受付業務も担当する医療事務の仕事では、高いコミュニケーション能力が求められます。
医療事務は、病院で患者さんが最初に接するスタッフなので、病院における”顔”としての役割も担っていますが、接遇を苦手とする学生は多いようです。
医療事務を通信教育ではなく専門学校で学ぶ学生にとって、先生と対面し直接接遇を学べるのは大きなメリットでしょう。
本記事でご紹介する「医療事務に求められるコミュニケーション能力」や「伝える力を鍛えるヒント」を、学生へのアドバイスにお役立てください。
目次
まずは医療事務の仕事の特徴を知ろう!
はじめに、医療事務の仕事にはどのような能力が求められるのかを確認しておきましょう。
大きな特徴は、さまざまな人と関わることです。
必要なのは知識だけではないことを、学生によく理解してもらってください。
さまざまな人と関わるため、コミュニケーション能力が特に重要
受付業務も兼務する医療事務は病院の顔です。
来院時に患者さんが最初に関わるスタッフということもあり、重要な役割を担っています。
病院を訪れる患者さんにはさまざまな職業、幅広い年齢層の人がいるため、どんな人とでも対話できる高いコミュニケーション能力が求められます。
また、医師や看護師をはじめ、他職種のスタッフと密に連絡を取り、連携するのも重要な仕事です。
病院運営をスムーズに進めるためには、医療事務の高いコミュニケーション能力が欠かせません。
幅広い専門知識が求められる
医療事務の業務は範囲が広く、診療科によって異なる点もあるため覚えることがたくさんあります。
また、病院で使用する言葉には専門用語が多く、独特の略語を使うこともあります。
他のスタッフとのコミュニケーションで苦労しないように、必要な用語は正しく覚えて常に知識をアップデートさせる必要があるでしょう。
医療事務の主な業務(受付・会計・レセプト・クラーク)
医療事務の業務は多岐にわたりますが、代表的な仕事は受付業務・会計業務・レセプト業務・クラーク業務の4つに分類されます。
受付業務:受付窓口での応対業務です。また、カルテの作成や、問診票をもとにした患者情報の登録も行います。
会計業務:医療費を算出して精算する業務です。患者さんのカルテの情報や加入保険情報から、医療費を正確に導く必要があります。
レセプト業務:健康保険組合に診療報酬明細書を提出する業務です。「レセプトコンピューター(レセコン)」という医療用のコンピューターを使って診療報酬明細書を作成します。
クラーク業務:電子カルテの入力や診断書・紹介状等の文書作成といった、医師の事務作業部分を補助する業務です。
医療事務に求められるコミュニケーション能力とパーソナリティは?
前述した通り、さまざまな人と接する医療事務には、高いコミュニケーション能力が必要です。
それでは、具体的にどのような力が求められるのでしょうか。
簡単な例を交えながら解説していきます。
落ち着いて応対する力、周囲に振り回されない強い心
患者さんは、長く待たされたときや体調が悪く不安なときは、イライラして医療事務にきつくあたることがあるかもしれません。
そのような場合でも取り乱さず、冷静な対応が必要です。
患者さんの怒りや不安に振り回されることなく、冷静に対応できる能力が求められます。
医師や看護師とよい協力関係を構築する力
患者さんと医師や看護師のパイプ役になることが多い医療事務には、医師や看護師とよい関係を築く力が求められます。
受付時に患者さんから得た情報を医師や看護師に伝えたり、反対に医師や看護師の説明を患者さんに伝えたりすることもあるでしょう。
意思疎通を上手に行うためには、普段から周囲のスタッフを含めてよい関係を築けているかどうかが重要となります。
さまざまな患者さん、医師や看護師と接する臨機応変な対応力
人と接する仕事である以上、マニュアル通りではなく臨機応変な対応力が必要です。
日頃から丁寧な接遇をすることに加え、患者さんの状態や、医師・看護師の状況にも心を配ると喜ばれます。
たとえば、立っているのが大変そうな患者さんなら、まずは座ってもらい、自ら患者さんの元に出向いて話を聞く、などです。
また、医師や看護師が忙しそうなときには、質問があってもあとでまとめて聞くといった心配りも必要です。
ただし、患者さんの都合で急を要する質問など、後回しにできない場合もあるでしょう。
誰にでも・いつでも同じ対応をするのではなく、関わる人の気持ちと状況に寄り添って臨機応変に対応できる能力が求められます。
忙しいときも着々と仕事を処理できる冷静な心
患者さんは一定の間隔で来院されるわけではありません。
複数人が一度に受付に来ることも十分考えられます。
そんなときは、患者さんを待たせていても、焦らず落ち着いて仕事をこなせる冷静さが必要です。
医療事務の業務には正確性が重要なので、どんなときでも落ち着いて業務を処理できる人が求められます。
たとえ失敗してもくじけない心
人が行う仕事なので、ミスを完全に防ぐことはできません。
たとえ失敗してもくじけることなく、同じ失敗をしないためにはどうしたらよいかを考えられる前向きな姿勢が大切です。
ミスをした事実にとらわれすぎず、原因をよく考えることが、業務改善に繋がります。
コミュニケーション能力向上!伝える力を鍛えるヒント
コミュニケーションが苦手な学生には医療事務の仕事は向いていない、と感じるかもしれません。
しかし、コミュニケーション能力は鍛えて高めることができます。
ここでは伝える力を鍛えるヒントをご紹介しますので、ぜひ、学生へのアドバイスの参考にしてください。
相手の行動を促すよう意識して話す
医療事務が患者さんと話をするときは、相手にどうしてほしいのか、相手の行動を促すことを意識すると伝わりやすいです。
たとえば、月初めに保険証を出してほしいとしましょう。
「保険証を出してください」と伝えるだけでなく、保険証のサンプルを手に持って見せた方が、相手の意識が保険証に向かうと思いませんか。
伝える方法は言葉だけではありません。
伝わりやすくなる工夫を考えてみるとよいでしょう。
結論部分から話す
一番伝えたい結論から話すようにしましょう。
結論・根拠・例示の順で話すようにすると、聞き手にとってもわかりやすくなります。
大事なポイントの伝わりやすさは、話す順番を入れ替えるだけで大きく変わります。
短くわかりやすい言葉で話す
話をより伝わりやすくするには、わかりやすい言葉で簡潔に話す必要があります。
簡潔といっても、患者さんに向けて医療用語を使うのは好ましくありません。
医療用語でなくとも、略語や難しい熟語は避け、誤解されることのない言葉選びを心がけます。
頻繁に説明が必要な内容は、ポイントを押さえて練習をしておくとよいでしょう。
そのほか、医療事務に求められる能力とは?
医療事務には、高いコミュニケーション能力のほかにも鍛えたい力があります。
いくつかご紹介しますので、学生がバランスよくこれらの力をつけられるように指導してあげてください。
きちんと事務をこなす几帳面さ
医療事務は、細かい業務の積み重ねです。
特にレセプト業務にミスがあると、修正に時間がかかるだけでなく、多方面に迷惑をかける可能性があります。
日々の会計業務をきちんとこなすこと、大量のデータを根気強くチェックする集中力、慎重に事務処理を行う几帳面さが求められます。
変化に対応できるよう、学び続ける姿勢
診療報酬は、医科、歯科、調剤、薬価等(薬価・材料価格)に分けられます。
これらは、内容や点数の見直しのため、1~2年に1回の改定があります。
このように、医療事務の業務に必要な診療報酬は定期的に改定されるため、知識をアップデートしなければなりません。
また、医療に関する制度や補助金なども日々変化しているため、積極的に情報収集する必要があるでしょう。
医療事務として働きながら資格取得に励むなど、知識を高める努力が必要です。
医療事務に関わる資格には、カルテの管理や医療情報を分析する「診療情報管理士」や「医療秘書技能検定」などがあります。
医療秘書技能検定は多くの学生が取得して就職しますが、さらなるスキルアップのために上の級をめざして努力できるとよいでしょう。
ある程度のPCスキル
数年前までは、紙のカルテと鉛筆で事務をこなす病院もありました。
しかし現在は、ほとんどの病院に電子カルテが導入され、レセプト業務もレセコンを用いてインターネット経由で行っています。
カルテの入力をスムーズに行うためには、ある程度のPCスキルが必要です。
タイピングができることはもちろん、マイクロソフト製品のWord・Excel・PowerPointを使えるようにしておくと、患者さんへのお知らせの作成などに役立ちます。
医療事務をめざすなら努力したいポイント
学習を進めていくうちに、自分には向いていないかもしれないと不安に思う学生が出てくるかもしれません。
しかし、本人の努力次第で誰にでも医療事務として働くチャンスがあります。
努力したいポイントをご紹介しますので、学生を導いてあげましょう。
のんびりマイペースを少しハイペースに
医療事務は、自分のペースで行うというよりも、患者さんや医師・看護師の都合に合わせることの方が多い仕事です。
のんびりマイペースな人は、学生のうちからハイペースで動けるように練習しておくとよいでしょう。
たとえば、「〇〇を5分以内に行う」といったように、時間を決めて作業するとハイペースで動けるようになります。
時間を区切る方法は、授業でも取り入れてみるとよいかもしれません。
人見知りなら人と積極的に関わってみよう
医療事務は、1日に多くの患者さんと接する仕事です。
人見知りな学生は、上手に話せるか不安を抱えているかもしれません。
学生が人見知りを自覚しているなら、学生のうちから「笑顔」と「挨拶」を意識するようにアドバイスしましょう。
笑顔で挨拶ができれば人との距離も縮まり、徐々にコミュニケーションが楽しいと思えるようになるでしょう。
新しい知識を吸収する努力をしてみよう
診療報酬改定や医療制度改正などを把握しなければならない医療事務は、日々ブラッシュアップが必要な職種です。
医療事務をめざす学生には、普段からいろいろなことに興味をもつように声掛けしましょう。
「気になったことはすぐに調べる」
これを習慣化すると知的好奇心が高まります。
新しい知識を吸収することが楽しいと思えれば、医療事務の業務に就いてからもそれほど苦労しないでしょう。
まとめ
医療事務に必要なスキルの中でも特に重要な、コミュニケーション能力を中心に解説しました。
医療事務の業務は幅広く多岐にわたりますが、その多くでは高いコミュニケーション能力を求められます。
患者さんに対する接遇だけでなく、医師や看護師との意思疎通も重要です。
今現在、伝える力に不安のある学生でも、意識して努力すれば、医療事務として働くチャンスをきっと手にすることができるでしょう。
本記事を参考に、コミュニケーション能力の大切さと、鍛えるコツをお伝えください。
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