「教材研究」とは、先生が教材を理解することだけを意味するのではありません。
「学生にどう伝えるか」という指導方法を考える意味合いも含まれています。
つまり、学生に理解させるためにどのようにその教材を使うのかを考え、それを効果的に伝える方法を導き出すことが「教材研究」です。
学科や学生によって目標がそれぞれ異なる専門学校において、教材研究はより重要な位置づけとなります。
本記事では、教材研究の意味や重要性、作成のステップに加え、一歩進んだ教材研究の方法を解説しています。
学生指導のヒントとしてご活用ください。
目次
教材研究とは
教材研究とは、その名の通り「教材について深く考え研究すること」を指します。
義務教育課程では学習指導要領が定められているため、ある程度それに沿った内容で研究できます。
しかし、専門学校の場合はそうではないことが多いでしょう。
各分野によって、教材にするものは千差万別です。
たとえば、ある調理系の専門学校では食材を教材としています。
医療系の専門学校であれば先生の体が教材となりえるでしょう。
資格試験などを受ける学生のために、独自の対策問題集を作るケースも考えられます。
このように、専門学校における教材研究は多岐にわたるため、悩まれる先生が多いかもしれません。
指導を成功に導く「教材研究」の重要性
ここからは、教材研究は何に役立つのか、その重要性を詳しく見ていきましょう。
指導力アップ
授業で使う教材の特性を深く知ることは、先生の指導力アップに繋がります。
先生に求められる指導力にもいろいろな方向性のものがありますが、教材研究に取り組むことで、指導力のうち「学習指導力」を養成できます。
学習指導力とは「指導計画を立て指導方法を工夫し、学生に授業内容を理解させる」力を指す言葉です。
教材研究とは、「学生にどう教えるか」という指導方法を見出し、その苦労から先生自身の力をつける重要な取り組みだといえるでしょう。
授業の質と効率の向上
先生が教材を深く理解すると、「この内容をきちんと教えたい」や「この点は学生に考えさせたい」といった大まかな指導計画が少しずつできてくるでしょう。
「教えるべきこと」と「考えさせること」を明らかにすると、授業の質は高いものにブラッシュアップされます。
それと同時に、教材研究によって授業のどの部分に力を入れればよいかが明確になるので、教材のポイントを学生に効率的に教えられるでしょう。
このように教材研究による教材の深い理解を通じて、授業の質と効率の向上が期待できるのです。
教材研究のステップ
教材研究は「教材を素材として研究する」「教材から学生に理解させたいポイントを見定める」「この教材を用いて学生にどう指導するかを考える」という3つのステップに分かれます。
ここでは、各ステップを見ていきましょう。
1.教材を素材として研究する
教材として取り扱うものの性質を深く知ることが、教材研究の最初のステップです。
たとえば、「小麦粉」という食材を教材にしようとしたときに、まず先生が小麦粉について深く学びます。
小麦粉の歴史もあれば、どうやって食材として使える形の小麦粉になるのか、熱を加えたらどうなるか、どんな調理方法があるのかなど、テーマになりえる内容は幅広くあります。
これらをまず先生が調べていくのです。
先生自身が疑問を持ち、調べ、学ぶことを通して得られた感覚や感情は覚えておきましょう。
それはいざ学生に教える段になった際に、学生の疑問を理解したり、感動に共感したりする糧になります。
教材について、幅広く・深く理解するところから始めましょう。
2.教材から学生に理解させたいポイントを見定める
教材を理解したら、次は学生たちに教材を使って何を理解させるのか、ポイントを絞っていきましょう。
ポイントを絞るヒントとしては、主に以下のものがあります。
- 何の科目でその教材を取り扱うのか
- 1年間またはその学期における学習目標のどのあたりに該当するのか
- 学生たちの習熟状況はどの程度か
先の小麦粉を教材とした場合、このステップではたとえば次のようなことを考えます。
調理の材料として小麦粉を扱いたいが、学生たちは学校に入ったばかりで調理の経験も少ない者が多いから、まずは食材としての性質にポイントを絞って……といった内容です。
つまり、その教材の性質、学習科目、学習目標のどこに当てはめるか、学生の習熟状況、といった条件を絞っていって、学生に理解させたいポイントを考えていくということです。
このステップでしっかりポイントを絞ることで、具体的な教え方を考える次のステップをより深く検討することができるでしょう。
3.この教材を用いて学生にどう指導するのかを考える
「どのように教えるか」という指導方法を考えるのがこのステップです。
専門学校では、複数の学生に集合教育の形態で教えることが多いでしょう。
すべての学生により効果的に伝えるために、「問題を解かせて考えさせるのか」「実習を通して体験させるのか」「先生が映像を使って説明するのか」など、具体的な指導方法を考えます。
先生の腕の見せどころといえるステップです。
教材研究の授業での活用方法
教材研究の次は、その教材を授業で活用するというステップに進みます。
苦労して研究した教材はどのように活用すればよいでしょうか。
めざすゴールを決める
研究した教材を実際に授業で使うにあたって、その日の授業でめざすゴールを決めておきましょう。
言い換えると「今日の目標」です。
事前に「今日の目標」を決めておくことで、授業のコンセプトがしっかりと定まります。
コンセプトが定まると、授業をする適切な手段を選んだりブレなく構成を組んだりすることが可能になるのです。
授業後には振り返りをする
授業が終わったら、めざすゴールにたどり着けたのかを振り返り、自身でチェックしましょう。
授業の改善には、以下のようなPDCAサイクルが有効です。
PDCAサイクルを回すことで、授業の改善をめざしましょう。
・Plan(めざすゴールを決める)
↓
・Do(授業を行う)
↓
・Check(めざすゴールにたどり着けたかを評価する)
↓
・Action(さらなる改善をめざして新たなゴールを決める)
このサイクルを回すことでよりよい授業になっていくでしょう。
一歩進んだ教材研究の方法
教材を自分だけで読み解いていくと、行き詰まったり困ったりすることがあります。
そんなときは、ここで紹介するような方法を試してみてはいかがでしょうか。
研修会や研究発表で学ぶ
専門学校の種類にもよりますが、進化が著しいIT系の分野などでは教育の方法や学生に教える指導内容が日々アップデートされています。
多くの研修会が開催されているので、参加してみてはいかがでしょうか。
また、自分ひとりで教材研究に向き合っていると、授業の改善方法が見出せなかったり、指導方法がマンネリ化してしまったりということも起こりえます。
そんなときは、先生同士で研究発表会を開催するのもよいでしょう。
研修会や研究発表会に参加すると、思いがけないアイデアや自己研鑽のヒントを得られます。
ある医療系専門学校では、先生たちが教材研究のために外部の大学医学部の解剖セミナーに参加しているそうです。
iPadの活用
教材研究をする際には、テキストや問題集など研究資料となる教材がたくさん必要です。
学校では問題ありませんが、自宅で行う場合にはたくさんの教材を持ち帰らなければならないので大変です。
そんなとき、必要な教材の写真をiPadで撮影してデータ化すれば、重い荷物を持ち帰らずに教材研究ができます。
Appleペンシルで直接書き込むこともできますし、色分けも簡単です。
iPadを活用することでリモートワークが必要な状況下でも教材研究がスムーズにできるでしょう。
このように、便利なツールを利用すれば、場所を選ばず効率的に教材研究が可能となります。
教材研究のポイント:自分の解を持つこと
教え方、学ばせ方の正解は1つではありません。
教える人の数だけ教え方があり、学ぶ人の数だけ学び方があるものです。
人と同じではなく「自分だけの解」、自分なりの教え方や学ばせ方を持つことを意識するとよいでしょう。
ベテランの先生の教え方を新人の先生が真似してもうまくいかないことがあるのは、その人の経験や個性に合った「解」があるからです。
教材研究をするときには、指導書や通説だけで満足せず、自分なりの言葉や解釈なども大切にするよう心がけましょう。
まとめ
専門学校の授業は実務に直結している場合が多く、学生の就職を左右する可能性があります。
したがって、授業の質や効率性を高めるための教材研究は重要です。
学生が目標を達成できる未来のために、教材について深く考え、指導法を工夫して、万全の体制で授業に臨みましょう。
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