
近年、多様な人材を確保するために、自治体の職員採用試験ではさまざまな工夫がされています。従来の教養試験(40問形式の試験)から「SCOA総合適性検査」への切り替えもその1つです。
民間企業の採用試験にも利用されている「SCOA総合適性検査」を採用することで、公務員試験の受験者を増やしたいという意図が感じられます。「SCOA総合適性検査」は、従来の筆記試験よりも難易度は低いですが、問題の傾向に慣れるための対策が必要です。
ここでは公務員試験における「SCOA総合適性検査」について、傾向と対策を紹介します。
また、公務員試験の時事問題については「【公務員試験】時事問題の傾向と2025年度のポイント」を参考にしてください。
目次
SCOA総合適性検査の構成
「SCOA総合適性検査」は「NOMA総研」が作成している総合適性検査です。公務員試験の受験案内で「SCOA総合適性検査」と書かれることもありますが、「基礎能力試験」「教養試験」などと表記される場合もあります。その場合、「試験時間が60分か」「問題数が120問か」「出題範囲が言語、数理、論理、常識、英語の5つの分野か」で、SCOA総合適性検査の可能性が高まります。
SCOA総合適性検査は、大きく分けて「能力テスト」と「性格テスト」で構成されています。SCOA総合適性検査にはいくつか種類がありますが、公務員試験に多く採用されているのは代表的な能力テスト「SCOA-A」です。5つの分野から合計120問出題され、解答時間は60分となります。そのため、1問あたり30秒という非常に短い時間で解答しなくてはいけません。
また、「常識」に該当する一般常識の出題範囲は広範で、理科(物理、化学、地学、生物)と社会(日本史、世界史、地理、公民など)が出題されます。短い時間で広範な出題範囲の問題を解答していく必要があり、非常にスピードが求められる試験といえます。
代表的な能力テスト(SCOA-A)の内訳は以下のとおりです。
| 科目 | 問題数 | 出題内容 |
|---|---|---|
| 言語 | 20問 | 漢字、熟語、慣用句、故事成語、長文読解など |
| 数理 | 25問 | 四則計算、方程式、不等式、数列、数的推理など |
| 論理 | 25問 | サイコロ、推論、判断推理 |
| 英語 | 30問 | アクセント、単語の意味、空欄補充など |
| 常識 | 社会=10問 | 社会=日本史、世界史、地理、公民 |
| 理科=10問 | 理科=化学、物理、生物、地学 |
「言語」は、知識問題と長文読解が出題されます。レベルは高校レベルです。「数理」は公務員試験の教養型の「数的推理」、「論理」は公務員試験の教養型の「判断推理」にそれぞれ該当します。「英語」は長文読解の出題はなく、単語の意味や空欄補充などの問題が出題されます。総じて、従来の教養試験よりも範囲が絞られているため、対策がしやすい試験です。
SCOAとSPIの違いを一言で表すなら、SCOAは知識的な問題、SPIは考える問題を出題される傾向があります。SCOAは、一つひとつの設問の難易度は高くありませんが、問題数が多く、スピード感をもって解答していく必要があります。所要時間が短いので、いかに効率的に解答するかが重要です。SPIとSCOAはそもそも求める能力は異なり、推し量るポイントがまったく違うといえます。
SCOAで試される5つの出題分野
SCOAでは「言語」「数理」「論理」「常識」「英語」の5つの分野が出題されます。それぞれどのような出題形式か気になる学生も多いのではないでしょうか。各分野の特徴をつかむことで、スムーズに対応できます。まずは5つの分野について、理解を深めましょう。
ここからはSCOAで出題される5つの分野について、例題を交えて紹介します。
1.言語
「言語」は、大きく2つの出題形式があります。1つ目は語句の意味を確認する問題です。具体的な出題例を紹介します。
例題1
次に示す言葉の意味で、正しいものを(1)~(5)の中から選びなさい。
【相好】
(1)相性が好ましいこと
(2)実際に存在すること
(3)好ましい状態
(4)顔の表情
(5)高めあうこと
【正答(4)】
例題2
次に示す言葉の意味で、正しいものを(1)~(5)の中から選びなさい。
【朝令暮改】
(1)1日の天気が急変すること
(2)気分の浮き沈みが激しいこと
(3)好き嫌いがはっきりしていること
(4)時間の流れがとても長く感じられること
(5)直ぐに改められてあてにならないこと
【正答(5)】
2つ目は文章に関する問題です。要旨把握の問題や、空欄に接続詞を入れる問題が出題されます。
例題3【要旨把握】
近年、多くの企業が在宅勤務を導入しているが、その効果については賛否両論がある。一部の従業員は通勤時間が不要になったことで生活にゆとりができ、生産性も向上したと感じている。一方で、職場でのコミュニケーションが減ったことにより、チームの一体感が薄れたり、情報共有が滞ったりするという声もある。また、在宅勤務に必要なインフラ整備が整っていない企業では、かえって業務効率が下がる場合もある。このように、在宅勤務は一概に良いとは言い切れず、その効果は企業や従業員の状況によって異なる。
この文章の要旨として最も適切なものを(1)~(5)の中から選びなさい。
(1)在宅勤務では通勤時間がなくなるため、すべての人にとって生産性が向上する
(2)在宅勤務にはメリットとデメリットがあり、その効果は状況によって異なる
(3)在宅勤務を導入していない企業は今後淘汰されていく可能性が高い
(4)コミュニケーション不足が在宅勤務最大の問題である
(5)在宅勤務では情報共有がスムーズに行われるようになる
【正答(2)】
例題4【空欄補充】
最近ではスマートフォンを使って買い物をする人が増えている。( )、実際の店舗に足を運ぶ人も少なくない。店舗では商品を直接手に取って確認できるため、安心感がある。
( )に入る接続詞として最も適切なものを、(1)~(5)の中から選びなさい。
(1)なぜなら
(2)そのうえ
(3)しかし
(4)たとえば
(5)つまり
【正答(3)】
2.数理
「数理」は主に公務員試験の「数的処理」と同じ出題範囲です。具体的には四則計算、方程式(一次方程式、二次方程式)、数列、規則性などです。数理の問題は解答に時間がかかる可能性があるので、繰り返し練習し、問題を見たタイミングでどのように解くかイメージできるまで練習してください。
例題1
次の数式を解きなさい。
23+4×32−5=
【正答 39】
例題2
次の数式を解きなさい。
4×(―12)+(―8)2÷16=
【正答 -44】
例題3
次の数字はある規則性にしたがって並んでいる。空欄にあてはまる数字はどれか。
11、101、111、1001、【 】、【 】
(1)1011 1100 (2)1011 1101 (3)1010 1011 (4)1100 1110 (5)1100 1011
【正答(2)】
解説
これは2進数になっています。「3、5、7、9」の並びになりますので、「11、13」が空欄に入ります。それを2進数に直せば正解になります。
3.論理
「論理」は教科・科目でいえば、数学の「論理分野」が中心になります。具体的な分野は以下のとおりです。
・推論順位に関する問題
・表を用いた問題
・サイコロの問題
「論理分野」は、公務員試験の「判断推理」と出題が同じです。高校までの授業で学ばない分野でもあるので、「何となく難しい」と取り組む前から苦手意識をもつ人も多いです。どのように解けばよいか分からない場合は、まず解法を確認してください。問題集を通じて事前に対策をしていれば、速く問題を解くことが可能になります。
例題1
A~Eの5人の身長は、AはDより高く、BはEより低く、CはDより低く、BはDより高い。以上のことから、確実にいえるものは次のうちどれか。
(1)EはCより高い
(2)AはBより高い
(3)AはEより低い
(4)AはCより低い
(5)BはCより低い
【正答(1)】
解説
順序関係について不等号を用いて表すことによって全体の順序関係を調べていくと、次のように表せます。
AはDより高い A>D ……1
BはEより低い E>B ……2
CはDより低い D>C ……3
BはDより高い B>D ……4
次に、1~4を用いて順序を確定していくと、
1と3より、A>D>C ……5
2と3と4より、E>B>D>C ……6
5と6を1つにまとめると、
| A> | D>C |
| E>B> |
となります。しかし、これからは、AとE、AとBについて、それぞれの高低を判断ができないので、確実にいえることは【選択肢1】だけであることがわかります。
例題2
以下の展開図の立方体をB→A→Dの指示された方向に回転させたとき、回転後の上の面に出るものはどれか。

(1)ウ→イ→エ→ウ
(2)ウ→イ→オ→カ
(3)ウ→イ→エ→ア
(4)ウ→ア→エ→カ
(5)ウ→ア→オ→ウ
【正答(1)】
4.常識
「常識」の1つは、社会系の問題です。社会系の問題範囲は以下のとおりです。
・日本史
・世界史
・地理(日本、世界)
・政治経済
もう1つは理科系の問題です。理科系の問題は以下の分野が該当します。
・物理
・化学
・地学
・生物
理科系も社会系も出題される問題は、さほど難易度が高くありません。基本的な知識を問う問題が中心です。中学校の学びを復習するとよいでしょう。例題を紹介します。
例題1
スイスからオランダまでを流れる国際河川は次のうちどれか。
(1)ドナウ川
(2)エルベ川
(3)ライン川
(4)ローヌ川
(5)ロアール川
【正答(3)】
例題2
国際金融と為替相場の安定化を目的として成立した国際機関の名称は次のうちどれか。
(1)ILO
(2)WHO
(3)WTO
(4)IMF
(5)IDA
【正答(4)】
例題3
同じ材質と長さの電熱器用のニクロム線の断面を2倍にすると抵抗は何倍になるか。
(1)2倍
(2)4倍
(3)0.5倍
(4)0.25倍
(5)変わらない
【正答(3)】
5.英語
「英語」は、長文読解は出題されず基本的な知識を問う問題が中心です。「英語」の分野で出題される問題は主に以下です。
・文法問題
・類義語
・イディオム
・アクセントの問題
高校で勉強した内容が中心です。英語はほかの分野と同様に一朝一夕で身につけられるものではありません。対策には余裕をもって取り組むようにしましょう。
例題1
次の単語の意味を選びなさい。
【participate】
(1)take part
(2)work together
(3)collaborate
(4)merge
(5)consolidate
【正答(1)】参加するという意味
例題2
次の文の( )に入るものとして、適切なものはどれか。
【The train went ( ) the tunnel.】
(1)ahead
(2)on
(3)in
(4)Above
(5)into
【正答(5)】 「~中へ」という意味
まとめ
SCOAは、問題自体の難易度は高くありませんが、問題数が多く制限時間が短いため、ハイスピードで解く必要があります。苦手を克服しつつ得意を伸ばし、何度も問題を解いて慣れることが大切です。SCOAで不合格にならないように、早めに対策して慣れておき、選考を突破しましょう。
【公務員試験】SCOA練習問題
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伊藤 圭一
豊橋創造大学短期大学部 教授
豊橋創造大学公務員試験支援センター長
公務員別科長
話すこと、相手にわかってもらうことが大好きで教員の道を目指す。
大学院修了後(教育学修士)、専門学校教員を経て現職。
楽しく授業をするのをモットーにして笑いのある授業を実践している。
特に授業の導入部分の面白さには定評があり、オンライン授業の際は「面白いよ」と学生が家族を誘って授業に参加させたこともあるほど。アクティブラーニングを軸とした授業が好評であり、教員向けの研修も担当している。
2022年度ベストティーチャー賞を受賞。









