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たくさんの資格・検定試験にチャレンジしてほしいけど……

2022.06.30 (最終更新:2022.10.17) 記事 教務情報

連載侑加先生のお悩み相談室

先生に特有のお悩みから、ワークライフバランス、キャリアデザインまで。「他の学校はどうなんだろう、他の先生はどう考えているんだろう……」と思ったら、学校の現場にも詳しい侑加先生に相談してみませんか?

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今回は、「学生の資格・検定試験受験をどのくらい強く促すべきか」というお悩みです。
分野にもよりますが、多くの専門学校にとって「資格・検定試験の取得」は重要なテーマだと思います。
学校としては、どんどんチャレンジしてほしいところですよね。
とはいえ、数多くの資格・検定を取得するとなると学生の負担は大きくなります。

学生の自主性に任せるか、力強くリードするか……侑加先生に聞いてみましょう!

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【今回のお悩み】井上先生(仮名)(女性・20代後半)

専門学校のオフィス・ビジネス科で30名弱のクラスの担任をしています。
当校では資格・検定試験の取得に力を入れていて、学生はこれからたくさんの資格・検定試験を受験します。
2年間で平均10個、多い学生は15個以上の資格・検定を取得しますので、検定が終わったらすぐに次の検定対策、また次の検定対策……と慌ただしい日々が続きます。
私自身もこの学校の卒業生ですが、学生時代は常に何かしらの検定対策をしていてあっという間の2年間でした。

毎年、資格・検定シーズンになると悩むのが、上位資格・上位級へのチャレンジについてです。
まずはスタンダードなレベルの資格・検定試験を受験するケースが多いわけですが、学生には知識を深め、より高度なスキルを身に付けてもらいたいので、上位級へも積極的にチャレンジしてほしいと思っています。
ただ、スケジュールのことや、受験料・教材費のこともありますので、学校・教員としてどのくらい積極的に上位級受験を促すべきかは難しいところだと感じています。
実際に学生から「せっかくの学生生活なのに試験ばかり」「コスパどうなの」等々の不満を聞くこともあります。
とはいえ、やはり意欲的にチャレンジして多くの資格・検定を取得した学生は就職活動でうまくいきやすいという実感もあり、ある程度は学校・教員が背中を押すべきとも思います。

学生の就職活動を有利にしてあげたいですし、高い目標を持ってチャレンジしてほしい、とはいえ学生の主体性を伸ばしたい、充実した学生生活を送ってほしい……等々、色々な気持ちのせめぎ合いがあります。
もし何かアドバイスがありましたらお願いします。

たくさんの資格・検定試験の内容や位置付けを再確認し、全員受験と個別受験の両立を

井上先生、担任指導お疲れ様です。
30名弱の学生を前に、1日授業を行い、非常勤講師の先生方とも連絡を取り合い、校務分掌をこなし、フォローの必要な学生や親御さんの対応をなさって、クタクタになる日も多いのではないかと想像します。
卒業生で教員として採用されるのは、優秀だったからに違いないのですが、自分達の時と同じで良いと決めつけない姿勢が素晴らしいですね。
学生の気持ちを汲んであげたい、「学生の就職活動を有利にしてあげたいですし、……充実した学生生活を送ってほしい」と考えていらっしゃるのですね。
先生のクラスの学生さんは、本当に幸せです!

オープンキャンパスや入学時オリエンテーションで、真実を伝え、信頼を得たいです

「2年間で平均10個、多い学生は15個以上の資格・検定を取得します」とのこと。
ビジネス系1年生の受験が始まるのは、6月からだと思います。
入学以降の成果が試される時期に入り、緊張感も高まっているでしょう。

分野を大別すると、パソコン関係、マナー・コミュニケーション関係、簿記、英語になるでしょうか。
オフィス・ビジネス学科では、進級認定資格卒業認定資格を定めていますか。
入学早々から卒業までの2年間の道筋を描き、「これだけは必須という、合格するまで繰り返し受験を促さなければならない検定」は何かを把握しておきたいですね。
1年の担任であっても、卒業までの2年間を意識したうえで1年目を考えると見通しやすいことも多々あると思います。

専門学校では、入学時から就職活動を意識するよう動機付けます。
「せっかくの学生生活なのに試験ばかり」という言動は、井上先生と信頼関係ができているために、つい甘えて愚痴をこぼしてしまったということではないでしょうか。
もし、高校生対象のオープンキャンパスで、検定受験の説明が不足しているようでしたら、やはり追加する必要があると思われます。学生も親御さんにも、納得の上で入学してきてほしいと思うからです。

オープンキャンパスで一番いけないのは、「専門学校生活が意外に楽なもので、就職は希望通りに叶います」と甘過ぎる予告をすることです。
参加してくれた高校生をもてなし、入学に繋げることばかりを重視し、現実を伝えないというのは不誠実ですよね。
元々、机に向かって勉強するのが得意でないと自覚する高校生もいます。
ですから、「希望の就職ができるように、多くの検定に受かるよう、全力で指導します。充実した学生生活を応援します」と約束したいのです。
先輩が進学していて、専門学校の評判を高校の先生からも聞いています。
専門学校の施設を見て、先生方と触れ合うことで、安心して2年間を過ごせるかを確認する機会にしたいと思っているはずです。

「コスパどうなの」という不満を解消したいですね

急激に物価が上昇しています。
学生も日用品や食費の値上がりを肌で感じているでしょう。
すると、春の入学時に一斉に検定受験料を徴収していても、検定料金やテキスト代を気にする学生が出てきます。
私自身、学生時代に自動車運転免許を取得した際、実技講習がうまくいかず、1回のテストでクリアできませんでした。
一緒に入学した友達は次々進んでいくので、情けない気持ちになったのを覚えています。
一番困ったのは、追加で購入するチケット代です。
アルバイトで賄っていたので、次は絶対に受かって、余分なチケットを購入しなくて済むようにと必死でした。

1回で合格すれば、コスパは最強です。
進級・卒業認定になっている検定は、不合格のままにしておけませんから、受かるまで受験させる必要がありますよね。コスパはどんどん悪くなります。

そこで、そうした検定試験前は、合否予測を徹底的に出し、学生に自覚を促し、苦手な分野を集めたプリントを作るなどの対策が必要です。
一人で頑張れないので、不合格予想が出ています。ですから、一緒に取り組むスタンスで、放課後や週末の課題を作成し、啓発し、得点の伸びがあれば、共に喜びたいです。
花丸を打ち、励ましの一言をペンで書いて、応援しましょう。

そして、1回で全員の合格を勝ち取りましょう。
進級・卒業認定検定以外にも、全員で受験する検定は多くあります。
「人生に無駄なことは無い」といいます。検定受験までに学ぶこと、特に3級レベルの知識は、分野を問わず、社会人にとっての一般教養に近いですから、学生にとっては有意義です。
しかし、不合格になれば、検定料金を払ったものの履歴書に書ける形にはならず、コスパは悪いということになります。
やはり受験する限りは必ず合格できる実力を備えられるよう、答案練習を繰り返したいと思います。

先生が専門学校へ18歳で入学されてから、現在まで約10年が経過しています。
「10年ひと昔」という言葉がありますが、今の時代は、どんどんスピードが速まっているように感じます。
そこで、せっかく今回のご相談をいただいたので、学校で定める進級・卒業認定試験が時代に合っているか、また全員受験を促す検定が適切かより良い時期に設定されているかを含め、検討してみることをお勧めします。
学校の履歴書枠には、たくさんの検定を記入できる欄がありますよね。
欄を埋めるために、3級レベルの検定をたくさん受験させるというのは、本意ではないように思います。
履歴書枠も再検討してみると良いかもしれません。

30名の学習歴を検証し、希望の仕事に見合う検定受験プラン作成で個別受験を応援

最近子どもに人気のおもちゃは「カスタマイズできるもの」だそうで、ランドセルも色柄の組み合わせを選べるものやオーダーメイドが売れているそうです。
小学校・中学校では、部活に参加が必須でない時代となりました。放課後は、各自が自由に過ごします。
一斉授業は学校で、塾では各自の進度に合わせた個別指導が流行のようです。
少子化の進む今、一人一人に合わせたマーケティングや教育が一般化し、満足度を上げているのですね。
当然、高校生は、そうした風潮に慣れています。

クラス一人一人の学習歴やポテンシャル、将来への希望を確かめることは、大変です。
30名には30通りの希望があります。
しかし、受験料を払い、一定の期間、対策授業でエネルギーをかけるのに相応しい検定を選ぶ必要があるでしょう。

* * *

パソコン関係の試験は、学生の力量に合っているでしょうか。
高校の「情報」の教科書が改訂されました。
商業高校出身者が多く取得している全国商業高等学校協会の検定内容も確認してみましょう。
全商の情報処理検定には、1・2・3級があります。
1年生全員で、Word3級・Excel3級・PowerPoint3級・ITパスポートを受験する必要はないかもしれません。
できる学生は、各2級を目指してはいかがでしょうか。
デジタル世代の学生の上達は早いので、MOS(マイクロソフトオフィススペシャリスト)合格を目指すのも良いですね。就職活動の際の評価が高まります。

日商簿記3級についても同様で、商業高校出身者はかなり鍛えられていて、全商2級合格者も多いでしょう。
すると、日商3級から始めた方が良いのか、日商2級からチャレンジさせた方が良いのか、本人の希望とモチベーションの高さ、どのくらいの時間を学習に割けるのかなど、相談をして決めた方が良さそうです。
いずれにしても、全員が日商3級から始めなくても良いと思います。
あまり勉強しなくても受かる検定に受験料を払うのは、コスパが悪いですよね。

マナーやコミュニケーション関係の検定は、いずれかは必ず受験した方が良いと思います。
コロナ禍に入り3年目で、マスク生活も長引く中、対面授業を行うようになっても、表情が乏しく、声の小さい学生が目立ちます。
これは、黙食を行い、飛沫感染を防ぐよう会話を控えてきたことが影響していると思われます。
アルバイト未経験で、親や先生以外の大人とコミュニケーションする機会を持たない学生もいます。

インターンシップに行った学生が、自分の体調が優れないことを担当者に伝えられず、悪化してしまったケースがありました。
また、別の学生は、Excel入力を依頼され、依頼者が1時間くらいでできると予想していた作業に半日以上掛かってしまい、催促されたそうです。
依頼されたときに「自分の力量では3時間以上かかるだろう」と見積もり、伝える必要がありました。
また、分からないままパソコンで検索などしていないで、担当者へ素直に質問すれば良かったのですが、その質問をするタイミングや言葉を見つけられず、遠慮してしまったのだそうです。
お昼休憩を挟むのでしたら、昼までの途中経過を報告して指示を得れば良かったのですが、その必要があることに気付きませんでした。
パソコンスキルを一通り習っても、やはり会話が適切にできないと双方が困ってしまいます。
マナー・コミュニケーション関係の検定は、就職活動の決め手になるとまではいえませんが、学生が社会で生きていく上で知っていた方が良い内容であり、核家族化が進んだ今、家庭で行ってきた「躾」をカバーする要素も含んでいます。
単なる敬語の学習や検定合格に留まらない、楽しい授業を展開したいですね。

実務技能検定協会の秘書検定サービス接遇検定ビジネス文書検定などを受験する学校が多いと思います。
秘書検定は、長らく女性中心に行われてきた感がありますが、昨今は問題文でもジェンダーフリーが意識され、「秘書A子」ではなく「秘書A」と表現されたり、問題に添えられるイラストでも女性上司と男性部下という組み合わせも見られたりするようになっています。
男子学生も抵抗感を持たないと思われるので、社会人になるための準備検定という捉え方で良いでしょう。
CBT検定も始まり、2・3級は毎日受験できることも魅力です。
秘書検定準1級は、筆記試験に合格したあと面接試験に臨むため、かなり筆記の学習が必要になります。
専門学校生で秘書検定準1級に合格した学生は、就職活動でスムーズに希望を叶えていきました。
地道な取り組みで成果を上げること、面接トレーニングで立ち居振る舞いが磨かれたことが大きかったです。

サービス接遇検定は、BtoCの現場で働きたい学生に向いています。
3級・2級と学習を重ねたら、サービス接遇検定の場合、準1級は筆記試験がありませんので、準1級ロールプレイの面接試験へ進むと良いです。
2級未受験、2級不合格でも、「準1級ロールプレイング合格」と履歴書に書けます。
企業側から見れば、あらゆる検定の内容を把握している訳ではないので、「準1級」の記載があれば、上位級という認識を持ってくれるでしょう。
かなりコスパが良いといえます。
もちろん、ロールプレイ合格後に、2級の筆記に合格して、準1級完全合格を目指すよう啓発したいです。

ビジネス文書検定は、正しい用字・用語の知識から、実際のビジネスシーンでよく使われる文書の作成能力まで、ビジネス文書に関する実務能力が幅広く問われる検定です。
どの程度、受験を促すかは、検討されると良いと思います。

BtoC向けには、日本商工会議所主催のリテールマーケティング(販売士)3級も良いですね。
普段の学生は消費者ですが、働く側になるということは、モノやサービスを提供する側になるわけです。
学習が進むと、日常生活の中で供給者側を観察する視点を持てるようになるので、社会で働くイメージが湧き、楽しいと思います。
CBT検定で、1・2・3級が毎日でも受験できるようになりました。

職業教育・キャリア教育財団主催のビジネス能力検定ジョブパス3級も、ビジネススキルや習慣が学びやすい検定で、専門学校で人気があります。
この検定は、3級に必要な知識がまとまっていますので、いきなり2級を受験するより、3級を押さえた方が良いです。
留学生増に対応して、『留学生向けふりがな付きテキスト(3級)』も発刊されていますので、参考にしてください。

* * *

全員受験は最低限に設定し、各自の希望に添うように、吟味してオリジナルプランを作成し、上位級を目指すよう啓発されてはいかがでしょうか。
先生は指導環境を整えるのが大変ですが、一人一人の満足度は格段に上がります。
多くの先生方と授業展開の工夫などを話し合える機会を持ちたいですね。
井上先生を応援しています!

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この記事を書いた人
侑加先生

侑加先生

一般企業を経て、専門学校に正教員として勤務。
現在は、企業・大学講師、小中学生の塾経営。
趣味は、お笑いと高校野球、旅行。一児の母。

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