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TOP教養スキルアップ指導スキル(17)~ICT活用術(後編)~学生の成長をうながす「評価・フィードバックのICT活用術」

指導スキル(17)~ICT活用術(後編)~学生の成長をうながす「評価・フィードバックのICT活用術」

連載授業アップデートテクニック

変化する学生のニーズ、技術やツールの進歩、多様性の受け入れなど、常に進化が求められる現代の教育現場。授業をアップデートしなくてはいけない時期が到来しています。この連載では、教員向け研修や教員志望者の育成を行う「RTF教育ラボ」の代表で、年間300もの授業観察を行う教育コンサルタントの村上敬一さんから、専門学校の先生に向けた「令和の授業テクニック」を教えてもらいます。

冬の寒さが身に染みる季節となりました。学生の成長を見守りながら、次年度に向けた準備を着々と進めている頃かと思います。前回の記事『指導スキル(16)~ICT活用術(前編)~教員の時間を生み出す「授業外ICT活用術」』では、授業準備と校務の効率化に焦点を当て、ICTを活用して教員の時間を作りやすくする方法をお伝えしました。

後編となる今回は、「学生の成長支援」につながる「評価」と「フィードバック」におけるICT活用方法をご紹介します。
専門技術の習得を目指す学生にとって、具体的で次の学びにつながるフィードバックは、成長を促すうえで欠かせない要素です。ぜひ参考にしてください。

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1.評価の「ものさし」を共有する「ルーブリックとデータ管理」

専門学校では、実習や作品などの成果物に対する評価が多くなります。学生自身が「どの点を評価されるのか」を理解していなければ、学習の方向性が定まりません。そこで役立つのが「ルーブリック(学習目標の達成度を評価するための観点(基準))」と「アチーブメント(到達レベルをマトリックス表で示した評価ツール)」です。

LMS(学習管理システム)などでルーブリックを共有すれば、学生は課題に取り組む前に評価基準を理解できます。LMSは”オンライン上の教室”のようなもので、課題提出・評価・フィードバックをひとまとめに管理できるツールです。Google ClassroomやMoodleなどが代表的です。これらを使用することにより、評価の透明性も高まります。

評価結果をデジタル化して管理すると、学生一人ひとりの習熟度や弱点が客観的に把握できます。さらに、評価結果の推移を一覧やグラフで可視化すれば、「何となく」ではなく、根拠ある指導改善につながります。また、可能であれば、実技・実習などでポイントとなる場面を動画で記録しておくと、フィードバックの際に役立ちます。

2.「次につながるフィードバック」の効率化と質向上

評価以上に、学生の成長に大きく影響するのがフィードバックです。しかし、丁寧に伝えようとすると時間がかかってしまい(特に文章)、負担を感じる先生も多いでしょう。ここでもICTが役に立ちます。

Google Classroomのような学習プラットフォームでは、課題提出とフィードバックを一元管理できます。作品やレポートに対し、文字だけでなく音声や動画でコメントを返すことも可能で、コミュニケーションの幅が広がります。

さらに、生成AI(ChatGPTやGeminiなど)は、フィードバックの“第一稿”を作るのに非常に適しています。例えば学生の文章とともに「改善点を3つ示して」と入力すれば、短時間でたたき台ができます。教員はそれを土台に、学生の性格や成長段階に合わせたコメントへと編集します。フィードバックの際は、「良い点→改善点→次のアクション」の順でコメントを書くようにすると、学生が次に何をすればよいかが明確になり、自己調整学習が進みます。

また、学生からの質問はTeamsやSlackに集約すると、質問の重複を防ぎ、ほかの学生の学びにもつながります。蓄積された質問をFAQ(よくある質問)として活用すれば、教員の対応時間を削減しながら、学生の自立を促すことができます。

3.多様な学生への個別指導とICTの可能性

ICTは「個別最適化」にも活用できます。LMSに蓄積した学習履歴の分析を行うことで、一人ひとりの理解度に応じた課題の提示が可能になるからです。つまずきが見られる学生には補助教材を紹介し、逆に得意な学生には発展課題を与えるなど、個別最適化学習の実現に向けた運用が容易になります。

また、ルーブリックを通じて成長の推移を学生自身が確認できると、「前よりできるようになっている」という実感が得られ、学習意欲の向上につながります。特に、ポイントとなる場面を撮影した動画を学生と一緒に視聴しながら行うフィードバックは、「イメージの共有」ができ、学生の成長を効果的に促します。

4.ICT活用の注意点

ICTは大変便利ですが、その効果を最大限に引き出すためには、教員チーム全体で運用ルールを明確にし、潜在的なリスクに備える視点が不可欠です。

また、非常勤教員も含めて、「わからないことを誰に相談するのか」を明確にし、誰でも活用できる状態を整えることも重要です。「ICTに対する苦手意識の雰囲気」こそが、最大の注意点かもしれません。

先生方が安心して教育活動に集中するために、以下の点に留意しましょう。

(1)情報セキュリティとプライバシーの確保

学生の成績、学習履歴、指導上の記録などは、極めて機密性の高い個人情報です。利用するLMSやクラウドストレージが、学校の定めるセキュリティ基準を満たしているか、国際的なプライバシー保護基準に準拠しているかを常に確認する必要があります。

アカウント管理の徹底も必須です。パスワードは教員間で共有せず、二段階認証などのセキュリティ機能を積極的に利用しましょう。学校共通の「個人情報の取り扱いルール」を定め、学生のデータを扱う際は原則として氏名は匿名化するなど、教員間でルールを統一し、厳格に遵守することが不可欠です。

(2)教育格差への配慮

デジタルデバイド(情報格差)への配慮も必要です。ICT活用は多くのメリットをもたらしますが、学生間でITスキルや学習環境に差があるのが現実です。この差が新たな教育格差を生み出さないように配慮しましょう。

特定のツール利用を必須とする場合は、授業外での操作指導や操作マニュアルの配布など、デジタルに不慣れな学生へのサポート体制を整えましょう。

また、自宅に十分な環境がない学生のために、学内のPCや設備を開放したり、一部の課題については紙ベースでの提出など、代替手段を柔軟に認めたりすることも重要です。

先ほど伝えた通り、学生を指導する側の教員間でも、ツールの習熟度に差があるはずです。定期的な校内研修や勉強会、得意な教員がサポートに入る仕組みを設け、無理なく全員が活用できる状態を目指しましょう。

(3)AIへの過度な依存の回避とルールの明確化

生成AIはフィードバックや教材準備の強力な「たたき台」となりますが、その活用は教員の専門性を高めるための「補助的手段」でなければなりません。AIが生成した内容を鵜呑みにせず、専門学校教員ならではの「現場での経験」や「学生の個性」に合わせて、必ず加筆・修正しましょう。特にフィードバックは、学生の成長段階や学習意欲に配慮した「温かい言葉」を添えることが重要です。

また、TeamsやSlackなどのチャットツールで学生からの質問を受け付ける場合、「24時間いつでも質問して良い」と誤解されないよう、「返信は平日○時~○時」「即時返信はしないので、余裕を持って質問すること(回答が必要な日の2日前まで)」といった対応可能な時間帯と返信までの目安を明確に定め、授業内で周知徹底しましょう。

まとめ:ICT活用の目的は“時間を作り専門性を活かす”こと

ICT活用は、単なる時短のための手段ではありません。効率化によって生まれた時間を、学生との関係づくりや授業改善、教員としての専門性を発揮する活動にあてることが本質です。

前編でお伝えしたように、定型的な校務や情報収集を効率化することで、先生方は時間にゆとりを持ち、学生一人ひとりの状況を深く理解する「関係性づくり」に時間を使うことが可能になります。さらに、後編でご紹介したルーブリックや学習データ分析を組み合わせれば、評価に「客観性」と「透明性」が生まれ、より質の高い「個別最適化されたフィードバック」の提供が可能となります。

定型的な業務をICTに任せつつ、学生の個々の状況に寄り添う時間を増やすことで、教育の質は確実に高まります。専門学校教員が持つ「現場の感覚」を核とし、セキュリティや教育格差への配慮を怠らず、組織全体で計画的にICTを取り入れていくこと。これが、これからの時代、教員の「教育力」を強化し、学生の成長を最大限に引き出すための鍵となります。

先生方の「働きやすさ」と、学生がプロへと成長するための「教育の質」、その両立を目指し、無理のない範囲でICTを賢く活用していきましょう。

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この記事を書いた人
村上 敬一

村上 敬一

RTF教育ラボ代表/教育コンサルタント/東京都杉並区内中学校学校運営協議会委員
全国の公立および私立の小学校・中学校・高等学校、専門学校、塾などで教員研修、講師研修、授業や学級経営を中心とした教育全般に関するアドバイスを行う。また、現在まで18年間に渡り、毎年約150名の教員志望者を育成。年間の授業観察数は300を超え、これまでに約5000の授業を観察している。
RTF教育ラボ(https://goseminarcourse01.wixsite.com/rtfkyouikulab

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