
連載大原先生の学生指導のすゝめ
動機づけ教育プログラム「実践行動学」を開発する「実践行動学研究所」大原専務理事の学生指導のすゝめ。 学習塾での指導歴25年の大原先生が、実例を用いて学生への接し方をお伝えするシリーズです。 テンポのよいユニークな文章は、一度読んだらハマること間違いなし。
業務の中の「無理・無駄・ムラ」をなくし、改善する「業務の効率化」は、ここ数年でより一層意識されるようになりました。特に働き方改革が叫ばれる中で、教育現場でも効率化を求める声は高まっており、先生方の中にも日々の業務に「効率化」を取り入れている方は多いのではないでしょうか。
ただし、「教育」という人を育てる営みの中での効率化には、注意すべき点もあります。
今回は、「教育における“効率化”の注意点」について、実践行動学研究所の大原幸夫専務理事からご寄稿いただきました。
目次
業務の効率化は“必然”の教育現場
ここ数年、“教育現場のブラック化”という話題を耳にすることが多いですよね。
先生方が忙し過ぎて、じっくり学生と向き合う時間すら持てないとか…。
私が見聞きする話では、公教育の学校も私教育の塾なども状況は似ているようです。
もうずいぶん昔の私事ですが、大学を出て都内の進学塾に就職した最初の夏に、訪ねて来た姉に「あんたいつ寝てんの?大丈夫?」と言われたことがあります。
初めての夏期講習、朝から夜までギューギューに授業へ入り、夜中に帰宅して翌日の授業準備に追われる日々。当時はそれが当たり前と思っていましたが、今思うとかなりブラックですね。
まじでしんどかったです…。
先生稼業をやっていると、学生たちの顔が浮かんできて、無理してでもがんばろうと思っちゃう。そういう方、きっと多いと思います。
そうなると、業務を「効率化」したくなるのは必然です。
誰だって労力は最小化したいですもんね。
大切なのは「大切にしたいことは何か?」を考えること

「効率化」というキーワードで思い出すのは、「認定NPO法人テラ・ルネッサンス」創設者である、私の敬愛する鬼丸昌也さんが言ったひとことです。
「効率化はとても大事だけど、それは大切にしたいことに時間をかけるためにやるのであり、大切なことまで効率化しようとしてはいけない。うちの組織の場合、大切なことはスタッフとの対話です」
(うろ覚えですが、確かこんな感じ…)
そう、何でもかんでも効率性を高めようとすると、知らず知らずのうちに間違った方向に向かうことがあります。
「教員や講師が大切にしたいことは何か?」
効率化を検討するときは、それもセットで考える必要があります。
「あなたとの付き合いは効率重視で」
そんなことを言う人と、あんまり関わりたくはないですよね?笑
教育の本質に向き合おう
それともう1つ、教育活動そのものにも注意が必要です。
特に学習塾は「早く、確実に成績を伸ばす」ということがウリになるので悩ましいところですが、親御さんの表面的ニーズだけに応えようとするのではなく、より本質的に教育に向き合ってこそ本物のプロと言えるのではないかと思うのです。
親御さんが心底望んでいることは、先生に我が子の成績を上げてもらうことなのか、それとも我が子が自らの力で学び成長する姿を見ることなのか。
この2つのアプローチは重なる部分もありますが、似て非なる関わり方が必要でもあります。
学生の様子をよく見て関わり方をシフトしていく技術は、なかなかの職人技と言えますね。
まずはその子にとって“頼れる存在”となって成長をサポートすることから始まり、成長段階に応じて過度な依存心を抱かせないような関わり方に変えていく。
大切にしたいのは、先生という仕事は、最終的には自分が必要とされなくなることだと、常に自分に問い続けること。(と、私は考えていました)
目指したいのは、「先生のおかげで…」と盲目的に感謝されるより、「自分の努力で成し遂げた」と言ってもらうこと。(と、私は考えていました)
ただ、これってまったく効率的じゃないんですよね…。
けど、私にとっては大切なこだわりでした。
簡単に手に入ったものは、簡単にその価値を失う。
学生を指導する際には、この原則を忘れずにいたいものです。
なんか、今回は語ってしまいました…笑。
※この記事は、実践行動学研究所のメールマガジン「しなやかな心と学ぶ力が育つメルマガ Colorful Times」237号を再編集したものです。
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大原 幸夫
一般社団法人実践行動学研究所 専務理事
学習塾に25年勤務。その後小~中学校向けのワークショップの開発、及びファシリテーターの育成に従事している。またコーチング研修等の講師・講演を行う専門家でもある。









