デジタル教科書とは?メリット・デメリットや3つの活用事例を解説

教育現場でのICT化が加速するなかで、デジタル教科書を導入する学校も増えてきました。動画や音声などが使えることから、活用次第で理解を深めやすいのが利点です。専門学校のような実践重視の教育では、現場で役立つ知識を視覚的に身につけられる点で注目されています。一方で健康面への影響や端末管理など、懸念点があるのも事実です。
そこで本記事では、デジタル教科書の基本やメリット・デメリットを詳しく解説します。活用事例もまとめたので、導入検討時の参考にしてください。
目次
デジタル教科書とは?基本を解説

ここでは、デジタル教科書の基本を押さえましょう。ポイントを解説します。
- デジタル教科書の定義
- デジタル教科書の普及率
- 賛成だけでなく反対意見もある
それぞれ見ていきましょう。
デジタル教科書の定義
デジタル教科書とは、紙の教科書と同一内容を電子データ化した教材のことです。2019年4月施行の「学校教育法等の一部を改正する法律」の一部改正により制度化され、教育課程の一部において紙の教科書と組み合わせて使用できるようになりました。
タブレットやノートパソコンの画面上で閲覧し、文字の拡大表示、マーカーでの書き込み、音声読み上げといった補助機能を活用しながら学習を進められる点が特徴です。紙の教科書との併用が前提となっており、学びを深めるためのツールとして位置づけられています。
デジタル教科書の普及率
文部科学省が実施した調査によると、全国の学校における学習者用デジタル教科書の整備率は2024年の時点で88.2%、教員が使用する指導者用では89.6%に達しています。(※)教育現場全体としてICT環境が整備され、紙教材にプラスして電子版を使える基盤が整ったといえるでしょう。
※参照:文部科学省「令和5年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果(概要)」
ただし、これは義務教育の課程を中心に進んだもので、専門学校や職業教育機関では導入状況に差があります。専門学校は実習や資格取得を目的とした教育課程が中心であり、動きの理解や手順の視覚化といったデジタル教科書の強みを活かしやすい領域です。そのため、今後の普及が期待されます。
賛成だけでなく反対意見もある
利便性を評価する声がある一方で、慎重な意見が根強く存在するのも事実です。主な懸念点として、視力低下や学習への集中度が下がる点が挙げられています。紙教材のメリットを活かしながら、デジタルの強みをどのように組み合わせていくかが今後の課題といえるでしょう。導入を成功させるには、保護者や教育者への丁寧な説明と理解促進が不可欠です。
デジタル教科書を導入する5つのメリット
デジタル教科書を取り入れることで、紙教材では難しかった表現方法や学習支援が可能になります。主なメリットは、次の5つです。
- 多様なデジタルコンテンツを活用できる
- 直接書き込みや編集ができる
- 教科書を持ち運ぶ負担が軽減される
- 各学生に適した柔軟な学習ができる
- 教材準備を効率化できる
それぞれ解説します。
1.多様なデジタルコンテンツを活用できる
デジタル教科書は、動画・音声・アニメーションといったコンテンツを教材内に組み込めます。紙の教科書では静止画と文字情報に限られていた表現が、動きや音のある形で見せられるため、理解の幅が広がるのです。
たとえば医療系の専門学校なら、注射や包帯の巻き方といった処置の手順を動画で示すことで、正確な技術を視覚的に習得しやすくなります。工学系の分野でも、機械の内部構造や動作原理を立体的に回転させながら観察できるため、複雑な仕組みへの理解が深まるでしょう。
2.直接書き込みや編集ができる
画面上にあるペンツールやメモ機能を活用し、自由に書き込むことが可能です。強調したい箇所にマーカーを引いたり図の横にコメントを残したりと、従来のノートと同じような感覚で操作できます。
保存や検索が容易な点もメリットで、過去のメモを素早く呼び出せるのは紙教材にはない特徴です。授業後の振り返りや試験前の見直しも効率化でき、振り返り学習の質を高められるでしょう。学習ログを活用した自己分析にも応用可能です。
3.教科書を持ち運ぶ負担が軽減される
複数の教科書や資料を1台の端末に集約できるため、重い紙の教材を持ち運ぶ物理的な負担が大きく軽減されます。専門学校のように専門科目が多く、分厚い教科書や資料が多数必要となる教育機関では、大きなメリットといえるでしょう。物理的な負担を減らすことは、学習へのモチベーション維持にも繋がります。
4.各学生に適した柔軟な学習ができる
デジタル教科書には拡大表示や色反転、文字サイズ調整や音声読み上げなどの機能が備わっています。これにより視覚や聴覚の特性、学習スピードの違いに合わせた柔軟な対応が可能です。
たとえば音声の読み上げ機能は、文字を読むことが苦手な学生や耳から情報を得たい学生にとって大きなサポートとなるでしょう。一斉学習による理解レベルのばらつきを防ぎ、学生のニーズに合わせた質の高い学びを提供できます。
5.教材準備を効率化できる
従来の紙教材では、印刷・配布・回収といった作業が必要でした。しかしデジタル教科書なら、それらの業務を削減できるため、先生の負担軽減に繋げられます。最新のデータや情報も、素早く学生に提供可能です。
業務効率がアップすれば、そのぶんを学生のサポートに充てられるため、教育現場全体にプラスの影響を与えられるでしょう。印刷用紙やインク代といったコストの削減にもなり、経済的なメリットも期待できます。
デジタル教科書を導入する3つのデメリット
多くのメリットが期待できるデジタル教科書ですが、いくつか課題もあります。それが、次の3つです。
- 健康面に影響を与える恐れがある
- コストがかかる
- 故障時の対応を考えておく必要がある
それぞれ見ていきましょう。
健康面に影響を与える恐れがある
画面を見続ける時間が長くなると、まばたきが減って乾燥しやすくなったり、無意識に猫背になって首や肩がつらくなったりすることも。特に集中力が切れにくい学生ほど、姿勢の崩れに自分で気づきにくい傾向にあります。
一定時間ごとに姿勢をリセットする、紙の配布資料や板書に目を移すだけでも、同じ姿勢や視線が続きにくくなります。学びの効率化だけでなく、負担を減らす工夫も取り入れるようにしましょう。
コストがかかる
専門学校で導入を検討する際は、端末費用が誰負担になるのか入学案内の時点で明示しておく必要があります。自治体整備が基本の義務教育と違い、専門学校の場合は各家庭で購入するケースが一般的なため、学科によっては教材代と併せて負担が重なりやすいからです。
学校側でも、安定して使えるネットワークや管理システムを整えるための費用が発生します。負担が家庭と学校の両方に分散する構造になりやすいため、継続的に運用できるかを見据えて検討する必要があるでしょう。
故障時の対応を考えておく必要がある
バッテリー切れやシステム障害、通信不良などのトラブルが発生すると、授業の進行に影響を及ぼす恐れがあります。リスクを最小限に抑えるためにも、予備の端末を一定数確保する、迅速な修理やデータ復旧が可能なサポート体制を構築するなどの対策を用意しておきましょう。定期的なバックアップや、アップデートの実施も大切です。
デジタル教科書の活用事例3選
デジタル教科書は、より深い理解を得るためのツールとして注目されています。ここでは、3つの活用事例を見ていきましょう。
- 実技授業でのシミュレーション利用
- AI型教材との連携
- アクセシビリティ機能による学習ハードルの軽減
それぞれ詳しく解説します。
実技授業でのシミュレーション利用
医療系専門学校では、実技の理解を深めるためにデジタル教科書が積極的に取り入れられています。紙の教科書では再現が難しい手順の流れや器具の操作方法も、動画や音声コンテンツを通じて学習可能です。授業中に繰り返し確認したり自宅で復習したりできるため、実習前の準備にも役立つでしょう。臨床現場での即応力を養ううえで、重要な役割を果たしています。
AI型教材との連携
近年はデジタル教科書単体での利用にとどまらず、AI型教材と組み合わせた学習支援が進んでいます。たとえば学習コンテンツの制作・配信をしているCOMPASSでは、日本文教出版のデジタル教科書とAI型教材「Qubena(キュビナ)」を連携させ、個別に最適化された学習を実現するための実証を2026年から始める予定と発表しました。
ただし、現時点では義務教育を中心とした事例であり、専門学校を前提とした仕組みではありません。しかし今後、医療や工学など実技中心の分野でAIによる個別最適化が導入されれば、実習の準備や復習の質を高められる可能性があります。そうなれば、専門的な学びを支える新しい教育モデルが広がることが期待されるでしょう。
アクセシビリティ機能による学習ハードルの軽減
視覚や聴覚、身体機能に困難を抱える学生にとって、紙の教科書は物理的な障壁となる場合があります。しかしデジタル教科書の画面拡大や音声読み上げ、色反転といったアクセシビリティ機能の活用によって、理解の妨げとなる要因を減らすことが可能です。教育のユニバーサルデザイン化を推進するうえでも、デジタル教科書の役割は大きいといえるでしょう。
デジタル教科書を導入する際の注意点3つ
デジタル教科書は大きな可能性を秘めていますが、導入時には慎重な準備が必要です。導入時には、以下の3点に注意しましょう。
- セキュリティ対策を万全にする
- 健康面とのバランスに配慮する
- 教員側のICTリテラシーを育てる
それぞれ解説します。
セキュリティ対策を万全にする
学習端末には成績情報や出欠データ、学習履歴といったセンシティブな情報が多く含まれています。そのためセキュリティ対策は、導入時の最優先事項です。たとえばOSやアプリケーションのアップデートを定期的に実施し、脆弱性を放置しない運用が求められます。
端末へのログインには強固なパスワード設定や多要素認証を導入し、第三者による不正アクセスを防ぐ仕組みも構築しましょう。安心してデジタル教科書を活用するためにも、学校全体でセキュリティポリシーを共有し、定期的に見直すことが大切です。
健康面とのバランスに配慮する
導入を検討する場合は、健康面へも配慮しましょう。長時間の画面学習は、目の疲れや姿勢の乱れ、集中力の低下などに繋がることがあります。授業の合間に短い休憩時間を設ける、姿勢を意識して正すなど、負担を分散するなどの工夫が大切です。学生自身が健康リスクを理解して自ら対策できるよう、先生側でサポートしていきましょう。
先生側のICTリテラシーを育てる
端末を導入しても、先生が機能を使いこなせなければ学習効果は半減してしまうでしょう。最大限に活かすには、まず先生のICTリテラシーを高めることが欠かせません。新機能の活用法を共有する研修や、授業設計の改善を話し合う校内勉強会を継続的に実施するとよいでしょう。最新のICT教育を定期的に学ぶ仕組みを作ることで、導入後も安定して質の高い授業を提供できます。
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まとめ
デジタル教科書は、これまでの紙教材では難しかった学び方を実現できるツールです。動画や音声を組み合わせることで実技の理解を深めたり、個人のニーズに寄り添った学びを提供したりと、教育現場の可能性を広げています。一方で、安全に使うための対策も欠かせません。
検討する際は機能面だけでなく、安全かつ効果的に使う仕組みをどのように整えるかがポイントです。上手に活用できれば、学びの質を高める心強いパートナーとなるでしょう。
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