
連載侑加先生のお悩み相談室
先生に特有のお悩みから、ワークライフバランス、キャリアデザインまで。「他の学校はどうなんだろう、他の先生はどう考えているんだろう……」と思ったら、学校の現場にも詳しい侑加先生に相談してみませんか?
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今回は、「授業中の板書」についてのお悩みです。
板書は、授業のポイントまとめたり、学生の理解を深めたりするために、先生にとっては必須のスキルといえます。
学生に見せることを前提として書くものですから、見やすく綺麗に書きたいですよね。
もともと字が綺麗ではなかったという高峰先生。
パソコンが普及した現代では、字を書くことに苦手意識をもつ方が増えているのではないでしょうか。
授業を構成するひとつの要素である「板書」のスキルをアップさせる方法を、侑加先生に聞いてみましょう!
目次
【今回のお悩み】板書がうまくできない…なにかコツはありますか?
相談者:高峰先生(仮名)(男性・30代前半)
美容学校で教員をしております。
元は美容師として勤務していました。現在は国家試験対策(筆記)を担当しております。
教員になって4年目のいまも、板書に自信がもてません。
自分自身が学生だったころは板書がうまくない先生がいたという記憶がなく、なぜ自分はバランスよく書けないのかと落ち込みます。
もともと字が綺麗ではなく、大きなホワイトボードになると、なおさら全体の文字サイズが統一できていなかったり、曲がってしまったり、図はとくに苦手です。
侑加先生は授業中、板書されることはよくありますか?
その際に気を付けていることや、トレーニング方法があれば教えていただきたいです。
よろしくお願いします。
以上が今回のお悩みです。
それでは侑加先生の回答をご覧ください!
教案作成と併せ、板書計画を事前にするといいですね
高峰先生、ご相談のメールをありがとうございます!
実は今日、後期初回の授業で、学生から「下の方に書いた文字が見えない」と板書のクレームを受けてしまいました。話しながら夢中になって、ホワイトボード全面に書いたのですが…。
教卓にあるオーディオ機器の操作盤が着席している学生の目線に入ってしまい、下の方に書いた文字を遮っていたのです。こちらは一段高い教壇に立っていて、全然気が付きませんでした。
その後は、下の方に文字を書かないように注意したのですが、言われた時は、ドキッとしました。
でも、熱心な学生から指摘を受けて、良かったです。相手の立場に立って、確認する必要があったと反省しました。
かつては、板書の上手な先生が多かったですよね。
PowerPointもタブレット学習もない時代、先生は講義と板書、学生はノート作成が授業の中心タスクでした。
先生のなかには板書計画を綿密に立て、その計画を教案にメモしている方もいました。
30年以上前に経験した中学校での教育実習では、板書計画を指導教官に提出し、改善指導も受けました。専門学校の教員研修会では、板書する際の姿勢を注意されました。学生に背中を向けないよう、できるだけ半身の体勢で板書するよう指導を受けました。

背中を向けすぎると、学生の集中力が削がれるからなのですが、中々難しいです。
学生とのアイコンタクトを大切に、双方向の授業をすることが大事で、美しい板書を仕上げることが目的になってはいけないのですね。また、チョークの持ちっ放しを指摘されたこともあります。板書ばかりに気を取られるのは、良い授業とは言えないですよね。
2008年『東大合格性のノートはかならず美しい』(太田あや著、文藝春秋)がベストセラーになりました。
この本に紹介されている東大生のノートは、確かに見やすく、お手本のようです。先生の板書の参考に、ご覧になると良いかもしれません。その後、「ノートテイキング」という言葉も使われるようになり、一つのスキルとして色々な研究がされています。
美容師国家試験(筆記)合格に必要な知識の習得を目指す
令和の学生は、子ども時代からスマホを使い、学校ではタブレット学習をしています。
箸よりはスプーン、紐靴は少なくなり、ファスナーやマジックテープで留めます。給食用のエプロンも後ろで紐を結べない子どもが多いため、被るだけのものが多いです。スーパーでは、骨を外した焼き魚を売っています。
子どもが困らないように、短時間で済ませられるようにという工夫や配慮は、手先の器用さを奪っているとも言えるでしょう。
財布を持たない学生が増えました。スマホが財布代わりです。
ノートもペンも持っていないのは、スマホにメモをするからです。
先生が丁寧にPowerPointで作った資料を印刷して渡すこともあります。先生の話を聞きながら、筆記用具持って、メモをすること自体が苦手ではないでしょうか。
今までの生活の中に、入力作業は多くあっても、「書く作業」が少ないのです。
美容師を目指す学生は、書くタイプの一般的な勉強が好きではないかもしれません。実技練習や人とのコミュニケーションを好む傾向にあると思います。
美容師国家試験(筆記)対策の授業では、合格に必要な知識を整理して伝え、後になって、学生が復習できるようなノートを作らせるための板書を必要としていると思います。
中学や高校の社会科の先生がよく行う方法なのですが、単元の項目やキーワード前後の文章を印刷したプリントを予め作成し、配布してはいかがでしょうか。
授業中は、テキストを読んだり、先生の講義を聞いたりしながら、キーワードを学生に記入させます。
クイズ形式になりますので、解答を先生が板書したり、学生に前に出て、書いてもらったりするのも面白いでしょう。講義とノート取りという授業は、どうしても眠くなる学生が出てしまいますので、班活動にしても良いですね。
先生の板書も楽になります。学生に整ったノートを作らせるという目標は、プレッシャーが大きく、とくに長い文章になるほど曲がってしまうことを気にせざるを得ません。
後列の学生が読めるサイズで文字を書く必要はありますから、大きさと色分けは事前に計画したいです。
左上から横書きをしながら、一行の長さや余白、行数などにも気を配りつつの板書になりますから、どんな話の時に何を書くか、書かせるかを計画しておくと、大事な所を学生に印象付けることに集中できます。
図を一から板書するのは大変です。黒板でも、ホワイトボードでも、貼れば済むように模造紙に大きく書いたものを持参しましょう。またはPowerPointのスライドで示せるように、パソコンを準備するのもいいですね。
学生には、この図を書き写させるのではなく、印刷物をその場で配り、周辺にキーワードを書かせるようにしてはいかがでしょうか。「見る・聞く・書く」という動きが続く中で、配布物があると、学生が隣や後ろの学生に手渡す作業が入り、気分転換にもなります。
プリントを作成する一年目は大変ですが、先生はご指導4年目ですので、今までの蓄積もあると思います。来年からは、負担が減りますから、今年頑張って作成してはいかがでしょうか。
練習問題を解いて、合格点に達しない学生は、知識が整理されていないか、記憶が定着していないのですよね。解答を見たり、スマホで検索したりして「あぁ、分かった」と満足してしまう傾向があります。
「ここを見れば分かる」という戻れる場所を作る、これがノートです。
そして、間違えた部分に追記し、マーキングする習慣を作りたいですね。ノートがある程度できてきたら、回数多く開けるように、インデックスを貼るのも有効だと思います。

プリントはバラバラになるので、ファイルに綴じるか、ノートに貼るよう指導する先生が多いです。練習プリントも綴じたり、貼ったりすれば、自分用の立派なテキストが出来上がります。このノートを国家試験前日に最終確認し、当日は持参するお守りにしたいですね。
試験当日は、HBの鉛筆かシャープペンシルが必要です。入力でなく、書く作業が必要ですから、全てをオンライン化して、見るだけ、入力するだけの授業にしない方が良いですね。授業に遅れ気味、欠席の多い学生のノートは、ぜひ、個人的に見てあげてください。抜けのある箇所は、先生が記入を促し、印を付けてあげるなどすると、愛情たっぷりのノートが出来上がります。
高峰先生の板書への苦手意識を減らして、笑顔で学生を惹きつける授業が行われますように、願っています!
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侑加先生
一般企業を経て、専門学校に正教員として勤務。
現在は、企業・大学講師、小中学生の塾経営。
趣味は、お笑いと高校野球、旅行。一児の母。









