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TOP教育公務員作文添削ポイント-正確に課題を読み取る力・個性・仕事の理解度

作文添削ポイント-正確に課題を読み取る力・個性・仕事の理解度

2023.02.10 (最終更新:2023.12.08) 公務員 教務情報

連載作文添削者はここを見ている!作文指導のポイント

初級公務員試験の多くで課される「作文試験」。作文試験に苦手意識をもつ学生が多いため、指導に苦労されている先生もいらっしゃるのでは。 この連載では、作文添削のプロフェッショナルである作子先生に、作文添削者が見ているポイントを伝えていただきます。ぜひ学生の作文指導にお役立てください。

皆さん、こんにちは。
前回は「作文添削でのチェックポイント」のうち、「(A)文章を書く能力」について、合格ラインを遠ざけてしまうNG例とその対策をご紹介しました。

今回取り上げるのは、「(B)正確に課題を読み取る力」「(C)個性」「(D)仕事の理解度」です。

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(B)正確に課題を読み取る力

問題文を読まないと解答できないように、作文課題を理解せずに課題に沿った作文を書くことはできません。
「課題が求めていること」に沿った作文にするためには、次の二つのポイントを念頭に書き進める必要があります。

1.課題が求めることを全て満たす

例えば、次の課題では、①~③が網羅されていることが必須条件です。どれかが欠ければ減点となります。

課題
○○市の特徴を三つ挙げ、その中から一つを選び、選んだ理由を述べなさい。また、選んだ特徴を活かして、○○市が発展していくために必要だと思うことを述べなさい。

<必須条件>
①特徴を三つ挙げる
②その中から一つ選んで理由を述べる
③特徴を生かして市を発展させるために必要なことを述べる

2.公務員採用試験の作文としてふさわしい題材を選ぶ

例えば、次の課題はどうでしょうか。

課題
物事を継続するために必要だと感じたことについて、具体的に述べなさい。(令和3年・国家一般職高卒・税務試験より)

幅広くとらえることができるため、何を題材にすればよいか迷う学生も多いでしょう。
「継続が必要だと感じていること」が述べられていれば、何を題材にしてもよいというわけではありません。

【NG例】
健康な生活を継続するためには、うがい手洗いを徹底することが必要だ。

たしかにうがい手洗いは健康維持のために必要なことではありますが、採用試験の題材としては幼い印象を受けます。

公務員採用試験の作文としてふさわしい題材を選んでいない場合は減点となる可能性があるので、ウイネットでは次のポイントで添削をしています。

・題材は、作文試験にふさわしいか
 部活動、ボランティア活動、課外活動、趣味などから、
 「成果を出すために、自分で考えて行動した経験」を取り上げているか。

・「物事を継続するために必要」な経験談を述べているか。
 経験談は成功事例でなくてもよい。
 継続して取り組めた(成果があった)場合は、
 意識して工夫したことを述べているか。
 継続して取り組めなかった(十分な成果が出なかった)場合は、
 失敗の要因を述べているか。

・「感じたことを述べなさい。」
 感じたこと=感想ではない
 経験から学んだことを述べているか。
 採用試験の作文なので、仕事でその経験を生かすという抱負を述べてもよい。

●問題点の取り違え、短絡的な結論

課題
身近な社会問題を取り上げて、感じていることを述べなさい。

【NG例】
・社会問題:少子高齢化
・要  因:出生率の低下、医療の発達による平均寿命の延伸
・話の展開:医療の発達は素晴らしいが、高齢者が増えすぎてしまう。これにより高齢者の交通事故が多発する。高齢者は「自分は偉いから周りが気をつけるべきだ」と考えて、自分本位な運転をするからだ。これに対してできることは、公共交通機関を増やすことだ。

<NGポイント>
・高齢者の増加そのものを社会問題ととらえている。
・文面から、物事を決めつけて考える性格だと判断されてしまう恐れがある。
・交通事故を減らすために公共交通機関を増やすべきという、短絡的な結論になっている。

この例では、次のポイントで添削をしています。

・社会問題:「高齢者の増加による交通事故の多発」とすることで、問題がはっきりします。
・要  因:高齢者の事故が多い原因を調べましょう。
・話の展開:要因に対して自分なりに対策を考えてまとめましょう。

以下、上記の添削ポイントを元にした書き換え例です。
取り上げる対策は、学生自身で見つけるように促しましょう。

【書き換え例】
・社会問題:高齢者の増加による交通事故の多発
・要  因:高齢者の身体能力の衰え
・話の展開:高齢ドライバーは身体能力の衰えにより、交通事故を起こしやすくなる。若い頃と比べ、動体視力の衰えや反応時間の遅れなど、身体機能が変化している。警視庁によると、高齢ドライバーの交通事故の人的要因は、「発見の遅れ」によるものが約80%を占めているそうだ。地域によっては、車での移動を余儀なくされる高齢者もいるので、運転支援機能・安全装備を装備した車への乗り換えを促進する仕組みづくりが必要だと考える。

自分の思い込みや感覚的な意見ではなく、客観的なデータに基づいて要因を述べることで説得力が増します。

課題の「感じていること」として、「安全運転サポート車等限定条件付免許」などについても調べておくと、現実的な意見をもっていることも伝えられるでしょう。

(C)個性

連載第1回で述べたとおり、作文試験における「個性」とは「自分らしさ」です。
体験談や自分の意見がなく、一般論で終わっている作文では、自分らしさを伝えることはできません。

また、「個性を出そう」「自分らしく論じよう」としすぎるあまり、次に該当するものは、チームの一員として一緒に仕事に取り組めるかどうか、採用担当者に不安を与えてしまうでしょう。

・極端に偏った思考、非常識・批判的な印象を受ける
・消極的な印象を受ける(短所や苦手なことばかり述べている)
・自己主張が強すぎる、自己中心的である

●批判的な印象を受ける

課題
身近な社会問題を取り上げて、感じていることを述べなさい。

【NG例】
・社会問題:コロナウイルスの流行
・話の展開:政府の対応に不満がある。国民の行動を制限しているのに、なぜ外国から選手団を招いてオリンピックを開催するのか。腹立たしい、馬鹿馬鹿しい、やっていられない。早くマスク無しで友達と笑いあえる日が来てほしい。

<NGポイント>
・「感じていること」として不満を述べるに終わっている。
・言葉選びが乱暴である。
・政治に対する批判は、採用試験には不適切。
・個人の願望(自分が友達と~したい)を述べている。

この例では、次のポイントで添削をしています。

・「感じていること」は、感想ではありません。問題に対する対応策を述べましょう。
・政治や宗教に言及することは避けましょう。
・公務員採用試験の作文なので、「私が」ではなく「市民が」と考えて話を展開しましょう。

●自己中心的である

課題
あなたの長所を説明し、そのことを仕事にどのように活かしていきたいか述べなさい。

【NG例】
私の長所は、行動力があるところです。~~高校の部活動で部長として取り組み始めたころ、大会で結果を出すことができませんでした。そこで、部員と話し合い、部活動の方針を大きく変えることにしました。時間厳守を徹底させるため、遅れた者がいたら、部員全員で基礎練習をするという罰を与えることにしました。~~他にも、声出しや準備片付けも、上級生・下級生関係なく行わせるようにしました。~~私のこの長所は、将来の仕事に大きく役立たせることができます。チャンスを逃すことが少なくなり、他の人より経験値を稼ぐことができるようになります。~~私は、深く考えるより行動を起こすことの方が重要だと考えます。~~たとえ行動した結果が良くない事態を招いたとしても、自分にとっての経験になり、人生を良い方向に向けることができます。~~

<NGポイント>
・「罰を与える」「~させる」という言葉選びに、自己中心的な印象を受ける。
・行動を起こすことが重要ということに終始していて、どのように仕事に生かすか具体的な記載がない。
・記載した長所によりなぜチャンスを逃さないのか、また経験値を稼ぐことができるのかが不明瞭。

この例では、次のポイントで添削をしています。

・「罰を与える」のような乱暴な言葉遣いは避けましょう
・自分の主張を論じるだけでなく、課題に沿った論述をしましょう。課題は、「あなたが重要だと考えること」ではなく「長所をどのように仕事に生かしていきたいか」を述べることです。

【書き換え例】
私の長所は、行動力があるところです。~~高校の部活動で部長として取り組み始めたころ、大会で結果を出すことができませんでした。そこで、部員と話し合い、部活動の方針を大きく変えることにしました。時間厳守を徹底するため、遅れた者がいた場合、部員全員で基礎練習をするというルールを作りました。他にも、声出しや準備片付けも、上級生・下級生関係なく行うことにしました。これまでの風習になんとなく従うのではなく、大切だと思うことは声に出し、行動に移すことを意識して取り組みました。技術の向上以外の部分も強化したことで、部としての一体感が生まれ、大会の結果にも繋げることができました。~~私のこの長所は、将来の仕事に大きく役立たせることができます。業務の効率化や市民の幸せのためには、慣例やしきたりを重視するのではなく、具体的な改善案を挙げ、行動に移していきます。~~

罰を強要したのではなく、部をよくするためのルールを部員と話し合って作った、という表現に変えました。
具体的な改善案を考え発言する力や行動に移す力があることを、エピソードを交えてアピールできています。

学生は、悪気なく正直に書いている場合がほとんどで、作文試験として適切かどうかを自分では判断できません。
作文や自己分析シートで気になる学生がいたら、作文添削のポイントを軸に、個別に対応しましょう。

●消極的な印象を受ける

課題
後悔した経験とそこから得た教訓

【NG例】
私が今までで一番後悔したことは、高校時代に何もしなかったことです。1年生のときに部活動に入りましたが、練習がハードでついていけなかったため辞めました。辞めた後は特に何もせず、学校が終わったら家に帰る日々を送っていました。辛いことや大変なことは全くありませんでしたが、高校生活を振り返ったとき、何かすればよかったなと後悔しました。このことから、何かに挑戦することの大切さを学ぶことができました。これからは、ボランティア活動などに挑戦して、いろいろな経験や能力を、将来の役に立てていきたいです。

<NGポイント>
・この課題では、「行動した結果、後悔したこと」を述べることが望ましいが、何もしていないことしか伝わらない。
・「辛いことや大変なことは全くありませんでした」と述べていることから、部活動以外の勉学や学校行事にも積極的に取り組まなかったととらえられる可能性がある。

この例では、次のポイントで添削をしています。

・「何もしなかったことを後悔している」という展開ではなく、「何かをして後悔した」経験を述べましょう。部活動を辞めたことを後悔しているのであれば、辞めることになったきっかけや、そのときの気持ちを述べると自分らしさが伝わります。
・教訓には、後悔したことを次のどんなことで生かしたかを述べることが求められます。「~していきたい」ではなく、「~に生かした」と言える経験を探しましょう。

高校までの経験が乏しく、作文で取り上げるネタがない学生もいるようです。
専門学校では、ボランティア活動、実習、ゼミ、サークルなど、課外活動の機会を設けている学校が多いので、経験が少ない学生には積極的な参加を促すとよいでしょう。
自分が経験したことを述べなければ、自分の良さは伝わらないということを、早い段階で伝えておきたいものです。

(D)仕事の理解度

公務員の仕事の幅は広く、すべてを理解することは困難ですが、自分が関心のある分野や、解決したい問題などは、十分な研究をしておく必要があります。
そのうえで、自分の意見を述べられるようにしておきましょう。

以下のような作文は、仕事の理解度が低いと感じます。

・現実的ではない夢物語や、仕事のほんの一片だけしか見ていないと思われるもの
 <例>
 課題:遊ぶところがない → 対策:施設を造る
 課題:公共交通機関の便が悪い → 対策:バスの本数を増やす
 課題:安心安全なまちづくり → 対策:パトロールをする
 課題:きれいな街づくり → 対策:ボランティアでゴミを拾う

・公務員としての意見ではなく、学生目線での要望に終始しているもの
 <例>住みやすい街になるといいと思います。(他人任せ)

・誰でも書ける一般論で終わっているもの
 <例>公務員に求められることは、市民と接して要望に耳を傾けることだ。

●公務員としての視点が不足している

課題
身近な社会問題を取り上げて、感じていることを述べなさい。

【NG例】
・社会問題:少子高齢化
・話の展開:少子高齢化が進んでいる。私が住んでいるマンションでは子どもが減り、近所を散歩している高齢者を見かけることが多くなった。子どもを増やすためには、子育て世帯に入居してもらう必要がある。子育てを手助けしてあげられる仕組みが必要だ。高齢者にも何らかのサポートが必要だ。スロープを設置することがいいと考える。現代では、いろいろな社会問題を多く抱えている。その問題を、公務員になって一つずつ解決していけるようにしたい。また、地域住民と町をより良くしていくためにボランティア活動を行ったり、イベントを開催したりして、他県からも来てもらえるようなことをしたい。時間はかかるかもしれないが、楽しみながら街づくりをしていきたい。

<NGポイント>
・マンションや近所の様子は身近な場面だが、社会問題を語るには狭すぎる。
・マンションには同年代の世帯が一斉に入居することがあり、一般化するには不適切。
市町村以上の単位で物事を考える視点が必要。

この例では、次のポイントで添削をしています。

・少子高齢化は何十年も前からの社会問題ですから、国の政策も多く実施されています。社会問題として取り上げるのであれば、人口動向や少子化対策などを正しく把握して、自分なりの意見を述べる準備をしたいものです。
・ボランティア活動やイベント開催による他県からの人口流入は考えづらいでしょう。少子高齢化は一部の自治体ではなく日本全体での課題なので、視野を広げて論じる必要があります。

●政策と現状に対する理解が不足している

課題
身近な社会問題を取り上げて、感じていることを述べなさい。

【NG例】
・社会問題:生活保護費の無駄遣い
・話の展開:生活保護は、自分のお金だけでは生活できない人に対して、国がお金を無償で渡す社会保障である。病気で働けなくなった人や、シングルマザーで家計が厳しい人に支払われる生活保護費は、国民が払っている税金から支出されている。現在の日本では、生活保護を受けている人は年々増加していると聞いた。しかし、受給者の中には、働くことができるのに働かない人や、給付金を賭け事に使って失う人もいる。働ける人は、憲法に記載されているとおり勤労の義務と納税の義務があるので働くべきである。また、賭け事にお金を使ってしまう人には、国民の税金から支払われていることを再度認識してほしい。生活保護費を無題にさせないために、国は、生活保護を受けている家庭にお金を何に使ったか報告させるべきである。無駄に使っていることが明白になるからである。地球温暖化が進み夏は暑いので、クーラーなどの設置は必要不可欠である。食費の支出を抑える、残った給付金は貯金するなどして、お金の無駄遣いを避けて生活してほしい。

<NGポイント>
・受給理由や使途は家庭によって異なるということへの配慮に欠けている。
・生活保護制度に対する知識不足が露呈している。
・「無駄遣いを避けて生活してほしい」という個人の願望で終わっている。

この例では、次のポイントで添削をしています。

・社会保障制度を取り上げる場合は、しっかりとした知識が必要です。曖昧な情報や、思い込みだと受け取られかねない表現は避けるべきでしょう。
・生活保護を受けざるをえない人の現状、生活再建の困難さ、周囲が受給者へ抱く偏見など、この問題には多くの背景があることを理解すれば、まったく異なる作文になるはずです。
・せっかく良い題材を取り上げたのですから、生活保護への理解を深めてから、リライトすることをお勧めします 。

たとえば、生活保護を題材とする場合は、「日本の生活保護の利用率が低いこと」や「自立を促すことの難しさ」などに目を向けてもよいでしょう。
国や自治体が取り組んでいること、職員としてできることを考えて話を展開していくと、よい作文ができると思います。

まとめ

作文添削のポイント3つについて、具体例を踏まえながら解説しました。

学生には、公務員試験における作文に相応しい題材を選ぶ力、自分らしさを表現する力、公務員の仕事を理解した上で自分の考えを述べる力を身に付けてもらうことが大切です。
高校までに書くことの多かった「感想文」との違いを早期に理解させましょう。

次回は最終回です。
作文指導をされている先生方へのアドバイスをお伝えします。

***

2022.3.13 追記
連載:作文添削者はここを見ている!作文指導のポイントが完結いたしました。
すべての記事(全4回)はこちらでご覧いただけます。

***

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この記事を書いた人
作子先生

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公務員系専門学校において学生指導を経験し、現在はウイネットで作文添削を担当。これまでに5000枚以上の作文に目を通してきた。

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