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TOP教育公務員作文添削ポイント-文章を書く能力

作文添削ポイント-文章を書く能力

2023.01.20 (最終更新:2023.12.08) 公務員 教務情報

連載作文添削者はここを見ている!作文指導のポイント

初級公務員試験の多くで課される「作文試験」。作文試験に苦手意識をもつ学生が多いため、指導に苦労されている先生もいらっしゃるのでは。 この連載では、作文添削のプロフェッショナルである作子先生に、作文添削者が見ているポイントを伝えていただきます。ぜひ学生の作文指導にお役立てください。

皆さん、こんにちは。
前回の「作文添削でのチェックポイント」では、ウイネットでのチェック項目を例に挙げて、作文添削者がみているポイントを簡単にご紹介しました。
今回は、ポイントのうち「(A)文章を書く能力」について、合格ラインを遠ざけてしまうNG例とその対策をお伝えします。

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①指定字数/②制限時間/③文字

作文の評価の際に、始めにチェックするポイントは何でしょうか。
それは、内容をしっかり読まなくても、パッと見ただけで判断できる、以下の三つです。

①指定字数を満たしているか
②制限時間に書き終えているか
③読みやすい字か

①②は、作文の最低条件といえるでしょう。
「指定字数を時間内に書ききることができる」=「期限を守って仕事を終えることができる」ことを示すと考えることができるからです。

採用側が、与えられた条件(字数、時間 )で仕事ができない人と一緒に働くことに不安を感じるのは、無理のない話といえます。
制限時間内に書き終えるといっても、時間ぎりぎりでは見直す時間がありません。
制限時間の5分前までに、指定字数の9割以上(できれば2行以上余らせない)を書き終えることを目指すとよいでしょう。

③については、読むのに苦労する作文はマイナスの印象から採点が始まるので、合格ラインが遠くなります。
ましてや読めない字は採点できませんので、不合格になる可能性が高くなります。

自分で書いた字を、自分では読むことができます。
学生の提出物を見慣れている先生方も、多少乱雑な字でも解読することができるでしょう。

けれども、読みやすいかどうかを決めるのは、受験者ではありません。
初見の採点者がストレスなく読める字かどうか、と考えましょう。

作文添削で何枚もの作文を読み比べていると、読みやすい字の作文には高評価をつけたくなります。
それほど、字の読みやすさは重要なのです。

達筆は無理でも、少し意識するだけで各段に読みやすい字になります。

マス目に合った大きさで、濃い字で、できるだけ丁寧に、トメ・ハネを意識して書く。
作文添削で一番多く指摘するのは、このことです。

普段できないことが試験本番でできるはずがないので、繰り返し指導が必要です。NG例を見てみましょう。

【NG例】
字が小さい、句読点が小さい

字が小さいため、自信がなさそうな印象を受けませんか。
また、句点(。)読点(、)も読み取れないほど小さく、文の区切りがはっきりしません。

【NG例】
崩し字

前後の文脈から述べていることを読み取ることはできますが、文字単位で見ると、トメ・ハネのない崩し字です。
これでは、合格したいという気持ちが伝わってきません。

④読みやすい文章

添削をしていると、初見で流れるように読めない作文がとても多くあります。

流れるように読めない作文を添削するのは、とても時間がかかります。
「ここをこのように直すと、分かりやすい文になりますよ」とアドバイスするために、読みづらい文であっても、なんとか解読しようと何度も読み返すからです。

しかし、作文試験の採点者は、そのようなことはしないでしょう。

何度も読み返さないと理解できない作文は、低い評価を受けるか、もしかしたら読んでもらえないかもしれません。

それでは、流れるように読めない作文の特徴は何でしょうか。

・前置きが長い
・1文が長すぎて分かりづらい
・文がねじれている

などです。

また、以下のような文(癖)は作文試験には不向きであり、違和感をもたれることが多いと思われます。

・話し言葉
・同じ言葉の繰り返し
・体言止め
・詩的表現
・会話文の多用

文章の癖は自分では気がつかないので、作文添削でしっかりとした指導が必要です。

それでは、これらのNG例、OK例をみてみましょう。

●前置きが長い

課題:身近な社会問題を取り上げて、感じていることを述べなさい。

【NG例】
現在、日本は少子高齢化社会である。私は最近、この問題を身近に感じた。どうすれば解決していくことができるのかを考えるようになった。(64字)

600~800字の課題には、無駄なことは書けません。
この例は、以下のOK例のように端的な表現に変更できます。

また、「どうすれば解決していくことができるのか」は次の段落以降で述べる内容なので、前置きに書く必要はありません。

【OK例】
私が身近に感じている社会問題は、少子高齢化である。(26字)

●1文が長い①

課題:身近な社会問題を取り上げて、感じていることを述べなさい。

【NG例】
私がこの問題について感じていることとしてまず第2波に対する危機感をもち、再度感染予防に力を入れるべきだと思ったことと、県をまたいでの移動はなるべく避けるべきだ。(80字)

この例には主語がありません。
また、字数が80字(1行20字の原稿用紙で4行に相当)と長いことも気になります。
1文が長いと、<主語―述語>がはっきりしない文になりがちです。

【OK例】
この問題の対策には、重要なことが二つある。一つ目は、第2波に対する感染予防に力を入れること、二つ目は、県をまたいでの移動はなるべく避けるということだ。(21字、54字)

このように2文に分けることで、<主語―述語>が明確な読みやすい文になります
また、1文は長くても60字程度に収めるよう指導しましょう。

●1文が長い②

【NG例】
小中学生がSNSを介した事件に巻き込まれたというニュースをしばしば聞くことがあり、大学生でもトラブルに巻き込まれ就職内定の取り消しや退学などが起こっている現状で、未熟な小中学生に危険を感知することはやはり難しい。(104字)

この例では1文が100字を超えており、事実と自分の考えが混在しているため、言いたいことがはっきりしません。

【OK例】
小中学生がSNSを介した事件に巻き込まれたというニュースをしばしば聞く。大学生でもトラブルに巻き込まれ就職内定の取り消しや退学などが起こっているという。そのような状況では、未熟な小中学生が危険を感知することは難しいと考える。(112字)

このように文を分けることで、事実自分の考えの区別がつく文になります。

●同じ言葉の繰り返し(「~と思う」が多い)

課題:失敗した経験について述べなさい。

【NG例】
 失敗したと思う一つ目の理由は、練習量の少なさだ。私たちのチームは他のチームに比べ圧倒的に練習をしていなかったと思う。周りよりも劣っているという自覚があったにも関わらず、~~ことは私にとって失敗したことだと思う。もしあのとき、~~高い意識を持っていれば結果は良いものになったと思う
 二つ目は、緊張のあまり~できなかったことだ。私は~~だったので、極度の緊張をしていたと思う。練習のときから~~行っていれば多少は緊張せずにできたのではないかと思う。また、緊張してしまう要因として~~が挙げられると思う。私自身が~~できれば、チームとして良い活動ができたのではないかと思う。(283字)

この例では、8文のうち7文の末尾が「~と思う」になっています。

「~と思う」に限らず、同じ言葉の繰り返しは単調な印象になるので、避けるべきです。

また、「~と思う」「~ではないかと思う」を多用すると、自信がないように感じられます。
大前提として、作文は自分の考え(思い)を述べるものなので、「~と思う(考える)」は不要です。
「~と思う」を使用する場合は、同じ段落内や連続する文章で何度も繰り返さないように指導しましょう。

この例は、次のように、「と思う」を削除したり、文末を別の言葉に置き換えたりすることで、すっきりとした説得力のある文になります。

【OK例】
失敗した理由の一つ目は、練習量の少なさだ。私たちのチームは他のチームに比べ圧倒的に練習をしていなかった。周りよりも劣っているという自覚があったにも関わらず、~~ことは私にとって失敗したことだ。もしあのとき、~~高い意識を持っていれば結果は良いものになったはずである
二つ目は、緊張のあまり~~できなかったことだ。私は~だったので、極度の緊張をしていた。練習のときから~~行っていれば多少は緊張せずにできたと思う。また、緊張してしまう要因として~~が挙げられる。私自身が~~できれば、チームとして良い活動ができたと後悔した。(261字)

このとき、「~と思う」を削除することで、文字数が20字も減ったことにも注目してください。

作文全体で「~と思う。」を減らせば、40字分くらい余裕が生まれそうです。
40字あれば、自分らしさを伝えられる一文を追加することができるはずです。

●子供っぽい印象を与える「形容詞終止形+です」

【NG例】
①試合に負けて悔しいです。
②このニュースについて世間の関心は低いです。

このような表現をどう思いますか。
話し言葉であれば気にならないかもしれません。

けれども、文章として見ると、子どもっぽい印象を受けませんか。

「負けて悔しい」ならば、何がどう悔しいのか、具体的に説明しましょう。

【OK例】
①悔しいのは、試合で~~したことです。
②このニュースに関する世間の注目が低いことが問題です。

OK例の①のようにすれば、自分の体験を伝えることができます。

また、NG例の②は事実かもしれませんが、それは自分の考えではありません。
OK例の②のように、「低い」ことに対する自分の意見を述べることが大切です。

採用試験であることを意識して、子どもっぽい印象の表現はできるだけ避けるように指導しましょう。

●倒置法、体言止め、エッセイ風の表現

【NG例①】
ストレス社会は負のスパイラル。それが私のストレス社会に対するイメージだ。誰かが外側から無理やり連れださないと抜け出せない巨大な渦。~~周囲に流されやすい日本人ゆえに陥りやすい渦だといえるでしょう

【NG例②】
私を含めて皆さんは、温暖化が徐々に進行していることを肌で感じたでしょう。~~地球温暖化は恐ろしいですね。~~気温が上昇すると、生物が住めなくなるという事象になることでしょう

倒置法(赤字部)、体言止め(  部)や、「~でしょう」「~ですね」(  部)といった語りかけるような表現を使った作文もときどき見かけます。
ブログやエッセイであれば、こういった文章は読み手の関心を引くかもしれません。

しかし、作文試験には、このような表現は不向きです。

作文試験では個性的な表現をする必要はなく、素直に自分の考えを述べるということをアドバイスしましょう。

⑤段落構成

作文指導の書籍などでは、次のような三段落構成を勧めているものが多いようです。

序論(問題提起) → 本論(具体例、解決策) → 結論(まとめ)

この構成では、作文を苦手とする学生は、本論の展開に苦労する場合が多いのではないでしょうか。

また、本論の段落分けがうまくいかないと、本論が長くなりがちで、文章全体のバランスが悪くなります。

そのため、ウイネットの作文添削では、段落構成ができていない場合は次の四段落構成をお勧めしています。
型が決まっていると、構成を考える時間が減り、内容の検討に集中できるからです。

第1段落:課題に対して何を述べるのか、要点を述べる
第2段落:自分の体験談や事実を述べる
第3段落:体験から学んだことや、そこから考えた意見を述べる
第4段落:第2・3段落のまとめ、志望する公務員の職種に関連付けた意見や抱負を述べる

みんながこの型で書くとワンパターンで面白みがなくなる、と心配する先生もいらっしゃるでしょう。

大丈夫です。ある程度作文力のある学生は、自分で構成を考えて書くことができるはずです。

・何をどう書いていいか分からない
・段落構成を考えることができない
・時間内に書き終えることができない

そういった学生には、型を真似て書ききることを通して自信を持たせましょう。

●段落構成ができていない

課題:身近な社会問題を取り上げて、感じていることを述べなさい。(800字)

【NG例】
第①段落:SNSの使い方による社会問題が増加していると思う。(33字)

第②段落:例えば、公共の場で大人数で撮影した動画が迷惑になったという報道があった。~~(ニュースの詳細)~~(114字)

第③段落:このように、興味本位で撮影したものが大勢の人に迷惑をかけることがある。(26字)

第④段落:SNSの問題は、今までの自分と重なる部分があると感じた。私も公共の場で友人とはしゃいでしまった経験がある。■このような問題は、相手を思って行動しないと起こることだと思う。しかし個人の意識だけでは解決できない。自治体で条約を作ったり、看板や見回りをするのがいいと思う。SNSは便利なツールなので、私はこれからも正しく利用していきたい。(249字)

第⑤段落:公務員になったら、SNS利用の課題に取り組みたい。(50字)

(計472字)

まず、各段落の文章量の差が大きいことが気になります。

特に、第④段落は、体験談・意見・今後を盛り込んだため非常に長く、全体のバランスを崩しています。
内容が変わったら段落を分けるという、文章構成の基本ができていないことから、段落構成を考えずに思いついたままに書き進めたことが推察されます。

第②・③段落のニュースの詳細説明も長すぎる印象を受けます。

また、800字の指定にもかかわらず、500字に達していません。
指定字数を書ききるためには、どのような構成で、何をどのくらいの文章量で書くかを考えなくてはいけません。

この例では、以下のようなアドバイスをします。

【アドバイス例】
第1段落:第①~③段落前半は、内容がつながっているので、1段落にまとめましょう。不要な文を削って100字程度にまとめるとバランスがとれます。

第2段落:第④段落前半の体験談を具体的に述べましょう。何がいけなかったか、どうすればよかったかといった実体験は、説得力のある記述になります。

第3段落:■で段落を分け、ニュースや体験談から学んだことや、自分の意見を述べましょう。

第4段落:最終段落では、志望職種への熱意や意欲を示しましょう。このままでは、公務員になりたいという気持ちが伝わりません。問題と考えたSNSの使い方について学んだことに関連づけて記述してみましょう。

各段落の文章量は、5行(100字)、15行(300字)、15行(300字)、5行(100字)くらいを目安に練習するのがお勧めです。

まとめ

作文添削ポイント「(A)文章を書く能力」について、これまで見てきた具体的なNG例と、OK例をふまえて解説しました。
例をふまえながら指導することで、学生にも伝わりやすくなることと思います。
今後のご指導のご参考となれば幸いです。

次回は、ウイネットの作文添削で見ているポイントの、
(B)正確に課題を読み取る能力
(C)個性
(D)仕事の理解度
について、NG例とその対策をお伝えします。

***

2022.3.13 追記
連載:作文添削者はここを見ている!作文指導のポイントが完結いたしました。
すべての記事(全4回)はこちらでご覧いただけます。

***

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この記事を書いた人
作子先生

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公務員系専門学校において学生指導を経験し、現在はウイネットで作文添削を担当。これまでに5000枚以上の作文に目を通してきた。

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