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TOP教養スキルアップ指導スキル(12)~学生の主体性を育てる「ファシリテーション」スキル(中編)

指導スキル(12)~学生の主体性を育てる「ファシリテーション」スキル(中編)

2025.07.28 (最終更新:2025.08.18) スキルアップ 学校運営

連載授業アップデートテクニック

変化する学生のニーズ、技術やツールの進歩、多様性の受け入れなど、常に進化が求められる現代の教育現場。授業をアップデートしなくてはいけない時期が到来しています。この連載では、教員向け研修や教員志望者の育成を行う「RTF教育ラボ」の代表で、年間300もの授業観察を行う教育コンサルタントの村上敬一さんから、専門学校の先生に向けた「令和の授業テクニック」を教えてもらいます。

夏の長期休みに入り、ほっと一息つかれている先生も多い頃かと思います。

今回は、前回に引き続き「学生の主体性を育てる『ファシリテーション』スキル」についてご紹介します。教員がファシリテーターとして、授業内で複数の学生グループをファシリテーションする際のポイントをまとめました。

前回の記事からの続きとなりますので、「指導スキル(11)~学生の主体性を育てる『ファシリテーション』スキル(前編)」を確認してから読んでいただくことをおすすめします。

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専門学校教員としてのファシリテーション

専門学校の教員がファシリテーションを行う場合には、以下の3つのパターンが考えられます。

  1. 自身が主任やリーダーとしてファシリテーターとなり、会議や打ち合わせの場において目的達成や課題解決を容易にするために、中立的な立場から話し合いをサポートする
  2. 授業において、複数の学生グループが円滑に話し合いを進められるようにサポートする
  3. 学生自身がグループ内でファシリテーターとなれるような指導・サポートをする

いずれもファシリテーションを行う際の主な考え方、ポイント、注意点は変わらないのですが、目的や役割には違いがあります。頭の中を整理して臨まないと混乱してしまうことがありますので、注意が必要です。

今回は「2.授業において、複数の学生グループが円滑に話し合いを進められるようにサポートする」について説明します。

授業内で教員がファシリテーションを行う場合の考え方と行動

授業において教員がファシリテーションを行う際に、意識してほしい考え方をお伝えします。

(1)グループワーク(話し合い)を始める前の「レディネス」

「レディネス」とは、「学習や新しい行動を効果的に行うために必要な心身の準備状態や、前提となる知識・経験・環境が整っている状態のこと」です。簡単に言えば、「学習効果を最大にするための準備・環境づくり」です。質の高い話し合いを行わせるためには、事前の準備が欠かせません。

今回の「授業において、複数の学生グループが円滑に話し合いを進められるようにサポートする」におけるファシリテーターの場合は、グループのメンバー構成や人数、議論に適した場所や机の配置といった物理的な環境に配慮しましょう。メンバーの構成は、学生同士の話し合いによって決めるのが基本ですが、リレーション(人間関係)が確立していない状態では、大人のグループワークであってもファシリテーターがグループを編成することは少なくありません。ですので、状況によっては教員がグループ構成のサポートを行いましょう。

また、クラスを横断するグループ編成が必要な場合には、参加者の緊張をほぐすためのアイスブレイクを取り入れましょう。普段から良く知っている仲間内でのワークであれば、アイスブレイクは必要ありません。

議論を活性化させるために、ジグソー法・ワールドカフェ方式といった話し合いの手法や、スライド・ワークシート・ホワイトボード・デジタルツールなどのツールを準備しておくことも大切です。グループ内のまとめ役(ゆくゆくはファシリテーター候補)の選出や、目的・テーマ・到達目標の準備、ルール、グループワークのシミュレーション、成果のプレゼン方法やフィードバック・リフレクションの方法など、終了段階におけるイメージの確認も事前に行いましょう。

(2)目的/目標、テーマ、ゴールを明確にし、伝達および共有する

今回のワークが何のための話し合いなのか、何を達成したいのかといった目的や目標を事前に明確にしておくことが重要です。議論のゴールを共有して、学生が方向性を理解できるようにしましょう。この際に、言葉だけで伝達するのではなく、スライドをプロジェクターなどに投影したり、黒板やホワイトボードなどに書いたりして、話し合い中にも確認できるようにしておくと良いでしょう。

また、話し合いが終わった後の行動も明確にしておきましょう。例えば、代表者の発表や少し高度なグループプレゼン、全員のレポート提出など、成果をアウトプットする機会があるのか事前に学生へ伝えましょう。

(3)グループの話し合いの過程を管理する

グループワークが始まった後も、ファシリテーターとして最低限の管理は必要です。議論が停滞したり、一部の学生だけが発言したりするグループをサポートするために、各グループを巡回しながら適宜声かけを行います。話し合いが活性化している場合は、声かけは行わず、黙って笑顔で傾聴してください。状況によっては「良い質問ですね。少し掘り下げてみたらいかがでしょうか」「〇〇さんの意見について、△△さんはどう思いますか」「お客様の立場からだけではなく、お店側の視点から考えるとどうでしょうか」といった言葉を投げかけてまとめ役のサポートを行い、議論の停滞を防ぎ、深掘りを支援します。

また、意見の対立やメンバー間の温度差が生じる場合は、教員がサポートとして介入し、お互いの意見の背景にある考えを引き出し、建設的な解決策を共に見つけるための手助けをしましょう。

グループワークに全く参加しない学生もいるかもしれません。そのような学生への声かけに課題を感じている先生も多いと思います。毎回指導のように声をかけてしまうと教員と学生とのリレーションがくずれてしまいますし、全く関与しないと学生同士のリレーションがくずれてしまいます。そのため適度に声をかけながら、観察と関与を行うようにしましょう。

そして、タイムマネジメントもファシリテーターの重要な役割です。グループにも時間管理の役割を持つ学生がいるはずですが、話し合いの流れを適切にコントロールするためにも「あと○分です」といった声かけは必要です。

(4)ゴールに向けたクロージングの共有

目標や課題解決に対して、グループでどのように話し合い、今後の行動を決めたのか、ほかのグループへ共有することも効果的です。例えば、グループの代表者発表やグループプレゼンがこれにあたります。ほかのグループの意見を聞くことで、自分たちのグループにはなかった視点や価値観に触れる機会が増えます。さまざまな立場や意見に触れ、異なる視点を積極的に取り入れることで、次回の話し合いがより充実するはずです。

ただし、授業の時間によっては省略する場合があります。その場合は、グループや個人でレポートを作成し、クラウド上で共有する方法もあります。

(5)振り返りを行う(フィードバックおよびリフレクション)

活動の最後に、可能な限り「振り返り」の時間を設けます。まずはチームのフィードバックです。「チームとしての学び」を共有することを目的に、話し合いをより良くするための「気づき」をチームで共有します。あくまで自分の活動に対する振り返りではなく、「チームとしての話し合い活動」を、グループ内の学生同士で客観的に相互フィードバックします。これにより、次回の話し合いの精度を高めます。

次に、個人としてのリフレクションです。個人の活動を言語化することによって、次の活動に活かすことが目的です。例えば「目標に対して、達成状況とその要因」「今回の活動で学んだこと」「次に活かしたいこと」といったリフレクションを通じて、学生一人ひとりの活動経験を、次回に向けたさらなる学びへつなげましょう。

次回に向けて

今回は、「学生の主体性を育てる『ファシリテーション』スキル(中編)」として、教員がファシリテーターとなり、授業内で複数の学生グループをファシリテーションする際のポイントについてお伝えしました。

次回は、学生をファシリテーターに育成する際のスキルやポイントについて詳しくお伝えいたします。

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この記事を書いた人
村上 敬一

村上 敬一

RTF教育ラボ代表/教育コンサルタント/東京都杉並区内中学校学校運営協議会委員
全国の公立および私立の小学校・中学校・高等学校、専門学校、塾などで教員研修、講師研修、授業や学級経営を中心とした教育全般に関するアドバイスを行う。また、現在まで18年間に渡り、毎年約150名の教員志望者を育成。年間の授業観察数は300を超え、これまでに約5000の授業を観察している。
RTF教育ラボ(https://goseminarcourse01.wixsite.com/rtfkyouikulab

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