連載公務員試験合格への道しるべ
公務員試験は自治体によって受験内容が大きく変わります。そのため戦略立てて授業や課題を実施していく必要があります。この戦略を正しく立てるには、公務員試験の情報を正しく知ることが大切。本連載では公務員試験にまつわる「知って得する情報」や「合格へのノウハウ」を、豊橋創造大学公務員試験支援センターの伊藤先生が教えてくれます。
今回はSPIについてです。公務員教養試験との差や対策方法についてノウハウを共有させていただきます。
前回記事:【完全版】公務員試験における時事問題の対策方法!2023年度のポイントも
目次
就職活動におけるSPIと公務員試験のSPIの違いがあるのか?
SPI(Synthetic Personality Inventory(総合適性検査))は学力や知識だけでなく、性格や企業への適性を含め、入社希望者を総合的に評価するために用いられているテストです。
「会社にマッチする人材を見つける」という目的を実行する検査方法として、多くの企業が採用選考に導入しています。
そんなSPIですが、公務員試験でもSPIが課される場合があります。
公務員試験で実施されるSPIの出題内容と民間試験で実施されるSPIの出題内容は同じものと考えて良いのでしょうか?
結論としては同じものです。
SPIを使っている自治体のうたい文句は「民間企業と同じ試験(SPI)を実施するため、公務員試験対策をしなくても受験可能!」なのですが、受験生によって、従来の教養型での受験が有利なのかSPI型での受験が有利なのかは異なります。
そして、公務員試験の学習ができていればSPI試験に対応できるという間違った思い込みもいまだに信じられています。
公務員試験(教養型)とSPIは似ているのか?
両方の受験対策をしている筆者からすると、「似て非なるもの」、もしくは、「似ていないもの」と答えるのが正しいです。
公務員試験の対策だけではSPIに対応できません。
ただ、両者に共通して言えるのは「私立の中学受験に似ている」ことです。
現に私(筆者)がこの仕事を比較的楽にできるのも、私立中学受験をしておりその際に身に付いた知識で公務員試験の教養型もSPIの問題も解くことができるからです。
そして、小学生時代に教わったように、言い換えると、小学生にもわかるような授業を実際に体験しているからこそ、わかりやすい授業をすることができるのだと理解しています。わかりやすい授業は、公務員受験の学習意欲を高めます。
SPI試験と公務員試験の構成を見てみよう
SPIには大きく分けて性格検査と能力検査があります。
性格検査は300問ほどの日ごろの行動や考え方に対する質問を通して、人と接する際の特徴や仕事への取り組み方などを確認します。
能力検査には「言語分野」と「非言語分野」があります。
言語分野では国語的な問題が出題され、文中の空欄補充や長文読解、語句の意味などを問われます。
非言語分野は数学的な問題が出題される分野です。
公務員試験のうち教養択一試験はさまざまな公務員の職種で受ける必要がある試験で、理科や社会の問題も出題されます。
教養択一試験で出題される問題の範囲は、以下のとおりです。
社会科学:政治社会・法律・経済・時事
人文科学:日本史・世界史・地理・文学芸術思想
自然科学:数学・生物・物理・地学・化学
文章理解:現代文・英文・古文
数的処理:数的推理・判断推理・空間把握・資料解釈
数的処理とSPIを比較した場合の特徴
ここで、SPIの非言語分野と公務員試験の数的・判断・資料解釈を比較したとき、どのような違いがあるのかを示してみます。
SPIの テーマ | 特徴 (差異やレベルについて) |
---|---|
推論 | 一部判断推理に似ている出題はあるが、SPI独自の対策が必要 |
図表の読み取り | 時間がかかる単元のため早く解く対策が必要 |
集合 | 一般的な「べん図」を用いる問題と異なる出題方法があるので対策が必要 |
割合 | 数的推理の割合よりも単純な文章題が出題。公務員試験の例題レベル |
濃度 | 数的推理よりも単純な文章題が出題。ただし、SPIは選択肢が多いので、選択肢から解く解法でなく自力で解くことが必要 |
料金割引 | 数的推理と形式が異なる。通常料金と割引料金をそれぞれ計算して合算する必要あり(公務員試験では全員が割引料金を適用されるので計算は単純) |
分割払い | 数的推理には見られない問題。頭金など分割払いのしくみを理解して問題に取り組む必要あり |
代金清算 | 数的処理には見られない問題。解法もテキストによって異なっており理解しにくい分野。お金の流れを図示するのがミソ |
速さ | 旅人算や流水算など数的推理に出題される問題も出題されるが、時刻表を用いた特殊な問題も出る |
場合の数・確率 | 数的推理と基本的に違いはない。ただし、選択肢が多いので選択肢を参考にしないで解くことが必要 |
公務員試験と共通なものも多いです。しかし、SPIの非言語と共通の部分と言われる多くの範囲は公務員試験(教養型)の「数的処理」です。この「数的処理」は多くの受験生が苦手とする分野です。共通部分があっても対策は容易ではありません。
また、ブラックボックス、グラフの領域、流れ図などはSPIペーパーテストにしか出題されません。公務員試験はwebの場合とペーパーテストの場合に分かれますので志望先に応じた対策が必要になります。
資料解釈の出題もありますが、早く計算する技術が必要になる実数表の出題がメインになります。概数計算の練習をしておくと良いでしょう。
SPIの対策方法
筆者が実践しているSPI対策をご紹介します。
・適切な問題集を選定する
・言語分野から始める
・非言語分野について
適切な問題集を選定する
ひとつは解説の詳しい入門書、もうひとつは演習問題の多いものを選びます。SPIの問題集は編者により解法の異なることがあります。多くの問題集に当たることは多くの解法に当たることを意味します。2冊以上の問題集を解くことをおすすめします。
言語分野から始める
問題集の多くは非言語分野から始まっていますが、非言語分野は先述のとおり出題範囲が広いです。時間のかかる非言語分野よりも言語分野から始めましょう。得点力が上がりやすいおすすめの単元から取り組むのもアリです。筆者は以下の単元をまずできるようにしなさい、と学生に伝えています。
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1.二語の関係
同意語・反意語・包含(前が後ろを含んでいるものと、後ろが前を含んでいるものの2種類がある)・原料・役割・並列・セットの8つの関係性に分類されます。事前に何度も解いて練習すれば高得点を狙える分野です。
2.語句の意味
出題された文と同じ意味の語句を選択する問題です。ことわざ・四字熟語・語彙・慣用句などがあり、こちらも知識問題なので対策しやすいでしょう。
3.熟語の成り立ち
出題された熟語と同じ成り立ちの熟語を選択する問題で、似た意味を持つもの・反対の意味を持つもの・主語と述語の関係にあるもの・動詞の後に目的語を持つもの・前の漢字が後の漢字を修飾するものの5種類あります。
4.語句の用法(文法)
同音異義語や複数の意味を持つ動詞や名詞、助詞、助動詞が出題され、選択肢の中から最も近い用法の語句を回答する問題です。同音異義語や比喩的用法については、最初に出題された語句を同じ意味のほかの語句に置き換える方法が効果的です。何度も取り組むことで解けるようになります。
5.文の並べ替え
順序が入れ替わっている複数の文章を、正しく並べ替えさせる問題です。接続詞やこそあど言葉などがある文、すでに説明されたことを元にしている文は先頭になりにくいため、消去法で先頭の文を推測することが可能です。迷いそうな文よりも、簡単につなげられる文から取り組むことをおすすめします。
6.空欄補充
文の一部が空欄になっていて、選択肢の中から当てはまる語句や文を入れる問題です。知識のほかに読解力も要求されます。まず当てはめてみて、文法的におかしい選択肢を消去しましょう。次に、空欄は直前もしくは直後の言い換え表現や具体例になっているケースが多いため、前後の文章をよく読んで吟味します。
7.長文読解
長文読解は、1,000字程度の文章を題材に、内容に合致する選択肢を問われる問題です。空欄に当てはまる接続詞や、一文を差し挟むべき箇所なども問われます。
こうした出題は自分で問題演習することができます。早く進められるところから学習を始めましょう。
そうしたうえで非言語分野に取り組むことをおすすめします。
非言語分野について
非言語分野では3つ実施していることがあります。
・非言語分野は頻出分野から学習すること
推論→図表の読み取り→集合→順列・組合せ→確率という順番になります。
頻出部分の学習が終わってから他の分野に取り組んでもらうようにします。
・問題文を読んだら、解説を読んでもらうこと
問題文を読み、解けそうなら解いても構いませんが、まずは解答を読んでもらうようにしてください。
解答を読んでもよくわからない場合は問題文をもう一度読んでもらいます。
多くの場合、解答を読んでもわからない場合は、問題文の意味を理解できていない場合が多いです。
よく問題文を読むところから始めましょう。
・問題を解く際は時間を計ること
<参考:試験時間>
テストセンター SPIテスト専用会場でパソコンを使い受験する方法
・能力検査(言語・非言語問題) 35分
・性格検査 30分
WEBテスティング 受験者のパソコンにて自宅で受験する方法
・能力検査(言語・非言語問題) 35分
・性格検査 30分
ペーパーテスト 応募先企業でマークシートにて受験する方法
・能力検査(言語・非言語問題) 70分
・性格検査 40分
実際に問題を解くときには1問につきどの程度の時間をかけているか計ってください。
何分かかっているのか把握することは大切です。
ペーパーテストで例を挙げますと言語が40問で30分、非言語が30問で40分です。
言語は「二語の関係」など語句に関連する問題で1問あたり20秒、「長文読解」や「文の並び替え」1問あたり1分が目安になります。
非言語は比較的難易度の高い「推論」は1問あたり1〜2分程度、その他の分野は30秒〜1分程度で解いていくのが目安です。
言語はすべて回答、非言語は問題のやり残しが出て普通です。つまり、多くの学生は非言語を1分以内では解けていないことになります。時間短縮が出来なくてもあきらめないで受験してください。
受験日まで時間が無い場合
学生が急に志願先を変更し、SPI対策を急ピッチで仕上げなければならないことがあります。
そんなときは、WebサイトのSPI対策を受験して何度も復習してください。
Webで簡単に練習をするのであればキャリタス『就活無料Webテスト』、就職試験とSPIを効率よく学習し得点を測るのであればマイナビ『全国一斉webテスト』がおすすめです。
どうしても紙のテキストで学習したい学生もいるでしょう。
その場合はウイネット『専門学校生のための就職筆記試験対策問題集』がよいです。
解説が詳しいので手が止まらず学習できると好評です。
当日は性格検査を真剣に回答してください。性格検査重視の企業ということもあり得ます。
SPI対策も1年程度時間をかけて取り組む時代になりました。
計画を立ててしっかりと学習することをおすすめします。
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伊藤 圭一
豊橋創造大学短期大学部 教授
豊橋創造大学公務員試験支援センター長
公務員別科長
話すこと、相手にわかってもらうことが大好きで教員の道を目指す。
大学院修了後(教育学修士)、専門学校教員を経て現職。
楽しく授業をするのをモットーにして笑いのある授業を実践している。
特に授業の導入部分の面白さには定評があり、オンライン授業の際は「面白いよ」と学生が家族を誘って授業に参加させたこともあるほど。アクティブラーニングを軸とした授業が好評であり、教員向けの研修も担当している。
2022年度ベストティーチャー賞を受賞。