就職活動で使われる「玉手箱」と「SPI」は、多くの企業が導入している適性検査です。
この2つの検査の違いや、異なる対策が必要なのかなどを、明確に答えられる先生は少ないのではないでしょうか。
どちらも学生の就職活動を左右する要素となる大切な検査です。
間違った対策で結果を残念なものにしたくはないですよね。
本記事では、両検査の特徴と相違点を説明します。
また、同じ検査でも受検形式が違えば対策が変わることもあります。
まず先生ご自身がそれぞれの対策を把握したうえで、学生が適切な事前準備をして本番を迎えられるよう、指導してください。
目次
適性検査「玉手箱」と「SPI」は大きく異なる
玉手箱とSPIは似て非なるもので、対策も異なります。
玉手箱 | SPI | |
---|---|---|
受検形式 | 2種類(テストセンター型・自宅受検型) | 4種類(テストセンター・WEBテスティング・ペーパーテスティング・インハウスCBT) |
電卓 | Webテストでは使用可 | WEBテスティング、インハウスCBTでは使用可 |
特徴 | 短時間に大量かつ正確な解答を求められる | パターン把握や暗記をしておくと得点できる問題が多い |
玉手箱の特徴
まずは、玉手箱について説明します。
提供会社、受検形式、検査の内容や特徴について見ていきましょう。
玉手箱は日本SHL社の適性検査の一種
玉手箱は日本SHL社が提供する適性検査で、SPIに次いで多くの企業が導入しています。
「知的能力」と「性格適性」を測ることができる就活生向けのWebテストです。
時間制限が厳しく、短時間に大量かつ正確な判断を求められます。
自宅受検型の検査ではトップシェアです。
玉手箱の受検形式は2種類
同じ玉手箱でも受検形式によりルールが異なるので、事前の確認が必要です。
それぞれに適した対策をするよう学生を指導しましょう。
テストセンター型 | 自宅受検型 | |
---|---|---|
場所と手段 | 専用受検会場(300ヶ所以上)のPC | 自宅や学校などのPC |
電卓 | 使用不可 | 使用可能 |
他 | 性格検査は、あらかじめWeb上で行う | – |
玉手箱の出題内容
玉手箱の出題内容は、知的能力を測る能力検査と、性格適性を測る性格検査で構成されています。
それぞれについて見ていきましょう。
能力検査
言語分野である「言語」「英語」、非言語分野である「数学(計数)」の3科目の能力を測る検査です。
さらにその中に2~3種類の問題形式が存在します。
●言語分野:文章を読み、選択肢から答えを選ぶ問題
◎ 言語(3形式)
【論理的読解】文章に関する設問文の正誤を判断する
【趣旨判定】 筆者が一番訴えたいことかどうかを判断する
【趣旨把握】 筆者の考えに最も近いものを選択する
◎ 英語(2形式)
【長文読解】 文章に関する内容について解答する
【論理的読解】文章に関する設問文の正誤を判断する
●非言語分野:数学的問題
◎ 計数(3形式)
【図表の読み取り】グラフや表から法則を見つけて数値を計算する
【四則逆算】 方程式の空欄を計算して解く
【表の空欄の推測】表の空欄を推測する
※ 英語が含まれるかどうかは企業により異なります。
※ 「言語」「英語」「計数」各科目から1形式ずつ出題されます。たとえば、「計数」の形式が四則逆算だった場合、図表の読み取りや表の空欄の推測については出題されません。
SPIと異なり、間違いの割合は測定していないので、時間的に厳しい場合でも必ず解答するよう学生を指導しましょう。
性格検査
性格と意欲に関する検査です。
●「性格」に関する測定
思考の特性
行動の特性 などを問う設問
●「意欲」に関する測定
ものごととの向き合い方
ストレス耐性
モチベーション などを問う設問
応募者の個性や人柄を明らかにすることで、その企業の社風や職種に適性があるかを測ります。
また、その後の面接はこの検査結果を参考にして行われると考えてよいでしょう。
企業のリクエストによって出題形式が変わる
玉手箱の問題形式は、企業のリクエストによって決まります。
自社に合った出題形式を、企業が選択することができるようになっているのです。
応募する企業の傾向を事前に調べ、適切な対策をして検査に臨むよう、学生を指導しましょう。
出題数に対して制限時間が短い
玉手箱は、出題数に対して所要時間がかなり短いことが特徴です。
たとえば計数の四則逆算は50問で制限時間が9分。
1問あたり約10秒のペースになります。
ただ、問題パターンが決まっているので、あらかじめ十分な練習をしておくことで、得点アップをめざせるでしょう。
SPIの特徴
次に、SPIについて説明します。
同じく提供会社、受検形式、検査の内容や特徴について見ていきましょう。
SPIはリクルート社が提供する適性検査
SPIはリクルート社が提供する適性検査で、Synthetic Personality Inventory(総合適性検査)の略称です。
開発から40年以上の実績を活かし、受検者の入社後の評価を追跡調査して、検査精度を検証しています。
このために多くの有名企業から、信頼性の高い検査として認識されているのでしょう。
数ある適性検査の中でもシェアNo.1を誇ります。
SPIの受検形式は4種類
受検形式により対策が異なるので、それぞれの形式に適した対策をするよう学生を指導しましょう。
テストセンター | WEBテスティング | ペーパーテスティング | インハウスCBT | |
---|---|---|---|---|
場所 | リアル会場(専用会場) オンライン会場(自宅などから監督者のPCと接続して行う) ※オンライン会場は2022年10月より新設 | 自宅や学校など | 応募先企業が用意した会場 | 応募先企業 |
手段 | PC | PC | マークシート・記述式 | 内容や特徴は、WEBテスティングとほぼ同じ(場所のみ異なる) |
電卓 | 使用不可 | 使用可 | 使用不可 | |
時間 | 問題ごとに制限時間あり | 問題ごとに制限時間あり | 問題ごとに制限時間なし | |
問題 | 正答率に応じて難易度が上がる | 選択式よりも入力式の問題が多い | 受検者が全員同じ問題を解く | |
備考 | 結果を複数の応募先企業に使い回せる | – | – | 企業が、検査と面接を1日で終わらせたい場合に使うことが多い |
SPIの出題内容
SPIの出題内容は、玉手箱と同様に知的能力を測る能力検査と、性格適性を測る性格検査で構成されています。
それぞれについて見ていきましょう。
能力検査
言語分野である「国語的問題」と非言語分野である「数学的問題」の能力を測る検査です。
加えて、企業によってはオプション検査として「英語」と「構造的把握能力検査」があります。
●言語分野:国語的問題
【長文読解】 長文をすばやく読み解き、設問に解答する
【語句の理解】 2語の関係、また語句の意味や使い方などを解答する
●非言語分野:数学的問題
【推論】【表の読み取り】【集合】など9つの分野が主に出題される
中高レベルの内容だが、出題範囲が広く1問にあてられる時間が短い
<オプション検査>
●英語
【長文読解】 長文を読み適した解答を選ぶ
【語彙力】 選択肢の中から正しい単語を選ぶ
●構造的把握力検査
【言語】 指定された題材のものを仕分ける
【非言語】 計算の構造を把握し仕分ける
既知の情報を、自分の経験や知識を踏まえて整理し、直面している問題や将来の課題に応用する能力を測ります。
言語分野・非言語分野が知識を問うものであるなら、これは知恵を問うものであるといえます。
性格検査
日頃の行動や考え方を問う検査内容です。
約300問出題され、性格の特徴、また職務や組織への適応性を測ります。
性格特徴・職務適応性・組織適応性に関する検査です。
●「性格特徴」に関する測定
主体性、強調性などを問う設問
●「職務適応性」に関する測定
どのような仕事が向いているかを判断するための設問
●「組織適応性」に関する測定
組織(社風)との相性を測るための設問
玉手箱の性格検査と同様に面接の際に参考にします。
また、採用後の配属先決定にも利用されます。
WEBテスティングでは入力式の出題形式が多い
WEBテスティングでは、選択式の問題だけではなく、文字入力式の問題も出題されます。
10文字程度での解答なので、それほど負担にはなりませんが「はっきりわからないから、よさそうなものを選んでおこう」という考えは通用しません。
事前に入力形式の問題にも慣れておくよう、学生を指導しましょう。
PCで受検する場合は1問ごとに時間制限がある
テストセンターやWEBテスティングなど、SPIをPCで受ける場合は、1問ごとに制限時間が設定されています。
一定時間が過ぎると画面が次の問題に切り替わってしまい、前の画面には戻れなくなります。
したがって、未入力は誤答扱いとなってしまうのです。
正確さとともに、問題を迅速に解いていく力が問われます。
玉手箱とSPI|取り組む優先順位と対策
ここまで玉手箱とSPIの特徴を、それぞれ見てきました。
ここからは、2つの適性検査の対策を中心にお伝えします。
SPIを優先して対策しよう
適性検査の事前対策は、まずSPIから取り組むのが王道です。
・理由:SPIのほうが導入企業が多いため
SPIはシェアNo.1を誇る適性検査です。
2021年実績で、約14,400社がSPIを導入しています。
特に大企業はSPIを用いているので、まずはSPIに慣れておきましょう。
玉手箱とSPIの対策の違いとは
玉手箱とSPIの対策はどう違うのか、気になるところですよね。
両検査は出題形式が異なるので、それぞれの問題集や専用アプリで慣れておく必要があります。
また、タイマーを使った解答速度を上げるトレーニングも有効です。
1冊の問題集を繰り返し解くことで、問題形式に慣れ、落ち着いて本番に臨めるでしょう。
玉手箱
言語分野は長文読解中心なので、短期間では点数が上がりにくいものです。
問題集を解いたら、必ず誤答部分の解説を精読しましょう。
そこに、正解にたどりつくためのヒントが詰まっているからです。
暗記するものはありません。
ひたすら、スピード慣れすることが大切です。
問題のパターンに慣れてくると、解答速度も上がってくるでしょう。
SPI
公式やパターンを覚えることが、鍵となります。
毎年同じパターンの問題が繰り返し出題されるので、過去問などでSPIのパターンに慣れておきましょう。
玉手箱とSPI|応募先企業はどちらの適性検査を導入している?
応募先企業がどちらの適性検査を実施するのか、事前に見極める方法を3つ紹介します。
判断方法がわかれば、心構えをして本番に臨むことができるでしょう。
過去の導入事例から見極める
就活情報サイトなどの口コミを参考にしましょう。
受検者の体験談から、適性検査の種類はおおよそ推測が可能です。
送られてくるURLで見極める
Webテストを受ける場合、企業から前もってURLが送られてきます。
そのURLからも、どちらの検査かを知ることができます。
玉手箱の場合
玉手箱の場合は、大きく3パターンのURLがあります。
以下の文字列が含まれていたら玉手箱だと考えてよいでしょう。
- e-exams.jp/
- e-exams2.jp/
- e-exams4.jp/
SPIの場合
SPIの場合は1種類です。
以下の文字列が含まれていたらSPIと考えてよいでしょう。
- arorua.net/
募集サイト・企業の系列から見極める
玉手箱を提供している日本SHL社は、マイナビの関連会社です。
もし、受ける企業がマイナビのみで募集をかけている場合、その企業は玉手箱を導入している確率が高くなります。
一方SPIはリクルート社が提供している適性検査です。
リクナビのみで募集をかけている場合や、リクルート系列の企業であれば、ほぼSPIが使われているでしょう。
こういった募集サイトや企業の系列も、適性検査の種類を推測する手がかりとなります。
導入企業例
玉手箱を導入しているか、SPIを導入しているかは過去の実績からも知ることができます。
それぞれの検査を導入している企業を見てみましょう。
ただし、これらは2021年度の情報となります。
変更になっている場合もあるため、実際に対策する前に必ず最新の情報を確認してください。
玉手箱の導入企業一覧
- 伊藤忠商事
- 三井物産
- 住友商事
- みずほフィナンシャルグループ
- りそなグループ
- 三菱UFJ信託銀行
- 野村證券
- DeNA
- KDDI
- 富士通 他
SPIの導入企業一覧
- 三菱総合研究所(MRI)
- 電通
- 博報堂DYグループ
- フジテレビソニー・ミュージックエンタテイメント
- NHK(日本放送協会)
- キユーピー
- 日清フーズ
- 明治
- LINE
- ソフトバンク 他
まとめ
同じ適性検査でも、玉手箱とSPIでは出題形式や問題の性質が異なることを、おわかりいただけたでしょうか。
学生には、両検査の違いとそれぞれの対策を、事前によく説明して理解してもらいましょう。
また、対策を進めている途中においても、それが適切かどうか定期的に確認することが大切です。
学生たちが最善の進路へ進んでいけるよう、指導してあげてください。
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