連載大原先生の学生指導のすゝめ
動機づけ教育プログラム「実践行動学」を開発する「実践行動学研究所」大原専務理事の学生指導のすゝめ。 学習塾での指導歴25年の大原先生が、実例を用いて学生への接し方をお伝えするシリーズです。 テンポのよいユニークな文章は、一度読んだらハマること間違いなし。
自分の成長を実感すると、モチベーションが上がり自信につながります。社会へ出る前に、「成長体験」を通して学生に自信を持ってほしいけれど、なかなか難しいというのが実際のところですよね。
今回は、「成長の2つの軸」について、実践行動学研究所の大原幸夫専務理事から寄稿していただきました。
目次
「水平的成長」と「垂直的成長」
今日は「人の成長の2つの軸」というテーマです。
先生や子育て中の方のほか、会社の人事の方にも届いたらいいな、と思って書きました。
では、早速!
人の成長の2つの軸とは、「水平的成長」と「垂直的成長」の2つです。
できることの幅を広げる「水平的成長」
「水平的成長」とは、新しい知識やスキルを身につけて、できることの幅を広げていく成長の仕方のこと。幅が広がるので「水平的」というわけです。例えるなら、スマホやPCに新しいアプリがダウンロードされて、より便利になるようなイメージです。最近は“リスキリング”という言葉をよく耳にしますが、これはまさに「水平的成長」にあたります。
人としてのコアな部分のアップデート「垂直的成長」
一方の「垂直的成長」とは、意識や考え方、ものごとの見方が変わるような変化、人としてのコアな部分の成長を指します。高い視点からものごとを見るようになったり、深く考えるようになったりすることから「垂直的」と呼んでいます。例えるなら、スマホやPCのOSがアップデートされるようなイメージです。機械ならトップ画面や操作性が変わって変化に気づきやすいのですが、人間の場合は内面的なことなので(ことさら自分のことになると)気づきにくいかもしれません。
2つの軸の相互作用
より大きな力があるのは、「垂直的成長」です。なぜならば、意識が変われば知識やスキルは後追いでどんどん身につくからです。
受験勉強になぞらえると、新しい英単語を覚えるのが「水平的成長」、学習に取り組む姿勢が変わるのが「垂直的成長」。どちらの方がこの先大きく成長していくかは言うまでもありませんよね。
「垂直的成長」が「水平的成長」に影響を与えることは先ほど述べましたが、その逆パターンもあります。スキルを身につける「水平的成長」の過程で、人としても磨かれていくという成長の仕方です。
「一芸に秀でる者は多芸に通ず」ということわざがあるように、“秀でる”まで努力を積み重ねた人は、心も成熟していることが多い。今で言えば、青いユニフォームのあの選手とか。オリンピックのメダリストの多くが人格的にも優れていると思うのは私だけではありませんよね?
ただ、「一芸に…」のことわざは、中途半端にたしなむ程度では無芸と同じという揶揄する意味もあるそうなので、やはり“秀でる”までの努力が大事なようです。
対話は「垂直的成長」を促す絶好のツール
さて、コロナ禍を経た今、人の成長における“対話”の効果がクローズアップされるようになりました。対話はまさに「垂直的成長」を促す絶好のツールです。
対話の中で問い合い、考え合い、伝え合う。そういった繋がり合いの中で心や感性だけでなく、自律的に考える力も磨かれていきます。
対話を重ねたからといってすぐに成績や業績が上がることはありません。すぐに結果が出ないのなら意味がないと思う方もいらっしゃるでしょう。でも、「垂直的成長」は長い目で見るととても大きな差となって現れます。
この記事をきっかけに、ぜひ「垂直的成長」にも焦点を当ててみてください。
特に、目の前の業績を求められる一般企業の方の中にそのような意識を持つ方が増えて、対話の文化が育っていくといいなぁと思います。
※この記事は、実践行動学研究所のメールマガジン「しなやかな心と学ぶ力が育つメルマガ Colorful Times」227号を再編集したものです。
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大原 幸夫
一般社団法人実践行動学研究所 専務理事
学習塾に25年勤務。その後小~中学校向けのワークショップの開発、及びファシリテーターの育成に従事している。またコーチング研修等の講師・講演を行う専門家でもある。