連載専門学校の先生のお仕事ライフハック
全国の専門学校の先生にインタビュー!先生の「お仕事ライフハック」=働くうえでの仕事術やアイデアを共有してもらいます。同じ職業だからこそ分かるお悩みやテクニックを参考に、明日からのお仕事ライフをアップデートしちゃいましょう!
専門学校にとって非常に重要な学生募集。高校生にどのように接し、アプローチすればいいのか、お悩みの先生も多いかと思います。
第5回は、2020年4月に開校した三条看護・医療・歯科衛生専門学校の開校準備をゼロから推し進め、校舎も何もない状態から学生を集めた加藤佐知子先生にお話を伺いました。
三条看護・医療・歯科衛生専門学校 教務部長補佐/医療事務学科長
加藤佐知子 先生
大学卒業後、専門学校教員の道へ。グループ校2校の医療事務系学科で教務を担当後、2019年より「三条看護・医療・歯科衛生専門学校」の開校準備室へ配属。なかでも医療事務学科の立ち上げに尽力し、2020年4月に無事開校。開校5年目を迎えた現在も、多岐に渡る業務を担当している。
目次
経歴 ・先生になった理由
配属先に提案されたのは「先生」!驚きながらも天職に
大学卒業後、新潟県を拠点に教育事業や医療・福祉事業などを展開するNSGグループに入社しました。学生時代、学習塾で事務のアルバイト経験があったので、採用試験を受けた当初は「専門学校の事務局志望」で、先生になりたいとは考えていなかったんです。ところが、人事の方から「担当してもらいたい教科は~」という話が出て(笑)。「自分に先生ができるのだろうか…」という気持ちもありましたが、提案を受け入れることに。そんな経緯で、新卒1年目から専門学校の医療事務系学科で、福祉系科目を中心に教務を担当することになりました。
先生として学生と過ごすうちに、どんどん楽しくなり、この仕事を好きになっていきました。ずっと続けたいという気持ちも強く、あのとき配属先を提案してくれた人事の方は、適性を見てくださったんだなと感謝しています。
最初の学校に7年間勤めたのち、別の学校へ異動となり、その後また最初の学校へ戻って医療事務系学科を受け持ちました。2019年に今の学校の開校準備室へ配属され、「ゼロの状態から学校を立ち上げる」という貴重な経験をさせていただき、今に至ります。
現在の業務
開校5年目の学校を学科長・教務部長補佐として牽引
医療事務学科の学科長としての学科運営をしながら、担任をしています。科目指導もしていますので、診療報酬請求、医療事務コンピュータ、電子カルテといった授業を受け持っています。実習先の開拓や就職指導、オープンキャンパスも担当しています。また、教務部長補佐としてテキスト等の発注や海外研修の窓口など、全学科にまたがる事務的な業務も行っています。
開校5年目の今はまだ、さまざまな業務を私が担当していますが、これから少しずつほかの先生方にも引き継いでいければと考えています。
達成感を得た経験
ゼロから学校を立ち上げ!一期生の卒業は思いもひとしお
本校の一期生が卒業したときは、すごく達成感がありましたね。何もないところから開校までこぎつけ、今年で5年目。やっと軌道に乗ってきたなと思います。人事異動で開校準備室へ配属になった当初は、どれくらい大変なのかあまり分からないまま手探りでスタートしました。実際は本当に大変で…(笑)。カリキュラムや実習先、広報用の素材、検定や就職の実績もなく、もちろん校舎も図面しかない状態…。マニュアルや指示もないので、どうやったら高校生に魅力を伝えられるのか、必死で考えながら進めました。逆に言うと、やりたいように自由にやらせてもらえる環境でしたね。医療事務学科の担当は私一人でしたので、まずは以前勤めていた学校の卒業生や、卒業生が勤める病院に協力してもらって、撮影やインタビューをしました。医療事務の仕事を紹介する動画や記事を作り、ホワイトボードに写真を貼り、作りたてのカリキュラムを用意して、貸会議室でオープンキャンパスを行いました。来てくれた高校生とは個別で話をするようにして。校舎もない状態なのに、一期生のみんなはよく入学を決めてくれたなと思います(笑)。
また、ちょうど開校した2020年の春はコロナ禍が始まった時期でもありました。せっかく校舎ができたのに、すぐにオンライン授業が始まって…。いろいろなことを乗り越えて迎えることができた一期生の卒業だったので、特に心に残っています。
以前の学校なら、最初から写真は用意されている、校舎があって学生もいるからいつでも撮影できる、さまざまな実績があってアピールポイントが多いという状況。それが当たり前だと思っていましたが、恵まれていたんだなと。ただ、学校の立ち上げはめったに携われることではないので、担当させてもらえたことに感謝しています。
また、以前勤めていた学校で、難関検定である「医療秘書技能検定1級」の合格者を出せたことも思い出深いです。学生と合格を目指して夜遅くまで対策し、みんなすごく頑張っていたのですが、初年度は結果が出せなかったんです。すごく悔しかったですね。ただ、2年生で受ける検定だったので、2年生の対策を始めた年に並行して1年生のカリキュラム変更も進めまして。その結果、1年生から対策をしていた学生たちは、翌年見事合格することができました。ある年、検定試験の前日に「今日で対策授業はおしまい。明日はいよいよ試験だね」と言うと、学生が「今日で終わっちゃうのがさみしい!」と言ってくれて。毎日大変だったはずなのに、勉強すること自体を楽しいと感じてくれていたみたいです。こんな風に頑張ってくれる子たちと一緒に過ごせるのは、本当に幸せだなと思いました。
やりがい・おもしろさ
高校生から社会人…人生の転換期を見守れること
学校は、毎年新しい出会いがあります。授業で教える内容は同じでも、学生の反応や理解度はその年によって全く違うんです。授業自体はシラバスや教科書がありますが、学生が理解するタイミングやポイントは毎年全然違います。「去年はこうしたら伝わったんだけどな」「去年は授業のスピードが速いって言われたけど、今年はゆっくりと言われたな」など、その都度学生の反応を見ながら授業資料を作り変えるなど工夫しています。毎日違うことの連続というのが、私にとってはすごく面白いですね。
それから、19歳20歳って、ぐっと成長する時期ですよね。学生から社会人になる転換期でもあり、その時期に立ち会えることが貴重だと感じています。これは以前勤めていた学校の話ですが、オープンキャンパスで「昔入院していた病院で働きたいんです」と具体的な目標を持った高校生が来てくれたことがありました。卒業生の就職実績がある病院だったので「一緒に夢を叶えよう」と伝えると、入学してくれました。在学中に面接練習や対策をしっかりとして、無事にその病院から内定をもらったときには、学生本人、お母さん、私と全員でうれし涙を流して喜びました。高校時代から知っている学生が実際に入学してくれて、夢を叶え、社会人になるところまで見守れるのは、専門学校教員の醍醐味だと思います。
お仕事ライフハック
積極的な声かけで「それが当たり前」の雰囲気づくり
講義って、聞いていてもなかなか頭に入らないという学生が多いですよね。私は少し講義をしたら、プリントを用意したり、口頭で問題を出したりして、こまめに練習問題を解いてもらうようにしています。手を動かしたり、ペアで話したりという時間を多くとることで、学生は達成感を得られやすくなると思うので。今のクラスはペアで行う〇×問題が好きみたいで、ジェスチャーを交えながら楽しく盛り上がっていますよ(笑)。
また、授業中はなるべく机間巡視します。学生から先生に質問するって難しいと思いますが、こちらが近くまで行けば学生も声を掛けやすくなるので、まんべんなく回るようにしています。手が止まっている学生や間違えている学生には、聞かれてなくてもこちらから声を掛けます。そして一人に説明したら、「今こんな説明をしたよ」と全体に向けてもう一度説明するんです。そうすると学生は「自分だけじゃなくてみんなに教えているんだ」と思ってくれます。最初は「自分だけ言われるなんて恥ずかしい」と感じる学生もいるかもしれないですが、一人ひとりに繰り返していくと、それが学生も当たり前になっていくみたいです。学生がスタッフとしてオープンキャンパスに参加した際、高校生に「授業中に先生が近くに来てくれるから、質問しやすいよ」と自ら話してくれてうれしかったですね。
また、入学後すぐ、インタビュー形式のアンケートを取るんですが、その際手書きで私の答えをちょっとくだけた感じで書き込んでおきます。それをコピーして配る。そうすると「特にありません」みたいな答えがなくなって、不思議と学生もいろいろと書いてくれます。学生からしっかりとヒアリングしたいアンケートでは、この方法をとることが多いですね。私のこともできるだけオープンにして伝えたいですし、学生のこともよく知れるので一石二鳥です。こうやって双方向でのコミュニケーションが取れるよう、日々工夫しています。
ワークライフバランス
仕事のことを考えられない時間をあえて作って息抜き
ワークライフバランスは取れていると思います。昔は残業が多く、休日も仕事のことを考えてしまうことが多かったのですが、今は仕事を持ち帰らないことを徹底しています。また、習い事をしたり旅行へ行ったりと、あえて仕事のことを考えられない時間を作るようにしています。趣味のスキューバダイビングをしている最中は、絶対に仕事のことを考えられないのでおすすめです(笑)。また、全く仕事と関係ない資格の勉強をしたくて、フラワーデザイナー資格検定試験の3級、2級、1級、最後は講師資格まで取得してしまったこともありました(笑)。今は仕事帰りに英会話教室へ通っています。
学校の自慢
地域と連携して即戦力を育てる
専門学校は検定取得がメインの目的になってしまいがちですが、本校では実技の授業や実習にも力を入れています。医療事務学科では実習が必須なわけではないのですが、1年次も2年次も実習へ行っています。また、実習室があるので年間を通して実技の授業を行い、即戦力を育てることを目指しています。
また、広い新校舎も自慢の一つです。三条市立大学と校舎を連ねているので、大学の学食やカフェテリアも利用可能で、多くの学生がお昼休みに利用しています。
三条市との連携も多く、地域に密着していることも特長ですね。三条市立大学と同日開催する学園祭は、地元の方々が2000名ほど来場される一大イベントです。地域のイベントにお仕事体験のブースを出展することも多々あり、子どもから年配まで幅広い世代の方と触れ合える機会が多いです。
一日のスケジュール
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8:30出勤
メールや一日の予定をチェックします。
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9:25朝のホームルーム
毎朝学生の様子を確認します。
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9:30午前中の授業
空き時間があれば授業準備やそのほかの業務。
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12:40お昼休み
教室や隣の大学に学生の様子を見に行くことも。
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13:40午後の授業
空き時間があれば授業準備やそのほかの業務。
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15:10放課後
検定前は補講。オープンキャンパスの準備や学科の先生との打ち合わせ、会議など。
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19:00帰宅
週に一度は仕事帰りに英会話教室へ。
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19:30夕食、入浴、リラックスタイム
趣味のスキューバダイビングのSNSを見たり、ニュースをチェックしたり。
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23:30就寝
翌日の予定を確認して就寝。
必須アイテム
電卓&手帳
電卓は医療事務の医療費算定をする際の必須アイテムです。また、手帳は肌身離さず持っています。というのも、とても忘れっぽいという自覚があって…。就職したときから手帳は必ず毎年つけるようにしています。スケジュールだけでなく、その日あったことも書いているので、過去のことを振り返ることもできます。
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