連載教えて!伊沢先生!
情報処理オールラウンダー×専門学校講師×Youtuber! 幅広く活躍中の伊沢先生に、最新技術の教え方から教務でのICT活用まで、気になるテーマについて教えてもらうシリーズです。
専門学校の先生はご自身の専門分野についての授業をされるわけですが、新人教員研修、模擬授業を実施した後、実際に授業に入ることもあれば、OJTですぐに授業に入ることもあるかもしれません。
今回は、専門学校の教員として無理せず、楽しく、ずっと仕事を続けるコツをお話します。
目次
1.まずは学校で掲げられているルールを理解する
学校には、授業を行う上での規範となる校訓やポリシー、学則があります。
しっかりと読み込んでこれらの規範から外れることのないようにすることが絶対最低条件です。
特に進級要件や卒業要件、遅刻や欠席、公欠の取り扱いは厳格に行う必要があります。
わからないことがあれば先輩の先生に聞くことが重要です。
2.学生と向き合うための心構え
私の中には学生と向き合うための2つの心構えがあり、それを実践しています。
同じ目線での教育
教室の中では、すでに「先生」と「学生」という立場が決められた状態が成立しています。
上下関係は暗黙的に出来上がっているのですから、無理に上から目線で話をする必要はありません。
同じ「人」と「人」という向き合い方をすることで、不要な対立や不信感を避けられます。
勇気づけの教育
そもそもみなさんの前にいる学生たちは、「今できないことをできるようになるため」に学校に来ています。
できるようになったことはそれを認め、できないことで不安になる場合には「大丈夫!」と伝えることが先生の役割です。
3.自己開示ができると学生との関係が円滑になる
ご自身の事でオープンにできることはオープンにすることが大事です。
自分自身の事をオープンにすることで、学生も自分自身のことをオープンにしてくれます。
そうすることで学生のことをさらに理解できるようになります。
自分自身を隠せば相手も自分自身を隠すでしょう。
特に大事なのは、ご自身の成功したことだけでなく、失敗したことについても話すということです。
難しいかもしれませんが、失敗についてもオープンに話せるようになると、学生は信頼感を持ってくれるはずです。
4.他の先生の言うことは絶対
学校の中には様々な先生がいらっしゃいます。
自分と同じ教育スタイルの先生もいらっしゃれば、自分とは真逆の教育スタイルの先生もいらっしゃいます。
その中でも「他の先生の言ったことを否定しない」ことがとても重要です。
この考え方は教育の世界で長く生き抜くためにとても重要ですが、なかなか教えてもらえる機会がない考え方です。
学生への指導についても、その先生が言われたことについて、学生に「おかしいですよね?」などと問われることがありますが、ここでその先生の言われたことを学生と一緒に否定してしまったらその先生の立場がありません。
逆もまたしかりで、他の先生に自分自身が言ったことを否定されてしまうとかなり凹みます。
どうしてこのようなことが起こるかについては、実際に教育の現場でこのような状況に何度か遭遇することでわかります。
大事なのは絶対に「他の先生の言ったことを否定しない」ことです。
これができるかできないかで心の負担はかなり軽減されます。
5.他人を変えることはできない、自分から変わるように促す
学校には様々な学生がいます。
気の合う学生もいれば苦手と思う学生もいることでしょう。
また、社会人になる前の学校という特性もあり、マナー等の指導も必要な場合があります。
してはいけないこと、やらないといけないことはきちんと学生に伝える必要があります。
しかし、伝えたことを学生自身がきちんとできるかどうかは別問題で、学生自身の問題です。
先生が自身の問題だと抱え込んでしまうと大きな負担になります。
してはいけないこと、やらないといけないことは学生がきちんとできるまで淡々と伝え続け、先生が心に抱え込まないようにすることが大事です。
6.欠点より良いところを見つけて伸ばす
人は良いところもあれば悪いところもあります。
悪いところを改善するよりも、良いところを伸ばすほうが簡単です。
しかも、良いところが伸びていると、学生本人も自己効力感が高まります。
自己効力感が高まったタイミングで、少しだけ悪いところに目を向け、少しだけ改善するのが良いです。
このようなタイミングでは、学生は教員の言うことをとてもよく聞いてくれます。
良いところを伸ばして、伸びたら悪いところを少し改善するというサイクルがベストです。
7.学生には平等に向き合う
男子学生、女子学生、勉強が得意な学生、勉強が苦手な学生、おしゃべりな学生、おとなしい学生……
様々な学生と一緒に過ごす中で重要なのは「すべての学生と平等に向き合う」ことです。
ひいきをしてはいけません。
よく喋る学生の話だけを聴くだけでなく、おとなしい学生の声にも耳を傾けなければいけません。
経験上、学生から生まれる不信感の原因の多くは、不平等な対応であると思います。
8.自分自身を大事にする
この記事を読まれている先生にとって、人生の主役は先生ご自身です。
教育の仕事は、強いメンタルが必要な仕事です。
長くこの仕事を続けるためには、自分自身を大事にすることがとても大事です。
どうしても心が辛くなることもあるでしょう。
そのような時、先輩の先生に相談するという手もありますが、教育に対する考え方が異なれば、ご自身が想定するものとは違うアドバイスが返ってくるでしょう。
もしも学校にスクールカウンセラーの先生がいらっしゃれば、先生ご自身がカウンセリングを受けるというのも手です。
私の勤務する専門学校にもスクールカウンセラーの先生がいらっしゃり、私自身もカウンセリングを受けて、対応の難しい学生について、どのように向き合えばよいかのアドバイスを受けることがあります。
わからないことは素直に知っている人に聞くというのも大事です。
9.キャラ変をしても疲れるだけ
学生と向き合うときの秘訣は、「ありのままの自分」で向き合うことです。
変にキャラ変をして、普段おしゃべりではないのにおしゃべりなふりをしたり、普段は穏やかなのに厳しそうなふりをしたりして学生と向き合っても、すぐに見透かされてしまいます。
そして、自分とは違う自分を演じる先生ご自身が一番神経をすり減らしてしまいます。
先生だからといっておしゃべりである必要はありませんし、情熱的に振る舞う必要もありません。
「ありのままの自分」で学生と向き合うことが大事です。
10.慣れてきたら自分が大切にしたいことにこだわってみる
新人の先生も、1年やってみるとなんとなくいろいろなことが見えてくると思います。
この記事を読んで今は腑に落ちないことも、1年後に読み返してみると「なるほど」と感じることも多くあるはずです。
2年目以降は「自分らしさ」を少しずつ足していくことで、先生ご自身にとって授業を行うことが楽しくなりますし、さらなる充実感を得ることができるでしょう。
それは授業の内容でも良いですし、学生との向き合い方の中でこだわりたいところでも良いです。
そうしていくことで、他の先生にはない魅力を持った先生へと成長していけるはずです。
おわりに
「新米先生のための教務スタイル10の確立法」はいかがでしたでしょうか。
学生との向き合い方は人それぞれです。
今回の記事では、主に私自身の長い教員生活の経験から見出した「教務スタイル確立法」について書きました。
すべてを実践しても良いですし、共感できる部分のみ実践しても良いです。
要は、いつも心が穏やかな状態で学生と向き合えるように工夫することが、教員の仕事を長く続けていく上でとても重要なのです。
教員という仕事は、日々成長する学生の姿を見ることができる尊い仕事だと私は思っています。
楽しい教員生活をお過ごし下さい!
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伊沢 剛
有限会社プチフール代表取締役
23年間、専門学校にてIT教育、学生募集に従事。その後独立。新人社員向けプログラミング研修、社会人向けDX,AI,クラウド研修、情報教育コンサルティング、DX推進支援に携わる。
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