連載少子化を生き抜く学校ブランディング
自校らしさとは?自校の魅力とは?よく分かっているはず……でも、本当に全員が同じように考えているでしょうか?外部へきちんと伝えられているでしょうか?競争の中でも選ばれる学校になるための学校ブランディングの基本メソッドを、ブランディングのプロがお伝えします。
前回は、学生や保護者に選ばれる学校ブランディングを行う意義についてお話ししました。
前回の記事:【1】5ステップで今すぐ取り組む学校ブランディング
今回からは、ブランディングを成功させるために必要な5つのステップそれぞれについて順に扱っていきたいと思います。
今日の記事はその一つ目、「チーム」についてお話しします。
目次
学校ブランディングが成功するかどうかは「ブランディング推進チーム」にかかっている
学校ブランディングで行う活動領域は、経営、日々の教育活動、広報活動、教職員研修など、多岐にわたります。
ここで学校ブランディングの進行方法について再確認します。
- 学校の強み・思想を発掘し、魅力的に再定義する(アイデンティティの再定義)
- 定義された「個性」を打ち出すような学校運営、教育活動、広報活動を計画し、個性を見える化する(事業・デザイン開発)
- 校内の教職員にブランディング活動への理解・共感を促し、日々の教育活動・広報活動などでベクトルの合った活動ができる組織を作っていく(校内浸透・教育)
- 自校に合った顧客(入学希望者、就職先企業など)を発掘するマーケティング活動を行う(市場開発)
- 顧客(入学希望者、就職先企業など)との信頼関係を築き、関係性を強化し、ファンとする(顧客獲得)
これらすべての活動において、企画・発案・ジャッジ・実行をしていく必要があります。
それを行なっていくのがブランディング推進チームです。
学校の思想・強みをまとめ上げ、学校運営計画や教育方針へ落とし込み、広報を行い、他と差別化された学校へと育て上げていく重要な役割を持ちます。
このブランディング推進チームの出来が、学校ブランディングの成否に大きく関わってきます。
どんなチームを構成すべきか
ブランディング推進チームの役割
ブランディング推進チームの主な役割は以下の通りです。
- ブランディング計画の立案
(理念構築・学校運営計画・デザイン計画・校内浸透計画・オペレーション変更・広報計画・ステークホルダーとのコミュニケーション など) - 上記複数計画の実行・管理
- 内外の広報・情報共有
ブランディング推進チームの役割は非常に重要で、学校運営の全般に関わります。
したがって、決定権を持つ人、またはそこに近い人の参加が必須です。
また、ブランディングは部門の垣根を超えたクロスオーバーな活動になることが多いため、各部門からメンバーを集めた横串のチーム構成が望ましいです。
チームの人数
チーム規模としては、3人以上、7・8人以下が理想です。
積極的に意見交換でき、アイディアを出し合えて、ベクトルが合いやすく事業スピードが上がる限度の人数が7・8人と言われています。
それ以上の人数になると、待ちの姿勢の人や、反対意見を持ちながらもディスカッションしないような中途半端な参加姿勢の人が増え、ベクトルが合いにくくなってチームの勢いが削がれます。
チームメンバーの役割
チームには、以下の役割を果たせるメンバーが必要です。
リーダー型:
チームに方向性を示し、決裁権を持つ人。最終的な責任を持つ。
秘書型:
チームに連絡・決定事項を行き渡らせる。タスクの進捗を管理する。
各部署のリーダーもしくは必要なキーマン複数人:
ディスカッションに参加し、アイディア出し・討論を行い、計画を作って実行する。
なお、必ずしもそれぞれの役割に一人を割り当てなければいけないわけではなく、一人で複数の役割をこなしてもかまいません。
「リーダー型」と「秘書型」が同一人物ということはよくあります。
リーダー型の役割
リーダー型の重要な役割は、チームに方向性を示すことです。
ただし、ワンマンリーダーのように自分一人で決定した方針をチームに受け入れさせるのではなく、今何をすべきかをチーム全体で考えられるよう導くことが大切です。
「次にこれを考えよう。」「今この件をどうしたら良いと思う?」と、ゴール地点を見据え、次に何をするべきかをチームへ投げかけ、チーム力を活性化できる人がベストリーダーです。
また、リーダーはチームで決定した事柄に対して最終的な責任を持ちます。
秘書型の役割
各自が自分の仕事を抱えながら行う新規事業であるブランディング事業は、よほど意識をしていないと先送りにされてしまいがちです。
その中で、会議での議題作り、議事録の作成と共有、決定事項のリマインドなど、チームが動きやすくなるように整理し、リマインド・号令をかける重要な役割を担うのが秘書型です。
各部署リーダー(代表者)・キーマンの役割
学校全体へブランディング事業を行き渡らせるために、各部署のリーダー(代表者)を参加させます。
また、専門知識が必要な場合は、その知識を持つキーマンを参加させると良いでしょう。
「各部署のリーダー(代表者)」といっても、必ずしも部門長・役職者でなくてかまいません。
「部署を代表する人」と認識してください。
ディスカッションに参加し、アイディアを出し、課題を共に解決する役割です。
学校を良くしていきたい気持ちを持った前向きな方に参加してもらいましょう。
全員でなくとも、2〜3名そういうマインドを持った方が集まれば、チーム全体がリズムに乗っていく場合が多いです。
なぜチームが必要か
チームで学校ブランディングに取り組む理由は、二つあります。
一つは「ブランディングのための行動は事業横断的で多岐に渡るので、一人の力ではこなせないから」です。
既存業務も行いながらのブランディング活動になることが多く、既存業務が優先され、さまざまな新しい取り組みが必要となるブランディング活動が実行にまで至らない場合もあります。
また、人には必ず得意・不得意があります。
「企画は得意でも実行するのに一苦労する」
「人の力を借りたいのに借りられない」
など、人には必ずどこか不得意な部分がありますから、総合的なブランディングプロジェクトの中で、一人では壁にぶつかり頓挫しやすくなります。
したがって、チームで作業分担しながら取り組むのがベストです。
もう一つの理由は「全教職員を巻き込んで共感を得ることが学校ブランディングにとって非常に重要だから」です。
教職員の方々が自校の考えに共感し、自校らしい判断軸を持ち、自校の個性を打ち出す活動を行えるかどうかが、芯の通ったブランディングになるかどうかの大きな分かれ目になります。
どんなに立派な理念やビジョンがあっても、日々の教育活動や広報活動を実行する教職員が理念・ビジョンと反する行動をしていたら、ブランド価値は下がりますよね。
全教職員が自校の理念や育成ビジョン、育成指針に共感し、体現してこそ、ブランディングは成功していくのです。
これを「インナーブランディング」といいます。
人は変化を疎んじる一面を持っていますから、新たな考えや行動にすぐに賛同が得られるとは限りません。
一人で運営しているプロジェクトを、全教職員が理解してくれるでしょうか?
複数人のチームがベクトルを合わせて動いていくからこそ、他の教職員も事業の本気度を感じ、その声に耳を傾けていくのです。
考えのベクトルが合ったチームで、全教職員を巻き込んでいくことが学校ブランディングの成功の秘訣です。
ブランディングを成功させるチームのふるまい
ここまでもお話しした通り、ブランディング推進チームが「学校を良くしよう!」という一つの想いにまとまれるか、そして、全教職員を巻き込んで学校全体のムーブメントにしていけるか、ということにブランディング推進チームの成功はかかっています。
では、ブランディング活動を遂行していく中で、チームメンバーは具体的にどのようにふるまうべきでしょうか。
ポイントは次の三つです。
- 目的を共有する
- 傾聴をベースに、質の高いコミュニケーションをとる
- 助け合い、協働する
ブランディング推進チームは、学校を良くしていく活動の中で、向き合うべき大小の課題について随時話し合い、素早く対応を決定し、実行に移していく必要があります。
そのために、上記の三つのポイントについてチームメンバーで意識合わせをしておきましょう。
目的を共有する
メンバーにはそれぞれ個性・意見があり、ブランディング推進チームの活動でもそれらを存分に発揮してもらいたいところです。
ただし、個人のゴールではなく全体のゴールを達成する意識が全員に必要です。
手元の業務から顔を上げ、全体のゴールが何か、そのゴールにはどのような行動によって近づくことができるのかを話し合い、決定することが重要です。
ブランディング活動のゴール、チームの目的を共有できていればこそ、立場や役職、年齢に関係なく、さまざまなアイディアや意見を活発に話し合うことが可能となります。
反対意見や批判的な意見なども、同じ目的を共有したものであれば、チームに重要な視点を与え、建設的な議論の材料になるのです。
傾聴をベースに、質の高いコミュニケーションをとる
様々な意見・視点を取り入れていくために、重要なテクニックの一つが「傾聴」です。
自分と違う意見を聞いたときには、つい否定的になってしまいがちです。
場合によっては感情的になってしまい、コミュニケーションがうまくいかない場合もありますよね。
そういう時は、おそらくゴールの共有がお互いにうまくいっていません。
なぜ相手がその意見を持ったのか、自分はどうしたいのかについて、互いに真摯なコミュニケーションを行い、共通のゴールを築いていく姿勢がとても重要です。
相手の意見を最後まで聞く「傾聴」をチーム全体で意識していきましょう。
助け合い、協働する
共通の目的を定め、活発な意見交換の中で計画を立てたら、次は実行です。
実行にあたっては、人との調整や対話、作業、企画、情報収集、ルールづくり……など、様々なタスクをこなしていきます。
その中で「メンバーそれぞれの得意・不得意」についてメンバー皆で認識しておくと、作業が非常にスムーズになり、生産性の高い協働関係が作れます。
もちろん、チームでとるべきアクションに対してすべてのメンバーが自ら積極的に取り組む意識と労力をいとわない気持ちを持っているということが前提条件です。
その上で、
「この作業は自分がやるのが一番速く、うまくいくはず」
「この作業は自分の苦手なものだから、この人にやってもらった方が質の高いものに仕上げられる」
など、チーム全体で生産性の高い協働関係を作り上げると、最高のチームワークが完成します。
このような協働関係はすぐにできるわけではなく、一緒の目標を持ち、一緒の仕事をしていく時間の中で作り上げられます。
ストレングスファインダーなど、お互いの個性を見える化するアセスメントツールを活用するのも効果的です。
まとめ ――チームの結束がブランディングを成功させる
学校ブランディングは一人でできるものではありません。
同じ学校で働く教職員それぞれが自分たちらしさを認識し、業務の中で自校らしさが表現されることでブランディングが完成されていきます。
ブランディング推進チームは、学校全体にそのマインドを広めていくための実践チームです。
メンバーで力を合わせ、学校ブランディングを成功させていきましょう。
ブランディング推進チームがそのエンジンとなります。
弊社のホームページに、チームから構築したブランディングのノウハウや事例を数多く掲載しています。
参考にしてみてください。
[株式会社アドハウスパブリック]ブランディングノウハウ
[株式会社アドハウスパブリック]事例
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関本 大輔
株式会社アドハウスパブリック代表取締役。
中小企業専門のブランディングカンパニーの代表。
インナー・アウターブランディングの実践経験900件以上に及ぶ。
全国で講演を行い、企業ブランディングのノウハウを伝えている。
ストレングスファインダーの認定コーチでもあり、4,000名以上約200社のチームビルディングを行う。
[アドハウスパブリックHP] https://adhpublic.com/