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TOP教育その他【基本を解説】ホテルスタッフに必要な心得やマナーとは?

【基本を解説】ホテルスタッフに必要な心得やマナーとは?

2024.03.08 その他 教務情報

 ホテルは、「客室」、「施設・設備」、「料理」、「サービス」という要素によって構成されます。これらの要素は単独で提供されるものではなく、お客様のニーズに合わせて総合的に提供されるものであるというのが、ホテルの特徴といえるでしょう。

 宿泊されるお客様にはくつろげる空間が、結婚式や宴会で利用されるお客様には集いの場としての施設の雰囲気とおいしい料理が、それぞれ重要な要素となります。そして、どの場面であっても、ホテルスタッフによって提供される無形の「人的サービス」が、お客様の満足度を決定するといっても過言ではありません

本記事では、ホテルスタッフが身につけておくべき心得やマナーを取り上げます。これからホテルスタッフを志す方や、ホテルスタッフを目指す学生の皆さんの参考になれば幸いです。

※本記事の内容は書籍「ホテル業務関連知識」(ウイネット)の一部を再編集したものです。

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ホテルにおけるサービスとは

ホテルそのものをサービス業と称していることからわかるように、ホテルの業務は「サービスを商品として販売すること」です。具体的には、「人的サービス」と「物的サービス」とが組み合わされて、総合的なサービスが形成されています。

1.「人的サービス」と「物的サービス」

「人的サービス」とは、人手によってお客様に満足感を与えることで、「物的サービス」とは、設備、調度品を最良な状態でお客様に提供することです
「サービス」は、行う者の心がけと技術によってその良し悪しが決定されます。上手な接客とは外観に現われる技巧のみでなく、その根底には常に仕事に対する誠意がなければいけません。「誠意」とは、仕事に責任を感じ、意欲的に立ち向かい、人から喜ばれるものを創造するための努力をすることで、いいかえれば、仕事に対し情熱を持つことです。

人的サービス物的サービス
・身だしなみ 
・言葉づかい
・接客態度 
・心づかい
・商品知識
・設備の維持
 (空調、照明、清掃など)
・料理

ACS・・・ホテルの商品を象徴する言葉
A Accommodation(施設)
C Cuisine(料理)
S Service(サービス)

2.サービスの心構え

「人的サービス」「物的サービス」どちらも、以下の点を心がけましょう。

・お客様の立場になっておもてなしをすること
・明るい笑顔で応対すること
・親切、迅速、正確な動作を心がけること
・お客様を差別しないこと
・お客様の状況に応じたサービスを提供すること

ホテルスタッフの心得

1.服装と身だしなみ

ホテルのスタッフは、派手に飾り立てるのではなく、洗練された個性美のある身だしなみを心がけなければいけません。身なりの整っている人はその人柄のよさを印象付けるもので、身だしなみには十分留意し、相手に好感を持たれる姿を保持することが大切です。

<身だしなみの注意点>
・清潔であること。心身ともに清潔でなければよい身だしなみはできない。
・体臭や口臭に気を付ける。
・頭髪は常に清潔にし、勤務前に手入れをする。
・男性は短髪にし、女性の長い髪はまとめておく。
・爪は短く切り、不潔な感じを与えないよう心がける。
・マニキュアはしないほうがよいが、する場合はベージュなどの目立たない色にする。
・女性の化粧は厚化粧にならないよう、適度に上品にする。
・香水はつけないほうがよい。
・ひげは毎朝よく剃っておく。
・Yシャツは清潔なものを着用する。
・ズボンは折り目を付けておく。
・靴は、黒色にし、常に光沢を失わないように磨いておく。
・靴下は、服装に合わせ目立たない色にする。
・ストッキングは、柄物は避け、伝線していないか注意する。
・ネックレス、イヤリング、指輪などの装飾品は身に着けない。
・腕時計はシンプルなファッション性のないものを着用する。
・ネームプレートは定められた位置に着ける(傾いていないか注意する)。

2.接客態度

勤務中は誰が見ても好感のもてるふるまいを心がけましょう。お客様に見られていないときでも油断せず、常に適度な緊張感を持つことが大切です。

(1)表情

・軽く微笑をたたえる。
・柔和で落ち着いた表情で安心感を与える。

(2)目線

・話をするときは、相手の目を見る。
・キョロキョロと視線を動かさない。
・上目づかいや流し目はしない。

(3)立ち姿(待機の姿勢)

・背筋を伸ばして姿勢よく立つ。
・手は体の前で軽く組む。腕組みをしたり、後ろで手を組んだりしてはいけない。

(4)歩き方

・姿勢よくきびきびと歩く。
・お客様の妨げにならない動線を選ぶ。
・お客様に声をかけられたら、瞬時に応対できるよう心がける。
・廊下を歩くときは左側を歩く。
・コーナーがあるときは一度立ち止まり前方を確認する。
・複数名で歩くときは横並びで歩かない。
・方向などを示すときは手のひら全体で指す。人差し指一本で指してはいけない。
・ポケットに手を入れて歩かない。

3.挨拶

一日は、挨拶で始まり挨拶で終わるといわれているように、挨拶は重要な役割をもっています。笑顔で正しく挨拶をすれば相手に好感を与え、反対に、つまらなさそうな顔で挨拶をすれば不快感を与えるものです。ホテル内でお客様とすれ違ったりしたとき笑顔で挨拶すれば、あなた自身だけでなく、ホテルへの印象もよくなります。正しい挨拶を身に付け、素晴らしいホテルスタッフになれるように努めましょう。

(1)会釈

・お客様の目を見て、軽く上体を15度ぐらい前に傾け笑顔で行う。
・朝10時頃までは「おはようございます」、その他の時間帯は「こんにちは」「こんばんは」「いらっしゃいませ」などの挨拶の言葉と同時に行う。
・お客様とエレベーターで一緒になったときや、通路ですれ違ったときなど、日常的に一番多い挨拶である。

(2)敬礼

・上体を30度前に傾け、言葉と同時にお辞儀をする。
・フロントやレストランでお客様をお迎えするときなど、正式な挨拶として多用される。

(3)最敬礼

・視線を足下から1~2m先の地点に落として、ゆっくり上体を45度前に傾け、一息ついてからゆっくりもとに戻す。
・特別な重要人物(VIP)の送迎や、お客様にお詫びするときなどに使われる挨拶で、毎日のようにする挨拶ではない。

※VIP(Very Important Person)
もともとは、各国の元首や大公使、国会議員、政財界の要人などをさす。ホテルにおいては得意先や顧客、社会的地位のある方(会社の重役)などの重要人物も含める。

4.言葉づかい

私たちは「言葉」によって自分たちの意思や感情を相手に伝え、言葉によって相手を理解しています。言葉のつかい方はその人の人柄や教養を表すので、日頃から正しい言葉づかいをするよう心がけなければいけません。それに心からの気持ちを素直に表した態度が伴って、初めて生きた言葉づかいが生まれます。

<言葉づかいでわかること>
・どのような職業の人か
・どのような性格の人か
・都会の人か、地方の人か
・人がよさそうか、気難しそうか
・好意的か、反感(悪意)があるか

知らないうちに間違った言葉づかいや、汚い言葉づかいをしてしまうこともかるかもしれませんが、このような言葉づかいは相手に不快感を与えてしまう原因となります。正しく、きれいな言葉づかいは、ホテルスタッフにとっては最も大切なマナーの一つなのです。

(1)ホテルの接客用語

いらっしゃいませWelcome to the Hotel BANANA.
おはようございますGood morning, sir.
ありがとうございますThank you very much, sir.
かしこまりましたYes, sir.
恐れ入りますがExcuse me, sir.
しばらくお待ちくださいJust a moment please, sir.
申し訳ございませんWe are very sorry.

※男性のときはSir、女性のときはMadamを後ろにつけるとていねいな表現になる。

(2)ホテルスタッフの慣用句

1.日常的な言葉
「いらっしゃいませ」
「お待ち申し上げておりました」
「恐れ入りますが、お名前を伺ってよろしいでしょうか」
「ごゆっくりご滞在くださいませ」
「お部屋は○○号室でございます」
「またのお越しをお待ち申し上げております」

2.返事などの例
「かしこまりました」
「承知いたしました」
「申し訳ございませんが」
「恐縮でございますが」

3.お詫びの言葉
「誠に申し訳ございません」
「深くお詫び申し上げます」
「不行き届きで大変申し訳ございません」
「今後は厳重に注意いたします」

(3)敬語の使い方

敬語を適切に使うことにより、相手に対する敬意(尊敬の気持ち)を表すことができます。

1.尊敬語
相手の動作や相手側の物事を直接的に敬って言い表す。

例:お客様が言いました。→お客様がおっしゃいました。

2.謙譲語
自分の動作や自分側の物事をへりくだって言い表す。間接的に相手に敬意を表す。

例:私が行きます。→私が参ります。

3.丁寧語
表現を丁寧に美しくする言葉。

例:酒もある。→お酒もございます。

4.尊敬語と謙譲語の使い分け

基本の動詞尊敬語謙譲語
するなさるいたす
言うおっしゃる申す、申し上げる
行く・来るいらっしゃる参る
食べる召し上がるいただく
見るご覧になる拝見する
聞くお聞きになる伺う、承る

ホテル内でのマナー

1.パブリックスペースでのマナー

パブリックスペースとはフロント、ロビー、廊下、階段、エレベーターホールなど、ホテル内の公共部分のことです。パブリックスペースを利用するときは、お客様の妨げにならないよう心がけなければいけません。また、ゴミなどが落ちていたら、自分の担当外の場所であっても拾いましょう

2.マナー違反

(1)大声をださない

理由もなく大声を出したり、大笑いをしたりするのはマナー違反です。火災や地震などの災害時には、お客様の避難誘導のために大声を出さなければいけないときがありますが、これは特別なこと。理由もなく大声を出せば当然ながらお客様は驚き、また、大笑いをすればお客様に不快感を与えることになります。このようなことは、ホテルスタッフ自身の問題だけでなく、ホテル全体の品位にもかかわる大切な問題なので、十分気を付けましょう。

(2)人前で耳打ちや指差しはしない

何気なく耳打ちしたり、指を差したりすることがあるかもしれませんが、偶然その瞬間をお客様が見ると「自分が笑われているのではないか」と不快に思う方がいるかもしれません。ヒソヒソ話をしたり、指を差したりすることは絶対にしてはいけない行為です。待機中に仕事の話をするときは向かい合わず、横並びになって双方とも正面を向いて話しましょう。また、手で方向を示すときは、親指を手のひらに軽く曲げ入れ、腕をまっすぐに伸ばして方向を示します。

社員間のコミュニケーション

1.コミュニケーションの重要性

私たちは毎日さまざまな人々との交流の中で生活をしています。社会のあらゆる場面で、対人関係を抜きには私たちの生活は成り立ちません。職場においても「仕事の流れは、対人関係の流れである」ともいわれるほど、仕事に占める対人関係のウエイトは大変に高いものです。

コミュニケーションの良し悪しは、どれだけ「相互理解」ができているかによります。
そのために必要なのは、次の2点です。

1.話し合いをする(相互理解)
2.連絡、報告事項を怠らない(情報伝達)

2.チームワーク

チームワークの基本は、与えられた職務を各自が責任をもって遂行することです。ホテルの仕事は、1人でできるものではありません。ほとんどがチームプレー(共同作業)なのです。レストランで例えれば、お客様を席まで案内する「アテンダー」、お客様の注文を伺う「ウエイター」、料理を作る「料理人」、会計を担当する「キャッシャー」など、役割分担されています。各担当者が与えられた仕事を確実に行うことで、お客様から高い評価を得られます。反対に、与えられた仕事をいい加減に行えばミスが多発し、お客様から苦情を受けることとなり、そのレストランは評判が落ちてしまいます。日頃よく耳にしている「チームワーク」とは、仲のよいことだけではなく、各々が与えられた仕事を確実に行い、それらが集大成となって一つの仕事を完成させることなのです。

常にレベルアップに努めよう

1.商品知識の向上

ホテルの商品をすべて知識として取り入れるには、学習意欲と経験が必要です。経験は、年の積み重ねであるから操作できるものではありません。大切なことは学習意欲です。「ホテルに関心を持ち、進んで学習をする」。毎日、この積み重ねによって商品知識が向上していきます。まずは、所属する部門の商品知識から学習しましょう。商品知識が豊富な人は、お客様から信頼され、好感をもってもらえます。例えば、料飲部門の商品知識学習ポイントを紹介します。

<料理の学習ポイント>
・食材(種類、用途、産地と原産地)
・調理方法(料理レシピ)
・有名料理名(料理の歴史と考案者名など)
・ソースの種類と作り方
・料理とワインの組み合わせ

<飲料の学習ポイント>
・醸造酒と蒸留酒の種類
・カクテル名と調合方法
・ワインの醸造方法や有名ワインの銘柄、産地名

2.技術の向上

接客技術とは、お客様に対する言葉づかいや態度などの接客態度のことです。ホテルやレストランのイメージは接客態度(接客技術)によって左右されます。

3.お客様の顔と名前を覚える

フロントやレストランなどで、「○○様いらっしゃいませ」と直接お客様のお名前でお迎えしているベテランのホテルスタッフがいます。ホテルスタッフに名前と顔を覚えてもらうことは、お客様にとって大変にうれしいものです。また、私たちの仕事を考えれば、顧客が増えれば増えるほど売上も伸ばすことができます。お客様の顔と名前を覚えることは、顧客をつくる最良の方法といえます。常に、手帳を携帯し、お客様の名前、特徴、好みなどを記録して覚えるとよいでしょう。

4.ホテルスタッフとしての自覚

自覚をもつということは、ホテルという業種を理解し、それにそった意識をもって行動することです。一般的にホテルスタッフは良識をもっているとされています。勤務中はもちろんのこと、勤務終了後もマナーを重んじた行動をとることが大切です。

そのほかの心得

1.ホテルの財産を大切にする

ここでいうホテルの財産とは、施設、備品、装飾品などです。施設、備品、装飾品は、ホテルならではの雰囲気をお客様に提供する大事な役割を果たしています。料飲部門では銀食器類や高価な絵皿などのチャイナ類があり、宿泊部門では絵画や客室内にある家具類があります。これらを紛失したり、破損、汚損によって使用できなくなれば、再購入したり修理することとなり大変な出費になってしまいます。取り扱いに注意し、手入れを十分に行い、よい雰囲気をお客様に提供しましょう。

<財産維持のポイント>
・取り扱いに十分注意をする
・定期的に手入れをする
・破損、汚損を発見しだい適切な処理をする
・財産を大切に思う心をもつ

2.ホテル内をよく知る

配属された部署の知識をもつことは当然のことですが、ときには他部署の営業内容などもお客様に案内する必要があります。

<案内内容>
・各施設の営業時間、場所
・各レストランのお勧め料理、飲料と価格(特に定食料理)、宴会の予約
・客室料金
・チェックインとチェックアウトの時間
・館内経路

3.出退社は社員通用口から

当然のことですが、勤務終了後はお客様用スペースを使用してはいけません。勤務外にホテル施設を利用することは、お客様に迷惑をかけ、ホテルのイメージダウンにつながります。出退社は必ず社員通用口からしましょう。

新しい時代のホテルスタッフに求められるスキル

今日の生活において、もはやIT技術による恩恵を切り離すことはできません。ホテル業界においても、コンピュータは、業務を迅速に遂行するための有効なツールです。ホテル業界に従事する者としては、文書作成ソフト(Word)や表計算ソフト(エクセル)など、基本的な技術は身に付けておく必要があります。また、日々進歩するIT技術においても、時代の情勢やそれにまつわる用語などを敏感に察知しましょう。また、社会情勢や環境についても時代は常に進化しています。ホテル業界に携わる人々は、さまざまな人々に接する機会があるため、変化に敏感である必要があります。日々、ニュースや新聞などを活用し、アンテナを張り巡らせましょう。

まとめ

ホテルスタッフに求められるスキルは多岐にわたります。経験を積むことでしか身に付けられないスキルもありますが、マナーや心得は学生のうちから意識できるものです。日々意識して過ごしてみましょう。

テキスト『ホテル業務関連知識』は、ホテルスタッフとしての心得、ホテルの歴史のほか、業務に関連する旅館業法や消防法などの法令に関する知識まで掲載しています。国際化するホテル業界に必要不可欠な国際儀礼も盛り込み、基本的な英会話・アジアの言語、外国人接客のマナー、ドレスコードのほか、新しい法律・知識も記載しています。

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