員の皆様に役立つ実務ノウハウを発信しています。
[公式HP:https://www.wenet.co.jp/]

週間アクセスランキング

週間アクセスランキング

お問い合わせ
LINE登録
メルマガ登録
LINE登録
メルマガ登録
トップへ戻る