さまざまな専門学校で、学生の「知識の習得状況」を確認するためにテストを実施しているかと思います。
しかし、テスト作成は時間がかかり骨が折れる仕事です。
その上、個人で行う仕事のため、どのようにテストを作成すればよいのか悩んでいる先生も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、良質なテストに求められる条件とテストの作成方法についてご紹介します。
目次
良質なテストとは
テストは、学習の結果を測定するための手段です。
専門学校であれば、主に「知識や技術の習得状況」を確認するためにテストを実施します。
闇雲に作成したテストでは、目的を果たせません。
そのため、テスト作成時には、「何を測りたいか」を明確にしておくことが重要です。
加えて、良質なテストには妥当性と信頼性も求められます。
問いたい能力を測れるか(妥当性)
テストには、妥当性が必要です。
テストの妥当性とは、問いたい能力を適切に測れているかどうかをいいます。
妥当性をもたせるには、何の能力を測るかという目的をはっきりとさせてからテストを作成するとよいでしょう。
たとえば、パソコン技能のテストにおいて、問題文に常用外の漢字を多用して、学生が読めずに解けなかった場合は、妥当性がないことになります。
テストは、目的に沿った能力を的確に測ることができるかどうかに留意して作成しましょう。
一貫した結果を得られるか(信頼性)
テストには、信頼性も必要です。
信頼性とは、同じ状況下で実施すれば同じような結果を得られるということです。
結果が毎回大きく変わるようなテストでは、得られたデータに信頼性があるとはいえません。
信頼性があるテストかどうかをチェックするには、クロンバックのα係数を用いて内的一貫性を測る方法や一定期間を置いて再度テストをする再テスト法、2つのグループに分けて検証する折半法などの方法があります。
参考:α係数とはなにか
役立つ内容であること
テストは、ほかの試験や検定、実務などにも役立つ内容であるとさらによいでしょう。
覚えた知識は、学生の財産になります。
また、エビングハウスの忘却曲線が象徴するように、人間は忘れていく生き物です。
しかし、復習することで知識は定着しやすくなります。
授業のあと、テストのために何度も復習すれば、その内容は定着していくでしょう。
さらに、テストには「テスト効果」と呼ばれる、知識を思い出すことによって記憶を定着させる効果もあります。
テストのために覚える内容が試験や検定、実務などにも役立てば、学生にとって喜ばしいことでしょう。
テストの作成方法
良質なテストには、目的を明確にすること・妥当性・信頼性が必要だとわかりました。
続いて、良質なテストを作成するための手順をご紹介します。
出題範囲を決める
テストを作成するために、出題範囲を決めます。
具体的な手順を確認しましょう。
教科書・補助教材の内容を確認
テストは、基本的に学生が学習した内容から出題します。
そのため、授業や実習で使用したテキストや補助教材を確認し、出題はその範囲内の知識で解答できる内容に収めます。
範囲外の内容を絡めないようにしましょう。
テキストの基本部分は必ず出題し、補助教材に付随する問題もいくつか採用することをおすすめします。
同じ分野を担当するほかの先生から、授業で強調している内容やテキストなどにアンダーラインを引くように指示する箇所を聞いて、出題に取り入れるのもよいかもしれません。
授業用の補助プリントの内容を確認
独自に作成した補助プリントなどを授業に使用している場合、その内容から出題してもよいでしょう。
出題範囲をあらかじめ学生にアナウンスしておけば、学生はどこを復習すればよいのか迷わずにすみます。
テスト作成前にまずは問題集を解く
テストの作成前には、出題する分野の理解を深めるために先生自身がさまざまな問題集を解きましょう。
できるだけ多くの問題集を解くことが望ましいです。
問題集を解くことで、頻出箇所や重要箇所がどこかを確認したり、どんな出題形式が適当かを学んだりできます。
また、問題集は出題内容だけでなく問題文の参考にもなるでしょう。
問題用紙を作成する
出題範囲を決めたら、次は問題用紙の作成です。
単元やテーマなどを区切りとして大問と得点配分を考え、テストの大枠を決定します。
続いて、大問ごとのリード文の作成や小問を配置し、あわせて大問内での細かい得点配分も考えておきましょう。
問題のリード文を一から考えるのは、非常に骨が折れるものです。
演習ワークや過去のテスト、問題集のリード文を参考にしましょう。
また、問題は採点(丸つけ)時のことも考えて作成するのがおすすめです。
特に記述式の問題は、複数の解答が出ないようにしましょう。
解答用紙を作成する
問題用紙を作成しただけでは、テストを作ったとはいえません。
解答用紙も作成する必要があります。
解答用紙は、解答を書く箇所がわかりやすいものにしましょう。
わかりにくい解答用紙は、学生が考える時間を奪いミスを誘発しかねません。
問題番号と解答欄を対応させ、十分に解答できるスペースを用意しましょう。
実際に解いてみる
最後に、以下の点に注意して作成したテストを自分で解いてみましょう。
- 問題文にわかりにくい部分はないか
- 解答用紙に不備はないか
- 想定する平均点に対して難易度は適当か
- 誤字などのミスがないか
- 満点と配点の合計が一致するか など
テストを解きながら必要に応じて修正し、模範解答を作成します。
同じ担当分野の先生にテストを解いてもらうのもおすすめです。
自分では気づきにくい改善点などの意見をもらえるかもしれません。
テストの作成時間はどのくらい?
テストの作成時間は、問題の難易度や教科、出題範囲などによって異なります。
たとえば高校生向けの定期テストなら、問題集を解く時間も含めると、10時間程度はかかるといわれています。
専門学校の場合は、専門性の高い問題が多いため高校生向けと同程度の時間を見ておくとよいでしょう。
余裕を持ったスケジュールで作業にあたりましょう。
穴埋め問題を簡単に作れるツールを活用するのもおすすめです。
参考:テストメーカー
テストを作成するにあたっての注意点
テスト作成の流れがわかったところで、どのような点に注意すべきか確認しましょう。
テスト作成は早めに取りかかる
前述したように、テストの作成には時間がかかります。
そのため、早めにテスト作成に取り組むことが大切です。
日々の業務に追われて、テスト作成はついつい後回しにしがちですが、早めに取りかかると以下のメリットがあります。
- 気持ちに余裕があり、改善点やミスに気づきやすい
- ほかの先生にチェックを頼みやすい
テストは、学生の成績に関わる重要なものです。
念には念を入れて、よりよいテストを作成しましょう。
平均点は60点前後になるようにする
学校やテストの種類によって異なりますが、平均点が50点から65点程度になるように問題を作成します。
想定していた平均点と実際の平均点に大きな開きがある場合、テストか授業の内容に問題があるかもしれません。
それでは、なぜ平均点が60点前後になるようにテストを作成するのでしょうか。
それは、平均点が高すぎたり低すぎたりすると、学生の理解度などを適正に測れないからです。
「簡単」「中程度」「難しい」3パターンの問題を用意する
テストの問題は、基礎問題・応用問題・高難易度の応用問題というように、「簡単」「中程度」「難しい」と3つの難易度の問題を織り交ぜましょう。
すべての問題が同じ難易度だと、得点が偏る恐れがあります。
平均点が60点前後になり成績がバラつくよう、難易度ごとの得点配分を調整するとよいでしょう。
まとめ
テストは、学習の結果を測定するための手段です。
「何を測りたいか」という目的を明確にし、妥当性と信頼性のあるテストを作成することが重要です。
出題範囲やレベルを適切に設定し、目的に沿った学力測定のできるテストを作成しましょう。
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