連載withコロナ・afterコロナの就職活動最前線
2020年、新型コロナウイルス感染症の拡大によって一変した就職活動。翻弄された学生たちや特に多大な影響を受けた業界の様子、afterコロナに向けた展望まで、就活支援や企業の社員研修に精通した川口先生が最前線からレポートします。
皆さん、こんにちは。
2021年も残り数か月となりました。
今回は、「早期選考・インターンシップが学生に与える影響」についてレポートしたいと思います。
4月から始まった「就活」をテーマにしたこちらの連載も就活生とともに駆け抜け、半年が経ちました。
そして、就職が決まった学生は内定式を迎える季節となりました。
リクルート「就職みらい研究所」による大学生1,696人を集計対象とした「就職プロセス調査(2022年卒)」によると、9月1日時点での2021年度(2022年3月)卒大学生の内定率は90.0%です。
コロナ前の一昨年に比べるとやや低くなっていますが、昨年同時期との比較では5ポイント高くなっています。
[就職みらい研究所]就職プロセス調査(2022年卒)「2021年9月1日時点 内定状況」
目次
就活スケジュールの「政府要請」と「実態」
2021年度(2022年3月)卒が落ち着いてきた矢先、すでに2022年度(2023年3月)卒の就活が始まっているのをご存知でしょうか。
そもそも、就活はいつから始めたらいいのでしょうか?
2019年度(2020年3月)卒までは経団連の「採用選考に関する指針」がスケジュールを示していましたが、2020年度(2021年3月)卒からは政府主導へ変わり、「就職・採用活動に関する要請」がなされるようになりました。
以下が「就職・採用活動に関する要請」の求める2022年度(2023年3月)卒就活スケジュールです。
- 広報活動開始:卒業・修了年度に入る直前の3月1日以降
- 採用選考活動開始:卒業・修了年度の6月1日以降
- 正式な内定日:卒業・修了年度の10月1日以降
しかし、すでに2022年度(2023年3月)卒の早期本選考が開始されているのが実態です。
特に、IT、コンサル、外資系で早期選考を行っている場合が多いです。
インターンシップから始まる就活
早期選考が行われる背景には、インターンシップの影響も少なくないと思われます。
マイナビ「2023年卒大学生 インターンシップ・就職活動実態調査(8月)」によると、73.9%もの学生が8月までにインターンシップに参加しています。
昨年は61.4%でしたので、12.5%増えています。
[マイナビ]2023年卒大学生 インターンシップ・就職活動実態調査(8月)
特に、夏のインターンシップが採用に直結するケースが多くなってきています。
企業によっては、インターンシップ枠6割・本選考枠4割というところもあります。
企業としては、優秀な学生を早く囲い込んでおきたいという思惑があります。
学生のほうは、自分が何をやりたいのか明確になっていなくても、興味のある業種のインターンシップに参加することでやりたいことが見えてくる場合もあります。
また、本選考時のエントリーシートにインターンシップでの体験にもとづく志望動機、企業研究などを書けるメリットや、人事担当者に名前を覚えてもらえるメリットもあります。
インターンシップ期間は、長期のものから1日だけのものなど企業によってそれぞれ違いますが、都合にあわせて参加することも可能です。
IT、コンサル、外資系企業などでは、インターンシップ後すぐに採用試験が始まり、3年の秋には内定を持っている学生も少なくありません。
インターンシップは、3年生に限らず、1・2年生でも参加できるという企業も多くなってきているため、積極的に参加することで就活を有利に進められるでしょう。
採用試験と同様、人気のある大企業のインターンシップは倍率が100倍以上になることもあり、選考を通らなければ参加できません。
インターンシップの申し込みは基本的にオンラインで済むため、本採用より競争率が高くなることもあります。
しかし、インターンシップの選考に落ちてしまっても採用試験に受かった学生も見てきているので、あきらめずチャレンジしてほしいと思います。
オンラインインターンシップも増加 対面でしか分からないことも……
コロナ禍では、インターンシップをWEBで行う企業が増えています。
学生の満足度が72.2%という調査もありますから、WEB開催であっても質の高いインターンシップが行われているようです。
とはいえ、対面で参加するほうがより企業のことがわかるのはいうまでもありません。
その一例を紹介します。
コロナ禍以前、第一志望の企業で2週間のインターンシップに参加した学生の話です。
休憩室でランチをしていると、社員たちから「うちの会社に入りたいの?給料も安いしライバル会社のA社にしたほうがいいよ」「転職する予定だよ」などという話をされました。
その学生はインターンシップ後にその企業への入社を考えていましたが、やめようか悩んでいると相談に訪れました。
現場で働く社員からそのようなことを聞けば、不安になるのは当然です。
学生の前で話す社員もどうかと思いますが、その会社の社風も感じることができますし、生の声を聞けることもインターンシップのいいところではないかと思います。
これはWEBでは到底知りえないことです。
結局その学生はその企業の採用試験を受け、内定を得ましたが、休憩室で聞いた社員たちの言葉が引っかかり、ライバル会社であるA社に入社しました。
現在はA社で社内表彰されるほどの活躍をしています。
第一志望だった企業に行っていたら、今頃は辞めていたかもしれません。
休憩室で話していた数人の社員は全員辞めていました。
逆に、インターンシップでの評価が悪かったために採用試験に合格できなかった学生もいます。
対面で参加する際は、見られているという意識を常に持ち、身だしなみ、言葉遣い、態度などに十分に注意を払う必要があります。
新卒で入社後、3年以内に離職する大卒が32%に上っています。
[厚生労働省]新規学卒就職者の離職状況(平成28年3月卒業者の状況)を公表します
コロナ禍のうちは、オンラインインターンシップが続いていくと予想されます。
WEB上では、企業側が良い印象を与えられるよう演出できてしまう面がありますから、それに惑わされることなく就職先を選んでほしいと思います。
その企業に学校のOB・OGがいれば、その人に聞いてみるのが実情を知る上ではベストだと考えます。
「ブラックインターン」に注意
インターンシップには有給のものと無給のものがありますが、多くは無給です。
労働ではなく職業体験・社会勉強の範囲に収まる限りは無給で問題ないのですが、無給のインターンシップをアルバイト代わりの「無料の労働力」として扱う「ブラックインターン」には注意が必要です。
夏休み前、学生から相談がありました。
第一志望の企業からインターンシップの話が来ているから受けたいとのこと。
しかし、その企業はコロナ禍で厳しい状況にあり、来年度の採用があるかは不明瞭です。
そのような状況でのインターンシップ募集ですから、採用につながらないインターンシップになると思われます。
学生には、それでもいいのか尋ねました。
やってみたいとのことだったので、本人の希望ならと送り出しました。
その学生がインターンシップへ行ってみると、現場は猫の手も借りたいというような忙しさだったそうです。
やはり採用の予定はないのに無給のインターンを労働力にあてようという狙いだったのではと疑ってしまいます。
採用があるのかどうかわからない企業のインターンシップをやっている間に、採用につながるインターンシップを着実にやっている学生もいます。
この先、差がつくことも考えられるため、よく考えて参加することが重要です。
企業都合のインターンシップに踊らされることがないよう見極めてほしいと思います。
そのような企業は内定とは全くつながらないことがほとんどなのです。
さらには学生がお金を払って参加するインターンシップというのもありますから要注意です。
最後に
就活を優位に進めるために、インターンシップへの参加はおすすめできます。
何もしないで後悔するより、勇気をもって行動するべきです。
ただし、大切な時間と機会を使うのですから、充実した体験にできるよう事前によく考えて参加しましょうね。
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川口 晴美
元日本航空グランドスタッフ。在職14年の間、JAL「サービスの達人」社長賞や社内接客大賞「ホスピタリティ賞」受賞。全国各地の空港で指導教官として勤務。退職後、大学、専門学校の非常勤講師として客室乗務員やグランドスタッフを多数輩出。現在は、大学、専門学校(医療系、留学生)高校、NHK文化センターで教える。
オフィス川口(G-mother)を設立し、学生の就活サポート、各種検定、企業研修を手掛ける。サーティファイ認定会場。