連載大原先生の学生指導のすゝめ
動機づけ教育プログラム「実践行動学」を開発する「実践行動学研究所」大原専務理事の学生指導のすゝめ。 学習塾での指導歴25年の大原先生が、実例を用いて学生への接し方をお伝えするシリーズです。 テンポのよいユニークな文章は、一度読んだらハマること間違いなし。
「自己肯定感」とは、ありのままの自分を受け入れ、認めてあげる状態のことをいいます。「自己肯定感」は、自分自身の幸福感や周囲との人間関係にも影響をもたらすとされています。
ですが、日本人の若者は、この「自己肯定感」が他国に比べて低いという調査結果が出ているのです。
学生の「自己肯定感」を高めるためには、どんなことが必要なのでしょうか。
今回は、そんな自己肯定感を育むための「対話」について、実践行動学研究所 大原幸夫専務理事から寄稿していただきました。
目次
対話によって自己肯定感は高められるか?
人が幸福に生きるうえで、とても大切な「自己肯定感」。
それは、自分が自分であるという確かな感覚、自分は大切な存在だと思える感覚のこと。
この記事をお読みの方の中には、ひょっとしたらご自身の自己肯定感が低いと思われている方や、学生の自己肯定感をどのように高めてあげたらよいかに悩まれている方もいらっしゃるかもしれません。
そこで今回は、「対話によって自己肯定感は高められるか?」というテーマについてお話しようと思います。
また、自己肯定感の基盤になるものの一つに「自己受容」があります。
自己受容とは、その言葉のごとく「ありのままの自分を受け入れること」です。
「ありのままの自分」ですから、自分のいいところも悪いところも、好きなところも嫌いなところも、まるごと受け入れる、ということです。
言うのは簡単ですが、相当ハードルが高いですね。そんなの到底ムリと思われる方もいらっしゃるかもしれません。
ポイントは「しっかりとつくられた対話の場」
さて、「対話」によって「自己肯定感」や、その基盤となる「自己受容」は育つのでしょうか?
私の考えは、ズバリ「Yes」です!
なぜそう思うのかというと、自分自身にもそういう経験がありますし、コーチングやワークショップを行ってきて、そういった変化をたくさん目撃してきたからです。
もちろん簡単なことではありませんが、「しっかりとつくられた対話の場」に身を浸す体験は、確実に自己受容や自己肯定感を育みます。
(ここでいう対話というのは、当たり障りのない話をする「会話」や、意見をぶつけ合う「議論」とは異なります)
「しっかりとつくられた対話の場」とはどういう場かというと、互いの思いを尊重し合い、否定をせずに受け取り合う場のことです。
「受け入れてもらえた経験」が自己受容につながる
例えばAさんとBさんの意見がまったく違ったとき、「どっちが正しいか?」ということに決着をつけようとするのではなく、「AさんにはAさんの考えが、BさんにはBさんの考えがあること」を認め合う。
「なるほどそういう考えもあるんだね」と。
「明らかにその考え方はおかしいよね?」という発言があった場合はどうするか?
「私はその考え方に同意できないけど、あなたがそう思うことは否定しないよ」という態度を取ることが大事です。
- 自分と他者を区別して、対等に扱うこと
- 意見には賛成できなくても、相手がそう思ったことは受け入れて、寄り添うこと
そういう心がけで話しましょう。
対話というと大勢で話し合う場面を想像するかもしれませんが、1対1でも同じことです。
「思いを受け入れてもらえた」という体験を積み重ねることが、自己受容に繋がらないはずがありません。
他者に受け入れてもらえた経験が、自分で自分を受け入れられる感覚の確かな器になるのです。
だから、対話の場をつくる立場の人には、互いの思いを尊重し合える場にしてほしい。そういう場は、少しずつ、けど確かに、自己肯定感を育んでいきます。
※この記事は、実践行動学研究所のメールマガジン「しなやかな心と学ぶ力が育つメルマガ Colorful Times」198号を再編集したものです。
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大原 幸夫
一般社団法人実践行動学研究所 専務理事
学習塾に25年勤務。その後小~中学校向けのワークショップの開発、及びファシリテーターの育成に従事している。またコーチング研修等の講師・講演を行う専門家でもある。