先生なら誰でも、よい環境で学生と過ごしたいと願うものですよね。
きれいな教室、きれいな備品と、物は簡単に整えることができます。
ですが、よい人間関係という環境整備は、一筋縄ではいかないことがほとんどだと思います。
今回はそんな人間関係をよくするために先生ができることについて、川口先生に寄稿いただきました。
目次
「人間関係」という言葉は切っても切り離せない
AIの発展、利活用が進む現代社会ですが、いつの時代になっても、「人間関係」という言葉は切っても切り離せないと感じています。
専門学校でかれこれ20年近く教鞭をふるっておりますが、「人間関係」は、永遠のテーマのような気もしています。
なぜなら、グループから仲間外れにされたり、友人との人間関係が発端で、休みがちになり単位を落としたり、途中で来なくなるということも毎年、幾度となく繰り返し見てきたからです。
そのようなとき、担任の先生がうまく立ち回ってくれるといいなと思うことも何度もありました。
しかし、担任の先生だけでなく、学校全体はもちろん、常勤、非常勤の先生方の協力も必要不可欠です。
今回のテーマである「クラスの人間関係をよくするために先生ができること」少しでも参考になっていただければと思います。
先生ができることは、様々あります。
ですが、その前提として先生自身が学生から信頼を得ているかどうかが大切になってくるのではないでしょうか。
「信頼」という字は「信じて頼ること」「頼りにできるとして信ずること」という意味になります。
普段から、学生との信頼関係が築けているのか、いないのかで、クラスの人間関係がどうなっているのか正しく把握できるかがかわります。
また、学生に人間関係のことで話しかけてみても「どうせ、あの先生に言ってもわかるわけないし」と思われて終わってしまいます。
そうならないためには、日頃からやっておくことがあります。
学生と信頼関係を築くこと
1.笑顔でいること
常にしかめっ面な顔をして、話しにくい印象を持たれていませんか?
「忙しいから私に話しかけないで」というオーラはでていませんか?
学生が話しかけやすい雰囲気を先生みずからが、作ってみてください。
なぜなら、「いつも忙しそうにしているから、相談しにいっても後回しにされる」とか、「あの担任の先生、よく怒るから相談なんてとてもできない」と小言を言っている学生たちの声を耳にしたりします。
日頃の業務が忙しいかもしれません。いつも笑顔でいるのは難しいかもしれません。
しかし、学生に見せる表情を意識するだけで、必ず変わってきます。
そうすると学生が自ら足を運んでくれるようになります。
2.学生に対し、興味・関心を持つこと。そして話を聴くこと
今、この目の前の学生は、「何に興味を持っているのか?」あるいは「どんなことに関心があるのか?」を踏まえて、会話してみてください。
たとえば、ゲームが好きな学生に、「今、どのゲームにはまっているのか?」と聞いただけで、堰を切った勢いで、話しだしたりします。
学生は先生が、自分の話を聞いてくれることをとても嬉しく思っています。
このように会話のキャッチボールができてくると、先生と学生との距離も近くなっていきます。
5分でも10分でもいいので、仕事の手を止めて、学生の話に耳を傾け、心で聴いてあげてください。
3.褒める・認める
どこかいいところを見つけて、褒めてあげてください。
または認めてあげてください。
「欠席が多くて単位落とすよ」「また遅刻だね。多すぎる」学生の顔を見るたびに、このような注意をすることが日常茶飯事になっていませんか?
怒ったり注意をしたりすることは、もちろん必要不可欠です。
しかし、「どうして遅刻をしたのか」「休んだのか?」その先の理由を聞いてみることで、「最近、グループから仲間外れになっているから、行くのが億劫でした」などと核心の部分をボソッと口にしたりします。
そこを見逃さず「最近、遅刻するのはそういうことだったのね」と気持ちに寄り添うことで、理解してもらえた、嬉しいと思うものです。
何から何まで褒めすぎもよくはありませんが、少しの頑張りに気付いて、認めてもらえることで、変わってくることもおおいにあるのです。
「今日、少し早く来られるようになったね」でもいいですし、「挨拶の声、元気よかったね」など、ちょっとしたことでいいのです。
褒められて悪い気をする人など誰もいません。
人は褒められたり、認めてもらえたりすることで、予想以上に力を発揮することがあります。
4.約束を守る
どんな小さな約束をしたとしても必ずその約束は守ってください。
「あっ、先生こんな約束まで覚えていてくれたんだ」と思うものです。
小さな約束の積み重ねで信頼を少しずつ勝ち取っていけます。
学生と先生の信頼関係が少しずつできてきたら、学生は自分以外のクラスの人間関係も教えてくれるようになっていきます。
「この子とあの子がこんなことあって、バチバチしてるよ。」とか、「仲のよかったグループからあの子が外されているよ。」とか。
そうするとクラスが今、どのような状況なのか、一段と把握しやすくなっていきます。
学生同士、信頼関係を築くために先生ができることは
1.接する機会を増やす
人間関係を固定化させず、誰とでも接する機会を増やしていくことです。
席替えもどんどん積極的に行いましょう。
また、普段話すことがなかった学生同士をペアワークやグループワークを通して、話す機会を作っていくのもよい方法です。
授業内でできない状況であれば、ホームルームの時間で積極的に取り入れてみてください。
ペアワーク1 「インタビューしてみましょう」
この1週間で起きた楽しかった出来事、あるいはこんなことをしましたなど、お互い1分間ずつ、インタビューして聞いてください。
例:先週の出来事を教えてください
「映画の○○を観に行って感動した。」「資格試験に行ってきたけど、全然ダメだった。」
時間があれば、その後、全員の前でお互いのインタビューした内容を発表しましょう。
時間がなければ、1つか2つのペアを選び、発表してもらうといいでしょう。
そうするとその後の会話づくりのきっかけにもなっていきます。
ペアワーク2 「○○のすすめ」
自分自身の他の人にもすすめたいことをペアで紹介する対話ワークです。
どんなことでもいいです。
結構盛り上がるのでやってみてください。
このとき、先生も一緒になって楽しんでください。学生は先生の笑顔を見て、さらに楽しくなります。
例1:カフェめぐりのすすめ
「学校近くの○○カフェ、特製手作りジュースをぜひ飲んでみてください。」
例2:1分でできる節約簡単料理のすすめ
「ちくわときゅうりを細かく切って酢を加えあえるだけ。さっぱり一口おかず完成。」
2.同じ感情を体験する機会を作る
行事やイベントなど、クラスで取り組むことで、目標を定め、努力できたことや、勝った、負けたなどの体験を共有することで同じ感情を味わいます。
皆で苦労して乗り越えた経験があれば、一体感が生まれ、信頼につながっていきます。
ここでは、学生たちの自主性に任せ、先生は過程を見守りつつ、参加しない学生などに気を配り、全員が一丸となれるよう、目を配ることは忘れてはいけません。
専門学校では非常勤講師の先生が授業を教えていることが多いです。
非常勤の先生同士は出勤日の違いなどからの横のつながりが希薄になりがちなため、学生の情報の共有が難しく感じます。
そこで、私が行っている専門学校でのある取り組みをご紹介したいと思います。
専門学校によっては、授業後、報告書(授業記録)を書く学校もあるかと思います。
私が行っている学校でも報告書をPCに入力していますが、その内容をどの先生にも閲覧できるようにしています。
報告書には、授業内容だけではなく、学生のことで気づいたこと、他の先生にも共有したいことなど、自由に記載できるようになっています。
操作は簡単で3分ほどで入力も完了しますし、負担にならない範囲で他の先生たちとも共有できますので、とてもいい取り組みだと思います。
なぜなら、この学生は、自分だけの授業でなく、他でもそうだったのかと思うことや、このようなことを考えているのかなど、わかるからです。
もちろん、統括しているのは担任の先生や学科長で、出勤時に、今日はこの学生がお休みですとか情報をいただけるので、学生のことが事前にわかり、授業もしやすくなります。
このように担任の先生、非常勤の先生が連携を上手く取れると学生たちにとっても、先生たちにとってもよりよい関係が築けていけるのではないかと思います。
それがクラスの人間関係をよくするためにもつながっていくことではないかと思います。
最後に
明日からすぐ実行できること。それはいつも先生が笑顔でいることです。
以前、少し自分に自信がなさそうな学生がいました。学校も休みがちだったその学生から、ふと「私、接客の仕事がしたいんです。」と相談をうけたことがありました。
私は即座に「○○さんならできるよ!」と伝えたようなんです。日が流れ、その学生が卒業するときに手紙をもらいました。そこには私がバシッと「できるよ!」って伝えたことが自信につながり、本気で接客業を頑張ろうと決意し、就職もできて本当に感謝しています、ということが書いてあったんです。
学生の明るい未来を信じて、常に前向きな言葉を投げかけようとする姿勢が、その学生にとって力強い支えになったんだ……という経験があってから、私もまた先生の仕事を頑張ろう!って思えました。こういう関係性がたくさんの学生にできればいいなって思います。
\ぜひ投票お願いします/
川口 晴美
元日本航空グランドスタッフ。在職14年の間、JAL「サービスの達人」社長賞や社内接客大賞「ホスピタリティ賞」受賞。全国各地の空港で指導教官として勤務。退職後、大学、専門学校の非常勤講師として客室乗務員やグランドスタッフを多数輩出。現在は、大学、専門学校(医療系、留学生)高校、NHK文化センターで教える。
オフィス川口(G-mother)を設立し、学生の就活サポート、各種検定、企業研修を手掛ける。サーティファイ認定会場。