結婚式は、百人いれば百様の形があります。人それぞれ、望むスタイルやゲストへ伝えたい思い、おもてなしの方法などは異なります。このような新郎新婦の希望をくみとって、形あるものへとプロデュースするのが、ウエディングプランナーです。
いわば、幸せを形にする仕事。そして、本番は一度きり。
それは、とてもやりがいのある仕事であると同時に、大きな責任を伴う仕事でもあります。
この記事では、そんなウエディングプランナーの仕事内容についてご紹介します。さらに、プランナーに求められる資質やスキルについても解説していきます。
※本記事の内容は書籍「ブライダルプランナーテキスト」(ウイネット)の一部を再編集したものです。
目次
プランナーが心に留めておきたい「結婚式」とは?
1.人生最大の通過儀礼
新郎新婦にとって結婚式とは、人生最大の通過儀礼といっても過言ではありません。ふたりの新たな家庭の誕生と共に、互いの家族や親族、友人が交わる貴重な機会であり、ふたりが共に歩む人生の起点となるもの。ウエディングプランナーは、新郎新婦の気持ちに寄り添い、意思を汲み取って、最高の結婚式という「完成形」にしなくてはなりません。
2.高額商品 ~コンプレイン発生の可能性~
結婚式の平均総額は約327.1万円(「ゼクシィ 結婚トレンド調査2023調べ」)と高額な上、多くの新郎新婦にとっては初体験となる、自分たちが主役となる社会的イベントなので、期待値が非常に高いものです。新郎新婦はもちろん、両家の親御様、親族、招待客など、全方位に気を配り、顧客満足を第一に考えなければ、コンプレイン(不平)と呼ばれる深刻なクレームが生じる可能性があるのです。
3.無形サービス ~基準は個人の感情~
近年の結婚式は十人十色、新郎新婦次第で内容が大きく異なります。結婚式のプランニングとは、新郎新婦の「思い」という無形のものを、「結婚式」という有形のものに作り上げる極めて創造性の高い仕事だといえます。はっきりした正解がないぶん、難易度は高く、ときには新郎新婦が言葉に出さない感情までも汲み取る必要があるのです。普段から意識して新郎新婦と対話し、ふたりの趣味嗜好や考え方をインプットしなくては、成功させることはできません。
プランナーが目指すこと
1.顧客満足度120%を目指すこと
ウエディングプランナーは、「顧客満足度120%」を目指さなければいけません。結婚式は新郎新婦の思いが込められた夢のある華やかな商品であり、返品・交換のできないもの。それだけに満足度が1%でも欠ければ、全てがゼロになりかねないのです。
新郎新婦のために尽力し、シェフやパティシエ、フラワーコーディネーター、ドレスサロンスタッフ、ヘアメイクなど、各セクションのスタッフと積極的に連携することが大切です。
2.感動を与えるウエディングを実現すること
感動を与えるウエディングとは、新郎新婦だけが満足するものではなく、招いたゲストがその場を心から楽しみ、新郎新婦への祝福の気持ちに満ちて帰途につく結婚式のこと。そのためには、ふたりの考えを聞いた上で、ゲストの視点も交えたアドバイスをしたり、さりげなく提案を投げかけたりと、プランナー独自の提案力を示すことが必要になります。
プランナーの主な仕事と役割
1.新規接客(ヒアリング&営業)
まず、結婚式場の体制には以下の2通りがあります。
- 新規営業、受注から結婚式実施までのコーディネートを一人のプランナーがすべて受け持つ体制(ゲストハウスなどで多い。一貫制、担当制などと呼ばれる)
- 新規営業及び受注までは新規営業担当者が行い、成約後のプランニングからをプランナーが行う体制(分担制などと呼ばれる)
勤務先の会場の体制に従って業務内容は変わることになりますが、いずれにせよ、プランナーはふたりの望む結婚式について丁寧に深くヒアリングしつつ、結婚式の価値を伝える役目であることに変わりありません。
新規のお客様の接客において大切なことは以下の2点です。
(1)ヒアリング
ヒアリングは最近のオリジナル結婚式において、非常に重要なスキルです。
・相手が好感をもち、リラックスして話せる雰囲気を作る。
・相手の話によく耳を傾け、趣味嗜好や希望をキャッチする。
・希望を聞くだけでなく、潜在的ニーズも探す。
(2)営業
ふたりのことを思いながら行う提案が、自然と売上にもつながるような営業力が求められます。
・上記の丁寧なヒアリングを踏まえ、結婚式の本質と価値を伝える。
・信頼関係を築いた上で、新郎新婦が納得する提案を行う。
・各セクションの代表の気持ちで提供できるサービスを売り込む。
2.打合せ(カウンセリング&コーディネート)
打合せにおけるカウンセリングとは、新郎新婦の話に耳を傾け、理解・共感した上で的確なアドバイスや提案をすることをいいます。カウンセリングの重要性が高まっているのは、時代の流れとともに、オリジナル性のあるオーダーメイド化された結婚式が主流となっているためです。
カウンセリングによって、ふたりが満足するコーディネートを提案することができるのです。
・カウンセリングとはふたりの話を聞き、共感し、アドバイスや提案を行うこと
・カウンセリングを踏まえ、希望に沿ったコーディネートを提案すること
上記2点により新郎新婦との信頼関係を築くことができ、結婚式までの長い期間を共に協力し合い、スムーズにプランの提案を行うことができるようになります。
【打ち合わせのスケジュール例】8カ月前
●成約後の初打合せ
・新郎新婦の希望や好みをじっくりヒアリング →テーマ、コンセプトの決定
・ゲスト人数、会場の装飾イメージ、演出内容、衣裳などの方向性の検討
・婚約食事会や二次会の受注も可能かのヒアリング
・成約者向けのブライダルフェアの案内
【打ち合わせのスケジュール例】4~3カ月前
●2~3回目の打合せ
・挙式スタイルや会場のフラワーコーディネート、ペーパーアイテムなど、内容の具体的な検討
・招待客の顔ぶれや人数の具体的な検討
・式場側で招待状の制作が必要かの確認、手配、発送
・招待客数の目途がついたところでコース料理のランクアップなどの提案
・衣裳選びの進捗の確認
・新郎新婦の手作りアイテムやBGMなど、持ち込みするものの内容の確認
・引出物の提案(提携先の紹介)
【打ち合わせのスケジュール例】2〜1カ月前
●4~5回目の打合せ
・演出・プログラムの決定
・席次の正式決定
・ペーパーアイテムの手配
・ゲストの宿泊先手配などのお手伝い(提携先の紹介)
・手作りアイテムの制作状況など、新郎新婦に任せていることは随時確認
・衣裳小物選び、アイテム選びなどのお手伝い(提携先の紹介)
・ブライダルエステなどの提案(提携先の紹介)
・ヘアメイクリハーサルの提案
・中間見積書の提案
【打ち合わせのスケジュール例】3〜2週間前
●6回目の打合せ
・進行表の内容の確定
・BGMの決定
・招待客の最終確認(アレルギー、車イス、ベビーカー等)
・料理や装花、演出など、内容に変更がないかの最終確認
・謝辞や新婦の手紙の内容に関するお手伝い(新郎新婦から求められた場合)
・最終見積書の提出
3.結婚式当日(式の実施運営)
綿密な打合せを重ね、さまざまな提案・準備を行ってきた工程の総決算が結婚式当日です。ウエディングプランナーは会場の各セクションのスタッフと連携し、新郎新婦に寄り添って、プロジェクトを完遂させなければいけません。当日までのプロセスを共有し、ふたりと共に作り上げた一日は、プランナーにとっても晴れ舞台となります。総合プロデューサーとして、全体を見渡す余裕をもちましょう。
式当日は進行をスムーズにこなしつつ各セクションと連携し、新郎新婦のアテンド、ゲストへもてなしなどを同時並行で行わなくてはいけません。
【挙式当日のスケジュール例】
8:00 | 出勤・各セクションの最終チェック |
9:00 | 新郎新婦が来館・お支度 |
会場のフラワーコーディネートや装飾の総仕上げ | |
親御様が来館、挨拶 | |
新郎新婦のお支度が完了 | |
館内で記念撮影など | |
挙式リハーサル | |
ゲストの受付開始 | |
親族紹介 | |
11:30 | ●挙式(チャペル式の例) |
新郎入場 | |
新婦、父と入場 | |
宣誓・指輪の交換・ベールアップ・誓いのキス | |
退場 | |
アフターセレモニー (フラワーシャワー、ブーケトス、バルーンリリースなど) | |
12:30 | ●披露宴(例) |
新郎よりウエルカムスピーチ | |
来賓祝辞 | |
乾杯 | |
ケーキ入刀 | |
ファーストバイト | |
お色直し中座 | |
お色直し入場 | |
各テーブルへフォトラウンド | |
ゲストによる祝辞・余興 | |
新婦の手紙朗読 | |
親御様への記念品贈呈 | |
両家代表の謝辞 | |
新郎の謝辞 | |
15:00 | おひらき・ゲスト帰宅 |
会場撤収 | |
新郎新婦が帰宅 | |
17:00 | 退勤 |
プランナーに求められること
- ホスピタリティ精神
- 柔軟性
- 想像力と創造力
- 自己管理能力
- 一般常識、ビジネスマナー
プランナーは思いやりの心をもつことが大切です。時には新郎と新婦の間に入り、お互いなかなか言えない本音の部分を仲介したり、口に出していない希望も表情などから察したりと、きめ細やかな配慮が必要となります。新郎新婦のタイプに自分を合わせ、気配りが自然とできるホスピタリティが求められるのです。新郎新婦によってこだわりたいポイントや予算が違うため、プランニングについては、カップルに合わせて1組ずつカスタマイズする必要があります。ふたりとの打合せでは、相手の立場に立ちつつ、プロとして最良のものを提案しましょう。正解は一つではないため、行き詰まったり、打開策がないと思われたりするときでも、考え方や切り口を変えてプランニングを続けていく柔軟性も重要です。
プランナーという仕事のやりがいの一つに、想像力と創造力を発揮できることが挙げられます。まだ実現されていないふたりの結婚式を具体的に思い描き、プランニングし、提案を重ねる想像力は必須です。新郎新婦によっては、具体的な希望やプランをまったくもち合わせていない場合もあります。その場合でも丁寧にヒアリングを重ね、曖昧で形のない「思い」を結婚式という「完成形」に作り上げる創造力をもつよう努めましょう。
また、結婚式における総合プロデューサー的な立場となり、新郎新婦との事前打合せ、結婚式当日のアテンドなど、すべてにおいて代替がきかない職務内容であるため、自ら率先しての体調管理は必須です。繁忙期でもベストの体調を保てるよう、普段から体力作りを心掛けましょう。
老若男女、多種多様なお客様と接するため、自身の感情コントロールもきちんとできていることが望ましいです。結婚式は格式の高いセレモニーであり、年配のゲストも多いもの。かかわるスタッフのひとりとして、老若男女どのような方ともきちんと会話をし、その場にふさわしい態度をとることで、相手からの信頼を得ることができます。
日々、新聞や話題の本に目を通し、テレビやインターネットでニュースをチェックするなどし、ある程度の世情やトレンドを把握しておきましょう。
まとめ
ウエディングプランナーには、コミュニケーションスキルやビジネスマナーから始まり、接客営業のしかた、挙式・披露宴のプランニング、コーディネート、挙式当日の進行とさまざまな仕事があり、求められるスキルが非常に高いことが分かります。
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