
教育においては、学生自身だけでなく、保護者との連携も欠かせない要素です。特に専門学校では、「就職すること」が大きな目標となるため、保護者と良好な関係を築くことが重要になります。
この記事では、保護者とのコミュニケーションの基本やポイントについて紹介します。
保護者とのコミュニケーションの基本
学校や学科によりますが、保護者と初めて顔を合わせるのは就職活動前の面談ということがほとんどかもしれません。出席状況や学習状況、学校生活で課題がある場合は、さらに早いタイミングで保護者とやり取りすることになるでしょう。
大前提として、保護者は学校に対して、「自分の子供が自立して社会で活躍できるようになること」を期待しています。それを実現するためには時として保護者の協力も必要になります。
保護者とのコミュニケーションにおいて、遠慮する必要はありません。私の経験でも、保護者と密なコミュニケーションを図ることが結果として学生のためになるケースが多かったように思います。
保護者は教員の言葉に喜びを感じることもあれば、不安や疑念を抱くこともあります。そのため、伝える内容や言葉選びには慎重さが求められます。
たとえば 、「お子さんは授業中に集中していない」とだけ伝えるのではなく、「最近授業中に集中が切れやすい様子があるので、何か心配事があるのかもしれません。心当たりはありますか?」と伝えた方が、前向きな話し合いにつながります。
保護者が抱える悩みや不安を引き出し、共感することが、良好な関係を築く第一歩です。
悩み・不安の例としては、以下のようなものが挙げられます。
・遅刻せずに学校に登校できているか
・子どもが授業についていけているか
・友人関係はうまくいっているか
・進路が見えているか
・家でずっとゲームをしているが大丈夫か
学生の良いところを伝える、保護者から学ぶ
保護者にとって、自分の子どもの良いところを聞くことは嬉しいものです。日々の学校生活で感じた学生の良いところを積極的に伝えることは、保護者との信頼関係を深める有効な方法です。
保護者との面談や日常的なコミュニケーションで、学生の良いところを具体的に伝えましょう。
たとえば、「授業で分からない部分を積極的に質問してくれる姿勢が素晴らしいです」、「学校イベントで周りを引っ張るリーダーシップを発揮していました」といった具体的なエピソードを挙げると、説得力が増します。
また、学生の良い面を伝えるだけでなく、「お子さんの良いところはどんなところだと思われますか?」と保護者に問いかけることで、新たな学生の魅力を発見することができます。私の経験でも、学校生活の中だけでは気づくことができない貴重な情報も保護者から聞くことができ、学生指導や就職指導に効果的に活用することができました。
問題がある場合、事実を伝える
学生が学校生活や就職活動で課題を抱えている場合、教員として冷静かつ客観的に保護者に伝える姿勢が求められます。遅刻や欠席、出席率など、具体的な情報を伝えることが大切です。これらの情報をもとに、解決策を保護者と共に考えます。
私が保護者と面談をしたときによく行った質問は「お子さんはだいたい何時に就寝して、何時に起床しますか?」、「お子さんは毎日朝食を摂っていますか?」というものです。
私の経験ではこの部分に課題がある学生が多かったように思います。
朝食に関しては、保護者は毎日用意しているが、子どもは時間がなく 食べずに学校に行っているというお話をとてもよく聞きました。
この場合、保護者に「家庭での時間管理についてお家の方からも少しサポートをお願いできるとありがたいです」と依頼することで、積極的に協力してくれるケースもあります。
教員も学生に朝食を摂ることの意義を説き、朝食を摂る習慣を身につけるように促しましょう。このように家庭と学校が連携することで、学生にとっても安心感が生まれます。
さらに、学生の抱える問題について、保護者から話してもらうことも大切です。これは教員からは口にしづらい問題などの解決に効果的です。
たとえば、「自分の子どもは場の空気を読まず言葉を発してしまう」といったような問題において、教員と保護者の認識が一致していれば、問題解決の難易度はぐんと下がります。
保護者と一緒に解決方法を考え、これからの対応を明確に決めることができ、保護者も納得したうえで進められるので教員の負担も軽減されます。
何もかも学校任せにしてしまう保護者との向き合い方
学習面以外の生活面の指導など、何もかもを学校任せにしてしまい、子どもに干渉しない保護者もいらっしゃいます。
私の経験では2つのアプローチがあります。
一つは学生自身が保護者に対してどのように接してほしいか、保護者は子どもとの向き合い方についてどう考えているかを三者面談で共有することです。保護者が子供のことを学校任せにしてしまう原因の多くは、「子どもとどう接してよいかわからない」というものが多かったように思います。学生と保護者の意見を聞きながら、教育者として間に入り、家庭での適切な向き合い方について助言を行います。
もう一つは、両親がいらっしゃれば学生、両親、教員の四者面談を行うことです。母親は子どもに干渉せず、父親は子どもと関わりたいけれどもどう関わったらよいかわからないというご家庭もあり、逆もまた然りで、父親か母親のどちらかに言えば改善することもありました。
保護者は就職活動を前進させてくれる原動力
就職活動では、保護者の協力が成功の鍵を握ることも少なくありません。多くの保護者は教員以上に学生のことを深く理解しています。保護者との連携がスムーズな就職活動につながります。
私が就職の面談で何度となく触れたのは、「専門学校で学んだから、学んだことを活かせる会社に入らないといけない」という学生の考え方です。
学んだ分野が得意、好きという学生であれば、そのまま就職活動を進めていけばよいのですが、「本当は違う分野で就職したい」、「今学んでいる分野は自分にとっては難しい」と感じているのにも関わらず。親の手前言い出せない学生もいます。
反面、保護者はどうかというと、「子どもがやりたいことをやってほしい」、「正社員で就職して自立した社会人になってほしい」という要望が圧倒的に多かったです。
就職活動前は学生と保護者の就職に対する考え方が大きく乖離していることも多々見られました。この乖離を教員が埋めることでスムーズな就職活動に導くことができます。ここはとても大事なポイントです。
まとめ
保護者とのコミュニケーションは、学校生活や就職活動において重要な要素です。
親の立場に寄り添い、学生の良いところを積極的に伝えながら、課題があれば保護者と連携して冷静に解決策を探ることが求められます。
また、就職活動では学生・保護者・教員の三者が協力することで、スムーズな進行が可能になります。教員が中心になり、三者が同じ方向を向いていけるよう導いていきましょう。

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伊沢 剛
有限会社プチフール代表取締役
23年間、専門学校にてIT教育、学生募集に従事。その後独立。新人社員向けプログラミング研修、社会人向けDX,AI,クラウド研修、情報教育コンサルティング、DX推進支援に携わる。
Youtubeチャンネル:【IT・プログラミングLab】伊沢 剛