現実の世界では、多くの人が「やってよいこと」「やってはいけないこと」を理解しています。
しかし、インターネットの世界では、知らず知らずのうちに犯罪に加担してしまうなど、「やってはいけないこと」をしてしまう可能性があります。
学生には、インターネット利用のルールを正しく理解し、うまく使いこなせるようになってほしいですね。
目次
急速に需要が高まっているネットリテラシー教育
生活にスマホが不可欠になった現代。
スマホデビューが年々低年齢化しているため、幼いうちからネットリテラシーを育むことが急務となっています。
インターネットを適切に使用する能力「ネットリテラシー」
「ネットリテラシー」とは、インターネット上の情報を正しく理解・判断・運用し、使いこなす能力をいいます。
インターネットの世界にはあらゆる情報があふれており、その情報の真偽や善悪は受け手側が見極めなければなりません。
信頼できる情報はどう探せばいいのか、入手した情報はどう使えばいいのか。
このような判断には、ある程度の知識が必要です。
だからこそ、ネットリテラシーを向上させる教育が求められているのです。
日本のネットリテラシー教育の現状
文部科学省が旗を振って始まったGIGAスクール構想を受け、インターネットの使い方や危険性に関する教育が各学校で行われています。
かつては先進国の中で後れを取っていた日本のネットリテラシー教育ですが、状況は変わりつつあるようです。
2022年に発表された最新の「オンライン安全教育スコア」(Online Safety Education Score)によると、全体的なスコアは80.4点(100点満点)、教育分野に限ったスコアでは92点と高いスコアを獲得しています。
日本でも徐々にネットリテラシー教育が進んでいることがわかります。
参考:DQ Imstitute
ネットリテラシーが低いとどうなる?
インターネットの世界に関する知識が乏しいと、どのようなことが起こるのでしょうか。
1つずつ見ていきましょう。
個人情報の漏洩
デジタル空間は世界中に繋がっています。
しかし、スマホなど個人所有の端末を使って書き込んでいると、プライベートな空間にいるような気持ちになりがちです。
そのため自分自身や周囲の人が特定される可能性のある情報を、気軽に書き込んでしまうことがあります。
関連記事:一度投稿したら消せない?デジタルタトゥーの恐ろしさとは
ネットリテラシーが乏しいと、悪意なく個人情報を書き込み、自分自身の身体や財産を危険にさらしてしまうかもしれないのです。
事件やトラブルに巻き込まれる危険性
オンラインで交流を持つすべての人がよい人とは限りません。
中には悪意を持った人が近づいてくることがあるでしょう。
このことを常に意識しておかないと、なりすましや不正に気付かずにお金を騙し取られたり、気付かないうちに自分自身が犯罪に加担してしまったりする可能性があります。
関連記事:学生を狙う闇バイトとは?見分け方や学校側ができることを解説
また、正義感から過度に攻撃的になる人も。
冗談のつもりで気軽に投稿した記事が炎上し、個人が特定され、日常生活が送れないほどに非難されることもあるのです。
SNS上でのいじめや誹謗中傷
一度SNSに書き込んだ内容は、容易に拡散されていきます。
テレビ番組に出演していた有名人がSNSで誹謗中傷を受け、自ら命を絶ったという事件がありました。
誹謗中傷を簡単に書き込む人は、画面の向こう側に相手がいることや、SNS上の攻撃が人の心を深く傷付けることを理解できていないのです。
関連記事:SNSの悪口はどこからが誹謗中傷?過去の事例や対応策を解説
また、LINEやその他SNSのDM機能でのやりとりなど、限られた人しか見ることができない環境では、いじめや誹謗中傷が見えにくいためエスカレートしてしまう恐れがあります。
意図しない著作権・肖像権の侵害
誰もが情報を手軽に発信できるようになった結果、知らず知らずのうちに著作権や肖像権を侵害してしまう事例が増加しています。
たとえば、個人を特定できる他者の画像をウェブ上に許可なくアップし、その人が不快に感じた場合は肖像権の侵害が成立します。
悪意の有無は関係ありません。
また「フリー素材」というキーワードで画像検索して表示された画像でも、著作権や肖像権までは放棄されていないものもあります。
このような画像を許可なく使用することも著作権・肖像権の侵害にあたります。
高校を卒業して意思決定の幅が広がった若者は、権利に関する知識がまだ不十分であることも考えられますので、注意が必要です。
フェイクニュースやデマの拡散
フェイクニュースは巧妙で、真偽を見極めるのが難しい場合があります。
総務省の調査によると、フェイクニュースを「見分ける自信がある」と答えた人よりも「ない」と答えた人の割合が上回っていました。
また、デマは不安や怒りを助長します。
社会的信頼度の高い人が、よく調べずにSNSで特定の人を批判したところ、事実無根だったにもかかわらず、批判された側のSNSに誹謗中傷が殺到するという事件がありました。
フェイクニュースやデマを流した人が訂正しても、拡散された情報はデジタルタトゥーとして残り続けます。
ネットリテラシーを高めるための教育方法
10代から20代の若者にこそ、さらに発展していくインターネットの世界についての適切な知識を身につける教育が必要です。
そのための方法を見ていきましょう。
具体的な事例をあげてリスクを理解させる
「インターネットには危険がある」と抽象的に教えても、学生の心には響きにくいかもしれません。
以前、女性アイドルが自分の写真をSNSにアップしたところ、女性の瞳に映り込んだ景色から自宅が特定され、ストーカー行為を受けたという事件がありました。
ネットリテラシーの必要性を学生に理解してもらうためには、このような具体的な事例を示し、危険を身近に感じてもらうことが効果的です。
情報のリサーチ力を高めて見極める力を養う
SNSなどに書き込まれた情報は、何度も拡散されていく過程で、情報の出所も真偽もわからなくなっていきます。
従って、受け手には、その情報の信憑性をリサーチする力が必要です。
リサーチ力を高めるには、既存の情報を鵜呑みにせず、常に考えて調べる場面を作るとよいでしょう。
日頃から調べることを習慣化しておけば、知識が積み重なり、情報を見極める力が向上していきます。
複数の媒体から情報を確認
媒体とは、情報と私たちの間に立って情報を伝えるもので、新聞・テレビ・本・HP・ブログ・SNSなどの情報源を指します。
同じ情報源でも、媒体にはそれぞれの特色があります。
たとえば、Twitterはリアルタイムで人々の声が聞けますが、個人の発信なので主観的になりがちです。
一方、新聞は多くの人がチェックして発行されるため誤った情報は少ないですが、Twitterほどのスピード感はありません。
このような媒体ごとの特徴を理解し、複数の媒体を比較する機会を意識的に設けるとよいでしょう。
情報の発信源を確認するクセを付ける
官公庁や企業などは社会的な責任を負っているため、HPなどでもしっかりと裏付けされた正確な情報を発信する傾向があります。
個人のブログであれば、プロフィールを確認すると、記事作成者がその分野に詳しい人なのかを判断することができます。
機会があるごとに、学生には情報の発信源を確認するように促すとよいでしょう。
ネットリテラシー教育に役立つ資料や動画
ネットリテラシー教育の必要性は理解しているけれど、資料作成が……と思っている先生もいるかもしれません。
ここでは、おすすめの資料を紹介します。
総務省の啓発教育教材「インターネットとの向き合い方~ニセ・誤情報に騙されないために~」
総務省が令和3年に調査・研究をして開発した教材集です。
教材以外にも「講座実施の手引き」「講師用ガイドライン」があり、先生はこれらを活用して講座を実施できます。
ダウンロードできるPowerPoint資料は、学生のニーズや実施時間に合わせて編集することも可能です。
教材を利用するにあたっては総務省に連絡を入れる必要がありますが、手厚く準備されているので、一考の価値があります。
インターネットリテラシーを判定できる「ネットスキル診断」
KDDI提供、「安心ネットづくり促進協議会」作成の無料で受けられる診断ツールです。
診断を受ける人が自分の年齢に合わせた問題を解くと、正答率によって「ネット初心者」「ネット上級者」などのランクに分けられます。
「判断する力」「伝える力」「守る力」がグラフ化され、自分の伸ばすべき力が一目で確認できるのが特徴です。
専門学校生は「その他」の年齢区分で、中高生向けの問題を解きます。
中高生向けといっても難易度の高い問題が多数あり、全問正解できる学生はネットリテラシーが高いといえるでしょう。
群馬県が制作したネットリテラシー向上動画教材「インターネットの光と影を知ろう!」
高校生が主人公の動画ですが、年齢が近い専門学校生の指導にも使えます。
誰にでもありそうな日常の様子が15分程度にまとめられた動画です。
仲良しの女子高校生グループが、些細なことから互いを疑い、SNSを通じて傷つけ合う様子が細かく描かれています。
短いながらも学生にとっては身につまされる内容なので、学生自身が自分の行動を振り返るきっかけになるでしょう。
群馬県の公式サイト(群馬県公式サイト)から見ることができます。
授業で配布できる「SNS活用チェックリスト」
当サイトで無料配布している「これだけは押さえておきたいSNS活用チェックリスト」は授業での活用や学生への配布が可能です。ぜひお役立てください。
詳しくは以下のバナーからご覧ください。
まとめ
現在、小学校から高校まで、ネットリテラシー向上のための教育が実施されています。
成人年齢が18歳に引き下げられ、高校を卒業した専門学校生はもう大人です。
学生の中には、専門学校がネットリテラシー教育を受ける最後のチャンスという人もいるかもしれません。
学生・学校・社会にとって、専門学校でのネットリテラシー教育には重要な価値があるでしょう。
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