
連載大原先生の学生指導のすゝめ
動機づけ教育プログラム「実践行動学」を開発する「実践行動学研究所」大原専務理事の学生指導のすゝめ。 学習塾での指導歴25年の大原先生が、実例を用いて学生への接し方をお伝えするシリーズです。 テンポのよいユニークな文章は、一度読んだらハマること間違いなし。
学生とはもちろん、上司や部下、家庭内…誰と話すときでも「話しやすい雰囲気づくり」って大切ですよね。特に新年度が始まったばかりのこの時期、緊張している学生も多く、いまいち話し合いが盛り上がらない…ということが多いかもしれません。
今回は、授業、会議、1on1などのシーンにおいて「話しやすい雰囲気をつくるためのヒント」を、実践行動学研究所の大原幸夫専務理事から寄稿していただきました。
目次
心が通いやすくなる「チェックイン」の効果
オンラインでのコミュニケーションが当たり前となった現在、私が追求しているテーマは、“オンラインでも心が通い合う場をつくる”ことです。
その仕組みとして欠かせないのが、「チェックイン」というツールです。
今回は、この「チェックイン」を皆さんにご紹介したいと思います。
チェックインというと、ホテルに到着したときの入室手続きを思い浮かべる方が多いと思いますが、ここで言うチェックインとは、会議やワークショップなどの冒頭で“参加者が思っていることを一言ずつ話す”というシンプル極まりない方法のことです。
私はこの時間をとても大切にしていて、以前行った研修では、30分で終えるはずのオープニングに50分近くかけたこともあります。おかげでその後の時間のやりくりに四苦八苦するわけですけど…。苦笑
合計4時間の研修会でしたので、全体の4分の1近くもオープニングに要したことになります。「そんなに?」と思われる方も多いと思いますが、この時間にはそれだけの価値があると私は考えています。
この時間でつくられる心の状態が会全体の質に大きく影響する、というのがその理由です。
チェックインは一見とても地味ですが、うまく活用すれば、授業・会議・1on1など、人と人が交流する場面なら、いつでもどこでも誰でも手軽に使える“場づくり”の手法です。
“場づくり”とは、その場に集まる人の気持ちを整える、目的意識の方向性をそろえる、安心してそこにいられる雰囲気をつくる、意欲を喚起する…などの意味を持ちます。
ひとことで言うと、参加者の感情をデザインするということです。
人の心というのは難しいもので、「ハイ皆さんこれから話し合いを始めますので、言いたいことはどんどん発言してくださいね~」と言われても、なかなかそうはいきません。大勢の前で意見を言うのは勇気がいるものです。
仮にそこで沈黙が続けば、ますます切り出しづらくなって気まずい空気が流れ出します。
そうならないために使ってほしいのが、「チェックイン」なのです!!
・実は寝不足でなかなか集中できてなくって。
・今朝子どもが熱を出したので気がかりで。
・昨日観た〇〇という映画の影響でめちゃくちゃ燃えています!
…などなど、何を言ってもいい時間です。
「何でも言える空気感」をつくるポイント

何でも言える空気感をつくるポイントは、基本的には「淡々と進める」ことです。
「えっ?拍手とかで盛り上げなくていいの?」って思いますよね。
はい、それ、いりません。笑
慣れるまでは結構な違和感かもしれませんが。
もちろん笑いたいときは笑ってもよいのですが、その場全体に盛り上がりを期待する空気が醸成されると、「ウケる話をしなくてはいけない」という気持ちが湧いてきて、思ったことを自由に話せない人が出てきてしまいます。
なので、私はあえて大きなリアクションをせず、「話してくれてありがとう」の気持ちでただただ聞き合う感じを演出します。
とは言え、これは私のようなプロが取る手法なので(自分で言う?笑)、とりあえずはざっくりと一言ずつ話す時間を取るだけでオッケーです。
また応用編としては、目的意識を共有するために、「あなたはどうしてここにいるの?」などの問いを投げてみるのも一案です。(この問いは、会議や授業でも使えます)
こういう曖昧な問いを投げると、必ず「どういう観点で答えたらいいんですか?」という人が出てきますが、私の回答はいつも「ご自由にどうぞ」です。
こうすると、多様な答えが出てきて実に面白いんですよね。
チェックインは、ずっと続けていく中でじわじわ~っとコミュニケーションに変化が起こる、そんな漢方のような効き方をします。
話しやすい雰囲気をつくりたいという方は、ぜひ試してみてください。
ダメな「1on1」
コロナ禍を経て、多くの企業でテレワークが導入されたこともあって、「1on1」という言葉がすっかり定着しましたね。
1on1とは「上司と部下が1対1で行う面談」のことですが、目的はよりよい成果を出すことだったり、部下の成長を後押ししたり、モチベーションを上げることにあります。
学生や子どもとのマンツーマンの話し合いも同じですね。
1on1の重要性は、これからもますます高まっていくことでしょう。
さて、私が尊敬しているとあるコーチのメルマガに、ダメな1on1のポイントが書かれていて、とても分かりやすかったのでシェアしますね。
【ダメな1on1のポイント】
・徹底的に詰めるヒアリング
・できてないことを指摘する
・部下(学生・子ども)に考えさせない
・上司(先生・親)がすべての答えを出す
いかがでしょうか。アイタタッと思った方もいるのでは?笑
もちろん、ときにはこういった関わりが必要な場合もあるかもしれませんが、いつもこれだと、
(1)よりよい結果
(2)成長のための支援
(3)モチベーションの向上
の真逆の結果になりかねません。
少なくともモチベーションは確実に下がります。
なぜならダメな4つのポイントは、権力と恐怖で人を動かそうとする人の常套手段ですから。
さて、私は1on1の名人ではありませんが、ダメな1on1にならないために心がけていることが3つありますのでご紹介しますね。
※コーチングと1on1はかなり近い関わり方ではありますが、似て非なるものです。どこが違うのかは、長くなるのでまたいつか…
「1on1」での3つの心がけ
(1)自分自身のスタンスを予め握っておく
何事もまずは土台となるポリシーを持つことと、それを“予め握っておく”というのがポイントです。
「あなたの課題はあなたの力で乗り越えられる」-これが私のポリシーです。
その土台に立った上で、今日はていねいに話を聴こうとか、必要ならこちらからもどんどんアイデアを出してみようとか、その都度意図的・可変的に関わることを心がけています。
(2)1on1の目的についての認識を共有する
これが何のための時間なのかを、相手としっかり共有することを心がけています。
その目的がこちら都合ではなく、相手のためであるかどうかも要チェックポイントですね。共通認識を持つための魔法の質問がコレ。
「今からの30分、何に使いたい?」
「どんな関わりをしてほしい?」
相手に聞くのが一番早い。超簡単。笑
でもこれをやっている人、なかなかいないんじゃないかな。
(3)業務や事柄ではなく、人に焦点を当てる
最近はこれがもっとも大事だと思っていて、気をつけているポイントです。
業務や進捗の確認だけでなく、相手が今の状況をどのように捉え、それをどう感じているのか。そこに焦点を当ててみることが、互いの関係性を育てる上でも、相手が成長していく上でも、とても大きな力になると考えています。
あぁ、大原さんはそういう作戦でやっているのね。
そんな風に思われそう。。。
関係各位にはこの記事が読まれませんように。
※この記事は、実践行動学研究所のメールマガジン「しなやかな心と学ぶ力が育つメルマガ Colorful Times」162号、190号を再編集したものです。
▼ウイナレッジ編集部からのお知らせ
本記事を執筆した大原専務理事が所属する実践行動学研究所主催の「実践行動学Webセミナー」が開催されます。
実践行動学は、大学・専門学校生を対象に学生の夢の実現、目標達成に必要な「心のあり方」と「達成のスキル(技能)」を身につけることを目的とした、アクティブ・ラーニング型動機付け教育プログラムです。ぜひこの機会にご参加ください。
【実践行動学Webセミナー】
・基調講演タイトル:「中途退学問題の処方箋=支援・対応策をメンタルヘルスの視点から考える=」(法政大学 キャリアデザイン学部教授 廣川進様)
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・主催:一般社団法人 実践行動学研究所
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大原 幸夫
一般社団法人実践行動学研究所 専務理事
学習塾に25年勤務。その後小~中学校向けのワークショップの開発、及びファシリテーターの育成に従事している。またコーチング研修等の講師・講演を行う専門家でもある。









