
コミュニケーションツールとして、今や生活に欠かせない存在となったSNS。多くの学生が日常的に利用しており、先生方にとっても身近な存在ではないでしょうか。
一方で、その利便性を悪用した犯罪も少なくありません。まだ高校を卒業したばかりで社会経験が少なく、判断力が十分でないことも多い20歳前後の学生たちが、SNSを通じて「闇バイト」や、「トクリュウ」と呼ばれる新型の犯罪グループに巻き込まれる事例も増えています。
危険なトラブルに巻き込まれないよう、周囲の大人が注意喚起を行い、見守る必要があります。そのために、まずは2026年時点の最新事例をもとに、どんな危険があるかを知っておきましょう。
この記事では、特に学生が注意したい項目と、学校側でできる対策について解説します。
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目次
学生のSNSトラブルの現状|2026年の最新統計
こども家庭庁が実施した調査によると、高校生のインターネット利用率は99.3%にのぼります。また、インターネットを利用している青少年の77.4%が、メールやSNSなどのコミュニケーション目的で利用していると回答しています。こうした状況からも、学生にとってSNSは、日常生活に欠かせないコミュニケーションツールとなっていることがわかります。
出典:こども家庭庁「令和7年度青少年のインターネット利用環境実態調査(速報)」
SNSの利用が広がる一方で、そこから生じるトラブルも増加傾向にあります。文部科学省の調査では、パソコンや携帯電話を使った誹謗中傷など、いわゆる「SNSいじめ」の認知件数が年々増えていることが明らかになっています。
| 年度 | SNSいじめの認知件数 |
|---|---|
| 令和4年度 | 23,920件 |
| 令和5年度 | 24,678件 |
| 令和6年度 | 27,365件 |
3年連続で増加していることから、SNSでのトラブルは決して他人事ではないとわかります。専門学校の教職員にとっても、学生がどのようなトラブルに巻き込まれやすいのか、具体的に把握しておく必要があります。
よくあるインターネットトラブル事例(2026年版)
SNSにおけるトラブルとして思いあたるのは、悪ふざけの不適切な投稿や悪質なチケットの転売、特殊詐欺への加担やリベンジポルノ、SNSの誘い出しによる未成年者誘拐や性犯罪など、例をあげればきりがありません。
SNSを含めたインターネットに関わるトラブルを特徴ごとにわかりやすくまとめたのが、総務省の「インターネットトラブル事例集」です。
インターネットトラブル事例集の5分類
総務省のインターネットトラブル事例集は、コミュニケーション編、セルフコントロール編、法律&契約編、個人情報&セキュリティ・プライバシー編、情報発信編の5分類にわかれ、主要な事例が21件掲載されています。SNSでの投稿トラブルから、フィッシング詐欺、不正アクセスまで、学生の身近に潜む危険が幅広く整理されています。
なかでも学生にとって身近なリスクは、SNSを通じた不用意な投稿による炎上や個人情報の流出、そしてアルバイト・副業を装った勧誘です。とくに近年は、こうした勧誘が学生を巻き込む「闇バイト」として深刻化しており、注意が必要です。
高校生までとは違い、大学生や専門学校生になると一人暮らしをすることも多く、生活環境が一変します。お金についても、SNSやコミュニティサイトなどでおいしいアルバイトの話を持ちかけられれば高額な報酬に目がくらみ、安易な気持ちで応募してしまうケースは少なくありません。犯罪に加担したとなれば、その後の人生に大きな影響を及ぼします。
素性を明かさず情報発信ができるというSNSの特徴も、トラブルを引き起こす原因になっています。不適切な投稿や誹謗中傷による損害賠償請求、投稿から個人が特定される被害なども、学生にとって身近なトラブルの一例です。
実際に発生した被害事例
実際にSNSを使った被害が多く発生しています。ここでは具体的な4つの事例を解説します。
- 危険な小遣い稼ぎによる被害
- 人格権を侵害する投稿による被害
- 信頼していた相手から受ける被害
- 個人情報の流出による被害
それぞれ、詳しくみてみましょう。
危険な小遣い稼ぎによる被害
SNSを通して学生が犯罪に巻き込まれる代表的なケースが、特殊詐欺などの「受け子」「出し子」として関与させられる、いわゆる「闇バイト」です。「#高額バイト」「#裏バイト」といったハッシュタグや、「荷物を受け取るだけの簡単な仕事」「単発で高収入」といった甘い言葉には、危険が潜んでいます。
一度でも関与してしまうと、その後もそのことを脅しの材料に使われ、犯罪から抜け出せなくなる恐れがあります。闇バイトの詳しい実態や学校側の対応については、この後の章で詳しく解説します。
人格権を侵害する投稿による被害
悪ふざけで公序良俗に反する写真や動画を投稿したり、アルバイト先の信用を失墜させるような投稿をしたりする「バカッター」「バイトテロ」がたびたび話題になります。
病院で実習中の医療系学生が著名人のカルテについてSNSへ投稿し炎上したこともありました。このような場合、学生自身に加えて学校の信用にも傷が付きます。「まさか」の事態が起きる前に、学校からも十分な注意喚起と指導が必要です。
ほんの軽い気持ちで投稿したとしても、インターネット上に出回ってしまった情報は、「デジタルタトゥー」と呼ばれ、半永久的に残ります。自分のSNS上からは削除できても、スクリーンショットを撮って拡散されてしまえば、自分ではどうすることもできません。
投稿する前に「不適切な内容ではないか」「個人情報が分かるヒントがないか」「投稿によって誰かを傷つけないか」などを考えることを習慣づけさせましょう。
投稿内容を書いてから、少し時間をあけてチェックし、問題がなければ投稿するというやり方も効果的です。自分だけでなく、友達などの情報も同様です。友達だけに向けた投稿のつもりでも、ひとたびインターネット上に発信した情報は完全に削除することが難しいということ、自分の個人情報を狙う人などいないはずという認識が危険であることをしっかりと伝えましょう。
信頼していた相手から受ける被害
相手の顔や人となりを知らずともコミュニケーションを取れるのがSNSのメリットですが、素性が分からない相手を信頼してしまい、犯罪に巻き込まれるということもあります。
例えば、SNSで仲良くなった人に写真や個人情報を送ったら、態度が急変して「秘密をインターネット上に拡散する」と脅迫してくる行為などです。友達には話せない悩みを聞いてくれた人を信頼し、実際に会いに行って犯罪に巻き込まれてしまったという事件もありました。
元交際相手などが脅しや嫌がらせのために性的な画像を公開する「リベンジポルノ」も深刻な問題です。
共通の趣味や関心にもとづいて距離や所属の制約なく様々な人とコミュニケーションを取れるのはSNSの大きな魅力です。一方で、SNS上では弱みになるような秘密を話さないこと、好きな相手からの頼みでも性的な写真などの提供は拒否すること、実際に会う場合には二人きりにならずいざというとき助けを求められるような場所にすることなどを心がけるよう伝えましょう 。
個人情報の流出による被害
SNSへの投稿によって、知らぬ間に個人情報を公開しているかもしれないという認識も必要です。SNSの投稿内容によっては、生活範囲や行動スタイルが特定されてしまうこともあります。
たとえば、しばらく旅行をしているとわかれば自宅が空き巣に狙われることもあるでしょう。行動パターンを見抜かれ、後をつけられてストーカー被害に遭う危険もあります。
狙いをつけた相手の前で「思わずSNSに書きたくなってしまうようなできごと」をあえて起こし、のちにそのできごとを検索してアカウントを特定する手口もあります。自宅や私服の一部からも、様々な個人情報が特定されるケースも少なくありません。プライベートがわかる写真の公開は、仲の良い友人や家族だけに限定するなど、自分の個人情報を守る意識が必要となるでしょう。
関連記事: 学生が自撮りをSNSに投稿するのはなぜ?心理やリスクを解説
学生を狙う「闇バイト」「トクリュウ」|SNSを介した新型犯罪
前の章で触れた「闇バイト」の背景には、匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)と呼ばれる新しいタイプの犯罪組織があります。SNSを通じた勧誘の実態と、学生が知っておくべきポイントを整理します。
トクリュウ(匿名・流動型犯罪グループ)の概要と勧誘の手口
警視庁は、トクリュウについて「先輩、後輩、友人、知人といった人間関係に基づく緩やかなつながりで集団を構成」し、「SNS上の闇バイト募集等で結びついたメンバー同士が役割を細分化させ、その都度、メンバーを入れ替えながら」特殊詐欺をはじめとする犯罪を敢行しているグループと説明しています。組織の実態が見えにくく、メンバーが次々と入れ替わる匿名性・流動性が特徴です。
友人・知人からの誘いという形で接触してくることが多いため、学生は「怪しい勧誘」だと気づきにくいのが実情です。SNSでの気軽なやりとりから、いつの間にか犯罪の役割の一部を担わされてしまうケースが後を絶ちません。
2025年特殊詐欺受け子経緯統計(知人紹介+SNS応募)
警察庁が令和8年(2026年)5月に公表したデータによると、令和7年(2025年)中に検挙された特殊詐欺の「受け子」等2,228人のうち、勧誘の経路としてもっとも多かったのはSNSからの応募で845人(37.9%)でした。次いで知人等からの紹介が827人(37.1%)、経路不明が416人(18.7%)と続きます。
少年(20歳未満)の検挙人員は468人で、総検挙人員に占める割合は20.0%となっています。このうち受け子としての検挙は353人にのぼり、少年の検挙人員の75.4%を占めました。受け子全体の検挙人員1,379人のうち少年が占める割合は25.6%、つまり受け子の4人に1人が少年という計算になります。
出典:警察庁「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値版)」
文部科学省・警察庁による「闇バイトで人生を棒に振らないために知っておくべき5つのこと」
文部科学省は警察庁・こども家庭庁と連携し、学生に向けて次の5つを伝えるよう呼びかけています。
- 闇バイトは必ず捕まる
- 先輩、友達からの誘いでも応じてはいけない
- 銀行口座やスマホを売ってはいけない
- 外国に渡航すれば、二度と戻れなくなるかもしれない
- 警察が必ずあなたを守るのですぐに警察に相談してほしい
出典:文部科学省「闇バイトで人生を棒に振らないために知っておくべき5つのこと」
相談窓口として、警察相談専用電話「#9110」も紹介されています。学校としても、この番号を学生にあらかじめ周知しておくことが大切です。
関連記事: 学生を狙う闇バイトとは?2026年の最新手口・見分け方・学校側の対応を解説
学校サイドでできる対策|2026年版
学生がSNSのトラブルに巻き込まれないために、学校としてどんなことができるでしょうか。学生一人ひとりの行動を把握することには限界があります。そこで学校側ができる対策を5つ紹介します。
- SNSを使う際のリスクや注意点を指導する
- 専門家を招いて講習を開く
- トラブルが発生した際の相談窓口を設置する
- 授業カリキュラムに組み込む
- 闇バイトの勧誘を受けた場合の対応フローを整えておく
それぞれ詳しく解説します。
SNSを使う際のリスクや注意点を指導する
日頃からSNSを使う際の注意点や、リスクを学生に伝えることが大切です。使い方によっては友人や家族もトラブルに見舞われます。犯罪に巻き込まれたり、責任を問われたりするリスクを知れば、学生の意識も変わるでしょう。
注意点やリスクをまとめた資料を配布する、またはクラス全員が集まる時間に先生が直接指導するのも有効です。学校のWebサイトがあれば、SNSとの付き合い方やリスクをまとめた資料を公開するのも一つの方法です。
専門家を招いて講習を開く
SNSトラブルやインターネット犯罪については、専門家ならではの知見や実例を交えた講習が、学生の理解を深めるきっかけになります。弁護士や警察の少年相談担当者、スクールカウンセラーなど、専門家を招いて講習を開くのも一つの方法です。SNSやインターネット犯罪に詳しい専門家の話を聞くことで、学生の危機意識を高めることが期待できます 。
危険性が高いと理解できれば、投稿内容に注意しようと感じてもらえるでしょう。
トラブルが発生した際の相談窓口を設置する
どんなに気を付けていても、トラブルのリスクはゼロにできません。何気ない一言で炎上したり、予期せぬサイトに自身が投稿した写真が使われたりすることもあります。SNSが絡んだトラブルは、学校内だけでは対処が難しいこともあります。
インターネット犯罪に巻き込まれたときの相談窓口を設置する、警察や専門機関と連携するなど、トラブルが発生した際の体制を整えておく必要があります。まだ学校内で対策できていない場合は、なるべく早めに対応しましょう。
- 連絡先警察相談専用電話:#9110
- 都道府県警察の少年相談窓口:お住まいの地域の窓口一覧(警察庁)
学生に周知する際は、全国共通の「#9110」に加えて、都道府県警察が個別に設置している少年相談窓口もあわせて案内しておくと安心です。
授業カリキュラムに組み込む
SNSに関する授業をカリキュラムに取り入れることも、有効な取り組みの一つです。今やSNSリテラシー教育は、学生をトラブルから守るために欠かせないものとなっています。
『SNS・ネットで違法行為をしないためのガイドブック』では、マンガ形式でSNS・ネット上での法律違反の例を学べます。詳しくは、以下よりご覧ください。

闇バイトの勧誘を受けた場合の対応フローを整えておく
もし学生から「闇バイトの勧誘を受けた」「すでに応募・関与してしまった」という相談があった場合は、迅速な対応が欠かせません。学生を頭ごなしに責めるのではなく、まずは落ち着いて事実関係を聞き取ることから始めましょう。
そのうえで、学校として速やかに警察相談専用電話「#9110」や最寄りの警察署へ相談することが重要です。「今からでも相談すれば警察が守ってくれる」という前提を学生に伝え、一人で抱え込ませないようにしましょう。
まとめ
SNSなどインターネットを介したコミュニケーションが増えるにつれ、今までにはなかった新たなトラブルも発生しています。なかでも「闇バイト」「トクリュウ」といった新型犯罪に学生が巻き込まれる被害は、2026年現在も深刻な問題となっています。
学生のSNS利用に学校が介入することは難しく、トラブルを完全に防ぐことはできません。しかし、危険性や適切な利用方法について情報発信をすることで防げるトラブルもあります。専門家の助けや警察相談窓口の周知など、何かあったときにも対応できる体制づくりも重要です。学校としてできることを行い、SNSによるトラブルの少ない環境を整えていきましょう。
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