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生成AIにまつわる法律と学校が注意すべきこと

連載IT弁護士が教える!最新インターネット・SNSトラブル

近年、後を絶たないSNS・インターネット上でのトラブル。学生だけではなく、先生個人としてや学校公式のSNS運用においても注意が必要です。 元ITエンジニアで「IT弁護士」として活躍しているモノリス法律事務所代表弁護士、 河瀬弁護士に最新の事例とともにアドバイスしてもらいましょう!

ChatGPTに代表される生成AIは、近年、学校などの教育現場における利活用が期待される一方で、その教育効果や法的・倫理的リスクに対する懸念が呈されています。

そこで本記事では、学校において生成AIを正しく有効活用するために、学校関係者が知っておくべき法的問題と活用上の注意点について解説します。

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学校における生成AI活用をめぐる現況

生成AI、特にChatGPTが登場した当初、教育現場に生成AIを導入することに対しては、「自分の頭で考えなくなる」、「法的・倫理的リスクに対応できない」などの理由から、否定的な声が多くありました。しかし、その一方で、教育現場における人材不足や、教育の個別化・多様化のニーズの高まりなどを理由に、近年では、教育現場における生成AIの導入に対して積極的な声も上がっています。

初等・中等教育段階に関しては、令和5年に文部科学省が「初等中等教育段階における生成AIの利用に関する暫定的なガイドライン」を策定・公表し、生成AIの教育利用に関する一定の指針を示すとともに、一部の学校をパイロット校に指定して知見の蓄積を図るなど、段階的な生成AIの活用を進めています。

※参考:初等中等教育段階における生成AIの利用に関する暫定的なガイドライン

また、大学や高等専門学校などの高等教育段階に関しても、文部科学省は、「大学・高専における生成AIの教学面の取扱いについて(周知)」という通達を公表しており、生成AIを利活用することが有効と想定される場面として、次のような例を挙げるなど、教育現場における生成AIの活用可能性を見出しています。

  • ブレインストーミング
  • 論点の洗い出し
  • 情報収集
  • 文章校正
  • 翻訳やプログラミングの補助

※参考:大学・高専における生成 AI の教学面の取扱いについて(周知)

上記通達では、「具体的に行われている教育の実態などに応じて対応を検討することが重要であり、学生や教職員に向けて適切に指針を示すなどの対応を行うことが望ましい」として、教育現場における生成AIの利活用を検討する上で留意すべき重要な点も示してくれています。それが次の4点です。

  • 生成AIと学修活動との関係性、成績評価
  • 生成AIの技術的限界(生成物の内容に虚偽が含まれている可能性)
  • 機密情報や個人情報の流出・漏えいなどの可能性
  • 他人の著作物の利用

以下では、上記留意点を「法的問題」と「その他の注意点」に区別した上で、学校関係者が注意すべき点として、その内容を詳しく解説します。

学校と生成AIに関する法的問題

学校と生成AIに関する法的問題としては、主に個人情報保護法と著作権法上の問題があります。

1.個人情報の流出・漏えい

生成AIに入力された個人情報は、生成AIの機械学習に利用される場合があり、意図せぬ個人情報の流出・漏えいを引き起こすおそれがあります。そのため、教育現場においても、生成AIに個人情報を入力することは基本的に避けるべきであり、利用する生成AIサービスが入力データを機械学習に利用するか否かは、事前に利用規約などを十分に確認しておくことが重要です。

なお、個人情報保護法では、大学などの「学術研究機関」による「学術研究目的」での個人情報の取扱いに関して、一定の例外規定(法第27条第1項第5号等)がありますが、その場合でも、「個人の権利利益を不当に侵害するおそれがある場合」には例外規定の適用が除外されています。したがって、生成AIに個人情報を入力する場合には、上記例外規定の適用場面であるのかという点は、慎重に検討するべきでしょう。

2.他人の著作物の利用

無断で生成AIに他人の著作物を入力した場合、原則として、当該入力行為自体が著作権(複製権)の侵害に当たります。しかし、「私的使用」を目的とする場合(著作権法第30条)には、著作権者に無断で著作物を複製しても、例外的に著作権侵害には当たらない、というのが著作権法の一般的なルールです。

とはいえ、学校で教職員が教材を作成したり、学生がレポートを作成したりすることは「私的使用」には当たりません。

そこで、著作権法では、私的使用と同じく、例外的に著作権侵害に当たらない場合として、「教育機関における複製等」(法第35条)という規定が定められています。したがって、35条の適用範囲内であれば、著作権者に無断で生成AIに著作物を入力しても著作権侵害には当たりませんが、35条の要件を満たすか否かは、十分注意する必要があるでしょう。

その他の注意点

上記の法的問題以外にも、生成AIの特性上、学校関係者が注意すべき点がいくつかあります。

1.教育・研究活動における注意点

特に近年、生成AIの自然言語処理能力の進化はすさまじく、たとえ学生が生成AIの出力結果をそのまま成果物として提出したとしても、それが生成AIを利用したものであるか否かを事後的に判別することが困難であるという問題があります。

そのため、学校としては、生成AIを利用した場合にはその旨を明記させ、また、なるべく生成AIの影響の少ない評価方法も併用するなど、生成AIの利用が成績評価などに与える影響を最小限に抑える工夫が求められます。

2.校務における注意点

教育現場における生成AIの導入は、学生への教育効果的な側面のみならず、教職員の業務効率化という側面でも大きな意味を有しています。例えば、授業準備における資料作成はもちろんのこと、アンケートの分析作業や議事録の作成など学校運営に関する業務への活用が期待されています。しかし、生成AIは、入力内容に対して「統計的に最もそれらしい」内容を推測して出力しているに過ぎず、完全な誤りやバイアスを含んだ内容を出力する危険性を常に抱えています。したがって、生成AIによる出力結果は参考程度にとどめ、最後は自分で確認・判断するという姿勢を持ち続けることが重要です。

まとめ

学校における生成AIの利活用は、確かに法的・倫理的リスクがあるものの、教育現場に大きな変革をもたらす可能性を期待されています。ただし、教育現場において生成AIを有効活用するためには、教職員や学生を含む全ての学校関係者のAIリテラシーを向上させることが不可欠であり、その意味では、まだまだ発展途上の状態と言えるでしょう。

また、生成AIをめぐる状況は目まぐるしく変化しています。したがって、生成AIの利活用上の注意点については、継続的かつ柔軟に検討することが重要です。

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この記事を書いた人
河瀬 季

河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士
小3でプログラミングを始め、19歳よりIT事業を開始。
ベンチャー経営を経て、東京大学法科大学院に入学し、弁護士に。
モノリス法律事務所を設立し、ITへの知見を活かして、IT・ベンチャー企業を中心に累計1,297社をクライアントとしている。
モノリス法律事務所:https://monolith.law/

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