連載IT弁護士が教える!最新インターネット・SNSトラブル
近年、後を絶たないSNS・インターネット上でのトラブル。学生だけではなく、先生個人としてや学校公式のSNS運用においても注意が必要です。 元ITエンジニアで「IT弁護士」として活躍しているモノリス法律事務所代表弁護士、 河瀬弁護士に最新の事例とともにアドバイスしてもらいましょう!
インターネットの普及に伴い、SNSは若者の日常生活に欠かせない存在となっています。
しかし、その利便性の裏には多くの危険が潜んでおり、知らないうちに自分が犯罪の加害者・被害者になってしまうケースも増えています。
また、このようなネット上のトラブルは、いわゆる「デジタルタトゥー」として残ってしまい、時には将来のキャリアにも影響を及ぼしかねません。
そこで本記事では、近年若者が直面しやすいSNS・ネット上のトラブルとその対策について、詳しく解説します。
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目次
SNS・ネット上のトラブル事例
SNSは若者にとって重要なコミュニケーション手段である一方で、近年では、誹謗中傷やさまざまな犯罪の温床となっていると言われています。
そこでまずは、SNSやインターネット上で若者が直面する代表的なトラブルについて、具体的な事例とともに見ていきましょう。
1.ネットいじめ
ネットいじめは、SNSの普及とともに増加しているトラブルの一つです。悪意のあるコメントや誹謗中傷、プライベートな写真の拡散は、時として深刻な心理的ストレスになります。SNSは、第三者による拡散が容易であるため、不特定多数の匿名ユーザーから攻撃を受けるケースもあり、最悪の場合には被害者が自らの命を絶つこともあります。
2.闇バイト・詐欺
SNSを通じた「闇バイト」や詐欺行為が増加しています。特に大学生・専門学生・高校生がターゲットとなりやすく、簡単に高収入を得られるという甘い言葉で勧誘されます。
例えば、持続化給付金の不正受給事件では、SNSでリクルートされた若者が「捨て駒」として利用されるケースが報告されています。
また、一度犯罪行為に加担してしまうと、その後も脅され続ける危険があり、抜け出すことが難しくなってしまいます。
3.援助交際・パパ活
SNSを通じての援助交際やいわゆるパパ活も深刻な問題です。これらは短時間で高額の報酬が得られると宣伝されますが、実際には非常にリスクが高い行為です。パパ活を通じて知り合った年長者と会うことで、売春や恐喝、薬物使用などの犯罪に巻き込まれる可能性があります。
特に若い女性がターゲットになりやすく、社会経験が少ないために騙されやすいのが現状です。
4.個人情報の漏洩・ネットストーカー
SNSに投稿された情報から個人情報が漏洩するケースも多発しています。
例えば、何気なく投稿した写真やコメントから、住所や学校が特定されることがあります。実際に、SNSに投稿された写真の背景から住所を特定され、ストーカー被害に遭った事例もあります。このような情報漏洩は、プライバシーの侵害だけでなく、物理的な危険を伴うこともあるため注意が必要です。
デジタルタトゥーの脅威
「デジタルタトゥー」とは、インターネットに一度公開された情報が永久に残る現象を指します。若者がSNSに投稿した写真やコメントは、簡単に削除できない場合が多く、将来的にさまざまなリスクを引き起こす可能性があります。
1.将来の就職活動への影響
近年では、就職活動時に採用担当者が候補者のSNSをチェックすることが一般的であり、過去に投稿した不適切な内容が原因で不採用になるケースも増えています。
例えば、飲み会の写真やSNS上の不適切な発言などが問題視され、採用に悪影響を及ぼすことがあります。
2.信用失墜や人間関係のトラブル
SNS上での誹謗中傷や個人情報の漏洩が発覚した場合、家族や友人などからの信頼を失ったり、人間関係が壊れたりする可能性があります。
また、SNSに投稿した情報が第三者によって悪用されるリスクもあり、ハッキングや情報の再投稿によって本人の意図しない形で情報が広まることがあります。
対策と予防策
では、以上のようなネット上のトラブルに巻き込まれないために、どのようなことができるでしょうか。
1.個人の意識改革
まずは、若者自身がSNSやインターネットの利用に対して自覚と責任を持つことが何よりも重要です。SNSに投稿する内容が将来にどのような影響を及ぼすかを考え、慎重に行動することが求められます。
例えば、以下の点に注意しましょう。
(1)個人情報の管理
氏名や住所、電話番号などの個人情報をSNSに投稿しないようにしましょう。友人限定の設定にしていても、情報が第三者に漏れるリスクは常に存在します。
(2)投稿内容の見直し
投稿前にその内容が不適切でないか、将来的に問題になる可能性がないかを確認する習慣を身につけましょう。飲酒や喫煙に関することはもちろん、パーティーの写真や不適切な発言などには特に注意が必要です。
2.教育機関と保護者の役割
本人の意識に任せるだけでなく、教育機関や家庭などの周囲が、若者が安全にSNSを利用できるようサポートすることも重要です。具体的には、以下のような取り組みが効果的です。
(1)学校での教育プログラム
インターネットリテラシー教育をカリキュラムに組み込み、SNSの安全な使い方やデジタルタトゥーのリスクについて教えることが必要です。若者が早い段階で正しい知識を身につけることができます。
(2)家庭でのコミュニケーション
親が子供と定期的にSNSの利用について話し合い、問題が起きた際にはすぐに相談できる環境を整えることが大切です。
例えば、ネットいじめに遭った場合や怪しいメッセージを受け取った場合に、親に相談しやすい雰囲気を普段から作っておくことで、トラブルを未然に防げる可能性が高まります。
具体的な行動指針
具体的な行動指針としては、以下のような対策が有効です。
1.セキュリティー対策の徹底
SNSのプライバシー設定を確認し、公開範囲を限定することで個人情報の漏洩を防ぐことができます。また、パスワードの管理を厳格にし、定期的に変更する習慣を持つことが推奨されます。
2.トラブル時の相談先の確認
ネットトラブルに巻き込まれた際には、すぐに対応できるように相談窓口を把握しておきましょう。警察や弁護士の相談窓口を利用することで、適切なアドバイスを受けることができます。
3.自分のデジタルタトゥーを管理する
過去の投稿を定期的に見直し、必要に応じて削除や非公開にすることで、将来的なリスクを減らすことができます。
また、SNSプラットフォームごとに異なる削除手続きを理解しておくことも重要です。
まとめ
近年では、さまざまなタイプのSNSが登場しており、それに応じてネット上のトラブルも多様化しています。そのため、まずはSNSの利便性とともに潜む危険性を十分に理解した上で、適切な情報管理やトラブルへの対応策を知っておくことが重要です。
特にデジタルタトゥーの問題は将来的な影響が大きいため、本人の意識に任せるだけでなく、時には教育機関や家庭など周囲の大人が協力し、SNSやネット上のトラブルに巻き込まれないための環境を作っておくことも求められます。
学生のネットリテラシー教育に
河瀬弁護士に監修いただいた書籍「SNS・ネットで違法行為をしないためのガイドブック」(ウイネット)では、実際に起こり得る身近な例をもとに、SNSやインターネットで誰もが起こしてしまう可能性がある違法行為のリスクや、その防ぎ方を学べます。学生に伝わりやすいよう、トラブル例は漫画で紹介、法律違反もイラスト付きでやさしく解説しています。グループワークなどで使用できるトラブルクイズも掲載。学生がSNSやネットをより安全に使用できるようにするための指南書です。
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河瀬 季
モノリス法律事務所 代表弁護士
小3でプログラミングを始め、19歳よりIT事業を開始。
ベンチャー経営を経て、東京大学法科大学院に入学し、弁護士に。
モノリス法律事務所を設立し、ITへの知見を活かして、IT・ベンチャー企業を中心に累計1,297社をクライアントとしている。
モノリス法律事務所:https://monolith.law/