
連載侑加先生のお悩み相談室
先生に特有のお悩みから、ワークライフバランス、キャリアデザインまで。「他の学校はどうなんだろう、他の先生はどう考えているんだろう……」と思ったら、学校の現場にも詳しい侑加先生に相談してみませんか?
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今回は、専門学校を卒業してそのまま母校で教員として働く先生からのお悩みです。
在学中の成績や生活態度、人柄などが秀でていたからこそ、学校側が教員として採用したいと考えたに違いありません。
自信をもってよいと思うのですが…
今回相談してくださった先生は、むしろそのことに引け目を感じているようです。
専門学校教員として勤務するには、社会人経験が必要なのでしょうか?
侑加先生に聞いてみましょう!
目次
【今回のお悩み】専門分野以外の指導に自信がもてない…
相談者:松本先生(仮名)(男性・20代後半)
調理師を養成する専門学校で教員をしております、松本と申します。
母校を卒業すると同時にそのまま教員として勤めて9年目、今年で29歳になります。
在学中に調理師免許を取得しており、資格試験に関わる座学の授業に関しては、問題なく指導できていると思います。
困っているのはそれ以外の授業や学生指導の部分です。
たとえば、就職指導やビジネスマナーなどの授業も担当しておりますが、
私が指導しても説得力に欠けるというか、具体的なエピソードを交えた指導が難しいと感じています。
他の先生方は一般のホテルやレストランなどでの勤務を経て教員になられた方ばかりです。現場はこうだからとか、こんなことがあったからこれが大事なんだというように、ご自身の経験を踏まえて授業を展開されているそうです。
教員免許もなく、学生に伝えられる経験が圧倒的に不足している自分が教員として働いていくことは、学生にとってもよくないことなのでは、と不安に思ってしまいます。
学生と接することは刺激的で楽しいですし、なにより学生の成長を見守ることのできるこの職業にやりがいを感じています。
続けていきたいという気持ちはあるものの、自信がもてません。
侑加先生は、学校の卒業と同時に教員として働くことについて、どう思われますか。
以上が今回のお悩みです。
それでは侑加先生の回答をご覧ください!
「学生の成長を見守る」職業へのやりがいが、何より大切です!

松本先生、ご相談をいただき、ありがとうございます。先生の謙虚な姿勢に感激しています。
卒業生でそのまま教員になった方々と一緒に働いた経験から、2パターンの方がいると感じてきました。
一つは、自信満々タイプです。在学中に優秀な成績で、資格試験に一回で合格、常に先生から褒められてきています。それで、学校からスカウトされて、教員になっているため、自信満々です。
ただ、そういう先生方が職員室で、「〇〇さんは…」と学生のことを批判したり、時には馬鹿にしたりするのには、閉口しました。学生は自分より若く、その資格取得における勉強については、まだ発展途上です。自分が意外と簡単にできたと思う勉強も、学生にとっては難しくて当然です。
20代の若者は、社会の中では、まだまだ若者扱いされる場面もありますが、専門学校で偉い人になってしまうというのは残念な話です。
二つ目は、「社会人経験が無いから…」と自分を客観視する先生です。
職員室で、他の先生方のエピソードを熱心に聞いたり、何か経験できないかと情報を得て、チャレンジしたりします。
松本先生の場合、すぐにホテルやレストランでの勤務は叶いませんが、楽しみも兼ねて、お客として色々な所へ行ってみることはできそうです。29歳というと、9年間、先生をされているのですね。卒業生の訪問を受けて、聞いてきた色々な話も、先生の財産です。在学生に引き継ぐべき内容が多々あるのではないでしょうか。
学生にとって、勉強をしっかり教えてくれるのは嬉しい事ですが、日々接する先生の人柄が良い事は、それ以上の幸せに繋がると思います。
コロナ禍で、団体で経験する行事が減らされ、黙食もしていましたので、個人主義が進んだように思います。
しかし、調理の現場では、チームワークが大切ですよね。
先生との日常的なコミュニケーションを通じて、自然に学べることが多くあるはずです。
いつも自分が正しいと自信満々でいる先生よりも、「学生の成長を温かく見守りながら、自分も成長していくぞ」という気持ちでいる先生の方が、絶対魅力がありますよ。
「自信」を育てるのは、コツコツ積み上げが一番ですね

先生は、教員免許を持っていないことで、教員として働くことを不安に思っていらっしゃるようですね。
教員免許は、小・中・高校で働く際に必要な免許ですから、専門学校の先生には、求められません。
専門学校が「先生として相応しい」と判断し、採用されればよいのです。
例えば、企業で行う研修の講師は、先生と呼ばれますが、教員免許を持っていない方が多いです。自動車学校の先生、ピアノの先生、スポーツジムのインストラクター、企業コンサルタントも先生です。それぞれが専門性を持ち、対象となる方に教えられるスキルを持っています。
「資格試験に関わる座学の授業に関しては、問題なく指導できている」というのは、必要なスキルを持っている証ですよね。
学生時代に、自分が学んできた方法に研究を重ねていらっしゃることと思います。ただ、他でも通用するスキルなのか、我流で大丈夫なのかという不安があるかもしれません。
学校全体で、他の先生の授業を見学したり、学生に授業アンケートを取ったり、教員へのフィードバックの機会を持つ仕組みを作るといいですね。
松本先生が、もし教員免許を取るとなると、教科は家庭科になりますか。
今は、通信教育も充実しているので、若くて自分に沢山の時間と費用を使える間に、2~3年かけて、教員免許を取得するのも一案ですね。スクーリングなどで、色々な出会いがあるかもしれません。その後の人生の幅を広げることが期待できます。
オープンスクールで、高校生や保護者を前に公開授業を行う機会もあるでしょう。高校へ出張授業に出かけることも、貴重な体験です。
教員免許取得という形になる過程での努力や学びが、自分に自信を与えてくれるでしょう。免許を取得すれば、それは自分を支えてくれる一つの柱になります。
「自信」はお金で買えないですし、人から「あなたは自信を持っていいのよ」と言われても、すぐに自信を持てるようにはなりませんよね。
少しずつ努力をしながら、時々失敗もしながら、半歩ずつ進む中で、何年かして振り返ると、僅かな自信が育っているという感じではないでしょうか。
でも、その自信も、「人の役に立てる自信」であって、決して「自分は立派だ、自分の言う通りにすればいい」という傲慢ではないのですよね。
就職指導やビジネスマナー指導は、先生の魅力が何よりの説得材料です。
先生のような大人になりたい、言葉遣いも真似したい、感じの良い立ち居振る舞いを身に付けたいなど、学生の憧れや親しみがあるのが理想だと思います。9年間の積み重ねが貴重な経験です。卒業生の経験も整理して、まとめておいてくださいね。学生指導の際に大いに役立ちますよ。
この先、後輩指導やマネージメント職に就くことも視野に入れ、休日には様々な職種、年代の方々と出会える場に出掛けてみましょう。
それが、全て社会人経験になります。いつも爽やかな笑顔で、学生の味方となり、大きな愛情で包んであげる、そんな先生でいてくださいね。
応援しています!
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侑加先生
一般企業を経て、専門学校に正教員として勤務。
現在は、企業・大学講師、小中学生の塾経営。
趣味は、お笑いと高校野球、旅行。一児の母。