
連載大原先生の学生指導のすゝめ
動機づけ教育プログラム「実践行動学」を開発する「実践行動学研究所」大原専務理事の学生指導のすゝめ。 学習塾での指導歴25年の大原先生が、実例を用いて学生への接し方をお伝えするシリーズです。 テンポのよいユニークな文章は、一度読んだらハマること間違いなし。
「〇〇さんはしっかり者だね」「〇〇さんは引っ込み思案」「〇〇くんはおおらかね」…。
そのような印象を学生に伝えたことはありませんか?
実はその一言、心理学の「ラベリング効果」として、学生の行動に影響を与えているかもしれません…!
今回は、人の行動や印象を左右する「ラベリング効果」について、実践行動学研究所の大原幸夫専務理事から寄稿していただきました。
目次
「ラベリング効果」とは

今日は、言葉が持つチカラについて考えてみたいと思います。
私は今年のテーマのひとつに「言葉を大切に」を掲げています。
というのは、私には “よくない言葉を使ってしまう” という悪い癖があるんですよね。
昔は本当にひどかったと思います。
“昔は~”と言えているので、今は少しマシになっている気もしますが…。(そう願いたい)
さて、言葉のチカラの代表的なものに「ラベリング効果」があります。
1960年代にハワード・S・ベッカー氏によって提唱された社会心理学の理論で、英語表記では「Labeling Effect」と書くそうです。
Effectとか言われると、なんだかとても効果がありそうな気がしませんか?
「ラベリング効果」とは、人のおでこにラベルをペタっと貼るみたいに、あるイメージを植え付けると、その人がラベルのイメージ通りになろうとする心理効果のこと。
例えば「きみはいい加減だな」と言い続ければ、その人は自分のことをいい加減な人間だと思うようになり、実際にいい加減になっていく、ということです。
なぜか?
どうやら人には、自分に貼られたラベルを裏付けようとする習性があるらしいです。
であるならば、せっかくラベルを貼るならその人のためになるラベルにしたいですよね。
きみは仕事が速いな!しかも丁寧だね。
きみはほんと、努力家だね。
きみがいると、みんなが元気になるよ!
きみたちはいいチームだねぇ。
こんな風に、前向きな気持ちになれるラベルを貼れる人になりたいなぁと思います。
すると、いつの間にか私にも「力づけの言葉をくれる人」というラベリングが返ってくるかもしれません。
「ラベリング効果」を使う際の注意点
さて、ラベリングをする際の私なりの注意点をお伝えします。
長所に気づいてほしいときや長所を伸ばしたいとき
そういうときは、大げさなくらいモリモリに伝えるのが“吉”です。
一般的に日本人は褒められ慣れていないので、ポジティブな指摘についてはより明確に・よりパワフルに伝えた方がいいです。
短所を直してほしいとき
そんなときは、少し工夫が必要です。
例えば、よくミスをする人がいたとして、「きみは全然ミスしないね」と言ったとしても「はぁ?嫌味?」と思われそうですよね。
そういう場合は、「今のミスをするきみは、本来のきみじゃない」といったように未来の可能性にラべリングするとか、「前よりも確実にミスが減っているね」といったように、望む変化の過程に焦点を当ててラベリングしてみましょう。
見え透いた言葉や思ってもいない言葉にチカラは宿りません。
その人の可能性をあきらめない私たちの眼差しが、変化の種火になるのだと思います。
自分にどんなラベルを貼っている?

この心理効果は、教育や人間関係づくりにおいてとてもパワフルな効果を発揮しますが、それだけではありません。
あなたは自分にどんなラベルを貼っていますか?
他者に貼ったラベルがその人に影響を与えるのなら、自分に貼ったラベルはもっと強力な影響力があるはずです。何しろそのラベルと四六時中一緒に生きているわけですから。
自分のラベル(思い込みやレッテル)を貼りかえるだけでよりよく生きられるのなら、やらない手はありません。
「ラベリング効果」で望む自分へ
では早速、自分にどんなラベルを貼っているかを見て行きましょう。
今日は、分かりやすく具体的に理解するために、“仕事人としての自分”を3つの言葉で表すワークを用意しましたので、気軽にお付き合いください。
3つの言葉とは、これです。 ※〇:職業名や母親などの役割を表す言葉
1.今の私は、“~~な〇”です
2.人から“~~な〇”だと思われていたら嫌だなぁ…
3.できるなら“~~な〇”と思われたいなぁ…
こんなふうに、3つの言葉で仕事人としての自分を表してみましょう。
以下に私の友人の例を記載しますので、参考にしてみてください。
1.今の私は、“遊び心を大切にするファシリテーター”です。
2.人から“余計な一言が多いファシリテーター”と思われていたら嫌だなぁ…
3.できるなら“どんな状況でもなぜかその場が前向きに動き出す不思議なファシリテーター”と思われたいなぁ…
えっ?これは私(筆者)のことじゃないかって?
いえいえ、あくまでも友人のことですので。
さて、あなたは自分をどんな言葉で表しますか?
ぜひ、直感的に浮かぶ言葉で書いてみてください!
(記入タイム)
1.
2.
3.
1~3のいずれにも、あなたの可能性のヒントが隠されています。
それを踏まえて、もしも自由に自分の姿を描いてよいならば、どんな自分を選択しますか?
自分自身に“ラベリング効果”というマジックを仕掛けるとしたら、どんな言葉で表しますか?
私は、“~~な〇”です。
ぜひ「ラベリング効果」という無意識の力を借りて、望む自分に向かって歩き出してみてください!
※この記事は、実践行動学研究所のメールマガジン「しなやかな心と学ぶ力が育つメルマガ Colorful Times」194号、195号を再編集したものです。
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大原 幸夫
一般社団法人実践行動学研究所 専務理事
学習塾に25年勤務。その後小~中学校向けのワークショップの開発、及びファシリテーターの育成に従事している。またコーチング研修等の講師・講演を行う専門家でもある。