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TOP教育情報処理大切なのは技術力だけじゃない!「コミュニケーションができるSE」を目指す

大切なのは技術力だけじゃない!「コミュニケーションができるSE」を目指す

連載元SEが教える、現場で本当に求められること

社内IT歴30年以上!プロジェクトマネジャーや部門管理者経験も豊富な元SEライターが、社会に出てから役立つSEの心構えやスキルを解説するシリーズです。現場で求められるSEになるためのヒントが満載です!

「SEにはコミュニケーション力が必要」とよく言われます。それは、SEの業務対象がコンピュータだけではなく、人間にも及んでいるからです。

では、「コミュニケーション力のあるSE」とはどんなSEでしょうか。
「話し上手のSE」のことでしょうか。「傾聴ができるSE」のことでしょうか。確かにそれも大切です。

ただ、「SEとしてのコミュニケーション力」を分解していくと、SE特有のポイントが見えてきます。

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SEに必要なコミュニケーション力

SEに求められるコミュニケーション力には、以下の要素が挙げられます。

  • 理解力:相手の話の内容を理解する
  • 質問力:相手の話の内容の不明点を解消し、抽象的な部分を具体的な理解に変える
  • 発表力:自分の考えを相手に理解される表現で伝達する
  • 説得力:自分の考えを相手が納得するように伝える
  • 対応力:自分と相手の考え方が違う場合に適切に対応する

これらの要素は一般的なコミュニケーション力と同じですが、SEの場合、これらのコミュニケーション力が必要となる場面や相手が多岐にわたります。

SEにコミュニケーション力が求められる場面とは

次に、SEにコミュニケーション力が要求される場面を考えてみましょう。

SEは技術職でありながら、システム開発の発注者から依頼内容をヒアリングする営業的な側面も持っています。また、チームで仕事を進めることが多く、リーダーになればチームをまとめていかなくてはいけません。

そのため、SEの仕事内容の特徴として、会議や打ち合わせへの参加が多いことが挙げられます。会議を主導して発表するケースもあり、コミュニケーション力が要求されるシーンが非常に多いのです。

下の「コミュニケーション場面分析表」は、SEの所属タイプ別にコミュニケーションの場面とその相手、そこで必要なコミュニケーション力の要素を分析したものです。

所属
タイプ
場面 相手 必要な要素
システム開発会社やSIerに所属するSE (1) RFPに応じるためのヒアリング会議 発注側 理解力、質問力
(2) RFPに対して回答する発表会議 発注側 発表力、説得力、対応力
(3) 社内打ち合わせ 上司、プロジェクトマネジャー 理解力、質問力、説得力、対応力
(4) 開発チーム会議 チームメンバー 理解力、質問力、説得力、対応力
社内SE (5) (公式)新システム要求会議 ユーザ(業務)部門 発表力、対応力
(6) (非公式)新システム要求ヒアリング ユーザ(業務)部門 理解力、質問力
(7) システム要求(RFP)を伝える会議 システム開発会社やSIer 発表力、対応力、質問力
(8) RFPに対しての回答を受ける発表会議 システム開発会社やSIer 理解力、質問力
コミュニケーション場面分析表

「相手」の列に人数を明記していませんが、ひとりの場合もあれば複数の場合もあります。こちら側も単独の場合と複数の場合があります。こちらが複数の場合には、内部でのコミュニケーションも発生します。

それぞれの場面で必要となるコミュニケーション力の要素を右端に記載しています。この「必要な要素」は自分にとって必要である同時に、「相手が期待していること」でもあります。

まず、システムの開発会社やSIerに勤務するSEの場合を見てみましょう。

(1)の場合は「理解力」が要求され、理解できない部分は「質問力」で補う必要があります。発注側の企業が時間をかけ知恵を絞って準備したRFP(Request for Proposal:提案依頼書)を、「理解してくれない」「質問してくれない」会社にその案件を発注するはずがありません

(2)はSEが発注側企業に対してRFPの回答を説明する場面です。発表を受ける発注側企業は、内容だけではなく、発表者であるSEが「これからのプロジェクトで付き合っていける人物かどうか」も観察しています。そのため説得力のある発表と、質問に対し的確に答える姿勢が要求されるのです。

また、準備した資料では説明しきれない質問を受けた場合は、一旦仮の回答を提示し、会社に持ち帰ってから正式な回答をするなど臨機応変な「対応力」が要求されます。

受注を獲得しなければいけないというシビアな状況のため、凛とした態度で接することができる精神的なタフさも求められます。

(3)(4)は社内のミーティングですので、(1)(2)に比べて緊張感は少ないと思いますが、自分の意見を打ち出し納得してもらうためには、やはりスムーズなコミュニケーションが不可欠です。相手の顔色を窺い忖度するばかりではいけません。「理解力」「質問力」「説得力」「対応力」を基本に、誠実なコミュニケーションを取りましょう。

次に社内SEの場合です。

(5)は社内の業務部門が導入を希望しているシステム化のイメージを聞くための会議です。SEがシステム要件を組み立てるための情報交換の場となります。要望をいかに正確に聞き出せるかによって、その後の進行が変わってくるでしょう。場合によっては要求の是非についてその場で意見を述べなくてはならず、「発表力」「対応力」が必要となります。

(6)は「ちょっと相談したいんだけどいいかな」と社内の業務部門の担当者がアプローチしてくるケースです。この場面では、より素直な気持ちで質問や情報を共有し、理解を深めることが必要です。

(7)(8)は(1)(2)と逆の立場ですが、必要な要素は(5)(6)とほぼ同じと考えてください。ただし、相手は社内の人間ではありませんし、今まで会ったこともない人が含まれているかもしれません。
また、これらのコミュニケーションは取引先企業にとっては業績に直結するものです。真剣に臨まれてる相手の想いに対して真摯に向き合う誠実さが必要です。

このように、SEは日々コミュニケーション力が求められます。
また、これらすべての場面において以下のようなトラブルもつきものです。

  • 「伝えたはずだが伝わっていない」という問題が起きる可能性がある
  • あとになってから「聞いてないよ」「言ってないよ」が発生することがある

これらの問題は、相手が思い描いている到達点とこちらが思い描く到達点にずれがある場合に多く発生します。
到達点を完全に合意させておくために、初期段階のコミュニケーションは非常に重要です。
その後も「どうすれば目標に到達できるか」について、意見の違いを重ねるコミュニケーションを継続して取っていく必要があります。

コミュニケーション力を身につける方法

ここまで、SEにとってコミュニケーション力が必要不可欠であることを解説しました。では、どうすれば学生時代からコミュニケーション力を身につけることができるのでしょうか。
ここでは、4つのアプローチについてお話しします。

1.理解力/質問力を高める「Q&Aノート」を使う

「Q&Aノート」に必要なものはノートと筆記具(もしくはタブレットやパソコン)だけです。相手の発表や説明に対して、質問(Q)と回答(A)をノートにどんどん書き加えていくのです。これによって、理解度が高まり、何を質問すべきか明確になります。
また、自分が発表・説明する立場になった際に、どんな質問が出てくるのかを予測する力を養うこともできます。
使い方について、もう少し詳しく見てみましょう。下の例をご覧ください。

Q&Aノートイメージ

Step1

基本的に、会議や打ち合わせではあらかじめテーマが決められています。前述の「コミュニケーション場面分析表」にある(1)(5)(8)などの場合がそれにあたります。これらの場合には、できるだけ多くの質問を事前に考え、ノートに書き込んでおきます。

Step2

相手の発表が始まってからも、どんどん質問を追加していきます。ただし、質問を書くことに集中し過ぎて話の内容を聞き逃さないようにしましょう。質問は自分しか見ないものなので、乱筆でも乱文でも問題ありません。

Step3

発表の中で質問の回答を示されることがあります。その時点で回答を書き留めましょう。Qの直後に書かなくても、追番がついているので大丈夫です。回答が示されたQの横にはレ点をつけましょう。

Step4

発表を聞いているうちに「この質問はスコープ外だな」と思った質問には、削除線を入れます。

Step5

回答がなく削除もされていないQが、「何かご質問は?」と聞かれた際に使う質問です。

ぼんやりと話を聞くのではなく、心を込めて聴く「傾聴」と「訊く力(質問力)」は、SEのコミュニケーション力において重要です。
Q&Aノートを活用することによって、「相手の考えを明確に知る」「疑問点が解消される」「質問するための準備ができる」といったコミュニケーションの促進が期待できますので、学生のうちから取り入れてみましょう。

ただ、以下のことに注意してください。

・1:1の場ではなるべく使わない
・クローズドクエスチョンとオープンクエスチョンを混ぜる(オープンクエスチョンだけだと相手に苦痛を与える可能性があるため)

2.発表力を高める「自己紹介」を練習する

すでに取り入れられている先生も多いと思いますが、「自己紹介」を行うことは発表力の基礎固めになります。

実際の現場でもSEは自己紹介をする場面が多くあります。その場で考えるのではなく、どこでも使える自己紹介文を事前に準備しておきましょう。伝えたいことが整理でき、緊張感をやわらげることができます。

ただし、所属と名前だけでは発表の練習にはなりません。何らかの簡単なエピソードや自分の特徴などを組み込むようにしましょう。

例えば「長所はユーモアをまじえてコミュニケーションできるところ。短所はユーモアをまじえすぎるところです」というような冗談を加えると、場をなごませることもできます。

また、社外においては「経験不足ですがよろしくお願いします」というように卑下した表現を使ってはいけません。自信のなさをアピールすることになり、相手に不安感を抱かせてしまいます。

3.説得力を高める「図表」を使いこなす

「コミュニケーション場面分析表」の(4)のように、複数の人間が参加する会議では議論が「空中戦」になることがあります。

「議論の空中戦」とは、個人と個人をつなぐコミュニケーションパスが入り乱れ、内容に論理性がなく、感情論になったりすることを指します。こうなってしまうと会議の生産性が低下しかねません。

下の図が示しているのはコミュニケーションパスの数です。

コミュニケーションパスのイメージ

1:1の場合、コミュニケーションパスの数は1ですが、3人の場合は3、5人の場合は10となります。そして、8人の場合は28にもなってしまいます。このようにコミュニケーションパスは「n×(n-1)÷2」で計算されて指数関数的に増えていくのです。

この複雑性を回避するのに役立つのが「コミュニケーションパスの中心に図表を置く」方法です。これによってコミュニケーションパスが減り、論点を集中させることができ、参加者が同等の理解をできるようになるのです。
また、図表が間に入ることで感情論になりにくいのもメリットです。
では、具体的にどんなものがあるでしょうか。2つの例を紹介します。

・比較表

例えば、下のような比較表をSEの現場ではよく使います。普段から作ることに慣れておくとよいでしょう。

オプション1オプション2オプション3
システム概要AAABBBCCC
コスト10,000,000円12,000,000円9,000,000円
開発工数10人月7人月12人月
Pros・〇〇〇〇〇
・〇〇〇〇〇
・〇〇〇〇〇
・〇〇〇〇〇
・〇〇〇〇〇
・〇〇〇〇〇
Cons・〇〇〇〇〇
・〇〇〇〇〇
・〇〇〇〇〇
・〇〇〇〇〇
・〇〇〇〇〇
・〇〇〇〇〇
比較表イメージ

行と列で構成されるこのような表は、相手の理解度を高めて説得力が増す効果があります。その上、自分自身の理解度も高まり、論理性を向上させることが期待できます。

・WBS

一般的にWBS(Work Breakdown Structure:作業分解構成図)はプロジェクトマネージャーがまとめるものです。ただ、SEとして自分の領域のWBS(のようなものでOK)を作成しコミュニケーションの中心に置くと、チーム内のコミュニケーションを促進させることができるでしょう。

また、上司やプロジェクトマネジャーとの会話においてWBSを利用すると、相手の納得感を得やすくなり、コミュニケーションがスムーズに進みます。

4.Face to Faceを恐れない

最後は、方法というよりも「心構え」という表現が正しいかもしれません。
コミュニケーションの相手が近くにいるのであれば、メールやチャットに加えて、直接会って話をすることも大切にしましょう。
特に少人数でのコミュニケーションでは、Face to Faceのコミュニケーションで相手の本質的な意図がわかることが多く、表情やボディランゲージが相互理解のきっかけになることもあります。
オンラインが当たり前となった世の中ですが、Face to Faceのコミュニケーションを重んじることがSEとしてのコミュニケーション力を高めてくれるでしょう。

まとめ

スムーズなプロジェクトの進行には「信頼関係」が必要です。
SEは顧客やユーザ、そしてチーム内部からも信頼されなければなりません。信頼関係が築けないと、「伝えたはずが伝わっていない」という状況が発生しやすくなってしまいます。
信頼感を得るためには時間がかかりますし、仕事の実績を積まなければいけないかもしれません。

周囲との信頼関係をスムーズに築きやすいのが、コミュニケーションができるSEです。
学生のうちからコミュニケーション力を意識して高めるためのトレーニングをしておくことで、信頼してもらえるスピードが速まるかもしれません。
「コミュニケーションができるSE」は、そのまま「信頼されるSE」となるはずです。

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この記事を書いた人
中村 信介

中村 信介

30年以上に渡りメーカーのIT部門でPG、SE、PM、部門責任者というキャリアを積む。現在はITと人材育成関係のWebライターとして活動。

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