連載専門学校の先生のお仕事ライフハック
全国の専門学校の先生にインタビュー!先生の「お仕事ライフハック」=働くうえでの仕事術やアイデアを共有してもらいます。同じ職業だからこそ分かるお悩みやテクニックを参考に、明日からのお仕事ライフをアップデートしちゃいましょう!
学生とのコミュニケーションは、信頼関係を築くうえで大切な一方、先生方の悩みのタネでもあります。特に近年「Z世代」といわれる学生たちは、生まれたときからインターネットが当たり前、多様性を重んじ、SNSを使いこなす…など先生方の世代によっては、なかなか理解しがたい特徴があることでしょう。
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第4回は、10年以上ラジオパーソナリティーとして活躍した経験で培った、抜群のトーク力とコミュニケーション術で学生の笑顔とやる気を引き出している、宮崎ペットワールド専門学校の改井宣隆先生にお話を伺いました。
宮崎ペットワールド専門学校
改井宣隆 先生
「動物園・水族館・ドッグインストラクターコース」で教務を担当して20年以上。授業のほか、特技をいかした学校行事の司会やイベント企画も行う。教員になる前は、印刷会社に勤務しながらラジオパーソナリティーとして活躍するという異色の経歴を持つ。著書に「あなたのワンちゃんやペットと幸せに暮らす方法~ペットライフダイアリ~」がある。
目次
経歴 ・先生になった理由
「特技」と「人脈」で未経験から教育の道へ
大学卒業後、地元である宮崎で印刷関係の仕事に就きました。私がしていたのは印刷用の版下(アナログ製版時代に、テキストや図表などを紙台紙にレイアウトした印刷用のテンプレートのこと)を作る仕事です。毎日、本社のある大阪から航空便で送られてくる原稿をもとに版下を作り、大阪へ送り返すという、少し特殊なことをしていました。
タイピストさんが文字を黙々と打つため、会社内がとても静かなので、いつもラジオを流していたんです。あるとき「パーソナリティー募集」というラジオCMを聞きまして。夜の番組だから日中仕事をしていても大丈夫とのことだったので、ダメ元で応募してみました。するとなぜか合格しまして。ナイターオフ(野球中継のない)期間の生放送を2年間担当しました。それでクセになってしまって(笑)。お誘いいただいたこともあり、その後は毎日昼間の2時間生放送を10年ほど担当させてもらいました。だから、今でも「5分しゃべって」「1時間しゃべって」と言われたら時間ぴったりに合わせられるんですよ。
そんなことをしている中で、ワープロの登場により印刷業界が大きく変わり、本業である版下を作るという仕事が急激に減ってしまいました。そこで、趣味が高じて入団した「宮崎航空少年団」の初代団長であり、宮崎総合学院の理事長に相談したところ、「それだけ話せるんだから、うちにおいでよ」と誘っていただいて。それまで教育関連の仕事に携わったことはなかったので「何をすればいいですか?」と聞くと、「来ればお前なら絶対できるから」と。まさに「芸は身を助ける」でしたね。
そんな経緯で宮崎ペットワールド専門学校にきまして、気が付いたら20年近くたちました。最初は動物の知識もなくて。学校ができたばかりで、先輩教員もほぼいない状況だったので、いろいろな研修や講演に参加させていただき教え方を身に付けました。有名な先生方のお話を聞いたり、外部講師の方を招いた授業を見学したりして、「ここはこういう風に伝えるんだな」と勉強しました。
教員をしながらも、しばらくラジオ放送を続けていましたし、番組やコマーシャルのナレーションなどもたくさん担当させてもらってきました。また、この経験をいかして地元ケーブルテレビでしつけなどの話を約1年間担当しました。その後、地元新聞社で2年ほど連載を持ち、それをまとめた本も出版しました。自分がやってきたことが、このような形でひとの役に立てるのは本当にありがたい限りです。
最近では1つだけでなく複数の仕事を持つ「複業」という考え方がありますが、理事長からは「その先駆者だね」と言われています(笑)。
現在の業務
学生を楽しませるイベント企画や総合司会も担当
「動物園・水族館・ドッグインストラクターコース」で1年生の担任を受け持っています。授業は、犬のトレーニング実習、コミュニケーション、関係学、Word、Excelと幅広く担当しています。最近は外部講師の方をお招きすることが増えたので少し減ったのですが、ほぼ毎日フルに近い形で授業に入っています。
また、コミュニケーションに関しては、テキストだけでは学べないことが多いので、学生に経験を積ませる企画を多く用意しています。例えば、テーマパークへ出掛けたり、東京ビッグサイトで行われる「FCIインターナショナルドッグショー」や、展示会などへの希望制の旅行を企画したりして、私も自費で参加します。旅行となると学生同士でもめることもあるのですが、それもコミュニケーションの勉強ですよね。学生の体験のチャンスを増やしてあげたい一心で考えています。
あとは、ラジオパーソナリティーの経験をいかして、入学式、卒業式といったさまざまな学校行事で司会進行を任せてもらっていますね(笑)。
やりがい・おもしろさ
学生が楽しんでくれることが喜び
学生から「推し」について教えてもらったり、いろいろな話をしたりするのは楽しいですね。それこそラジオパーソナリティー時代は人気の曲や流行などを幅広くキャッチしなくてはいけなかったので、世代間のギャップを感じることなく学生とそういった話で盛り上がれました。最近はさすがにそうもいかなくなってきたので(笑)、学生の話が分からないときはひたすら質問します。「何それ何それ?何をやっている人なの?日本人?グループ?」と。そうすると学生がスマホを見せながらいろいろと教えてくれるんですよ。自分の好きなことを話すのって楽しいじゃないですか。しばらくたってから「この間話していたアレなんだけど~」と学生の方から教えてくれることもありますよ。「そうなんだ~!」と返しながら、私が忘れてしまっていることも多いのですが(笑)。
あとは、検定試験で高い合格率が出せたときや、学生が授業を楽しみながら学んでくれたとき、希望する職種に就職できたときはやはりうれしいですね。卒業を控えた学生が「この学校に入学できてよかった、もっとここにいたいです」と言ってくれることもあって、これは本当にありがたいです。
お仕事ライフハック
「褒め」と「雑談」で学生を引き込む
指導方法としては、まず褒める、とにかく褒める。私のモットーは「楽しくやろう」なんです。なので、叱るということはほぼないです。勉強がすごく好きという学生は少ないと思いますが、「どうせ勉強はしなくてはいけないのだから、だったら楽しく授業をやろうよ」と最初のガイダンスで話しています。「私もいろいろと楽しい仕掛けを考えるから」と。そして、「こういうことはしてはいけないよ」という決まりを最初に話します。「それが守れないときは注意するからね」って。それでも学生が何かしてしまったときは、あとで改善できていたら必ず褒めるようにしています。
例えば、学生が授業中に私語をしていたとすると「雑談ができるってすごいことだよ、話のネタがあるってことでしょう。叱っているわけじゃないから、何を話していたか教えて!」と言います。それが授業に少しでも関連することであれば「それはね…」と話を広げてあげて、こちらの世界に引き込んで授業を聞いてもらうようにしています。注意して静かにさせるのは簡単ですが、注意された学生はしょんぼりしちゃいますし、クラス全体もピリピリしますよね。だから叱ることは基本的にしない。そうやって普段から「何を話していたの?」と聞いていると、今度は学生のほうから話してくれることが増えるんですよ。ほかのクラスの学生からも「先生、話いいですか?」と言われて、放課後1時間くらい話を聞くこともあります。学生と廊下ですれ違うときも、ただ「おはよう」と言うだけでなく、相手が話を広げやすいような声かけを意識しています。
先生同士のコミュニケーションに関しても同じことで、挨拶はもちろん、ちょっと時間があれば雑談するようにしています。
また、これまでの経験上、休むことが増えてきたなという学生に対しては素早い対応を意識しています。そしてしっかりと話を聞く。悩みって話すことで半分くらい軽くなるんですよね。できるだけ早めに気付いて、1対1でしっかりと話す時間を取るようにしています。
ワークライフバランス
学生指導にも役立つ活動「宮崎航空少年団」
休日には、飛行機好きという趣味の延長線上である「宮崎航空少年団」の団長として活動しています。小学校1年生から高校生までの団員が在籍しているため、これを含めると小学校1年生から専門学校生までという幅広い年代の子どもたちを見ていることになりますね。世代によって違う子どもたちの傾向や考え方を知ることができ、仕事への相乗効果があります。航空少年団での活動が学校で役立つことや、またその逆もあります。
例えば、少年団の子どもが忘れ物をしたとき、子どもに対しては頭ごなしに怒ったりはしないですよね。まず理由を聞く。学生も一緒です。何かやってしまった際に必ず理由を聞いてあげる。子どもへの接し方が、学生への指導方法を考える際に役立っていますね。
学校のオープンキャンパス終わりに少年団のキャンプへ直行するなど忙しいときもありますが(笑)、おかげで仕事とプライベートの切り替えができ、バランスの取れた生活を送れていると感じます。
学校の新しい取り組み
外部講師を招いた授業で学生のモチベーションがアップ
今年度から警察犬訓練士、元動物園園長を講師に招き、授業内容の充実を図っています。警察犬訓練士の方は、20代の女性なので学生と年齢が近く、学生は目をキラキラさせながら授業を聞いています。また、「宮崎市フェニックス自然動物園」の元園長にも講師を引き受けていただき、リアルな動物園の裏側を教えてもらっています。こういった現場の話は、学生の頭に入っていきやすいんですよね。学生たちのモチベーションが上がり、「授業が楽しい!」と言ってくれています。
一日のスケジュール
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8:20出社
メールチェックなど。
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8:45職員朝礼
大切な情報共有の時間です。
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9:00動物の世話
学生が学校で飼育している動物たちのお世話をする時間なので立ち会います。(週2回)
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9:40午前の授業
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12:30お昼休み
昼食は主にコンビニや総菜屋さん、ときに少し遠征してできるだけバラエティー豊かに。
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13:20午後の授業
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16:10放課後
実習犬の送迎、学生からの相談、事務処理などであっという間に過ぎます。
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18:45帰宅
庭の草むしりや車の掃除などもマメにします。
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19:30夕食、入浴など
夕食後はパソコンで最新情報やプライベートメールの確認。航空少年団関係の資料や行事の準備をします。
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24:00就寝
電池切れしてたまに早めに就寝してしまうこともありますが、目標はこの時間です!
必須アイテム
文房具&ノートパソコン
文房具が大好きなので、筆箱いっぱいに入っています。新しい機能やキャラクター物のペンは見かけるとつい買ってしまいます。ノートパソコンも必須です。旅行や出張へも必ず持っていき、学生から送られてきた提出物などをすぐにチェックしてあげるようにしています。
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ウイナレッジを運営している出版社。
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